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文献名1霊界物語 第22巻 如意宝珠 酉の巻
文献名2第1篇 暗雲低迷よみ(新仮名遣い)あんうんていめい
文献名3第4章 玉探志〔696〕よみ(新仮名遣い)たまさがし
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2021-05-26 10:43:37
あらすじ黒姫、鷹依姫、竜国別、テーリスタン、カーリンスの五人は、言依別命にしたがって錦の宮に参拝して帰る途上、高姫、紫姫、若彦に出くわした。高姫は、自分が参拝する間に、五人に自宅に来るようにと言い渡して行ってしまった。黒姫、テーリスタン、カーリンスはてっきり黄金の玉紛失の件がすでに高姫の耳に入ったのではないかと恐れている。果たして、戻ってきた高姫は黄金の玉紛失の責任を一同に対して問い始める。そして無関係の紫姫と若彦に対しても当たりだした。高姫に覚悟を問われた黒姫、鷹依姫、竜国別、テーリスタン、カーリンスの五人は、世界中を探し回ってでも黄金の玉を見つけ出す決意を表した。そしてそのまま高姫宅を出ると、錦の宮を拝して旅装を整え、黄金の玉探索の旅に出立して行った。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年05月24日(旧04月28日) 口述場所 筆録者北村隆光 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年7月30日 愛善世界社版49頁 八幡書店版第4輯 397頁 修補版 校定版51頁 普及版23頁 初版 ページ備考
OBC rm2204
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本文  言依別命に従ひて黒姫、鷹依姫、竜国別、テーリスタン、カーリンスの五人は錦の宮に参拝し、言依別命は宮殿深く神務の為めに進み入り、五人は各家路に帰らむとする時しも、高姫、紫姫、若彦の三人と十字街頭にピタリと出会した。
高姫『これはこれは黒姫さま、鷹依姫さま、その他御一同、一寸高姫の宅まで来て下さい。折入つてお訊ねしたい事が御座います』
 意味あり気な此の言葉に黒姫はハツと胸を刺される心地がした。されど、さあらぬ態にて、
『ハイ、何用か存じませぬが、妾は今参拝の帰り路で御座います。何時参りましたら宜しいでせうか』
『皆さま、妾等三人は参拝して来ますから、先へ妾の宅まで帰つて居て下さい。直に帰りますから。鷹依姫さまも、竜国別さまも、テーさまも、カーさまも御一緒に待つて居て下さい』
と撥ねた様な言葉尻を残して忙しさうに参拝道に進み行く。黒姫は胸に一物、思案に暮れながら高姫の宅に立寄り、帰宅を五人一同打揃ひ待つて居た。
テーリスタン『モ黒姫さま、高姫さまの顔色が変つて居ましたな。悪事千里と云つて、今朝の騒ぎが高姫さまの耳へ這入つたのぢやありますまいか』
黒姫『サア、何だか何時もに変る気色だつた、困つた事になりましたな。お前、仕様もない事をするものだから各々に心配をするのだよ』
 テー、カーは首を傾け、
『ハイ、私が悪う御座いました。併し教主様がお赦し下さつたのだから、もう彼の話は言はぬやうに致しませうかい。折角教主の言葉を無にしてガヤガヤ騒ぐと、世間へ洩れてはなりませぬから』
『ヘン、貴方には都合が宜しからうが、責任者たる妾は大変に面目玉を潰しました。本当に油断のならぬお方ぢやなア。テーリスタン、これから口の物を喰ひ合ふ様な仲でも油断は出来ませぬぜ、本当に困つた人だ。もう是きり改心をするでせうな』
カーリンス『玉から事件が方角違ひに外れて居るのだから仕方がない。まあまあ兎も角、吾々両人が盗んだ事に成つて居るのだから、何と言はれても仕方がないさ』
『ヘン、なつて居るから仕方がないとは能う言へたものだよ。オホヽヽヽヽ』
 斯く言ふ処へ高姫は身体をプリンプリンと振りながら、チヨコチヨコ走りに慌しく帰り来り、
『サア若彦さま、紫姫さま、お這入りなさいませ』
と先に立つ。
『ハイ』
と答へて両人は奥へ通つた。
黒姫『高姫様、えらう早う御座いましたな』
高姫『いつもの様に、ゆつくりと御礼も出来ませぬわ。能うマアお前さま、ヌツケリと落着いて居られますなア。黄金の玉の行方は分りましたかい』
『エー、未だに………分り…………ませぬ。然し貴女は誰にお聞きなさいましたか』
『貴女は誰も知らぬかと思つて居らつしやるが、夜前から貴女等の喧嘩を誰も知らない者は一人もありませぬよ。みんな聞いて居ましたよ』
『寔に申訳なき事で御座います』
『申訳がないと言つて肝腎要の御神宝を紛失し、能う安閑として居れますなア』
テーリスタン『もし高姫様、黒姫様が悪いのぢや御座いませぬ。私とカーリンスと二人が何々したのですワ』
『エー聞きますまい、あた穢はしい。そんな事あ、ちやんと妾の耳に入つて居る。併し乍ら肝腎の責任は黒姫様にあるのだ。黒姫様何となさいます。一つ御了簡を承はり度い』
『何事も言依別命様が御引受け下さいましたから申しますまい』
『それで貴女、責任が済むと思ひますか、言依別命様に何も彼も塗りつけて、能うお前さま、平気の平左で済まして居られますな。無神経にも程があるぢやありませぬか』
『さうだと言つて如何も仕方がないぢやありませぬか。八岐の大蛇の執念深き企みに依つて、バラモンの手に疾の昔、手に這入つて了つたものを、如何してこれが元へ帰りませう。妾がテー、カーの様な者を使つたのが過失です』
『これ、テーにカー、お前如何する積りだい』
テーリスタン『ハイ、申訳がありませぬ』
カーリンス『仕方がありませぬ』
高姫『能う、そんな事が言へますワイ。これ黒姫さま、この責任を果す為めにお前さまは生命のあらむ限り草を分けても探ね出し、再び手に入れて神政成就のお宝を御返し申さねば済みますまい。何をキヨロキヨロして居なさる』
と坐つた膝を畳が凹む程打つけて雄猛びした。
黒姫『妾も決心して居りますよ』
『二言目には刃物三昧の決心は廃めて貰ひませう。そんな無責任な事がありますか。サアサアとつとと出なさい。さうして其玉が手に入らぬ事には再びお目には懸りませぬよ。鷹依姫さま、お前さまも嫌疑が掛つた身体ぢや、黙としては居られますまい。竜国別さまは、親の疑を晴らす為に是も黙としては居られまい。テー、カーの両人も本当に盗つたか盗らぬか、そりや知らぬが、もう一苦労して世界に踏み出し、五人が五大洲に別れて探して来ねばなりますまい。さうぢやありませぬか。若彦さま、紫姫さま、黄金の玉を盗られた玉無しの宮を、ヌツケリと番して居る訳にはゆきますまい。紫姫さま、若彦さま、返答を聞かせなさい』
と無関係の両人にまで腹立ち紛れに八つ当りに当る。
若彦『あゝあ、何処へ飛沫が来るか分つたものぢやない。併し私は言依別さまの御意見を伺つて其上に致しませう。紫姫さまも今では重要な位置に居られるのだから、之も自分の自由にはなりますまい』
高姫『お前さまに直接責任がないと言つて、そんな平気な事を言つて居られますかいなア。言依別命様は柔弱な奴灰殻ぢやから、斯んな黒姫さまの失態を何とも処置をつけないのだ。然し教主として誰を悪いと云ふ訳にもゆかず、瑞の御魂の本性を現はし、表面は何喰はぬ顔して平気に見せて御座るが、心の裡は矢張り御心配して御座るに間違ひない。一を聞いて十を悟る身魂でないと、肝腎の御用は勤まりますまい。サア黒姫さま、如何なさいます、言依別の教主が赦されても、此高姫が承知致しませぬぞや。妾も一度はウラナイ教を樹て、お前さま等と共に変性女子に背いて見たが、それも素盞嗚尊様のお心を取違ひして居つたからだ。変性女子の身魂からお生れ遊ばした言依別命様も自分が其罪を一身に御引受け遊ばして御座るのぢや、それを思へば妾はお気の毒で堪らない。地の高天原は此高姫が是から玉照彦さま、玉照姫さまを守り立てて立派に御用を勤めて見せます。サア早く何とか準備を為さらぬか』
黒姫『妾も三五教の宣伝使、屹度何とか働いてお目に掛けます』
竜国別『吾々も母上様の嫌疑を解く為め、お暇を頂いて世界漫遊に出かけます。さうして玉の在処を探ねて来ます』
鷹依姫『いや妾も年寄と云つても元気がある。何処迄も此玉を探し当てる迄世界中を巡歴して来ます』
高姫『それは大に宜しからう、さうなくてはならぬ筈だ。これ、テー、カー、お前等は如何する心算だい』
テーリスタン『仮令八岐の大蛇の腹の中を潜つてでも、玉の在処を探さねば措きませぬ』
カーリンス『私も其通りだ。然し高姫さま、言うて置くが、何卒如意宝珠の玉と紫の玉を紛失せない様に、言依別の神様を助けて保管を願ひますよ』
高姫『ハイハイ、そんな事は言つて貰はいでも、気を付けた上にも気を付けて居ます。心配をせずに一日も早く玉の在処を探ねにお出でなさい。さうして在処が分つたら、無言霊話を早速掛けて下さい。皆さまも其のお積りで…………宜しいか』
と叩きつける様に言ひ放つた。
『ハイ承知致しました。然らば之より言依別の教主様に一寸お暇乞ひを致して来ませう』
と五人が立ち上らむとするを、高姫は押し止め、
『まあお待ちなさい。貴女方が神様の為に尽くすのなら、此儘言依別の教主に分らない様にするのが誠だ。教主は涙脆いから、又甘い事を仰有ると、忽ちお前さま達の腰が弱つて了ふから、妾が善き様に申し上げて置く。サア早くお出ましなさいませ』
竜国別『あゝあ、偉い災難で、高姫さまに高天原を追ひ出されるのかなア』
『嫌なら行かいでも宜しい』
と高姫は睨め付ける。五人は是非なく高姫の宅をスゴスゴと立ち出で錦の宮を遥に拝し、各旅装を整へ世界の各地に向つて玉の捜索に出かけた。
(大正一一・五・二四 旧四・二八 北村隆光録)
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