文献名1霊界物語 第29巻 海洋万里 辰の巻
文献名2前付よみ(新仮名遣い)
文献名3端書よみ(新仮名遣い)はしがき
著者出口王仁三郎
概要
備考
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データ凡例
データ最終更新日----
あらすじ『海洋万里』辰の巻から羊の巻に至り、南米太古の物語を口述しました。今日は人文大いに開け、十数カ国の国が建っています。この文章では現今の南米諸国について状況を記したもので、太古のことではありませんが、物語の参考として引用します。ペルーは物語ではヒルの国と称してます。この国には無尽蔵の富源を抱いています。昔、インカ帝国の時代にはその文明は、かつてのギリシャ・ローマに比すべきものでしたが、四百年前にスペインが国を奪い、三百年の暴政を行ったので、国土は荒廃し文化が退歩してしまいました。地理的には南北に縦走するアンデス山脈によって、海岸、山岳、森林地帯に区別されます。海岸は無雨地帯と称せられていますが、アンデス山(高照山)より発する五十余の河川があり、耕作が行われています。海岸地帯は一見不毛の土地ですが、水さえ引けば地味は非常に肥沃です。気候は一年中日本内地の五、六月の気候で理想的です。山岳地帯は鉱山地帯とも呼ばれ、無類無量の鉱産を誇ります。森林地帯は国土の三分の二を占め、アマゾン河の本流・支流の上流をなす数千の河川は、みなこの地から発しているため、将来において河川を利用する交通を起こすには地勢上便利があります。また国境地帯は熱帯の暑熱であるが、アンデス山系の斜面および海抜二千尺以上の地域は亜熱帯や温帯の気候で、イタリア南部に似た過ごしやすい気候となっています。雨量は豊かで、雨季と乾季に分かれている。この地に足を踏み入れた人は、植物の発育の旺盛なことに驚かされ、その種類も多く有用植物も多数生育する。また動物も多様で、河川の魚貝も地中海に匹敵する。森林地帯も鉱物の埋蔵量は多量だが、交通が不便のために今まで発掘されていない。また貴金属よりも石油が有望視されている。ヒル(ペルー)とカル(コロンビア)の間にある日暮山(アンデス山)は海抜二万五六千尺ほどもあり、その頂上には一大湖水がある。山の中腹には今なお邪気がこもれる死線が横たわる危険な箇所があるという。この地方は薬草が多く雨が少ない。
主な人物
舞台
口述日1922(大正11)年08月13日(旧06月21日)
口述場所
筆録者
校正日
校正場所
初版発行日1923(大正12)年9月3日
愛善世界社版4頁
八幡書店版第5輯 465頁
修補版
校定版4頁
普及版2頁
初版
ページ備考
OBC rm290003
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本文
霊界物語『海洋万里』(辰の巻)より未の巻に至り、南米太古の物語を口述しておきました。今日は人文大いに開けたる結果、国を建つるもの十数ケ国になつて居ります。中にも南米第一の富源を擁して居るにも拘はらず、国民は遊惰にして何時も外国の厄介にばかりなつてゐるのは秘露の国であります。故に英米人は此国を評して『黄金の床に寝て居る乞食の国』と謂つて居ります。この文章は現今南米諸国の状況を示したもので、決して三十余万年前の太古の事では有りませぬ。只物語の参考として茲に引用した迄であります。
秘露はこの物語にはヒルの国と称してあります。此国に無尽蔵の富源を抱いて居ること、其の北隣なるコロンビヤ(物語にはカル)と共に第一に置かれて居ります。このヒルの国は現今でこそ南米中の二等国に沈淪したものの、昔インカ帝国としての全盛時代は、その文明の程度は上代の希臘、羅馬の隆盛なりし折に比すべきもので、現今の智利(物語にはテル)エクアドル、ボリビヤ等の諸国は皆『太陽の子』インカ王の配下にあつたもので、今を距る四百年前、彼の西班牙の奸雄ビサロが、アタワルバを殺害して国を奪ひ、西班牙の植民地と為してから三百年間は、西班牙は戦慄すべき暴政を行つたので、国土が荒廃し文化は退歩したのであります。ビサロがアタワルバ王家から奪つた金塊でも、現今の価格で十億円のものであると言はれた程に、此国は貴重な礦物を沢山に包蔵して居ります。
この国を地理的に区別すると、南北に縦走するアンデス大山脈にて海岸、山嶽、森林の三地帯に区分されますが、海岸地帯は無雨地帯と称せられ(物語参照)、時々霏雨は降りますが、雨らしい雨は無いから土地が砂漠的に見えますが、其間にはアンデス山(高照山)より発する五十余の河川があり、その流域には数十の沃野があつて、良質の綿や、甘蔗の耕作が盛に行はれて居ります。此地域は昔インカ帝国時代には現在の数倍も耕作されて居たもので、今日も猶壮大なる昔時の灌漑工事の跡が方々に残つて居るのです。
此地帯は一見した所不毛の土地でありますが、水さへ引けば忽ち青々たる草野に変り、地味は非常に肥沃であります。また此地帯に於ける農業の特色は、異常な確実性を有し、害虫は殆ど無く、又風水の害も絶無でありますから、その収穫も安全を期待されて居ます。一万人余を計上されて居る日本移民の大部分は皆この地帯の耕耘に従事して居るのです。
気候は又一年中、日本内地の五六月の気候で実に理想的であります。目下白人は約十万町歩を耕して居りますが、灌漑に堪ゆる土地が尚二十万町歩は残存して居ります。山嶽地帯は一名礦山地帯とも云はれ、礦産は無類無量であります。バナデユームは世界第一位、金と銀とは同第四位、銅と鉛とは同第六位で、石炭も到る処に埋蔵されて居りますが、何分不便の為に発掘量が少いのです。
次に特記すべき事は森林地帯で是が所謂極楽郷であります。この地帯はアンデス山脈の東方で長さ南北約一千哩、幅は二百哩乃至七百哩を出入する広い地面で、海抜は二三千尺から一百尺の低地に及んで居る。秘露の行政区劃上、この地帯は八県に分たれて居ますが、実に全国の三分の二の地積を占め、アマゾン河本流及び其支流の上流を為す大小数千の河川は、皆この地帯に発して東走するのでありますから、将来に於て河川を利用する交通機関を起すには地勢上甚だ便利があるのです。この地帯の気候はコロンビヤ、ボリビヤ、ブラジル(物語にはハルの国)国境近くは熱帯の暑熱で年中華氏九十度位の平均であるが、アンデス山系の斜面地及び海抜二千尺以上の地域は亜熱帯や温帯の気候で、伊太利の南部に似て居るのです。旅行するものは実に良好な気持を感ずるものです。其フツクリとして柔かな何とも言へない身は、まつたく植物の吐く香気に埋れた温室の中でソヨソヨと微涼に吹かれる様な具合で、古来この地帯を通過した人は凡て極楽の気候だと感ずるものであります。
雨量は豊で一年を二期に区別し、十一月から翌年四月が最も多く(冬季)、五月より次第に少くなり、十月には最も少ない(夏季)。而して、地味の肥沃なることは無比である。
この地帯に足を入れた人の先づ驚嘆するのは、植物の発育の旺盛な情態であります。天を摩する巨木は到る所に見出され、香高き蘭科植物の多種なること、人間が乗れさうな巨大なる花、大蛇の如き大蔓草、人間の頭ほどある種々の美味なる果物、日本の如うな貧弱な植物界を見馴れた眼には胆を奪はれる位であります。又エボニー、マホガニー等の貴重なる材は到る所に見出され、薬草の豊富なることも、世界一と言はれて居ります。其の他染料、繊維、香料、ゴム樹等も頗る多く、一哩平方の地面に、植物の種類、凡そ一百万種に近い位で、実に植物の豊富なるには驚くの外は無いのであります。
次に此地帯に棲む動物も頗る多種類で、アマゾン河中に在る魚貝のみでも地中海に棲むものの種類に匹敵するのであります。
最近この地帯の河川、湖沼で蒐集された珍奇なる魚介の種類は、一万五千余種に及び、その中八百余種は全く新しい発見に係るものである。又アマゾン河の上流ワヤガ河附近には、握り拳ほどの大蝸牛や団扇程の蝶が居る。現今では猛獣毒蛇は少く虎と豹などが棲んで居るが、姿は却て小さく、左程怖るるに足らない。この森林地帯にも埋蔵の礦物は極めて多量であれども、交通不便の為に発掘されて居ないのです。元来この地帯は地質上カルの国からボリビヤに至る石油及び黄金の大地脈であつて、英米の専門家は近年来熱心に調査を進めて居るのである。既に英国の石油業者はこの地帯のバチラヤ、ワヤガ河、サクラメントバンバ附近まで五百万町歩、マドレヂオス河附近で一千万町歩、マラニヨン河附近で五百町歩に亘る石油コンゼツシヨンを獲得せむと、秘露政府に交渉して居るのであります。現に加奈陀人のロバートダンスミールと云ふのが、秘露政府との間に、同国の森林地帯を貫通さす二千四百哩の一大鉄道建設の契約を結び、四十五ケ年間の経営権を握つたのも、実に此地帯の礦物運搬が主なる目的であるとさへ見られて居る位であります。そして其目的は貴金属よりも発掘の容易なる石油にあるのは当然でせう。此国の石油は七八百年前インカ帝国時代に発見されて採取利用されたが、欧洲人の来るに及び、小規模乍らも各所で採掘事業が営まれた。将来は世界一の石油産地として著明になるでありませう。
又ヒル(秘露)、カル(古倫比亜)との間に聳立せる日暮山(アンデス山)山脈は海抜二万五六千尺もあり、其頂上には一大湖水があり、山の中腹には今も猶邪気の籠もれる死線と云ふものが横たはり、知らずに登るものは水腫病を起し、直に死亡するといふ危険な箇所があります。概して此地方は薬草の多い所で又年中降雨の無いのが特徴となつてをります。
大正十一年八月十三日