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文献名1霊界物語 第41巻 舎身活躍 辰の巻
文献名2第4篇 神出鬼没よみ(新仮名遣い)しんしゅつきぼつ
文献名3第18章 替へ玉〔1122〕よみ(新仮名遣い)かえだま
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2022-12-16 14:18:50
あらすじイルナ城の奥の間では、清照姫がヤスダラ姫への変装をしていた。黄金姫は、セーリス姫に三五教の教えの意味を説いて聞かせている。その間に廊下に足音が聞こえてきた。黄金姫は王の間に姿を隠し、中から錠を下ろしてしまった。ヤスダラ姫に化けた清照姫とセーリス姫は、煙草盆を前に煙を吐いている。やってきたのは、ユーフテスに先導されたカールチンとマンモスだった。清照姫は、ヤスダラ姫の声を作ってカールチンに声をかけた。清照姫は、カールチンの妻テーナ姫がテルマン国にやってきて夫のシャールに讒言したことの怨みをぶちまけ、カールチンを非難した。そしてセーラン王との許嫁の仲を無理矢理割いたことについても非難し、怒鳴りつけた。カールチンは怒って右守の権限でヤスダラ姫を捕縛しようとする。一方ヤスダラ姫(清照姫)は王の代行としてカールチンを捕縛せよと命令する。ユーフテス、マンモスは途方に暮れてしまう。ヤスダラ姫(清照姫)は傲然として右守を威喝する。右守は怒ってヤスダラ姫(清照姫)をにらみつけている。そこへサマリー姫がやってきた。ヤスダラ姫(清照姫)は、これまでの怨みを晴らすはこのときと叫び、サマリー姫に襲い掛かろうとする。右守は呼子を出して吹き、十数人の捕り手を呼び寄せたが、ヤスダラ姫(清照姫)は武者ぶりつく捕り手を振り払い、身構えして叱りつける。その権幕に捕り手たちも呆然として遠巻きにするのみであった。黄金姫は、セーラン王の間から王のつくり声をして、一同に控えるように命じた。ヤスダラ姫(清照姫)はサマリー姫を離縁して自分を正妻にするようにとセーラン王(黄金姫)に頼み込んだ。黄金姫はセーラン王の作り声で、バラモン教の大黒主にならって一夫多妻主義を取り、サマリー姫を正妻とし、ヤスダラ姫を第二夫人とすると言い渡した。そして右守に対し、改心すれば位を譲って自分は退位するつもりだから、自分の病気が回復したら改めて登城するようにと宣言した。右守はこれを聞いて喜び勇み、マンモスとサマリー姫を連れて館に引き下がった。後に王の間から出てきた黄金姫は、清照姫、セーリス姫、ユーフテスらとともに笑い転げた。
主な人物 舞台イルナ城(入那城、セーラン王の館) 口述日1922(大正11)年11月12日(旧09月24日) 口述場所 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1924(大正13)年6月15日 愛善世界社版252頁 八幡書店版第7輯 623頁 修補版 校定版264頁 普及版119頁 初版 ページ備考
OBC rm4118
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本文  イルナ城の奥の間には黄金姫、清照姫、セーリス姫の三人が首を鳩めて姦しく喋々喃々と論戦を戦はして居る。
セーリス『あのまア、清照姫様のお美しい事、ヤスダラ姫様そつくりですわ。ようまアお顔も御覧になつたことがないのに、それ程似るやうに造れましたねえ』
『照山峠の麓でお目にかかつたのですよ。其時のお顔を記憶に止めて居て作つたのですから、写真に取つたやうなものですわ。何事も新しい女の覇張る世の中ですから、清照姫もどうやら新しいヤスダラ姫様になつて仕舞ひました。オホヽヽヽヽ』
『併し、新しい世の中が建設されるとか、されたとか、三五教では仰有るぢや厶いませぬか』
 黄金姫はしたり顔にて答ふ。
『新しき天と新しき地とが今度は三五教の神力によつて現はれるのですよ。今迄の天と今迄の地は既に過ぎ去つた今日です。是から聖城なる新しきヱルサレムが地に下り、国治立尊が降り給うて天下万民も亦新しく生き返らせ給ふ時代に近づいたのです。ヱルサレムの城は四方になつて居て長さと幅と同一です。木花姫命様が天教山より出雲姫命を遣はし給うて、竿を以てエルサレムの城を測量させられた所が一万二千フアーロングあるといふことです。城の長さも広さも高さも皆相等しく、其石垣は百四十四キユーピツトあつて、碧玉にて石垣を築き、其城は清らかな玻璃の如き純金で造り、城の石垣の礎は各様々の宝石で飾られてあります。十二の門は十二の真珠で造られ、透き徹る様な黄金造りの建物ばかりで目も眩ゆきばかりであります』
 セーリス姫は驚いて、
『新しい天や新しい地が現はれるとはソリヤ大変な事ぢやありませぬか。地異天変も爰に到つて極まれりと謂ふべしですな』
『新しき天地とは新しき教会のことで、要するに埴安彦、埴安姫の神様が三五教の道場をお開き遊ばしたことを指して謂ふのですワ』
『天より下り来るエルサレム城といふことは全体何をいふのでせうか』
『救世主神埴安彦の神の示し給ふ所の天地の誠、三五教の教説のことであります』
『その長さ広さ高さ相等しくして各一万二千フアーロングあると仰有つたのは、如何なる意味で厶いますか』
『三五教の教説中の真と善と美とを合一して言つたのです。又城の石垣といふのは此教を守護し宣伝する神司のことです。百四十四キユーピツトあるとは三五教の真と善と美の三相を悉く挙げて称讃したもので、宣伝使たるものの純良なる性相を言つたのです。又真珠より成つた十二の門とは能道の真を言つたのです。宝石より成れる石垣の礎といふのも彼の説教を聞いて立つ所の諸々の知識を云ふのであります。城を造れる清く透れる玻璃に似たる黄金とは至仁至愛の徳を指して言つたのです。教説と其真と善と美は愛の力に由つて倍々透明となるものですからなア』
『さうすると「天地が逆様になるぞよ」といふ三五教の御神諭も矢張右の式で解釈すれば宜いのですかなア』
『三五教の宣伝使や幹部の中には今でも天と地とが現実的に顛覆するやうに思つて居る人々もあり、御経綸の霊地に真珠の十二の門が現実的に建つ様に思つて居る人々があるのだから、それで困るのですよ。セーリス姫様も矢張さう思つて居られませうなア』
『ヘイヘイ、最も現実に立派な宮が建つたり、お城が築造されるものだと、思つて居ましたワ』
『現実的にソンナ立派な宮を建てようものなら、忽ちウラルやバラモンから睨まれて叩き潰されて了ひますぞや。オホヽヽヽ』
『オホヽヽヽ』
『本当に神様の教といふものは六ケ敷いもののやうな易いものですなア。何故コンナ事が肝腎の幹部の連中さまに解らなかつたのでせうかなア、お母さま』
『是も時世時節だから仕方がありませぬわ、アーアー』
『かうして、清照姫様のヤスダラ姫は出来上りましたが、右守はもう来さうなものですなア。ユーフテスも何を愚図々々して居るのでせうか』
 斯く話す折しも廊下に聞ゆる足音、黄金姫はツと立つて王の籠りし室に身を隠し、中より錠を下して了つた。清照姫、セーリス姫は煙草盆を前に置きスパスパと煙を吐いて居る。
 そこへユーフテスの案内で足音高くやつて来たのは、カールチン、マンモスの両人である。清照姫は、ヤスダラ姫の声を一度聞き覚えて居るのを幸ひ、作り声をして、
『オヽ其方は右守の司カールチン殿、先づ御無事で重畳々々、ヤスダラ姫も其方の壮健の姿を見て安心致したぞや』
 カールチンは周章てて、
『イヤ、姫様のお帰りと承はり早速お伺ひに参るところで厶いましたが、あまり突然の事で信ずる訳にもゆかず、ユーフテスをして実否を伺はせました処、正しく姫様のお帰りと聞き、取るものも取敢へず伺ひました。先づ御壮健で何よりお目出度う厶います』
と気乗らぬ声で嫌さうな挨拶をして居る。
『コレ右守殿、其方の言葉には極めて冷淡の色が現はれて居ますぞや。御叮嚀にテーナ姫を遥々とテルマン国まで使者にお立て下さいまして、罪もない妾をシヤールに牢獄を作らして投げ込んで下さつた御親切は決して忘れはしませぬぞや。弱い女と見えても左守の血統を享けた刹帝利の女、如何なる鉄牢でも、この細腕で一つ押せば、何の雑作もありませぬ。鼻糞で的をはつたやうな牢獄に繋がれて苦しんで居るやうな女だつたら、さつぱり駄目ですよ』
『これは異なことを承はります。テーナ姫は、二三ケ月の間、館の門を潜つたことはありませぬ。そりや何かの間違ひか、但は何者かの計画で厭テーナ姫が貴女を苦しめるべく参つたのでせう。左様なことを仰せらるるからは、キツト貴女も此右守がテーナと腹を合せ、善からぬ事を企んで居ると思はれるでせう。これはこれは近頃大変な迷惑、どうぞ神直日に見直し聞直し、疑を晴らして下さいませ』
『あの白々しい右守殿の言葉、妾はテーナ殿の顔をよく見知つて居るから、疑が晴らしたくば此処へテーナ殿を連れて来なさい』
『ハイ、何時でも連れて参るのが本意で御座いますが、昨夜より急病が起り大変苦しんで居るから、本復次第お目に懸らせませう』
『妾は其方に対し厚くお礼を申上げねばならぬ事がある。右守殿、決してお忘れではありますまいなア』
『これは又、合点の行かぬお言葉、貴女様にお礼を云うて頂くやうな事は致した覚えは厶いませぬがなア』
『オホヽヽヽ、右守殿も年が寄つたと見えて健忘症になられましたなア。妾は親と親との許嫁でセーラン王様と夫婦と定つて居たのを、其方は御親切にも妾をテルマン国の毘舎の館へ無理に追ひやり、吾娘サマリー様を王の妃に押しつけなさいましたでせう。其時の妾の嬉しさ、否腹立しさ、これがどうして寝ても醒めても忘れられませうぞいなア』
と甲声を張り上げて呶鳴りつけた。
『貴女は、一切の経緯を御存じないから、左様な御立腹をなさいますが、これには深い様子のあることで厶います。セーラン王様や左守の司クーリンスは大黒主の神様に内々反対なされ、鬼熊別様の御贔屓ばかり遊ばすと云ふことがハルナの都に知れ渡り、この右守に対して厳しい御質問、お家の一大事を思ひ、イルナの国を救ふべく、また王様を安全に守るべく、貴女にはお気の毒ながら、あゝいふ手段を取つたのです。さうして吾娘サマリー姫を妃に差し上げたのも、大黒主様に安心させる為の安全弁、何卒この右守の胸中を御推察あらむ事を希望致します』
『あゝさうだつたかなア。右守司の六韜三略の兵法をも知らず、貴方を今迄恨んで居たのは誠にもつて恥かしい、女の身の浅薄さ、それでは妾も是から再び此処を立ち出で、サマリー姫様のお邪魔をしないやうに致しますから、御安心なさいませ』
『貴女はこれからテルマン国のシヤールの館へ帰つて下さいますか。さう願へれば大変結構で厶いますが』
『そりや真平御免蒙りませう。又してもギス籠の中へ投込まれますと、叩き潰して出て来ねばなりませぬからなア、ホヽヽヽヽ』
『キツト此右守が保護致しまして左様な不心得な事は、シヤールに厳命して致させませぬから、どうぞお帰り遊ばして下さい。さうして貴女は王様にお会ひになりましたか』
『折角お目にかからうと思ひ、遥々虎口を遁れ、ここう迄やつて来ました所、拍子の悪い時には悪いものです。王様は俄の大病でお引き籠り遊ばし、何人にも面会せないとのこと、妾の心もちつとは推量して下さいませ、右守殿』
と態とに泣声を出して芝居をして見せた。
 カールチンは威丈高になり、
『王様が御面会せぬと仰有るのに、貴女は御命令に背き、たつて会はうと遊ばすのか、何と云ふ不届きな御心で厶る。今日は右守の司、王様に代つてヤスダラ姫を放逐致すから、サ早くお立ち召され』
『セーラン王の許嫁の誠の妻ヤスダラ姫、今日より汝右守に対して退職を命ずる。エヽ汚らはしい、一刻も早く退城召され』
『これはしたり、ヤスダラ姫は狂気召されたなア。狂人をお館へ置くは危険千万、火の用心の程も案ぜらるる。イヤ、マンモス、ユーフテス、速にヤスダラ姫を捕縛して座敷牢にぶち込み御静養をさせ奉れ。彼様な事が外部に洩れては王様の御信用に関する一大事だから』
『アイヤ、ヤスダラ姫が命令する。ユーフテス、マンモス、セーリス姫、速にカールチンを高手小手に縛め牢獄に投入せよ。主に向つて無礼千万の行り方、容赦はならぬぞ。セーラン王に代り固く申しつくる』
 マンモスは途方に暮れながら、
『オイ、ユーフテス、どちらを聞いたらよいのだらうかなア』
 セーリス姫は、
『オホヽヽヽ。一層の事どちらも牢獄に投げ込んだらどうでせう。喧嘩両成敗と云ふから、まさか片手落ちの処置も取れますまい』
『マンモス、ユーフテス、主人カールチンの命令を聞かぬか』
『ハイハイ、聞かぬ訳では厶いませぬ、一寸暫くお待ち下さいませ。マンモスは俄に便所へ行きたくなりましたから』
『ユーフテス、早く捕縛せぬか』
『ハイ、捕縛致しませう、併し一つ考へさして下さいませ。セーリス姫様に篤と相談を致しますから』
『オホヽヽヽ、このヤスダラ姫に指一本でも触へるなら触へて御覧、面白い活劇が演ぜられ、手足首胴所を異にし、小児のお玩具箱の人形のやうになりますよ。それでも構はねば何人に限らず手向ひして御覧』
 右守の司は眼を瞋らし、清照姫を睨めつけて居る。マンモスはブルブルブルと地震の孫宜しく慄へて居る。セーリス姫、ユーフテスは平然として沈黙を続けてゐる。其処へス駆つて来たのはサマリー姫である。
『ヤアお前はサマリー姫、こんな処へ来るものでない、控へて居なさい。何故家に居ないのか、誰人に聞いてやつて来たのだ』
『父上、そんな気楽なことが云うて居れますか。王様は御大病、妻の私として、どうして知らぬ顔がして居られませう』
『其方は此間から夫婦喧嘩をおつ始め、未だ其和解も出来て居ないのだから、話のつく迄早く吾館へ帰つて待つて居るがよからうぞよ』
『ヤア珍らしや其方はサマリー姫殿、妾は其方の為に許嫁の夫に添ふ事も出来ず、テルマンの国に追ひやられたヤスダラ姫で厶いますぞ。日頃の恨を晴らすは今此時、よい処へ出て厶つた。サア覚悟なされ』
と襷十字に綾取つて見せた。サマリー姫は打ち驚き、カールチンの腰に喰ひつき、ぶるぶる慄へながら、
『もしもしお父様、どうしませう、助けて下さいませな』
『ウン今に待て、ヤスダラ姫をふん縛つて、其方の邪魔を除いてやるから』
と云ひつつ、懐中より呼子の笛を取り出し、ヒユウヒユウと吹き立つれば、忽ち十数人の捕手、バラバラバラと此場に現はれ来り、清照姫に向つて武者振りつくを、清照姫は両手を拡げ四股を踏みしめながら、
『イヤ面白し面白し、ヤスダラ姫が武勇の現はし時、木端武者共、一人も残らず懲してくれむ。サア来い来れ』
と身構へする。美人の雄々しき権幕に捕手は茫然として手出しもせず遠巻に巻いて居る。次の間より戸を隔ててセーラン王の声、
『アイヤ右守の司、吾はセーラン王なるぞ。サマリー姫静かにせよ。ヤスダラ姫に向つて手向ひ致せば、最早吾は許さぬぞよ。サマリー姫、吾言を用ひずば唯今限り夫婦の縁を切る。それでもよいか』
と呶鳴つたのは、云ふまでもなく、隣室に隠れて居た黄金姫の作り声である。カールチンは王の声としては少し年が寄つて居るやうである。併し病気のため体が弱り声が慄うて居るのであらうと心にきめて了ひ、俄に言葉を柔げて、
『御病気中をお気を揉ましまして誠に済みませぬ。何卒お許しを願ひます』
『王様、どうぞ許して下さいませ』
とサマリー姫は泣きすする。
『王様、妾はテルマン国から貴方を慕ひ申し遥々参りました許嫁の妻、ヤスダラ姫で厶います。何卒サマリー姫との縁を切り、私を貴方の妻として下さいませ。さうしてどうぞ一度尊きお顔を拝まして下さいませ』
と態と涙を流しさし俯く。
 次の間より又もや王の作り声にて、
『バラモン教の大棟梁大黒主様は、一夫多妻主義だ。先の妻を逐出して第二の石生能姫を本妻に遊ばし、吾々に手本をお示し下さつた以上は何も憚る事はない。サマリー姫を元の如く本妻と致し、ヤスダラ姫は第二夫人として上女中の取締りに使うてやるから安心を致せ。右守の司も、これに違背はあるまいがなア』
『ハイ、理義明白なる御仰せ、決して違背は致しませぬ。サマリー姫をどこ迄も本妻として愛してやつて下さいますか』
 次の間より王の声、
『サマリー姫の心次第だ。次では右守の司の改心次第だ。最早余も刹帝利の職に飽き果てたから、ここ一二ケ月の間に吾位を汝に譲る程に、早くサマリー姫を連れ帰り、余が本復を待つて改めて登城致すがよからう。又ヤスダラ姫も、サマリー姫に余が面会するまでは面会は許さぬぞ。さう心得たらよからう。コンコンコン、あゝ苦しい、余は咳に悩んで居るから、病気本復する迄神殿に籠り御祈願を凝らすによつて、右守殿、余が後を継ぐ用意を万事万端館に帰つて整へたがよからうぞ』
 右守は此言葉を聞いて雀躍しながら、
『ハイ何分宜敷くお願ひ申します。然らばサマリー姫を一先づ吾家に連れ帰り本復を待つて登城致させませう。何卒一日も早く御本復あらむ事をお願ひ申します。サア、サマリー姫、マンモス、是より館へ帰らう。ヤア者共、余を館へ送つて参れ。ユーフテス、汝はセーリス姫と共に此処に止まり万事に気をつけ召され』
と云ひ捨て意気揚々と己が館をさしてドヤドヤと帰り往く。
 其後へ黄金姫は戸を排して現はれ来り、清照姫、セーリス姫、ユーフテスと顔を見合せ、
『オホヽヽヽ、ウフヽヽヽ、エヘヽヽヽ、アハヽヽヽ』
と笑ひ倒ける。日は漸く西天に姿を没し、双樹の枝に止つた九官鳥は大口を開けて、阿呆々々と鳴き立てて居る。
(大正一一・一一・一二 旧九・二四 加藤明子録)
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