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文献名1霊界物語 第50巻 真善美愛 丑の巻
文献名2第4篇 神犬の言霊よみ(新仮名遣い)しんけんのことたま
文献名3第21章 犬嘩〔1315〕よみ(新仮名遣い)けんか
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2023-07-28 01:01:47
あらすじイクとサールの二人は高姫が逃げるのを追って、河鹿峠の急坂を下って行く。二人は妖怪の正体が割れた妖幻坊と高姫を捕えて懲らしめようと追いかけていたのであった。サールは先に入っていたイクが怪我をして倒れているところに追いついた。イクは石につまずいて血を流して倒れていた。二人はこれ以上追うことができず、神に祈り始めた。すると間近の茂みから妖幻坊の杢助と高姫が現れた。妖幻坊はイクとサールを殺すと脅しをかけ、高姫はそれがいやなら自分の手下になれと呼び掛けた。イクとサールは高姫の提案を拒絶した。高姫は樫の棒を振りかざし、杢助は巨岩を持ち上げ、投げつけて二人を害そうとした。イクとサールは進退窮まり、眼をつぶって一生懸命に大神を念じていた。たちまち、足許からスマートの唸り声が聞こえてきた。妖幻坊と高姫は強直してしまい、そのまま駆け出した。妖幻坊はパタリと転び、後に高姫がつまずいて樫の棒で妖幻坊の後頭部を打った。妖幻坊は怪しい声で鳴き声を上げた。あたりに暗の幕が下りてきた。後にはただ、谷川の水の音のみが聞こえるのみであった。イクの傷は、スマートの声と共に一時に全快した。
主な人物 舞台 口述日1923(大正12)年01月23日(旧12月7日) 口述場所 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1924(大正13)年12月7日 愛善世界社版289頁 八幡書店版第9輯 256頁 修補版 校定版295頁 普及版144頁 初版 ページ備考
OBC rm5021
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本文  イク、サールの両人は、高姫の逃ぐるを追うて、河鹿峠の急坂を下りながら歌ひゆく。
イク『大雲山に蟠まる  八岐大蛇のドツコイシヨ
 其眷属と現はれし  妖幻坊の曲津神
 ウントコドツコイきつい坂  オイオイ サール気をつけよ
 義理天上の肉宮と  佯る高姫婆の奴
 彼方此方の木の株に  蔓を引つかけ吾々を
 すつてんころりとドツコイシヨ  ひつくりかへそと企らみて
 ウントコドツコイ往きやがつた  アイタタタツタ、アイタタタ
 矢張此奴は石だつた  何程高姫司でも
 そんな事する間がなかろ  さうぢやと云つてドツコイシヨ
 サールの司油断すな  敵は名に負ふ妖幻坊
 金毛九尾の肉の宮  一すぢ縄ではゆかぬ奴
 又もや此処を飛び出して  どつかの聖場に巣を構へ
 鉄面皮にも しやあ しやあと  日出神を振りまはし
 納まりかへつて居るだらう  かうなる上は何処迄も
 後追つかけて彼奴等をば  面ひん剥いてやらなけりや
 世界の害は何れ程か  分つたものぢやない程に
 アイタタタツタ躓いた  余り先に気を取られ
 足許お留守になつたのか  尊い神の祀りたる
 祠の森へぬつけりと  神さま面を提げよつて
 やつて来るとは太い奴  挺でも棒でも動かない
 強か者をスマートが  厳の雄健び踏み健び
 ウウウウワンと吠え猛る  其猛声に肝つぶし
 駆け出すやうな弱い奴  何程口が達者でも
 直接行動にや叶ふまい  サアサア急げ早急げ
 グヅグヅしとると日が暮れる  もしも夜分になつたなら
 彼奴等二人を見失ひ  残念至極口惜しと
 臍を噛むとも及ぶまい  急げよ急げ、いざ急げ
 神の御為道のため  仮令吾等は曲神に
 命を取らるる事あるも  何かは惜しまむドツコイシヨ
 ウントコドツコイアイタタツタ  ほんとに危ない坂道だ
 女の癖に高姫は  大きな尻を振りながら
 中々足の早い奴  これも矢張り杢助を
 思ひつめたる一心が  恋の矢玉となり果てて
 宙をば飛んで往くのだろ  何程俺が走つても
 向ふも矢張り走る故  ドツコイドツコイ コンパスに
 よつぽど撚をかけなくちや  追ひつく事は難しい
 こりやこりやサール何しとる  もちつと早う走らぬか
 ウントコドツコイドツコイシヨ  谷の流れが囂々と
 伊猛り狂ふ其音に  紛れて俺の云ふ事が
 お前の耳に入らぬのか  思へば思へばジレツたい
 いざいざ来れ いざ来れ  敵は早くも逃げ失せた
 こいつ遁しちや一大事  又もや小北の神殿で
 主人面をば晒しつつ  何を致すか分らない
 俺等は早く追つ付いて  途中で二人を引掴み
 河鹿の流れに打ち込んで  三五教の妨害を
 根絶しなくちや済むまいぞ  お前も俺もバラモンの
 神の教に仕へつつ  悪い事をば遺憾なく
 今迄やつて来たものだ  ウントコドツコイ其深き
 罪を贖ひ天国の  死後の生涯送るべく
 改心したる其上は  何か一つの功名を
 神の御前に立てなくちや  斎苑の館の神様に
 一つも土産がなからうぞ  後ふり返り眺むれば
 サールの奴は何うしてる  来れば来る程後れよる
 ほんにお前はヤツトコシヨ  ドツコイドツコイ辛気臭い
 なぜ又足が遅いのか  アイタタタツタ パツタリコ
 とうとう向脛打ちました  これを思へば神様が
 後を追ふなと云ふ事か  いやいやさうではあるまいぞ
 一旦思ひ立つた上は  どこどこ迄も後を追ひ
 彼が先途を見届けて  喉首グツとひん握り
 もう是からは高姫は  改心致して自転倒の
 生田の森に帰りますと  云はさにやおかぬ俺の胸
 心は千々にはやれども  肝腎要の向脛
 強か打つた其為に  心ばかりは急げども
 何だか体が動かない  アイタタタツタ アイタタツタ
 サールの奴は何してる  もうそろそろと追付いて
 現はれ来さうなものぢやなア  ああ惟神々々
 肝腎要の正念場  何卒足の痛みをば
 止めさせ給へ逸早く  両手を合せ此イクが
 偏に願ひ奉る』
 斯く坂道に倒れながら、尚も歌を続けて居る。此処へトントントンと足許覚束なげにやつて来たのはサールであつた。サールはイクの足から血を出して倒れて居るのに吃驚し、頓狂な声を出して、
『ヤア、お前はイクぢやないか。どうした どうした』
『何うも斯うもあつたものかい。あまり貴様がグヅグヅして居るものだから、早う来ぬか早う来ぬかと、後を見もつて走つたものだから、大きな石に躓いて倒れたのだ。オイ、サール、俺には構はずに早く走つて呉れ。グヅグヅして居ると二人の奴、日が暮れたら分らぬやうになつて仕舞ふぞ。俺は後から足が直り次第追駆けて往くからなア』
『さうだといつて、お前がこんな怪我をして居るのに、これが何うして見捨てて行かりようか。此処は狼が沢山出る所だから、日が暮れるのに間がないから、剣呑で耐らないわ。そんな事云はずに俺に介抱さして呉れ。何とまアえらい怪我だのう』
『俺は何うでもよいから、早く往かないと取り逃すぢやないか。俺が大事か、お道が大事か、よく考へて見よ。俺の足が一本位なくなつたつて構ふものか、なくなつたら義足でもつけたらいいぢやないか。さア早く往つて呉れ往つて呉れ』
『何ぼなんでも友人として俺は此処を見捨てて去るには忍びない。どうも貴様の顔色が悪いぞ』
『ああ貴様も臆病だなア。そんな事云つて彼奴等両人が怖ろしいのぢやないか』
『そりやさうだ。貴様と二人行くのなら力強いが、あんな化物や婆アの後を追つ駆けて行つても、一人ぢや反対にやられて仕舞ふからな。実の所は貴様を先へやつて俺が応援にいく積だつた。肝心のイクが倒れて俺だけ行つてみても、完全なイクサールは出来ぬからのう。負けるのは定つて居るから、そんな敗戦なら、行かない方が余程利口だぞ』
『貴様は人を当にするからいかぬのだ。人間の五人や十人居つたつて何にならう。神力無辺の神様に頼んで行けば、きつと彼奴等の鼻柱を挫き、きつと御用が出来るのだ。さア、行つて呉れ行つて呉れ。アイタタタタ、どうも俺は息が切れさうだ。到底回復は覚束ないかも知れないぞ』
『気の弱い奴だなア、貴様こそ、なぜ神様を祈らぬのだ』
 イクは細い声で、
『ああ惟神霊幸倍坐世。誠に無調法致しました。併し私はどんなになつても構ひませぬ。何卒サールに神力を与へて下さいまして、臆病風を追ひ払ひ、勇気を出して猪突猛進するやうにお願ひ致します。ああ惟神霊幸倍坐世 惟神霊幸倍坐世』
と祈る折しも、間近の木の茂みから破鐘のやうな声で、
『アハハハハ、態を見よ。杢助の計略にかかり其有様は何の事、ても扨ても心地よやなア、アハハハハ』
『ヤ、居よつた居よつた。オイ、サール、取掴まへて呉れ、俺は此通り足が痛いのだから動けないわ』
『俺も何だか体が鯱こ張つて動けないのだ。アアアアどうしようかなア、アイタタタタタ何だか腰までが変になつて来たぞ』
 林の中から、
『ウアハハハハ、こりやイク、サールの両人、今杢助が其方両人を荒料理して喰つてやらう。てもさても不愍なものだなア。オイ高姫、彼奴等両人を此樫の棒をもつて、頭をまつ二つに割つて参れ』
 この声の下よりツと現はれた高姫は二人の前に立ち現はれ、樫の棒を打ち振りながら、
『こりや両人、此高姫は其方を決して打ち叩きたくも、殺したくもなけれども、わが夫杢助殿のお言葉には背かれぬから、これまでの命と諦めて観念致したがよからうぞ。ても扨ても飛んで火に入る夏の虫、いらざる殺生をしなくてはならないやうになつたわいなア』
『こりや高姫、俺が足を傷付いたのを付け込んで殺さうと致すのか。ようし、面白い。殺されてやらう。オイ、サール、貴様も一つ殺して貰へ、吾々は尊き大神様の御守護があるから、滅多に悪魔のために命を捨てるやうな馬鹿ではないぞよ。さア高姫、イヤ妖幻坊、どうなつと致せ』
『それ程殺して欲しければ殺してやらう。併し、イク、サールの両人、一つ改心致して此方の御供致す気はないか。魚心あれば水心ありだ。別に義理天上日出神の生宮は、貴様たちの様な蠅虫を二人位殺したつて仕方がないのだから、何うだ、改心してお供致す気はないか。此神は敵でも助ける神だぞや』
『ゴテゴテ云はずに早く殺さぬかい。オイ、サール、貴様は卑怯者だから、妖幻坊や金毛九尾に降参して命だけ助けて貰へ、困つた奴だなア』
『イヤ俺も男だ。こりや高姫、妖幻坊の杢助、どうなりと致せ。貴様の喉首にでも齧りついて反対に命を取つてやらう。覚悟を致せ』
『どうも、阿呆になつたら仕方がないものぢや。さう殺して欲しけりや、無益の殺生だが仕方がない。どうだ、覚悟はよいかな』
と樫の棒を振り上げる。
イク『そりや何さらしてけつかるのぢや。蟷螂が藁すべを担いだやうなスタイルをしよつて、さア早くすつぽりとやつて見い』
 斯かる所へガサガサガサと大きな音をさせながら、妖幻坊の杢助は巨岩を両手に頭上高く差し上げ、今や二人に向つて投げつけむとする勢である。如何に勇猛な二人も、この岩石をくらつては、忽ち身体は木端微塵になるより仕方がなかつた。二人は進退これ谷まり、観念の眼をつぶつて、一生懸命に大神を念じて居た。忽ち足許から『ウウーウウー、ウーウー、ワウワウワウ』とスマートの声、妖幻坊並に高姫は石を振り上げたまま、棒を振り翳したまま、強直して一生懸命に駆け出し、岩石に躓いて妖幻坊はバタリと転けた。高姫は又もや躓いて棍棒を振り上げた儘、ウンと転げた拍子に、棍棒で妖幻坊の後頭部をパチンと打つた。妖幻坊は『キヤンキヤン』と怪しき声を立てて二声ないた。何うしても人間の声とは聞えなかつた。四辺に暗の幕はおりて咫尺暗澹、唯谷川の水の音のみ淙々と聞えて居る。
 因にイクの瘡傷はスマートの声と共に一時に全快した。
(大正一二・一・二三 旧一一・一二・七 加藤明子録)
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