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文献名1二名日記
文献名2よみ(新仮名遣い)
文献名3昭和3年5月6日よみ(新仮名遣い)
著者家(出口王仁三郎)
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2018-08-19 19:15:19
ページ1 目次メモ
OBC B117500c01
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本文  男もすといふ日誌を女子もして見んとてすなり。昭和三年戊辰弥生は十七日午後一時半といふに天恩郷を立ち出づ。岩田鳴球、栗原白嶺、生一吟月、玉家満月合せて五柱なり。外に御田村主事補、萩家明月等京又は大阪まで見送らんとて同じ汽車にる。停車塲に見送る人等百に余りていとも賑し

コトタマ旅に出で立つ吾行を見送る人山と積みけり。
高知 徳島 高松 松山 頭字数へて見れば言霊なる。
青野原右と左に抱へつつ花明山高台あとに馳せ行く。
高台上より数多まめ人白布ふりて吾を見送る。
水清き保津流れを左手に見てすすむ旅路心地よきかな。
嵯峨駅来りて見れば嵐山は早や葉桜となりにけるかな。
白髭を長くばせし老翁吾座前に眼をむきてあり。
筆は走りて紫雲英花咲く田圃を進むぞをしき。
麦畑はざまに大根白々と花咲き充ちて初夏風吹く。
花時じく咲くなる花園妙心寺駅静なるかな。
家々棟にひらめく鯉幟千葉葛野に花とちる見ゆ。
花園駅に来れば大山氏夫妻吾窓訪ひて見送る。
まがね路二條駅に汽車つきて白髭翁窓外に立つ。
二條駅吾送らんと宣伝使まめ人ホーム埋めて待てり。
浮れ男いふ花を手折るなる島原角屋秀高しも。
丹波口駅に来れば此処も亦宣使まめ人吾行見送る。
玉敷秀を見上る空に靄立ちこめたり。
京都駅京都分所支部員等雲如くに見送りてあり。
衣を纏ひし吾姿珍らしさうに集ひてささやく。
二十分汽車待つ間さへもどかしく思ひぬ人にぞき込まれて。

 内には政戦将にたけなはなり。外には支那叛乱あり。同胞保護為に出兵止むなきに至れる物騒極まる晩春空に、コトタマ宣伝と巡遊旅に立つ吾一行長閑さよ。

京都駅を立出でまつしぐら西へ西へと向日町行く。
明智勢羽柴軍と雌雄をば決せし天王山に雲立つ。
暖かき今日旅行に室内は所せきまで乗客つまる。
高槻ホームをふさぎつつ宣使まめ人吾行見送る。
伊賀伊勢子 中井勤氏井上夫人神戸駅まで吾を見送る。
荘月氏明光社長中井氏三十日祭に急ぎてぞ行く。
知らぬ間に摂津富田駅越えて茨木駅に着きて気附きぬ。
ゆすられて腹も吹田駅頭に弁当売り声さへもなき。
菜畑花散り行きて青々と莢み重くかたむく野辺かな。
里川流れも清く田中に二筋三筋見えて凉しも。
淀川大鉄橋を束間に渡る眼下に漁り舟浮く。
破れ家軒重なると見るうちに早くも汽車は梅田に入りけり。
大淀鉄橋下に賤男が脛もあらはに貝拾ふ見ゆ。
梅田駅愛善旗をば振りかざし宣使まめ人数多見送る。
内藤正照翁や真柱氏神戸駅迄同車し見送る。
神崎駅構内に植ゑ付けて楓木苗新緑萌え居り。
紫雲英花短冊如長方形に田面にちらちら並べられたり。
煙突は林如く群れ立ちて黒龍天に躍る津国。
近くなり遠く鳴尾岡天橋如長く続ける。
欲深き人信ずる西宮蛭子駅に月吾かな。
二株ポプラ繁み町中に風にゆられて高く舞ふ見ゆ。
西宮蛭子森は神さびて苔むす老樹新葉かざれり。
大阪ゆ神戸へ見送る宣伝使十二柱と聞くぞ床しき。
何人家かは知らず紅かなめ屋敷周りに赤々と照る。
芦屋駅南方に瀬戸海波も静かによこたはる見ゆ。
住吉里かは知らねど余りにも黒き家み並ぶ駅かな。
住吉里も生存競争疲れにいたくさびれけるかな。
取りかこむ枳殻生垣白々と花まさかりて香り目出度き。
駅来りて見れば摂津灘浮べる船ま近く眼に入る。
宮駅に宣使やまめ人うごなはりつつ吾を出迎ふ。
宣伝使まめ人多く同車して神戸駅に見送りにけり。
神戸駅降れば京谷分所次長車待たせて準備なしあり。

 五月六日午後五時といふに、神戸花隈町瑞祥会分所に入りぬ。古き新しきまめ人あまた吾車あとを追ひて、続々と分所に集まり来る。
 今日出帆は午後七時半と聞きしより夕飯を饗応さる。腹すきたる加減にてもあるか非常に味好く頂く。京谷主人心を籠めて造りたる温袍綿入れにて重く又あつ苦し。神前祝詞奏上終りて満堂宣使まめ人等に送られ波止場に到る。
 船は一千三百二十噸浦戸丸なり。乗船正に六時五十分、見送り人々休息所に入り来り四方山話に三十分間を費やす。出帆警笛に見送る人々船を下り行く。王仁一行甲板に立ち現はれ、数十條テープを投げ付ける。人々争ひて手にす。御田村主事補、北村道院副統掌、京谷分所次長、内藤分所長等重要部員を始め、数多宣使歓呼して見送る。船は桟橋を悠々として離れ行く。港灯は累々幾千となく輝きて最と壮観なり。

浦戸丸休息室に宣伝使まめ人来り快談をなす。
午後七時三十分を限りとし吾る船はともづなを解く。
光善と一等室に安座して月照る海を渡る今日かな。
高知市新聞社記者船中に吾一行を訪ひ来りけり。
船窓を開きて海灯を見れば天橋如伊渡りかがやく。
満月は二等室内調べんと吟月伴ひ立ち出でて行く。
大空は雲断片往き来して星影さへ見えつかくれつ。

 夜八時三十分甲板に立てば、海風強く肌寒し。折から東山を抜け出でしまん丸き月かげに、海面一時に明かくなり、波うねりさへ面白く見え初めたり。

甲板に立ち出で風に立ち居れば海原明かして月は昇りぬ。
右手窓開きて見れば浪高くほかに浮ぶ島山影。
阿波鳴門沖を通れば月さえて波穏かに風だにもなし。
今日歌や日記を悉く生一清子に記さしめたり。

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