文献名1二名日記
文献名2よみ(新仮名遣い)
文献名35月12日 於徳島分所よみ(新仮名遣い)
著者月の家(出口王仁三郎)
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データ最終更新日2018-08-19 19:22:56
ページ60
目次メモ
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本文
朝晴れの初夏の御空にいと清き巡礼の歌流るる町かな。
新らしき湯殿に入りて心身の垢を清めて顔を剃りけり。
○大阪毎日新聞社徳島支社の記者に書きて与へし歌一首
大歩危や小歩危の渓の景見下しつ空行く車の風に似しかな。
毎日紙記者写真班来訪し吾小照をとりて帰れり。
今日一日の休養にて日記の種もなく訪問者の応接や揮毫を為し、夕刻より又もや例の恋の歌など七十五六首詠みて笑ひ興じつつ、可借五月十二日の日を潰したるこそ是非なけれ。
旅立たす君の面影夢に見て眼さませば家鶏のひたなく。
千重の波越えて渡らす君の辺に夜な夜な通よ我恋ふる魂。
君ゆきて淋しくなりぬ天恩郷家鶏なく声もかなしげに聞ゆ。
初夏の空松のみどりは茂れども君まさぬ夜は淋しかりけり。
温室の花もしをれて見ゆるかな汝まさぬ日の初夏の夕暮。
朝顔の苗植ゑ付けて思ふかなはかなき恋をあさる我身は。
萩の家の桜はすでに葉となりて南郷の森にふくろふの鳴く。
ふくろふの声もどよみて聞えけり遠きにゐます君思ふ夜は。
キャラモンの花を競へる土佐の国へ渡らすきみのうらめしきかな。
水仙の花も桜の咲く頃はみかへる人もなき世なりけり。
チユーリツプ花の盛りをよそにして君は他郷の花を見るかな。
ヒヤシンス文机にさして思ふかなあるかなきかの花の色香を。
一人居の萩の家方の姥桜風に吹かれつ雨にそぼちつ。
老いぬれどやはり桜は桜かな春さり来れば花の香ぞする。
ギンナンの扇の下にたたずみて二名の島の空に涙す。
天恩郷物言ふ花に目もくれず二名の島の花に逢ふきみ。
キャラモンの淵叢地たる土佐の国旅立つきみの足早きかな。
春の夜は短きものと人云へど君まさぬ夜の明けがたきかな。
五年を待たんと云ひし人あれど君まさぬ日の長くもあるかな。
神様をうらみてなげく春の夜の短き命きみの手にあり。
吾涙天に上りて雨となり恋しききみの袖をぬらしつ。
心多き君をし恋ひて朝夕に衣の袖に涙をしぼる。
大神もせつなき心をくみますか御空曇りて雨しきりなり。
吾終に時鳥とはなりにけり曇る心の五月雨の空。
新緑の初夏の凉しき風さへも君ゐまさずて物憂かりけり。
吾恋ふる心の君に通ひなば日に幾度のたよりたまはむ。
終日に君のおとづれ待ち兼て見上る空に五月雨の降る。
吾恋ふる君の此世にゐまさずば梅桃桜も見る心地せず。
花は咲けど鳥は唄へど君なくば根底の国の心地こそすれ。
神集殿躑躅の花の真盛りにゐまさぬ君の偲ばるるかな。
君恋ふる我心根も白家鶏の出でゆく路にたわけごとする。
吾胸にもゆる焰のひろがりて神集殿に雨けぶるなり。
荒浪の立ちさわぐなる鳴戸灘安く行きませ吾恋ふる君。
鳴戸灘も安々越えて土佐の国に渡りませしと聞くぞ嬉しき。
海山を遠くへだてて土佐の国に渡らすきみの安きを祈る。
君思ふ心の半ばも通ひなば我が衣手はぬれざらましを。
朝夕に神の御前にひれ伏して君の安否を祈りてぞ泣く。
代筆の文のたよりはみながらも君のみ筆のなきぞ淋しき。
風吹けば君をし思ひ雨降らば涙に袖をぬらす吾かな。
飛行機のたよりありせば空高く君がみもとに通はむとぞ思ふ。
吾姿月にうつして君がます阿波の空よりのぞかんとぞ思ふ。
小夜更けて清けき月をうち仰ぎ君が面がもと偲びけるかな。
心にもあらぬ恋歌詠みゆけばほほゑみ乍ら吟月顔みる。
天命を知る年頃の身をもつて恋歌を詠む吾ぞおかしき。
キャラモンの多き二名の島にきて若やぎにけん恋の歌よむ。
あてもなき恋の歌よむ吾身にも綾部の空のしたはるるかな。
天恩郷花色々とあり乍ら綾の高天の花にはしかず。
一夜の嵐に散りゆく桜より綾のみそのの梅ぞ恋しき。
地の上の総ての花に弥まして香り床しき天恩の花。
天恩郷花にもまさる白梅の香りは高し綾の神園。
我が君は教へ司のみともして二名の島に雄たけびますらむ。
四ノ尾の山時鳥心あらば吾面やつれ君に知らせよ。
月見町三筋の糸の耳に入り二名にゐます君思ふかな。
南国の初夏の暑さに汗しぼり雄たけぶ君の偲ばるるかな。
言霊のいくさに出でます君の辺に吾たましひの通はざらめや。
神ゐます綾の高天に吹く風を君がみもとに送らまほしけれ。
小夜衣 打ち眺めつつ涙して君のみかげを偲びぬるかな。
くつろがむすべさへも無き洋服の君の旅立ち苦しかるらむ。
五月暗晴らして上る月光は君を偲ぶの吾魂と知れ。
膝坊主かかへて眠る初夏の夜主ゐまさねば蚊にも食はさじ。
旅立たす君を案じて朝夕に拝がみまつる大本の神。
時鳥来なく上野の侘び住居一人寝ぬるも君の御為。
四ノ尾の山のあなたは二名島君ます空を仰ぐ夕暮。
吾宿の垣根の菖蒲咲きにけり早帰りませ花散らぬ間に。
庭の面のつつじの花は咲き満ちぬ君に見せたし神に生きたし。
かりごもの乱れたる世を救むと神の大道に進む君はも。
吾庵の垣根に匂ふ卯の花の白きは君の心なるらむ。
から魂は二名の島にあり乍ら心は綾の空にさまよふ。
二名島鯉をあさりて腰さへも鮒々鰻となりにけるかな。
キャラモンの阿波讃岐にや土佐も空伊予伊予雨となりにけるかな。
三角や四角五角の恋愛になやむ男の子のふがひなきかな。
恋愛も六十四角となるならば円満具足物言ひもなし。
日月の光も暗く見ゆるまで眼曇りぬ君を思ひて。
白雲のただよふ愛宕の峰を見て君があたりの偲びてもみる。
知らぬ間に五日十日とたちにけり君に心を朝夕ひかれて。
キャラモンや美少年等にたすけられ天国の花偲ぶ吾かな。
恋の歌オキャンナイスに筆とらせ汗しぼりけり初夏の夕暮。
たはむれに恋歌詠むと書きそへて猶うたがひの重なる吾かな。
家鶏 烏 梵鐘 時計を世に無くし月日忘れてスキと寝ねたし。
花明山や綾の聖地の某女史に代りてよめる恋の歌かな。
吾妹を思ひてよめる国風も中に三つ四つ混りてありけり。
新紙記者国粋会員来訪し吾筆蹟を請ひて帰れり。
徳島市分所や支部に与へんと半切洋紙に揮毫せしかな。
黄昏て神の御前に宣信等分所昇格祭を行ふ。
何となく風暖かく夜に入りて三つ四つ五つ蚊の立ち舞ひけり。
自動車と汽車行く音のかしましく夢おどろかす仮の宿かな。
鳴球氏拝礼すみて信徒に大本法話伝へけるかな。