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文献名1二名日記
文献名2よみ(新仮名遣い)
文献名35月15日 於徳島中央支部よみ(新仮名遣い)
著者家(出口王仁三郎)
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2018-08-19 19:25:30
ページ104 目次メモ
OBC B117500c11
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本文  朝空は曇りたれども、夜来雨は降り止みて庭面に風凉しく、橘香清く心胆を洗ふ。暁告ぐる鵲声、家雞叫び、雨を帯びし梟濁りて重き声、嫩葉を含みし郭公老鶯囀り、行々子や、村雀声楽を一斉に揃へて、朝寝坊閑楽を揺り起さんと総攻撃を開始せるも如し。起きて庭園に出づれば花橘袖に匂ひて、忽ち眼をさまし心を慰む。嗚呼こ仙境も半日後には立ち去るべき運命にある吾、惜みても猶余りありけり。

百鳥声に眼さめて起き上り心ゆくまで花香に酔ふ。
大空は曇れど雨はふり止みて花香清き庭面かな。
湯を上り側ら見れば木苺黄金色に実りて吾待つ。
産土社に宣伝使吾代参と詣でてぞ行く。

 ○明光社第二十三回冠句

浮かれだし  薬缶がステテコ踊つてる
仝      木芽三寸後家
仝      夢中暗雲で踊つてる
仝      思はず脱線する茶瓶
仝      息子に意見されてゐる
しんしん  志士があつまる三五教
仝      教理を開く三五教
仝      強い家には闇が無い
仝      功徳に由つて家は無事
しんしん  光に充つる月
仝      光を放つ月
仝      石で固めた月宮台
仝      光は月御精霊
仝      身魂あつめた大本教
仝      力は石より猶堅い
仝      花咲き匂ふ月法城
仝      科学は世界を闇となし


あした餓鬼顔見り   笑ひ顔
病める身も神を思いて    笑ひ顔
パスしたと思つた刹那   仝
細目して一寸うつむき    仝
一寸見て意味深長な     仝
済南城占領後兵      仝

 午後零時三十分三台自動車にて横瀬栲機支部長に案内され景勝地を去る事とはなりぬ。吾一行を送らんと打ち上ぐる煙火は天に響きて自ら壮快気分ただよふ。勝浦川清流に沿ひ初夏凉風に面を吹かせつつ小津森淵蛇勝地にかかる。後列自動車影見えぬまま下車して淵辺に降り碧潭を探る蛇枕は砂利枕となりて深淵中に横たはり、伝説主人公然と千古謎を語り続けてゐる。伝え言ふ対岸村長所用ありて他行より帰る時、大雨為に河水氾濫し、激流怒濤渦巻きて家に帰らん術無く路傍に彷徨ひ居たるに、其家下婢突然何処よりとも無く現はれ来りて云ふやう、斯る大水に河を渡らんこと甚だ危険なり。婢幸ひに幼時より水練妙を得たれば、主人を彼岸に渡し申さん願はくば瞑目して我背に寄らせ玉へといふ。主人は打喜び、何気なく下婢背に負はれ七分斗りも河水を渡りし時、余り不思議さに、約に背きて眼を開きたるに、巨大なる大蛇なりければ、大に驚きたれども終に其儘対岸に無事渡り終へたり。そ時下婢は涙を流して曰ふ。大恩ある主人なれども、醜き吾姿を看破されたる上は、一日も主家に現在まま仕へまつる事叶はず。故に妾は木津森淵にながく潜みて主家を守るべし。妾霊生きて現世にある間は、深淵砂島は如何なる大水にも失せざるべしと遺言し、其まま下婢は水泡となつて消え失せたるが、今に其砂島、所謂蛇枕は依然として深淵中に現存せりとて、里人は是を永久謎として伝へ居れりと云ふ。
 吾も今回態々車を降りてそ枕を実地に視察し、称不思議感に打たれたり。帰途阿波三山称ある日峰、中津峰、津峰を遥見せしに余り高からぬ丘陵なれども、何となく床しさ湧く山にぞある。生稲村字沼江と多家良村字長桎中間渓川絶壁は昔より犬帰り、猿帰りと云へる危険通路なりしを今は開拓され、自動車、馬車容易に通ひ得る事となれり。一行は漸く午後二時徳島市公園、猪津山麓なる公会堂滴翠閣に安着し、少憩後一同記念小照を撮り、直ちに中央支部長案内にて出来島本町支部に入り休憩す。栗原白嶺、岩田鳴球両宣伝使は三時より会堂に聴衆を集めて、斯道為大獅子吼する事となりぬ。阿波各地支部長も加はりて斡旋労を取らる。市中老若男女たち王仁来会と聞きて次々に集まり来たり、不審眼を開きて凝視するさま、何と無く物愧かしき心地こそすれ。

やりきれぬ  昼夜不断サデスムス
仝      貧乏世帯に餓鬼一打
仝      高いおろけ聞かされて
仝      と言つて投げ出す卑怯者
仝      筈が無いにやりきらぬ
仝      日に三回貝料理
やりきれぬ  いやな晩でも若燕
仝      日に三回無心状
仝      操を人に貸す女房
仝      酒飲おやぢ博奕打ち
仝      蘇鉄地獄離れ嶋
仝      おやぢも息子も廓通ひ


栲機支部を昼すぎ立ち出でて徳島さして急ぐ今日かな。
打上げ煙火に一行送られて勝浦堤を馳せ行く凉しさ。
一時間半を要して七里路越えて徳島公園に着く。

 ○明光社第二十三回冠短句

題 星都

星  腕利き議長
仝  薬屋親玉
都  地嶽生き移し
仝  八衢もあり地獄もあり
仝  無角鬼が住む
星  太白星が一等
仝  月神守備兵
星  煙火大部分
仝  公会堂は銀河
仝  梅雨時晴衣
仝  眼球を包む雲
仝  黒姫定紋
仝  飴屋商標
都  日本魂墓穴
仝  憧憬
仝  人間を小さくし
都  煙と埃グラウンド
仝  車八衢
仝  火造り主
仝  共産主義養成所
仝  塵捨場
仝  国潰し溜池


午後六時滴翠閣講演を終りて両氏支部に来れり。
聴衆は約五百人柔順に講演ききしと信徒報じぬ。
灰色雲大空をふさぎつつ吹き来る風肌寒き今日。

 今日小半日徳島市中央支部に休養し、徒然余り又もや副守作になる恋歌をたはむれに書き綴るになむ。あなあやしくあほらしく。

 ○たはむれに詠める

思はざる人に思ひを懸けられて思ひ返さむ術なき旅かな。
愛らしきアア其瞳そ微笑見る吾生命に伸縮あり。
吾生命伸縮自在に為す君は神化身か魔神化生か。
打ち守る君が優しき面ざしに吾魂は溶け入りにけり。
汝御手触るる度毎心臓皷動高まる苦しさ。
天地に只一人なる君面に迷ひぬるかな大丈夫身も。
村肝心は闇となりにけり君が瞳にまなこ眩みて。
儘ならぬ浮世状ぞ悲しけれ恋人残して帰り行く吾。
親よりも子よりも増して恋しきは我思ふ君俤なりけり。
生命まで俱に死せんと誓ひたる恋人今は人妻となる。
短かき夢手枕を外して笑ふ暁烏かな。
人生に恋てふ花咲かざれば人は残らず鬼畜とならむ。
生れし子恋しき君に似通ふはわがたましひ誇りなりけり。
なよ竹優しき君葉は吾を射照らす光なりけり。
吾思ふ人に言葉をかけられて今業平よと自惚て見し。
くろがねも熔けん斗りに胸燃えさかりけり君恋ふ吾は。
名人画より抜け出し如くなる君姿に憧憬て泣く。
君恋ふる心あかして岩躑躅から紅にもゆる思ひは。
もろこし野に戦ひし身乍らも恋には弱き吾にぞありける。
蒙古人数多引き連れ戦ひしわれにも恋悩みありけり。
深刻な恋歌よめば某宣使体験なくては出来ぬと疑ふ。
吉野川清き流れ底に住む魚さへ恋に生命奪はる。
山や野に唄ふ小鳥も雌を恋ひ声を競ひて泣く世なりけり。
其昔能はぬ恋とあきらめし人に恋はるる身とぞなりけり。
花匂ひ月は澄めども思ふ人影見ぬ園は寂しきもかな。


珍らしき吉野清き瀬を妹に見せたく思ふ旅かな。
新緑もえ立つ眉山風光は平和女神姿ぞと思ふ。
山河も一入清き阿波穏かなるかな。


眺むれば眼さむる眉山あしたかな。
蜂須賀城趾や万花園となり。
新緑を戦がせて行くや初夏風。
晴れ渡る二名朝や風薫り。


神前夕べ拝礼相済みて宣使まめ人宣伝歌宣る。
集まれる信徒たちに鳴球氏吾歌日記読みて聴かせり。
和歌冠句合せて百首作りけり今日一日閑を塞ぎて。

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