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文献名1出口王仁三郎全集 第7巻 歌集
文献名2巻中よみ(新仮名遣い)
文献名3昭和八年(百十五首)よみ(新仮名遣い)
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
ページ477 目次メモ
OBC B121807c08
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本文の文字数3075
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本文    朝
空ほと明けそめて二見浦に千鳥なくなり
奥雲あなたを紫にそめて朝日はぼり初めたり
どかなる姿なるかも新年海原てらす朝津日かげ
新年朝こぎゆく漁り海女小舟もしめかざりせり
回天ぞみに生きて新年海辺に立てば昇る朝津日
漁り舟あなたこなたにうかびたる朝静かなるかも
立山は雲につつまれ風なぎて波しづかなる日本海
朝津日生るる如くうなばらしづけき心われはもたばや
どかなる春うな原よ波あなたはほ明りつつ

   新春歌日記
新年陽は玻璃窓をてらせども風つめたき高殿あさ
回天ぞみに生きて新年晴れたる今日を高殿に居る
新年二日しづもりに風さむざむと雪ふりきたる
台中贈りしポンカンかをりしたしきあさ鶴山
朝晴れ三日をたづね来る人多くしてせはしき高殿
せんきゅうかをり床しき薬湯にひたりて明るき窓にさす月
鴬もひばりも鳴かぬ新春をすがしくうたふ朝家鶏どり
とこしへ命もかもと湯ケ島温泉こひしくなりまさる春
鶴山みろく亭よりハンカチフふりてわがゆく汽車見送れり
すみとほるみ空奥にきらめける霜夜かげはさみしも
よみがへりたる心地して春立つ今日は楽しかりけり
なき庭おもてに赤あかと南天てれる雪ばれ
朝戸出面みれば風さむみ下駄あと薄氷せり
常磐木日日にさかゆる神苑にわれ更生春を楽しむ
新年今日一日もくれむとすつぎつぎ訪ひくる客と語りて
色ひややかなれど春なれやわが庭面に蕗とうもゆ
新建離れ座敷窓あけて濠にながるる春をしたしむ
久方大空けふも晴れにつつこ初春かぜつめたき
樹樹ふくらみ見えて初春くぬぎ林に雨しとどふる
おもむろに春さりにつつ菊畑きくわかめは萌えそめにけり
国国ゆ送りきたりし国魂石を宝座にすゑてすがしき
朝津日は雲間ぞきて高殿庭吹く風はさむからぬかな
庭木木かげを障子に描きつつ山に落ちちたり夕津日あかるく
玻璃戸ごしに庭におく霜ながめつつ朝湯に入るこころすがしき
雪しまくあした庭に犬音さみしく餌をさがしをり
はるばると友おくりしからすみを焼きつつ庭雪をしたしむ
萬祥殿敷地つくると土工らがトロ押してをり朝まだきより
向つ山けぶるとみれば間もあらずわが庭面に吹雪おそへり
高殿広庭晴れて雀子声さわやかに朝日ぼれリ
大雪名残りとどめて庭梢は折れさかれをり
陰暦正月二日となりにけり雪はつめども春ごこちして

   朝太陽
新年太陽が高殿独居を朗かにする
何か大なる使命が私にぶつかるやうな新年感じ
青畳かをる新居にさす春どかな太陽
ボンカンかをりが夕ベを朗かにする応接室
高殿にひとり雨をきく夜半、しきりにこひしいもがある
知らぬまに両手を組む癖ついた私、いつも叱られてゐるやうな恰好で
言ひたいだけ言ひはなつたあとで軽い悔い心にせめられてゐる
日溜りに咲いてゐるさみしい水仙花がいとしくなる冬
稲荷山長蛇やうな電燈に亀岡町民迷信がまたたいてゐる
オリオン星座が頭上にかがやいて凍てはじめた雨後

   梅二題

     一
教御祖永久にしづまる奥都城に春待ちかねてにほふ白梅
白梅月に匂へるすがしさを教御租御教にみるかな

     庭
夕月かげは清しも庭面ににほへる梅影を描けり
かげ寒き月は小池水面に小揺ぎにつつ梅かをるなり

   女と純情
一点曇り無き青空を見ながら彼女純情さを感謝してゐる
純情だからおこりもしすねもするだ、彼女がいとしくなる
はづかしさうに伏目がちに黙黙坐つてゐる彼女心を床しんでみる
なんとなく頭重い今日を夕べ梵鐘がうなる
青切符に鋏を入れてゆく車掌削つたやうな背なが寂しい

   湯ケ島春(一)
天城嶺いただきに雪みえながら麓村は梅さかりなり
もうもうと向つ岸辺に立ちぼる温泉けむりを朝窓にみる
神苑さかりを草まくら旅やどりにをしみつつゐる
しんしんとふりつむ雪をみながらに歌よみをれば膝ひゆるも
朝まけて雪ふりしきり湯ケ島温泉湯も少しくぬるめり
四方山木木雪とけぬ面ほてるまで暖かき陽に
向つ岩湯口を上る湯げむりますぐにたちて陽はうららなり
玻璃窓うちにしあれば春陽は雪にかがよひまぶしかりけり
ぼりゆく天城山は風さむし麓里に梅は匂へど
ほんりと霞奥にうかびたる三原山に煙たちたつ
松陰が英魂永久に残れるかこ柿崎浪にこゑあり
しろじろと湯煙たつ峰温泉里にしつけば春暖かき
あたり山に雪なく松青くみるから春心地せりけり
風つよき天城中腹によき田並べる里めづらしも
天城山尾根はれにつつ湯ケ島温泉陽はうららなり
天城嶺谷間に雪は見えながら春陽ぬきとき湯ケ島
内外事多くして湯に遊ぶ吾は忙しく心落ち居ず

   湯ケ島春(二)
はつきりと明けきつた宿朝、釜石山残雪がプラチナやうに光る
天恩郷に帰るべき日が近づいて心いらだたしい湯ケ島二月
裸木梢が水つぽくなつて漸く春が来たといふ感じ
朝露に光る厚つぽい葉かげから可憐な紅椿花がぞいてゐる
春風に乗つて来る向つ山辺木樵話し声
山頂に孤立してゐる随昌山望楼があはれつぽくなる二月天城
連盟脱退、聞くさへ溜飲下る日本二月
宵闇街路を放尿しながらゆく人黒い影
裸木梢にひつかかつてゐるオリオン

     千本松原
太平洋吹き来る風にもまれたる千本松原松はさびたり
枝ぶり淋しき千本松原に海ふく風荒きをおもへり

   旅中詠
白梅匂へる野辺をみやりつつ吾が行く汽車窓あたたかき
限り尾張平野はぼんやりと靄こめにつつ風あたたかき
向つ山松下陰に瓦屋ありて日は暮れ残る
(以上三首 車中詠)
ぼんやりと遠み空に富士ケ嶺は浮き出でにつつ春がすみせり
見はるかす段段畑上にほかに霞む雪富士ケ嶺
富士ケ嶺雪を照らして弓張月は静かにかたむきにけり
夕映え美はしさ見つつ梅咲く庭を歩めり
電燈を消せば障子にかげさしぬ月かたむきて小夜更けにけむ
(以上二首 静岡にて)
春雨は漸くはれて玉石村白く陽にかがよへり
東海記念とひろひたる玉川原石はめづらし
(以上二首 玉川に遊びて)
早春陽は波上にきらめきて今日舟出どかなるかな
内浦や船上にみる不二ケ嶺はいよいよ清しくいよいよたかし
海原に陽はかがやけど肌さむみ船障子をとぢて語らふ
(以上三首 竜宮丸船中)
如月旅は楽しもわがいゆく山むら野むら梅みにして
春ながら夜は炬燵を入れてぬるわれは漸く老いさびにけむ

   春
松ケ枝にかかれる月清しさを見あかなくて庭にたたずむ
ぼけ花赤あか匂ふ夕暮おもては暮れなづむなり

   たはむれに
わが袖にひかりておつる汝が君涙にこもる生命たふとし
故しらぬ涙しみじみわきにけりしばしわかれむ君すがたに
真夜中に戸を叩くさへもはばかりて霜降る夜半を庭に佇む
君ゆゑにわれはかなしく君ゆゑにわれは楽しく世に生くるなり
価なきつつしみなりとは知りながら今日わが身ままならぬかな
陳腐なる旧道徳にしばられて虚偽世界に生くる苦しさ

   をりをり
村肝心小さくねじけたる人を歌人といふは淋しき
ひさびさに友と語りてうつしよさまに心はひきしまりたり
政変うはさ日に日に高まりて神苑松に風うなるなり
をちこち知り人らともすればわが世心をひたに議ゆも
轍をふまずわれはただ天津御祖道をゆくなり
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