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文献名1出口王仁三郎全集 第8巻 わが半生
文献名2【上巻】故郷弐拾八年よみ(新仮名遣い)
文献名3満俺鉄よみ(新仮名遣い)
著者出口王仁三郎
概要
備考『霧海』p41-50。マンガン鉱を本文内では「満俺礦」(新字体では「砿」)と表記しているが、題名では「満俺鐵」(新字体では「鉄」)と表記している(目次も同じ)。
タグ データ凡例 データ最終更新日2023-11-03 17:09:09
ページ115 目次メモ
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本文 ─二十五歳頃─

満俺砿さぐらむとして南桑田船井両郡山かけまはる
赤禿山よぢぼり黒き岩を鑿にてかきとり満俺とよろこぶ
朝夕を山かけめぐり手や足にかすり傷してなほ倦まざりき
喜楽は如何かしてゐると村上信夫氏あやしみて問ふ
満俺砿みつけて一つ金儲けするといへば村上氏うなづく
喜楽さん俺も一緒に行かうよと欲にとぼけた村上氏いふ
村上氏ともなひ握飯もちてあたり山山かけめぐりたり
船岡に満俺砿が出るとききて妙霊教会うらなひを乞ふ
わが叔父主管してゐる教会は満俺出ると神示なりけり
満俺が出ると神示に両人はちからづよくも山かけめぐる
断岸をいふみはづして村上氏数十間谷底に落つ
村上氏落ちたるさまに驚きてわれも谷間にかけ下りけり
かけ下るはづみにあわて尻もちを尖りし石に幾度かつきぬ
石くれに尻を傷つきちがちがとゐざるが如く渓間に下りゆく
よく見れば村上信夫氏谷底にほほ笑みながら休らひてをり
別状はないかと問へば村上氏身軽おかげで怪我なしといふ
断岸ゆ落ちし村上怪我もせずわれはかへりて尻を傷つく
傷次第次第に腫れあがり歩みもならず痛むくるしさ
谷底にわれはうごめき村上氏は救援たむと叔父家にゆく
三十町山路をたどる村上氏短き足はかどらぬかな
村上氏去りたるあと淋しさを地獄に落ちし心地なりけり
待てどまてど村上来らず救援人声もなく夜は更けわたる
村上氏叔父家にも知らさずに馬鹿らしいとて家に帰れり
約五里夜道を村上てくてくと知らぬ顔して穴太に帰る
待てどまてど人来らぬかなしさに泣きわめく声谷に谺す
やむを得ず数十町谷路を川辺道路にはひ出したり
    ○
薪つみてゆく車あり朝あけをわれ木かげより呼びとめてみし
呼びとめし男は驚きふり返りわが顔眺めてあつと叫べり
よくみれば従兄弟佐野倉吉と知りしうれしさ涙こぼるる
わが従兄弟道かたへに車おきて叔父やかたに負ひてゆきけり
わが叔父妙霊教会にこもらひて負傷平癒日夜に祈る
やや少し痛みとまればいらだちて杖つきながら帰り路につく
五里道帰りてみれば足腫れて十日余りもうち伏しにけり
わが足病なほりし夕暮を村上方へたづね行きけり
喜楽さんお前は狐か奴狸か年寄りわしをだましたと怒る
あまりにも腹立つままに谷底に捨て帰りしと村上氏答ふ
お前こそ友負傷を知らぬがに不人情よとわれはなじれり
みせしめために谷間に捨ておいて帰つてやつたと無茶ばかり言ふ
不足いふつもりで村上訪ぬれば逆襲されてギヤフンとなりぬ
満俺失敗ばなし村中に村上口よりひろまりにけり
村びとはわれを満さん満さんとあざけり半分あだ名つけたり
貧乏になやみしわれは千金を一獲せむとて尻をわりたり
満俺はいふも更なり金銀砿そ後はさがす気にもなれなく
わが友和一来りてまた山へ満俺さがしに行こかとからかふ
満俺といはれる度にはづかしく顔あからめてうつむきにけり
ありもせぬ金を使ひて山かけり遂には尻に傷をうけたり
教会神示もあたらずいたづらに山をかけりて怪我したる
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