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文献名1出口王仁三郎全集 第8巻 わが半生
文献名2【上巻】故郷弐拾八年よみ(新仮名遣い)
文献名3留守よみ(新仮名遣い)
著者出口王仁三郎
概要
備考『故山夢』p242-246
タグ データ凡例 データ最終更新日2023-11-05 12:06:24
ページ130 目次メモ
OBC B121808c59
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本文 ─二十五六歳頃─

何ごとも知らぬと云へば彼女白ばくれなと吾が背をたたけり
眉目清秀立派な貴方は青年よ娘が好くも無理ないとわらふ
わたしこそ三十七で未亡人なれど遺産でやすしとかたる
立派なる青年なりとて無財産人にはやれぬと切り出す母親
農村或る富豪に結婚約束あれば切れてくれと言ふ
言葉にあきれしばし間ただうつむきて黙しゐにけり
うつむきて黙してあれば故知らぬ涙腮辺にぼとぼとつたふ
母親は泣いてゐますか気よわい貴方は男と吾が涙拭く
慇懃な彼女みごとそむくすベなく三行半かく
離縁状ふところにしてこ女いそいそ帰る姿うらめし
    ○
富豪農家に牛乳配りゆけば彼女はそこに嫁ぎてありけり
家人等は五月田に行きて只一人彼女は留守を守りてありけり
牛乳は虫が好かねど恋ひ慕ふ君に逢ひたさ牛乳取ると女いふ
三合牛乳呑んだかほをして小便壷に捨てるといひけり
蟷螂やうな醜男を夫に持ちこ世がいやになりしとて泣く
から国果ても厭はず吾を連れて逃げてくれよと駄駄こね困らす
なにごとも因縁づくとあきらめて辛抱すれば時来るとさとす
なつかしい貴方お顔を見た上は半時辛抱も出来ぬとて泣く
青春血潮にもゆるわが身には彼が言葉にほだされて泣きぬ
泣きつかれくどかれしそたまゆらを吾が生命さへやりたく思へり
わきたつる胸血潮をおししづめ声くもらせて彼女をなぐさむ
生命恋を捨てし身はまたもや事業に心ひかるる
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