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文献名1幼ながたり
文献名2幼ながたりよみ(新仮名遣い)
文献名37 奉公よみ(新仮名遣い)
著者出口澄子
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
ページ 目次メモ
OBC B124900c09
本文のヒット件数全 88 件/ノ=88
本文の文字数1877
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本文  私は七才時に福知山へ奉公に行くことになりました。福知山へは綾部から三里半もあるで、母さんは私を福知山までつれて行けば一日仕事を休まねばならぬで、私行先を手紙に代書してもらわれて、そ手紙を私手首にくくりつけて下さいました。
 「これを持ってな、おすみや、八幡さま馬場を通ってずっと行くと、福知へ着くからな。おすみや、かわいそうなけど元気で行っておくれよ。こ手紙をな、人に出会うたんびに見せるんじゃよ」と言われました。私は「ハイ」と言って、一人で福知をさして出掛けました。鳥ガ坪あたりまで行くと、女人に会いましたで「おばさん、これ読んでおくれいな」と母が手首にくくって下された手紙を見せると、それを読んで、「あゝ分かった、わしも福知へ行くからな、一緒に行こうかいな。まあこんな小さい児をやる親もやる親じゃが、行く子も行く子じゃ」と言いながら、しばらく私顔をぞき込むように見ていました。
 こ人は、おたつさんと言うてそころ綾部でまからず屋という小間物店をひらいて、後には綾部一という繁昌した店奥さんでありました。そ時背中に荷を負うて仕入れに行かれるでしたで、福知入口まで一緒に連れて行ってくれました。福知町へ入ると、手紙を見せながら伯父さんところへやっと行きつきました。それから伯父さん世話で、どこかは忘れましたが子守に行きました。こ時はまだ間に合わなかったんですやろう、すぐ帰って来たように思います。
 おなじ七ツ年に、もう一度福知へ奉公に行きました。新町政さんという米屋でした。そこで夏中を子守り奉公をして帰りにお仕着せ単衣物一枚もらって帰りましたことを、それが初めてこととて嬉しかったで、よく覚えております。昔は食べさしてもらえば給金というもはなく、盆と正月に前掛か着物をもらうことがあるくらいでした。ある時そこ奥さんが芝居見に行かれるに連れられました。そ頃私はまだ芝居面白さが分かりませんで、眠りこんでしまって、フッと眠が覚めて気が付いてみると、真暗がり芝居小屋中に、私は一人で寝ていました。それからびっくりして、あっちへひょろひょろ、こっちへひょろひょろと、どうしたら此処から出られるかと手さぐりで探し廻ってどうなりこうなり外へ出ることが出来ました。そうして夜更け町を歩いて米屋戸をたたきました。そとき奥さんが戸をあけて「眼が覚めたんかい、眠っていたからおいて帰ったや」と言われたが、そ言葉どこか冷たいもがどきんときて、私は奉公勤めさびしさを思ったことを憶えています。昔人は気強いことをしたもです。米屋お内儀さんは優しさない人でしたが、こ人にはあまり良いことはおきなかったようです。
 私が子守りをさせられていた子には、手ところに家鴨水かきようなもがありました。私がおんぶして外に出て行くと、町人が寄って来てしつっこく「おすみさん、そ手を見せてくれい」と繃帯してあるを解いて見るでした。米屋お内儀さんは、そ後、米屋を離縁になり、和知へ二度目嫁入りに行きました。後になって私が先生(出口王仁三郎師)と結婚して中村竹蔵さん所にいた頃、神様にお参りに来たことがありまして、そ時「あんたは小さい時、福知へ守りに行かれたことはありませんか」と問われたで「はい」と言って、よく見ますと福知米屋お内儀さんでした。そ時、「こんど生まれる子に、変な毛が一杯生えてるような気がして、恐ろしくなってお参りに来ました」と言っていました。
 私が福知で奉公をしていますある日ことでした。母さんが、私がどうしているだろうと心配されて、わざわざ出掛けてこられました。私は末子で可愛かったからでしょう。私はそ時は本当に嬉しくて、私はもう母さんをはなすまいとして、赤ちゃんを負ったまま母につきまとい、母さんが知らぬまに逃げられてはいかぬと思うて、母着物はしをつかんでいました。うんこしたい時も出来るだけ便所に行くも我慢して母さんについていました。
 私は母さんにさとされ、母と別れて、寂しいを我慢してやっと福知に思いとどまりました。母さんはそ頃から、すでにやさしいも言い中にもお力を持っておられました。
 私はそうちしばらくして家にかえりました。米屋忙がしいときがすみますと私は帰らねばなりませんでした。しかしこれからがいよいよわたし苦労はじまりであります。
  せせらぎ音なつかしも五十とせ前母に抱かれいねたる夜半
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