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文献名1幼ながたり
文献名2幼ながたりよみ(新仮名遣い)
文献名324 ねぐらよみ(新仮名遣い)
著者出口澄子
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
ページ 目次メモ
OBC B124900c26
本文のヒット件数全 62 件/ノ=62
本文の文字数1619
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本文  十六になって私にも帰ってゆく家が出来ました。教祖さまにお蔭をいただいた人達手で倉を手入れした、ささやかなお住まいが出来ていました。
 家がなくなったは確か九ツ時でありますから、七年も間、私達母子が一緒に暮らすことはなかったわけです。私は教祖さまと、こままズッと一緒に暮らせたら、どんなに幸せだろうと、どれほど念じたかわかりません。しかし私私市で患いもあっけなく癒り、再び奉公先に帰って行きました。
 すると、今度はへンナイという病気をわずらい、また綾部に帰って来ました。そしてこ時は西町鹿造ところで治療しました。病がいえて、もう一度私市で働きました、そ間、私市でこんなことがありました。
 私は昼間労働につかれ果て、灯ない真っ暗な部屋で、グッスリ寝込んでいました。ふと、人気配を感じて眼をさましますと、驚いたことには、枕元にうずくまってる人がいます。何か私を、うかがっている様子です。私は大声で怒鳴りつけ、そ男をひどい勢いで、なぐり倒してやりました。男はぎょう天して、腰でも抜かしたか、足が立たなくなったか、ごそごそと這いながら逃げてゆきました。これは、一緒に働いている、男衆リキさんという人でした。リキさんは平素は極く真面目な働きもでありまして、とてもそんなことをするような人柄には思われませんで意外に思っていましたが、当時、丹波には夜這いという悪習があたりまえことように行われたらしいです。
 山へ草刈りに行っておりますと、村若い者が、やって来て、
「ワシが草を刈ってやるからワシいうことを聞いてくれ」というですが「何いうとるやろ」と思っていただけでした。
 夜になりますと、村若い者が五、六人毎晩ように、私前にやって来て、何だか唄ったりオカシナ声を出して、おそくまで騒いでいました。それもなんことか分からずにおりましたが。
 私市からすっかり暇をもらい帰って来たは、たしか十七時でした。それから私は頼まれるままに、西町で髪結いをしていた、おしもさん手伝いや、綾部から二里程ある大原でお茶より仕事というように、あちら家、こちら家へ、四、五日ちょっとした手伝いから、二、三カ月から半年ぐらいずつ、年期奉公でなく、割りに気軽く手伝いに廻っておりました。
 そ頃、教祖さまは裏町家におられました。私が手伝いに行ってる先から時々帰って来たおりなど、教祖さまはよく、金神様を祀られた御神前に向かい、
「神様、あなた様は、私に“そ力になる者は、神が用意している”と、おっしゃります故、そかたがみえる時まで、あなた様と二人で此処に、こうしておりましょう」
といって、神様と問答されていたり、あるいはせっせと、お筆先を書いたりしておられました。そうしておられるうちに、こ裏町倉にお祀りしてある金神様にお参りに来る人が、ボツボツと出来て来たようです。私おぼえている人達でも、位田からは、おすみさんに、田中善一郎、村上清次郎、西原からは、文衛門に西原正太郎、鷹栖からは、四方平蔵、祐助、与平次、上谷からは四方春一、喜久衛門、おくまさん、村名は忘れましたが弥仙山に参る道筋に当る方角から木下慶太郎、地元綾部人では中村竹蔵、塩見じゅん、という人達がお参りに来ていました。
 中でも木下慶太郎という人は、教祖さまが殊外お気に入りで、後におりょうさんお婿さんになり、出口姓を名乗りました。
 一方新宮金光教大広間は、信者が寄らなくなり、とうとう一人もなくなって、足立さんは暮らしにも困りだし、弱々しげにときどき教祖さまところに無心に来ていました。そたびに教祖さまは快よくお米とか小遣いをあげておられたもでした。神様お気に入らず別れられた人でありますが、教祖さまが世話をしてあげられねば、誰もしてくれる人とてなかったもですから、可哀想に思われたであります。
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