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文献名1幼ながたり
文献名2思い出よみ(新仮名遣い)
文献名33 天眼通よみ(新仮名遣い)
著者出口澄子
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
ページ 目次メモ
OBC B124900c31
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本文の文字数1620
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本文  先生が、四方平蔵さんに迎えられて、裏町教祖さま許に来られたは、明治三十二年旧五月二十六日だということでありますが、私は大原お茶より手伝いから帰って、初めて先生が来ていられるを知ったでありまして、初夏頃という記憶しかありません。
 先生が綾部に来られますと、かねて教祖さま筆先で、「教祖さま神様を見分ける方である」と知らされていた信者さん達が、先生来られたことを聞き伝えて、次々と集って来るようになりました。それに平蔵さんが、先生すぐれた霊覚を目あたり見せられて驚嘆した話が拡がって、話を聞きに来る人がにわかに殖えて来ました。
 先生が大した霊覚者だという話は私も、当時平蔵さんから何度も聞かされました。そ話というは、平蔵さんが、先生を綾部に案内して来る途中、檜山にさしかかりますと、にわかに大雨になりましたで、樽屋という宿屋で一泊することになりました。翌日眼が醒めますと、雨はなお降りしきって、雷鳴さえも加わっております。平蔵さんが、
「これでは発てますまい」
とつぶやくと、先生はちょっと神様に伺われている様子でしたが、
「九時までには霽れるから、大丈夫出発できる」
と断言され、なお、平蔵さんに向かって、
「あんたは綾部だというておいでだが、あんた在るところは大変な山家で、家裏に綺麗な水が湧いている溜池がありますわ。池辺りは枝振り面白い小さな松木があり、そうして少し右前街道に沿うて小屋ようなもが見えて、そこには駄菓子店が出してあって、六十ぐらいお婆さんが店番をしているようじゃ」
と鷹栖村平蔵さん家を、目前に見ているように視透して話されるでした。平蔵さんはびっくりしてしまいましたが、教祖さまが、かねがね稲荷使いというようなことを極端に嫌っておられることを思い出し、
「あなたは稲荷さんを使われるではありませんか。教祖さまは稲荷さんは大嫌いでありますから、万一そんなことが判ったら、とんでもないことになりますゆえ、どうかそ魔法見たいなもだけは使わぬようにして下さい」
と申しますと、先生は、
「決して稲荷を使ったりするではない。これは天眼通といって、霊学一部である。あんたにこれくらいことが分からぬでは困る」と言われ、
「あんたにも一ペん見せて上げる」
と言われるで、平蔵さんは言われるまま、キチンと端座して両手を組み、目をふさいでいますと、先生が霊を送って、
「それ見なさい」といわれると、不思議にふさいだまま平蔵さん目に、一軒古い藁屋が見え、更に前横方にまた汚い家が一軒見えて、そこに美しい水湧き出る池が見えます。家裏には榧木や椋大木があり、細い綺麗な小川が道そばをチョロチョロと流れているが見えるです。平蔵さんは、ますます驚いて霊眼に見えた通りを話しますと、
「今は穴太家です。きれいな水湧いている池は久兵衛池といって、私家に祖先からずっと伝わっている池どす」と説明されるでした。
 平蔵さんは、すっかり感心してしまっていると、さすが大雷雨が、先生言われた通り九時になるとからりと晴れてしまいました。平蔵さんはすっかり度胆を抜かれたまま樽屋を出発したと言うことであります。
 こんな話を聞くと、ちょっと見には阿呆か利巧か見当取れんような先生が、大変偉く見えて来るでした。
 そんな具合で、先生が来られて、教を乞いに来る者、色んなことを伺いに来る者で、今まで裏町伊助さん土蔵では全く手狭で、どうしようにも出来ぬような状態になって来ました。
 そこで教祖さまと、先生は相談上、これまで先生やっておられました稲荷講社霊学会と、教祖さまを中心に出来ておりました金明会とを合併して、稲荷講社分会として金明霊学会が出来たであります。そして広前(神様御広間意)を、本町中村竹蔵さん家に移転することになったであります。
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