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文献名1幼ながたり
文献名2獄中記よみ(新仮名遣い)
文献名3青い囚人服よみ(新仮名遣い)
著者出口澄子
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
ページ 目次メモ
OBC B124900c38
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本文の文字数722
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本文  京都地方裁判所未決監房は、竹屋町通柳馬場にいまもある赤煉瓦高い塀あるところがそれであります。そこ××号室に入ることになりましたが、どうも死刑になるような様子はありません。
 警察留置場におる間は、人顔も見られるし、それがいろいろ意味で心慰めにもなりましたが、未決に入ってしまうと、人顔は担当他は見られません。人に会うこともありません。部屋は畳一畳敷他に、板間一畳余が附いており、手届かん高い所に窓といえば二尺角があるきりです。これでは非常な相違を感じさせられます。ここに移るときに、一日だけでしたが変な青色着物をきせられます。これは、ここに来る人へシキタリになっているようでありますが、帯から、腰まで取り替えられ、懲役者姿にしてしまいます。これが私に耐えられない嫌なもでした。かえって死刑に遭いにゆくと思った時は、そう不愉快な気持ちになりませんでしたが、腰まで取替えられ、青い囚人服に着替えさせられた時は、死刑よりも嫌な感じがしました。
──こんなもを着せられるか──と思うと、思わずもポロポロと涙が流れ出ました。しかし次日は元通り、自分もって来た衣服を着ることになりました。それから毎日、全く一人ぼっち淋しい日々が続きました。来る日も来る日も厚い壁に囲まれて、ただ一人、ぽつねんと暮らさねばならないということば、ことに私性格には耐えられないことでした。こ先はどうなるやら、信者人、家族はどうして暮らしているか、さっぱり分からず、ただ、陽が出れば部屋が明るみ、陽が没ると部屋がしずかに薄暗くなっていくというだけ日を、幾日もはてしない気持ちで続けることになりました。
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