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文献名1出口王仁三郎著作集 第5巻 人間王仁三郎
文献名2第1部 自叙 野に生きる >弾圧あらしよみ(新仮名遣い)
文献名3第二次弾圧よみ(新仮名遣い)
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2016-11-25 02:09:43
ページ226 目次メモ
OBC B195305c123
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本文の文字数7836
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本文 第二次弾圧
回顧歌「朝嵐一」
治維法違反容疑者としてけいさつへ拘置されたる師走八日
取りしらべ漸く終へて虎館に通ひて猫如くなりぬる
大虎は小猫を数多さいなみつくはへて送る狼館へ
古巣にしばし留められオリオン星座に入りし我かな
オリオン星座に我は収まりぬ昭和十一(年)三月十三日
黙々と星座に座して見はるかす地上穢くもあるかな
暗き星右往左往に行き交ひて星座をぞくブリキ光よ
かすかなる錻力光をほこりがに星座をぞく小熊星かな
照る月光は星座にひそみつつ暗を照らすと心がまへす
山科里に送られただ一人又もや星座にとざされにけり
大空を渡らふ月身にしあれど時いきほひ星座にかこまる
月も日も清しく照れど神界月黒雲におほはれにけり
日に三度弁当めしを食ひながらうき世闇を味ひにけり
太白星東にかがやく時を待つ我は地上はうき星かな
天地を掃きて清むる彗星今日は星座にちぢこまり居る
日支事変起きしと聞きしタ暮はオリオン星座も暗かりにけり
オリオン星より降るもち月御代を照らさむわが思ひかな
或は満ちあるひは欠くる月ながらオリオン星座にあるはなやまし
月は今雲とばりにとざされて地上を照らすよしも無きかな
朝つ日光さす窓にぬかずきて君安かれと祈る朝宵
大君御心安んじ奉るすべなき我を悲しみにけり
オリオン星座を出でて支那国四百余州を照らさむと思ふ
北支より南支に浪おし寄せてわが国民心浮き立つ
小熊座そとに聞ゆる国民万歳声に心安らふ
小熊座夜半を眠らず天地を思ふ心光をとざさる
あしびき山科里に送られて窓辺に曇る月を見るかな
天津日わが窓照らすまひる間光は内外へだてなきかな
隔てなき月日光仰ぎつつ神守り深きを思へり
真夜中に山科山を分けぼるオリオン星座に心ときめく
オリオン星座にひそむわれにして日月をしたふ心は深しも
天地も一度に砕くる心地して来たるべき世暗を悲しむ
山分け昇る朝つ日光を仰ぎて御国を祈るも
為御国ためと真心を照らさん月にかかりし黒雲
日を追ひて太らむ月光みつつわが行末を思ふ楽しさ
三日月を見て思ふかなやがては満つる望月
天地恵みに守られてオリオン星座せまきを知らずも
山科館に狼迫り来て噛みつく如き言霊放てり
迫り来し狼われに歯も立たず尻尾を巻きて帰り行くなり
立ち去りしこうしろ姿を見送りわれは吹き出しにけり
小犬等が狼を追ひし我を見て心臓つよき男子と驚く
心臓が強くなければこ大法難をほどくよしなし
かねてより斯くあらんとは知りながら斯くも早しとは思はざりけり
大神仕組ならんかオリオン星座に友と感謝ささぐる
天地神に感謝すばかりなりわれ等が友修行為めぞと
有難しかたじけなしと思うかな身魂も安き星座にすはりて
まめ人上安かれと天地御前に祈りこそすれ
吾妹はわが子は法友どちは如何にうき世を過し居るらん
朝夕に神に感謝を捧げつつ法友等無事を喜ぶ
三千歳仕組開け口いよいよ来ると雄たけぶ我なり
教御祖宣らせ給ひしまさ言世に現はるる時ぞ嬉しき
元禄むかし忠義名を留めし大石良雄奥都城近し
赤穂なる四十七士義を思ひわが友身を偲ぶ夜半かな
三国一富士御山にさも似たる山科山を昇る朝つ日
朝つ日はくまなく照れど暗き世思ひするかなオリオン星座に
オリオン星座開く時を待つ我は闇夜を照らす月光
山科春や来にけん窓風に桜匂ひ来るかな
山寺表に咲き匂ふ桜を窓辺に見つつ楽しむ
長閑なる天地春を迎へつつオリオン星座に我は澄むなり
働き庭に笑へる一株花に春を楽しむ
自動車に送られ都にぼり行く道辺あかして桜咲くなり
右左躑躅咲きみてる道を走れば心清しも
漸くに小熊館に着き見ればわが子も孫もしびて迎ふる
漸くに小熊館に我つけば空黒雲日を包み居り
都路に始めて見たるまめ人と目配せしつつ館に入りけり
差入弁当うまきお多福屋表に立てるまめ人なつかし
小熊等にかかへられつつ病める身を狼間に送られにけり
いぶかしも我が言霊にうたれたる狼目をむき牙をとがらす
雷声を張り上げながら獣狼鳴き凄くもあるかな
狼は神羊をくらはんと舌劔をふりまはすなり
狼は筆劔を研ぎすまし噛み殺さんと雄たけびするなり
ままならぬ我身ならずば狼鋭き舌を砕かんと思ふ
醜虎穢き心見ゆるかな羊をなやむるさかしら
醜虎送りし筆劔もて迫り来るかもしづ
醜虎思ふままなる振舞に神なやむ春
ライオンを檻に入れたる心地して言葉端も恐れお
斯うならばこちらと狼はうそぶく空に神風吹く
神風すがた見えずば狼は餌を得たりと喜びて居り
柔そうに見ゆれど餌に骨ありて噛みなやみ居る醜
わが教子を喰はんと犬に虎狼ともにほほ笑みて居り
むら肝心籠めたる狼たくらみ割れて泡を吹くらん
○といふ掃除夫一人あるありて友ニユースを耳に伝ふる
オリオン星座はげにもせまけれど太平洋如く広かり
五大洲に腰を据へたる心地して我はオリオン星座に楽しむ
扉も窓も知らぬがに広き天地に息する我なり
あらん事をみ並べ立て迫り来る醜言霊防ぐ余地なし
点検声聞きつけて起き上り座り直して一番と宣る
一番といふ票識をもちながら襟にかけたる一日もなし
オリオン星座扉開かれて広場をよぎり接見に行く
接見場にいたりわが子とうち向ひ語るを憚る法廷さま
簡単なる健否外になに一つ語るを許さぬ接見係等
暑き日も寒風わたる冬日も待つ間苦しき接見
漸くに順番めぐりて接見場にあたり憚り言葉をひかゆる
これも云ひ彼も云はんと思ひつつ会へば語れぬ接見場かな
係員は耳をそばたてわが言葉一々筆に留めておくなり
接見場窓をすかして外を見れば吾知る人二三来て居り
接見を終りて帰れば両側星座ゆ友咳払ひ聞こゆ
星座暑さ苦しみをなめつつ友身を思ふかな
夜あれば昼あるもと信じつつ神光待つかな
道にある人は取分けむら肝持方一つで楽しき
大熊広場に青々と並べる木々青葉涼しも
青桐広葉打ち返し行く夏風涼しげなるかな
一息風さへ入らぬオリオン星座にあれば汗にじむも
日は炎熱に冬は厳寒になやまされつつ修行するかな
三千世界一度に開く梅咲く如月を待つ間長しも
うめ花開いて散りて実をむすぶ時まつ我は星座に雄たけぶ
一切を神心と信ずれぱわれに一つ思ひもなし
先見明ありとして世たたふる月日を待てる我なり
今に見よ掌かへし司等泡吹かせんと心いさむも
犬も虎も狼小熊も一様に耳をそば立て目を丸くせむ
犬虎は性こりもなく頑張りて星座われをなやめんとぞする
館にわれは呼び出され小熊に守られ言霊放たず
言霊を放つすベなき狼たけびに震ふ神羊
神羊を狐狸と見違へる狼つかさ心暗きも
常識無き狼に吠へられて言挙げせざる神羊天晴れ
辰刻に館を出でて神羊が星座に帰る午刻かな
午に出て申に星座にもどりたる羊しなびたるかな
口惜しきことばかりなりけり狼わりなき爪にかき破られつ、
オリオン星座友を一人一人食ふ狼黒きも
腹くろき醜狼腹あかき神羊をしらすにさいなむ
思ひきや法小庭に狼羊をなやめ食ふとは
狼は館に入りたる神羊手に錠前を掛けてほこれり
醜虎や狼ならぬ神羊に艮神を糺す狼
神は何かと狼醜言を宣る寅年
ぶた国に戦ひありと狼が言あげなせり寅年
ぶた国さやぐと聞きて神羊心に闇せまり来るかな
オリオン星座を出でし神あらずば支那は生くる時なし
一発銃声天地をとどろかし東洋諸国をどよもしにけり
鶏と豚戦ひついに始まりて狼たちは顔青くせり
国は残らず刃向ふとわれ宣り上ぐれば狼怒るも
神羊言葉に刃向ふ狼やがて爪かむ時は来らむ
まが神いたけり狂ふ世は近み四方山辺にむら雲立つなり
目も鼻もあけられぬまでにわざはひいたらん月日を思へば恐ろし
島かげに底行く船をかくし置きて御国を破らん醜小計画
浮宝悉沈めつくさんと計る醜世近みけるかも
オリオン星座に吾はなげくなりまがたけびふりかかる世を
世人等にそしられ又もあざけられまたほめられる生代は近し
大本はわるく言はれて後になり善くなる経綸と神は宣らせり
今しばし暗は迫れど金色光を放つ日は昇るらん
日出づる国行末しびつつ星座に我は神言を宣る
オリオン星座を分けて瑞月かがやく御代を待ちつつ生くるも
大君御ため国御為めに日々なやみを忍びしぶも
久方岩戸を開かんと朝夕祈る神大前
四ツ海静なれよと祈れども底行く船を如何にとやせん
惟神神救ひ無かりせば海をめぐらす国はあやうし
ため真心つくすわが友善き行ひを悪しざまに言ふ
子を悪魔如くあつかへる司悔ゆる時ぞ来ぬらん
喜びにもだゆる人と悲しみに悶ゆる人を分つ世近みぬ
苦みを堪へ忍びつつオリオン星座にあれよ法友どち
狭くともオリオン星座と見直して月かがやく御代を待てかし
光万国を射照して世人たすくる御代待たるる
素裸湯上り我をキンミーと空わたり行く鷹声かな
柿色衣を干したる屋上流れにはためきて居り
雷は鳴りはためけど稲妻は闇をぬへどもタ立雨なし
只一人星座にありて窓外を眺むる庭に雨音あり
あるなし雨はまばらに降り来り風無き星座蒸し暑きかな
梁に巣を組む雀を追ひはらふ小熊わざつれなき夕暮
辺に飯粒おけば餌に飢ゑし雀は来たりついばみて行く
小雀チウと啼く声悲しけれ星座心なぐさむ
カアと鳴きキンミーと鳴きチウとなく百鳥声しげき山科
時折は御国事を思ひ出で雀相手にひとり言云ふ
東南にあきたる窓たよりなさ風はあれども吹き込まぬなり
日は東北に昇りわが窓に光ささぬをもどかしみにけり
東西南も北もふさがりて巽乾に窓開きあり
風ささぬ窓を造りて人屑を日々に苦しむ館建て方
音星座にありて聞きながら雀をう(ら)やむ夏真ひる間
演習大砲小銃機関銃音み聞ゆる淋しき居間なり
くろがね扉をかたくとざされてわが身は籠鳥となりけり
時来れば籠破るることありとわずかに其日を待ちがてに居る
我が友も斯くやあらんとオリオン星座に偲ぶ夏真ひる間
ごと流るる汗に現代垢洗はんと星座に祈るも
冬去れぱ粉雪窓ゆ吹き入りてわが顔辺をなむる冷たさ
湯たんぽ温みに冬をしぶなるわれ火に幾年遠ざかりけむ
ぐさき官給弁当匂ひする星座にあはれを催し哭くなり
黙々と小熊館に働ける柿色男姿痩せたる
小熊等がラッパ吹き立てピストルを持ちて非常時演習為し居り
釣鐘合図を廃せし事務所より響き来るかなラッパ音色は
小熊等越館庭に立たせ置きて一二三と号令かけ居り
小熊等は光る錻力を佩きながらラッパに連れて庭を馳せ居り
朝夕を天地神に祈るなり日支事変起きしと聞きしゆ
ままならば星座を出でて海を越へ四百余州を清めんとぞ思ふ
大空オリオン星座ならずしてこ山科星座狭きも
オリオン星を窓より仰ぎつつ更け行く夜半を淋しみにけり
西山上にうすづく三日月うすきを見つつ世を慨くかな
上弦月天空にかかりたる真夜中五位淋しも
風あれど雨は降れどもむし暑き星座真ひるにわれを淋しむ
足音に膝立て直せば錻力帯ぶる小熊来たりて小窓を覗けり
人情を知る小熊あり人情を知らぬもありぬ山科
小熊等はサーベルかちやかちやひびかせて威張里ちらすを役得とせり
威張るより外になぐさむすべも無き小熊すぐせみじめなるかも
子を犬猫ごとあつかへる小熊にくらしきかも
柿色屑をむち打てるさまを眺めて憤るわれ
国に落ちたる羊あはれさよ世に訴ふるすべも無ければ
さながらに根底国をうつすなるこ山科はおそろし
小熊等言葉に唯々と従へば柿は変じて浅黄となるなり
空に字を書きて合図をせしといふ羊は小熊に叩かれて居り
古里荒されしさましびつつ吾怒らじと神に誓ヘり
何事も神仕組ませ給ふわざと思へば感謝心満ち来る
物質を惜しむは体主霊従と思ひて今日を安く送るも
唯神に従ひまつるわが魂は霊主体従魁するかな
神苑を荒すは憎し恨めしし又有難しと思ふ朝宵
神苑は跡形もなく荒されてあたり淋しく木枯し吹くなり
大神御山を穢し館破る醜けき犬仕業を憐れむ
黒犬やがて悔ひなむ時来れば犬つくばひとなりてなかんか
醜虎も尾羽打ち枯らし神山に張り子虎となりて震はむ
吠へたけりし昔勢ひ何処へやら羊前に狼震はむ
神苑は神坐す庭と眼さめて頭下げなん醜司等
大本道を知らざりし司胸に木枯し吹くらむ
夜を深み星座に天地を祈り居れば鶏声四方に聞ゆる
国家興と啼く鶏声聞けば栄え行く世暁思ふ
声聞き居れば惟神日出づる国栄を偲ぶも
身を朝夕祈る吾ながらややともすれば妻子に傾く
同じ館にありながら面見られぬが淋しきろかも
夏冬暑さ寒さもしびつつ教素直なるかな
恨みをば一言も云はぬ教心は神宮居なるらん
大方人は神子神宮と悟り居るらんわが教友は
来るべき世を楽しみてわれも亦心安けく月日送りつ
時来れば再びうき世に現はれて神仕組に仕へ奉らん
大稜威地上に輝く時を待つ吾もどかしく星座に坐るも
何事もただ有難しありがたしと嬉し涙に暮るるこ
吾も友も神経綸太柱となると思へば楽しき星座よ
紫咲き下る蔭に小熊は運動見守る
運動場友を一々睨みつめて小言八百云ふ小熊かな
花摘むな植木折るなと足台上より小熊は雄たけびするなり
一日に三十分運動も楽しくはあらず小熊唸りに
ひそやかに教友と居向ひて掌返す経綸を語らう
言ふを許されぬ身はひそやかに手がもを云ひ目ももを言ふ
巣を見出でたはむる運動場三十分は短く思へり
莟一輪たもとに忍ばせて星座に帰り鼻を養ふ
くろがね窓よりソッと覗き見れば運動終りて友は帰り来
わが居間前を通りて帰る友咳する声なつかしきかな
医務室に眼を洗はんと行きて見れば羊数多来て居り
わが眼鏡替へんと思へど度に合ひしもは一つも無かりけるかな
思ひ出種となるらんオリオン星座醒むる良き日に
現世穢れを洗ひ清むべき修行するなるオリオン星座よ
曇りたる世を照り返す神業元と思へば星座も楽しき
満蒙や日支事変行先を朝タ祈る山科里に
太平洋に荒浪立たん暁を思ひて今日わが身惜しまる
ウラル山嵐はげしく吹き巻くる其日備へを心に構へつ
四方国みな一腹にかたまりて寄せ来る軍を払はんと思ふ
まどかなる月を眺めて思ふかな人心も斯くあれかしと
恵まれしオリオン星座朝タをあるは嬉しみ或ひは怒る
日々に読む雑誌上に憂さ払ふ朝なタなは恵みなりけり
国民が御国ために玉生命捧ぐる時や来らん
師を思ひ同士を思ふオリオン星座夜半に五位啼き渡るも
国にまします師生命長かれと祈る朝宵
今日も亦祈りに一日を過しけり明日も祈らむ君国為め
しとしとと降る春雨一日を長く思へり星座吾は
外に静かに降れる春雨を見つつ天地恵みを思ふ
読書する暇を静かに与へられ我は感謝涙にむせぶも
身体は星座中に縮むとも心は広く感謝に満ちぬる
わが膝に抱かれ天に昇りたる父幸をば星座に偲べり
わが父今は際を見とりたる幸を天地に感謝するなり
教御祖母神去り給ふとき抱き送りし恵みを感謝す
わが膝に抱かれ天に昇りたる教御祖を偲びては泣く
わが生母神去りませる夏日を又もや膝に抱きて送りぬ
教御祖並に父母昇天を親しく送りし幸なる我かな
斯く如天地神に恵まれし我には何思ひもなし
我も亦親々如愛し子に抱かれ逝かんことあらんを思ふ
囚はれて星座に縮む我ながら心は広く天馳けるなり
子や孫や教健やかさを人伝に聞くタベ嬉しさ
大本教御祖御臨終に遭ひて泣きたる良仁大人
福島久子も教祖を看とりつつ昇天日に逢へる幸かな
第一次世界戦争を終へし朝を限りに教祖は天に昇れり
朝機動演習行はれ宮様本宮山に登らす
小牧大佐牧中尉等ともろともに本宮山宮に謁せり
上に椅子を並べて御座つくり慎み茶菓を奉りけり
オリオン星座にあれば在りし日様々事思ひ浮ぶも
病むときは我身はかなく思ふなり親こと等偲び出でつつ
幸多き我身に来らん時を待ちて世を清めんとゑらぎ勇むも
身はよしや星座狭きにひそむとも心空は宇宙大なる
山科山を出で入る月光にわが行先き幸を思へり
小羊働く見つつわが幸あまり広きを偲ぶ春かな
窓あけて見ればなつかしわが友笠をかむりて行く姿見ゆ
わが友も神恵みにつつまれて心安かれと朝タ祈るも
わが友昇天したるを耳にして悲しかりけり悔しかりけり
友よ友なれは天国に昇るとも心安けく御国を守らへ
亡き友よ星座出づれば公に汝冥福祈らんと誓ふ
ため天に昇りしわが友御名をしるして永遠に讃へん
みまかりし教友等に誓ふなり千代に汝が名栄へんことを
幸ひに我は生き居り玉生命限りを国に捧げん
大本出来事は悉く世界移写と教祖は宣らせり
盧溝橋ただ数発銃声に日支事変を引起したり
一文字山敵軍打破り我皇軍は勝閧挙げたり
皇軍威力世界を震撼しわが国民も振ひ立ちたり
我出師は東洋平和為めなりと世界に誓ふ近衛声明
皇軍勢ひ連戦連勝し四百余州を震はせにけり
星座にある我は日支戦況を聞きつつ時近めるを知る
我曾て心を留めし蒙彊も愈々御国法にならへり
ヒットラー勇猛心を振起しポーランド国を其有と為す
ヒットラームッソリニーと協力し欧洲戦火蓋を切りぬ
独軍は連戦連勝欧洲其大方を侵略なしたり
大本事変起りし亥年よりわが内閣は七度変りぬ
日々にラヂオ放送聞きつれど委しく我耳には入らずも
オリオン星座に一月一日ラジオに長鳴鶏声聞く
今年こそ良きことあらんと思ひしに地上は益々乱れ行きたり
隔日に封緘はがきを許されて吾知る人に便り書くなり
東西南や北国々知るべ文に世態を見つ
簡単なる便り外を許さねば心底は写しがたなき
わが知己は沢にあれどもそ住所知らぬが為めにぶ沙汰する
此度もつれ末を思ひやり便りを呉れぬ人多かり
いつもいつも同じ人み文呉れる星座に何かも足らぬかな
文はひしひしと来れど簡単なることみにして真状分らず
山科山薄雪衣を冠りつつ冬天地を静かに座れる
山笑ふ春去り来れど山科山に桜は一もとも無き
秋深み山は錦とかがやきて山屏風なす山科
聖戦便り報ずる大熊ラジオは聞へず
晴れし日は心清しく曇る日は頭痛む吾なりにけり
我が妹すみ子便り聞きにけり弁護士林と接見
大熊館そ楼上に十数人弁護士連と初めて会ひたり
弁護人に事件大要述べつれば何れも安心したる態なり
余りにも大なる事件と弁士等は心配顔なる心淋しき
後になり必ず世人に褒めらるる望みありとて弁士を教ゆる
唐沢が事件元と田代氏が事詳細述べて帰れり
何事も神経綸と心安く吾は御神に感謝辞宣る
人間は身程知るが安全と小熊来りてわが前に宣る
小熊等に分るもかとうそぶけば足音荒くわが前を去る
新聞が斯く斯く言ふと小熊等が我言葉を疑ひて居り
今に見よ我真心現はれて天地動くと小熊に宣りおく
愛し子や知るべ送る文に我よみがへる心地するなり
敷島歌もて読める物語り都一部を読みおく
昭和十七年九月、「瑞月回顧歌」三百二十首作 伊佐男清記
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