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文献名1大本史料集成 2 >第1部 明治・大正期運動
文献名2第1章 出口王仁三郎関係文書よみ(新仮名遣い)
文献名3随筆『神霊界』大正8年11月15日号掲載よみ(新仮名遣い)
著者
概要
備考史料集成には出典が11月25日号とあるが11月15日号間違い。
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ページ59 目次メモ
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本文  世界を通じ上下混乱惨状を連続しつつ在る、不祥不安現状を救ふは、最早今日軍備や、政治や、宗教や教育力では、如何ともする事は出来ぬである。天人共に怒る今日世状、瀕死社会をして蘇生せしむるには、何しても皇道大本教を、天下に宣伝せなくては、到底治国安民実を挙ぐる事は不可能である。今後焼ゲ嶽、浅間其他諸山活動に徴して、天下前途を洞察すれば好い。
 古来裸体儘厳寒候、神仏に日参したり、跣足詣りなどを為して、信仰強固なるを誇り、且つ私利私慾為に祈願を為し、願望成就せざるに至つて、此神は神力がないとか、又は仏力が無いとか、小言八百を並べ、遂には神仏存在を否定する迷妄信者が、随分沢山に在つたが、人文開けたと謂ふ大正今日にても、矢張り迷信跡は絶ぬもと見えて、伏見稲荷山、能勢妙見、鞍馬山などへ登て見ると、裸体参詣(夜中)跣足参りは愚か、裸体儘神前や仏前に於て、天津祝詞を幾度となく妙な声を搾り出して唱へるかと思へば、直ぐ其口で心経を唱へる。法華経を誦む。実に奇怪至極である。中には自分腕に燭を点し、肌がヂリく焦げて居るを我慢して、油汗をかいて、一生懸命に慾望満足祈願を凝らして暑るも沢山にある。又た天から与へられたる食物を喰はずに断食をして、神仏に無理難題を強請したり、火物絶ちを為て、身体を砕いたり、色々芸当を行る事を以て、信仰奥秘を体得したやうに思つて居る迷信者も沢山にある。斯んな事をして居る行者を見て、歓こんで願望を叶へ、福徳を与へる如うな神ならそれこそ、全く悪神である。神は人民に衣食満足を与へたいが御精神である。仮令一日でも半時でも、天地経綸司宰者として、斯世に生しめ給ひし人間に、饉餓い目を為せたり、寒い目を為る事は、大変に御嫌い遊ばすである。
 然るに其至仁至愛なる神様大御心も弁まへず只々自分肉体さへ苦しめたら、大神御歓こびに預り、其代償として無理な願ひでも聞いて呉れられるもと誤解して居るは、実に気毒といふより外に弁ずべき辞が無いである。人間同志が互に訪問する時でさへ、裸体や跣足で行つては、大なる不礼になる。況して主人や目上人に、何事にもせよ、依頼に出て行く時に於て右様な無礼な風姿をして行く事は、出来ぬでは無いか。人間同志交際上から見ても、裸体や跣足で人家に頼み事に行く事は実に不都合千万である。況や至尊至貴なる大神に祈願する場合に於てをやである。衣冠束帯にて心身を清め整え、拍手再拝畏こみ畏こみ申上ぐべき神言を、裸体儘にて奏上するなぞは、不敬最も甚だしきもで在ります。
 外務大臣邸に於る天長祝日大夜会は、内外縉紳淑女を集め、昼よりも猶明るい電飾下に、世界大戦争第一次平和祝準備が成つた夕方、邸外爆発騒ぎで、内外人心胆を寒からしめた大椿事は、果して何前兆ぞ。幸にして三名負傷者を出した丈けで、他は無事であつたなれど、二百名○○○○○は何をして居られただらう。国民多くは生活難に迫られ、惨な状態に在るに拘はらず、何等政策も見るべき無く、物価は日々に昂騰して、益々悲惨なる状態に陥りつ瓦ある時であるから、高位高官等綺羅を飾つて気楽そうな大夜会、それを憤慨して暴挙では在るまいかと云ふ憶測説もあるやうだ。此際官民ともに時勢に鑑み、十分注意を望む次第であります。

 現今物価は殆ど殺人的狂騰を示し、中産中流階級者生活難叫びは、モハヤ絶頂に達せんとしつつあるが今其職業別方面から、之れら生活難声を聞いて見ると、各々多少理窟があるやうである。○家主曰ふには、地代は際限なく暴騰する、保険料率も引上げられる。
 大工手間賃は無茶苦茶に高く取られるで、家賃値上げも止むを得ないだ。不当な家賃を貪つて借家人を虐める訳では無い。家主身にもチツトは成つて見て欲しい。
地主小言には地租税や所得税が段々と高く成る斗りであるから、止むを得ずして地代を値上げするである、何も世界一般景気が良いからと云つて、地代を上げるでは無いと。然るに家主方では、地代値上げを口実にして、利廻り良いやうに家賃を上げるから、家賃は段々高く成る斗りである。家主たるも少しは血や涙が有りさうなもじやと思ふ。○株主小言には、配当が十割も在つたからと言つて何も不思議では無いじやないか。諸物価安い時代一割方が遙に割合が良いなぞと、トボケテ居る。○巡査小言に、我々は官吏として相当威信も保たねば成らぬから、妻だとて勤めは出来ず、内職に通ふ事も出来ないから、惨めさは一通りでは無い。其処で警視庁も家族へ対して、内職を奨励する事にした。此を見ても我々生活難が判るであらう。
 車夫小言に梶棒さへ上げたら五十銭は手に入れるが、何しろ物価は一から十まで上つて居ると云ふもだから、這入る銭は殖えても、出る銭方が多いから、結局収入が減つたと同じことだと。社会内面を調べて見れば、誰一人として安楽なもは無い。「憂さ事品こそ変はれ世中に、心安くて住む人は無し」と云へる古人歌を、思ひ出さずには居られないである。アア行詰れる現状を一日も早く救ひ助け、五六七神政が成就する時を待たるる次第である。

 いよいよ言霊閣落成と共に、神軍活動は益々激烈度を加へて来た。神生宮なる大本信者は、神軍活動に後れない様、言論戦大活動を始めねば成らぬ場合である。其為か、神意発顕か知ね共、綾部町に於ける大本言霊戦武者振りは、古今そ類例を見ざる大奮闘である。弥々日本国中を言向和はす可く時機到来したれば、王仁を始め役員信者活動を開始すべきは今である。天津御祖伝へ玉へる敏心日本心を振起し厳雄猛び踏猛び、伊都嘖譲を起して、海行かば水潜屍、山往かば草むす屍、大君辺にこそ死なめ、閑には死なじ顧みはせじと、弥進みに進み、弥迫りに迫り、山尾毎に追伏せ、河瀬毎に追払ひ、言向和す我等活動舞台が展開されたる事を感謝する次第であります。
(「神霊界」大正八年十一月十五日)
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