文献名1三鏡
文献名2水鏡よみ(新仮名遣い)
文献名3小さい蒲公英よみ(新仮名遣い)
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ
データ凡例
データ最終更新日----
神の国掲載号1926(大正15)年06月号
八幡書店版298頁
愛善世界社版178頁
著作集270頁
第五版43頁
第三版43頁
全集348頁
初版29頁
OBC kg022
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本文の文字数449
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本文
大正十年二月の頃、皆の知つて居る通り私は京都監獄に居つた。或日の散歩に、枯草の中に咲いて居る一輪の蒲公英を見出した。ああ其一輪の花、それによつて私はどの位慰められたか分らなかつた。何と云ふ愛らしい花であらう。冬の寒い長い間百草も枯れて、何も無いやうに見える此花が、春の光を浴びると、眠つた如く見えた根からは青い芽が出で、葉が伸び、やがてはあの豊醇な乳を持つた美しい黄色や、白い花が咲くのである。何だか私の境遇に似て居るやうである。私は思ふた。たとへ此度の事によつて大本が潰れたとて、五十七才になつたら又元の六畳敷から初めやう、教祖様は五十七才にして初めて立たれたのだから……、かくこの一輪の花によつて慰められつつ、日を送つて居る中、やがて春の最中になつて、そこら一面蒲公英の花をもつて埋めらるるやうになつて来た。何等の慰めをも持たぬ囚人達は如何に此花によつて慰められた事であらう、朝に夕に花は囚人の唯一の愛の対象物であつた。然るに心なき園丁は掃除をするのだと云つて、皆此花を引きむしつて仕舞つた。