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文献名1霊界物語 第13巻 如意宝珠 子
文献名2第4篇 奇窟怪巌よみ(新仮名遣い)きくつかいがん
文献名3第20章 宣替〔546〕よみ(新仮名遣い)りかえ
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2020-11-26 18:08:38
あらすじ三人は臥竜姫館を後にして、宣伝歌を歌いながら九十九折岩窟内を進んで行った。岩窟内十字路で、岩彦一行にばったりと出くわした。岩彦は三人に今までどこに行っていたかと尋ねるが、三人言葉使いが丁寧になっていることに気づく。岩彦は、物言いが女々しいといって、三人を責める。岩彦はひとしきり三人丁寧な様子をけなすが、鷹彦と梅彦は、岩彦方こそ魂が落ち着いていないだ、と諭し始める。岩彦は他宣伝使たちを腰抜けと言って罵るが、そこへ突然、大音響と共に火光が落下して爆発した。岩彦はあっと驚いてそ場に昏倒してしまったが、他五人は両手を合わせ、神言を唱えている。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年03月21日(旧02月23日) 口述場所 筆録者外山豊二 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年10月30日 愛善世界社版229頁 八幡書店版第3輯 114頁 修補版 校定版230頁 普及版100頁 初版 ページ備考
OBC rm1320
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本文  音彦、亀彦、駒彦三人は、臥竜姫館を後に見て、又もや巌窟内探険に出かけた。九十九折或は広く、或は狭く、或は天井高く、或は低き石径を宣伝歌を歌ひ乍ら、勇ましく進み行く。
『神が表に現はれて  善と悪とを立別ける
 こ世を造りし神直日  心も広き大直日
 唯何事も人世は  直日に見直せ聞直せ
 身過ちは詔り直せ  醜曲神を
 吾等三人宣伝使  言向和し神世を
 堅磐常磐に立てむとて  進み来りし其間に
 何時か誇り雲覆ひ  心は暗き闇
 誠道を踏み迷ひ  夢に夢見る心地して
 心たかぶる其儘に  磐樟船に乗せられて
 九天高く昇りつめ  やつと安心する間なく
 喜び消えて夢  荒野ケ原に踏み迷ひ
 得体知れぬ野呂サンに  寂しき野辺に廻り合ひ
 荒き言葉中に  神恵み
 含みあるとは知らずして  肩臂怒らし進み行く
 わが身程も恥しき  夢か現か幻か
 心暗きわれわれは  黒白もわかぬ闇黒
 再び窟人となり  醜身魂数多く
 前後左右に飛び廻る  中を切り抜けやうやうに
 光を三叉角  思ひがけなく衝当る
 痛さは痛し胸闇  得体知れぬ弥次彦や
 酒も飲まぬに与太彦  二人男に出会して
 開き兼たる石門  天津祝詞言霊に
 さつと開いて眺むれば  果しも知らぬ長廊下
 一目散に進み行く  行けども行けど果しなく
 心逸る間に  行き詰りたる岩壁に
 はつと気がつき眺むれば  こは抑も如何に大空に
 きらめく星数多く  怪しみゐたる折柄に
 玉をあざむく優姿  いづく方か出雲姫
 フサ都に進まむと  先に立ちてぞ出て行く
 吾等三人宣伝使  コシ麓まで
 到りて見ればこは如何に  日宣伝使
 鷹彦岩彦梅彦  四人千引上に
 白河夜船夢結ぶ  あゝ嬉しやと思ふ間も
 あらし音に目を醒し  よくよく見ればこは如何に
 臥竜住ひたる  奥一間に端坐して
 蜥蜴蚯蚓や蛇蛙  見るも穢きなめくぢり
 蚯蚓馳走を与へむと  貴女神にすすめられ
 遠慮会釈折柄に  三人身体は鉄縛り
 手足も自由にならぬ身  いよいよ生命を捨鉢
 決心したる折柄に  臥竜姫は忽ちに
 優しき笑顔を現はしつ  水も漏さぬ善言美詞
 宣り聞されし嬉しさに  衿夢も何処へやら
 直日身魂輝きて  ここに館をいづ
 神身魂となりそめし  三五教宣伝使
 そしり言葉吹き払ひ  みやび言葉神嘉言
 詔り直し行く勇ましさ  朝日は照るとも曇るとも
 月は盈つとも虧くるとも  たとへ大地は沈むとも
 窟曲津多くとも  神賜ひし言霊に
 言向和し三五  神教を縦横
 錦仕組  仕へまつらむ宣伝使
 あゝ面白し面白し  心は勇む岩
 岩より堅き鋭心  大和心を振り起し
 伊都雄健び踏健び  進みて行かむ神
 進みて行かむ神道』
と歌ひながら、岩窟内十字路に着いた。こ時前方より現はれたる三人男、
岩彦『オー貴様は音公に亀公、駒公、何処にまごついて居よつただい。馬鹿野郎だな。俺たち三人は貴様行方を探して、幾度こ八衢隧道を廻つたことか知れやしない。一体何をぐづついとつただい』
音彦『ハイ、コレハコレハ岩彦サンでございますか。誠に誠に御心配をかけまして済みませぬ。私は日出別命様磐船に、あなた方と一同に乗せられて雲上に上げられ、ヤレ嬉しやと思つて居りましたが、豈図らむや何時間にか草茫々と生え茂る荒野ケ原に、吾々三人は振り落されてゐました。あなた様三人は何うして居られますかと、今今まで心配をして居りましたが、マアマア御無事な御一行御顔を拝しまして、これ位嬉しいことはございませぬ。これも三五教神様全く御引合せ有り難うございます』
岩彦『ナアンダ。俄に御丁寧な言葉を使ひよつて馬鹿にするない。礼に過ぐれば却て無礼だといふことを知らぬか。打つて変つた貴様態度、気が狂つたか、但は化物か、合点行かぬ奴だ。ナア梅公、此奴はチト変痴奇珍だぞ』
梅彦『アーさうだ。三人面を見い。営養不良、色蒼白め、身体骨立餓鬼如しだ。巌窟内瓦斯に酔はされよつて精神に異状を来しただらう』
音彦『コレハコレハ岩サン、梅サン、決して御心配下さいますな。精神に異状を来したでも、何でもございませぬ。私は三五教宣伝使でございますから、ナー亀サン、駒サン、些も気が狂つてはゐませぬなア』
亀彦『左様々々、岩サン梅サンは大変心配をして下さるさうですが、決して異状はありませぬ、御安心して下さいませ』
岩彦『オイ梅公、鷹公、ますます変だ。女郎腐つたやうに俄に糞丁寧になりよつたぢやないか。オイ音公、亀公、駒公、貴様等は人を嘲弄するか。あまり馬鹿にするない』
亀彦『イエイエ滅相なこと仰有いませ。決して勿体ない三五教宣伝使様を嘲弄ナンカしてどうして神様に申訳が立ちませう。私たちは三五教を天下に宣伝する神僕でございます』
岩彦『ますます可笑しい奴だ。なぜ貴様はさう俄に女性的になつただ。モ少し勇壮活溌な男性的精神を発揮して、ベランメー口調でも使つて勇ましく噪がぬかい。勇気がなくては大事は遂行することは出来ないぞ。お正月言葉を使ひよつて、ナンダ。俄に気分が悪いやうな御丁寧な言霊を使ひよるか』
音彦『ハイ、吾々三人は仔細あつて改心を致しました』
岩彦『改心をすれば、さう女々しくなるもぢやない。何事も神様御保護下に、活機臨々として天下に雄飛活躍せなくてはならないだ。貴様は惟神中毒をしよつて、雨が降つたというては胸を躍らせ、風が吹くというては胆を潰し、灯心幽霊やうな細い細い精神になりよつて、ナンダ、そ女々しい言霊は。ちつと確りせぬか。元気がつくやうに二つ三つ拳骨をお見舞ひしてやらうか。これも貴様等を鞭撻するため鞭だ』
と云ひながら、蠑螺如き拳骨を固め三人頭をボカボカと急速度をもつて擲りつけた。
音彦『ご親切によう思つて下さいました。何卒これからは、幾度もご注意をして下さいませ』
岩彦『アハーやつぱり此奴どうかして居よる。オイ音公、確りせぬかい。貴様は魔に犯されただらう。ナンダそ態度は』
亀彦『岩サンご意見は御尤もでございます。決して無理とは申しませぬ。併し乍ら私等三人は以前に数十倍力と強味が出来ました。如何なる難事に際会しても、少しも驚かぬやうになりました。如何なる敵に向つても怯めず臆せず、善戦善闘するだけ神力を与へられました』
岩彦『オイ鷹公、梅公、一体合点が行かぬぢやないか。此奴態度と云つたら丸で処女如しだ。辛気臭くて、長い長い口上を列べ立てよつて、干瓢でもたぐるやうに、あた辛気臭い。骨無し力も無い、女々しい言霊、エーゲン糞悪い』
鷹彦『ヤア感心です。音サン、亀サン、駒サン、よう其処まで魂を研き、強うなつて下さいました。今まで三人サンとは違つて勇気も百倍いたしました。嗚呼それでこそ如何なる敵にも打克つことが出来ませう。よい修業をなさいましたなア』
音彦『ご親切に能く言つて下さいました。貴方こそ本当宣伝使様でございます。以後は何卒お見捨なくお世話下さいますやう御願ひ致します』
鷹彦『何う致しまして、お三人様お芽出度うございます。お互様に宜しく手を曳き合うて神道に参りませう。貴方方からもお見捨てなく』
岩彦『ナンダ。鷹公洒落ない。人が一生懸命に力を付けてやらうと思つて居るに、貴様は横車を押しよつて人を嘲弄するか。愈もつて怪しからぬ醜巌窟式だ。ナア梅公、一体合点が行かぬぢやないか』
梅彦『岩サン、それは貴方お考へ違ひでございませう』
岩彦『オツト待つた待つた。梅奴、貴様までが逆上して何うするだ。これだから精神弱い奴は間に合はぬだ。醜半分くらゐ探険してこれだから、全部探検する迄にはすつかり軟化して章魚やうに、骨も何も無くなつて了ふかも知れやせぬぞ。オイ皆奴、しつかりせぬか。腰抜け野郎奴が。あゝコンナ腰抜け野郎を五疋も伴れて、こ岩サン一人が奮戦苦闘強敵に当らねばならぬかと思へば、心細くなつて来るワイ。エー何奴も此奴も好い腰抜け揃つたもだな』
鷹彦『岩サン、貴方モー少し強くなつて下されや。外ばつかり強く見えても、肝腎魂が落ついて居らねば、まさか御間には合ひませぬからナア』
岩彦『エー腰抜け奴が、自分目にある柱は見えぬでも人埃はよう分るとは、貴様等ことだ。弱味噌奴が。何を吐かしよるだい。天が地となり地が天となる。変れば変つたもだ。弱い者を称して強者といひ、強い者を称して弱者といふ。如何に逆様中だと云つても、見直し、聞き直し、詔り直しを宣伝する神使が、さう道理を逆転させては何うして此お道がひらけると思ふか。しつかりせぬかい。何を呆けてゐるだ。アヽ情無いわ。エライ厄介もを背負はされたもだワイ』
音彦『アヽ私も岩サンやうに空威張り上手な心弱い御方を、神様もナント思召してか知りませぬが、背負はして下さつたもだ。これも吾々身魂研き為に、弱い方標本をお示し下さつただらうか』
岩彦『骨無し腰抜け、何を吐しよるだ。女郎腐つたやうな弱音を吹きよつて情なくなつて来たワイ。オイ鷹公、梅公、貴様も一つ、ポカンと目醒しをくれてやらうか』
鷹、梅『ハイハイ何卒よろしうお願ひ申します。どつさりと気つくまで叩いて下さいませ』
岩彦『ハテ合点行かぬ五人男、此奴ア狐にいかれよつたな。コンナ弱虫を引率して悪魔と戦闘は、たうてい継続されるもぢやない。ヤーヤー困つた事になつて来た。俺も一つ思案をせなくちやなるまい。オーさうだ。解つた。今まで俺は強い強いと思つてゐたが、人を杖について助太刀を頼むと云ふ心が悪かつただ。そ点が俺欠点であつた。これは神様が貴様一人で活動せエ。大勢奴を力にしても駄目だ。まさか時になつたら此通りだ。何奴も此奴も腰抜け野郎だ。力と頼むは自分守護神ばつかりだ。イヤイヤ吾身を守護し給ふ元大神様ばかりだ。人に頼るな、師匠を杖につくなといふ教があつたワイ。サア俺はモ一つ強うなつて神業に参加せなくてはなるまい。それにつけても今まで寝食を共にして来た五人連れ、俺でさへも神様から弱いと云つて戒められて居るだから、コンナ弱味噌を吾々として見棄てて置く訳にも行かない。アヽどうかして強くしてやりたいもだ。コンナ腰抜人足を世中へ出したならば、これほど悪魔蔓る荒野ケ原であるから、自分一身を保護することも出来やしない。アヽ情無いことだ。大国治立大神様、どうぞ此五人を憐れみ下さいまして、貴方お力を分配してやつて下さいませ。九分九厘といふ所で、十中八九まで大抵宣伝使は腰を抜かして、屁古垂れるもだが、今ここに陳列してある五人蛸宣伝使は、目的半途にも達せずして殆ど崩壊して了ひさうだ。せめて九分九厘といふ所までなりと、活動さしてやつて下さいませ。国治立大神憐れみ玉へ、助け玉へ。臆病神を払はせ玉へ、清め玉へ、岩彦が真心を籠めて一生願ひでございます。惟神霊幸倍坐世、惟神霊幸倍坐世』
音彦『アヽ岩サンご親切、何時世にかは忘れませう。流石は三五教宣伝使様、よくも吾々をそこまで思つて下さいます』
亀彦『ご親切に有り難う。骨身に応へます、嬉しうございます』
駒彦『性は善なり、人には添うて見よ、馬には乗つて見よとは、よく云つたことだ。岩サン真心が現はれて大神様直接慈言やうに、嬉しう辱なう存じます』
岩彦『アヽさつぱり駄目だ。モウ何ほど祈つたつて零点だ。アヽ止みぬる哉止みぬる哉。アヽ何とせむ方泣く涙、余りことで涙さへ出ぬワイヤイ』
鷹彦『岩サンお心遺ひ、われわれ一統満足を致しました』
梅彦『本当に心色が現はれて、コンナ嬉しいことは無い。やつぱり神様に選ばれた宣伝使様だけあつて、ご親切に報ゆるために吾々も、彼弱い岩サンをモ一つ強くして上げねばなりませぬ』
岩彦『コラ梅公、貴様そら何を云ふだ。貴様より弱くなつて堪らうかい。今では俺が一番気が確だ。ここは醜窟だ。気を張りつめて元気を出さぬか。何がやつて来るか知れやしないぞ。せめて自分だけ保護だけ位はやつて呉れぬと、俺も十分に奮闘が出来はしないワイ』
 斯る所へ何処ともなく百雷一時に落下する如き大音響と共に、巨大なる大火光は一同前に落下した途端、爆発して四方八方に火矢を飛ばした。
 岩公はアツと言うて、そ場に昏倒した。五人は依然として両手を合せ、神言を奏上しつつありける。
(大正一一・三・二一 旧二・二三 外山豊二録)
(第一五章~第二〇章 昭和一〇・三・二九 於吉野丸船室 王仁校正)
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