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文献名1霊界物語 第14巻 如意宝珠 丑
文献名2第3篇 高加索詣よみ(新仮名遣い)こーかすまいり
文献名3第15章 丸木橋〔565〕よみ(新仮名遣い)まるきばし
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2022-11-09 14:57:44
あらすじ一行は息を吹き返し、鬼婆と格闘した夢を語り合っている。勝公は、これは数十万年未来に艮方角に男子・女子が現れてミロク活動をされるときに、邪魔をする悪魔が出てくるだ、と夢判断をする。与太彦は、谷川水で禊ぎをして身を清めよう、と提案する。一同は賛成して川に飛び込むが、六公がおぼれてしまう。一同は六公生存を祈りつつ、川を下って六を探しに行く。丸木橋が架かったところで、与太彦に六公生霊が懸って、自分は死んでいない、と口を切った。すると、橋たもとから、以前四人が三五教に改心させた烏勘三郎一行が現れ、六公が流れてきたで、川から引き上げて助けてあった、と言う。勝彦が天数歌を唱えると、六公は息を吹き返した。一同は神言を奏上し宣伝歌を歌った。四人は烏勘三郎たちに厚く礼を述べ、二十六番峠に向かって進んで行った。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年03月25日(旧02月27日) 口述場所 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年11月15日 愛善世界社版248頁 八幡書店版第3輯 251頁 修補版 校定版257頁 普及版118頁 初版 ページ備考
OBC rm1415
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本文  二十五番峠頂上より強烈なる烈風に吹き払はれ、谷間に陥りし勝公一行は、息吹き返し起き上り、互に顔を見合せて、
勝『ヤア、此処はコシカ峠谷底だ。一途川とやら云ふ並木茂つた一つ家に於て、常世姫や木常姫悪霊と格闘をやつて居た積りだに、これは矢張り夢だつたかいなア』
弥『アヽ宣伝使様、貴方もソンナ夢を見たですか、私も見ましたよ、エグイ顔をした婆アだつたねー。目周囲から鼻辺りと云ふもは紫色に腫上つて、随分見つともよくない常世姫寝姿、一目見るよりゾツとした。それに又、星ついた水色羽織を着た中婆嫌らしい顔つたら、今思つても身体中がゾクゾクするやうですワ。それに与太公奴、一つ家窓を覗いて、芝居がかりに手踊をやるをかしさ、可笑しいやら、恐ろしいやら、気分が悪いやら、腹が立つやら、疳が立つやら、イヤもう三五教精神も何処かへ行つて仕舞うて、見直し聞き直し、宣り直しと云ふ余裕がなかつた。オイ与太公、六公、貴様は如何だつた。夢一人だつたぞ』
与『俺もチヨボチヨボだ、一途川だとか、欲しい一図だとか、婆が吐いて居たよ。余程よい血迷ひ婆アだワイ』
六『鬼婆が出刄をもつて、突つかかつて来よつた時にや、こ方は無手だ、先方は獲物を持つて居るだから一寸ハラハラした途端、目が醒めただ。アヽ嫌らしい夢を見たもだ。夢浮世と云ふからには、何処かにかう云ふ事実があるかも知れないよ』
弥『夢と云ふもは神聖なもだ。吾々が社会的総て羈絆を脱して、他愛もなく本守護神発動に一任した時だから、夢事実はきつと過去か、現在か、未来うちには実現するもだよ』
六『さうだらうかなア、過去事だらうか、未来事だらうかな』
勝『それは、こ実現は数十万年未来事だ。二十世紀と云ふ悪魔横行時代が来た時、八尾八頭や金毛九尾悪霊が再び発動しよつて、常世姫や木常姫霊魂憑り易い肉体を使つて、行りよる事だよ。天眼通力によつて調べて見ると、何でもこれから艮方に当つて、神さま公園地に、夢男子とか女子とかが現はれて、ミロク活動を開始されるを、何でも変性男子系統肉体に懸り、善仮面を被つて教へ子を食ひ殺し、玉取りをやる事知らせであらう。アヽ二十世紀と云ふ世人間は実に可憐さうだ。それにつけても、厳霊、瑞霊や金勝要神、木花姫呑剣断腸御苦しみが思ひやられる哩。嗚呼惟神霊幸倍坐世惟神霊幸倍坐世』
与『吾々は過去現在未来衆生済度ため、こ清らかな川辺に落ち込んだを幸ひに、御禊を修し、神言を奏上してミロク神政建設太柱、男子女子をはじめ、金勝要神、木花姫鎮まりたまふ肉為に、祈りませうか。こ中が万劫末代維持していけるやうに、善ばかり咲くやうに』
勝『大賛成です、皆サン与太彦サン提案に従つて即時決行致しませう』
弥、六『吾々も賛成です』
と云ひ乍ら、着衣を川辺に脱ぎ捨て、谷川にザンブとばかり飛込んだ。四人は一度に水に浸り身体を清めて居る際、ブルブルブルと音を立てて、六公は水底に姿を隠して仕舞つた。勝公を初め三人は一生懸命に両手を合せ川上に向つて天津祝詞を奏上し終つてフト傍を見れば六公姿が見えぬ。
勝『ヤア六サンは何処へ行つた。オーイ六サン何処だ』
と呼べど叫べど何応へもなく、激潭飛沫音轟々と聞ゆるみ。弥次彦は、『ヤア大変だ、六公が何処かへ沈没しよつたな、これや斯うしては居られぬ哩、何とかして捜索をせなくてはならぬ、愚図々々して居ると沢山水を呑んで縡れては取返しがつかぬ。オイ与太公どうせうかなア』
与『どうせうたつて仕方がないサ、大方六公奴、潜水艇気取りで何処か水底に暫時伏艇して居るだらう。彼奴は水練に妙を得た奴だから、決して溺れるやうな気遣ひはないよ。貴様が松枝に引つ懸つて居た時も、あ着物まま谷川を泳ぎ渡つて平気で居る奴だから大丈夫だ。吾々を一寸驚かしてやらうと思うて洒落て居るだよ』
弥『なにほど水泳達人だと云つても油断は出来ない、さう楽観する訳にもいかない、諺にも、好く泳ぐもは好く溺る、と云ふ事がある。此奴はどうしても俺考へでは名替をしよつたに相違ない』
与『名替つて何だい、流れ間違ひだらう』
弥『馬鹿云ふな、川底土左衛門と改名したらうと云ふだ』
与『土左衛門とは怪しからぬ、真に大変だ。それだから道中に四人連はいかないと云ふだ。オイ六公、生きて居るか死んで居るか、ハツキリ返事をせぬかい』
弥『死んで居るもが返事をするかい、気を落着けないか』
与『一息を争ふ水中だ、愚図々々して居る間に息が切れたらどうするだ。コンナ時に落着き払つて居る奴は非人道的骨頂だ。これがどうして周章狼狼せずに居られうかい。オーイ オーイ、六公、六道辻を通るは未だ早いぞ、コーカス参り途中ぢやないか、早く浮かばぬか浮かばぬか、何処に踏み迷ふとるだ。オーイ オーイ』
勝『エヽ仕方がない、滅多にこ激流を潜つて上る筈もなし、大方渦に巻込まれて流れたかも知れませぬよ、谷川伝ひに此処を下つて探して見ませうか』
弥『探さうと云つたつて、アレあ通り碧潭激流、何うする事も出来ぬぢやありませぬか。コンナ時に鷹彦サンが居て呉れば捜索隊になつて貰ふに大変都合が好いけれどなア、追々日も暮れて来る、困つた事だ。愚図々々して居ると吾々迄がドンナ災難に遇ふかも知れぬ、マア六公は六公で仕方がないとして、吾々三人は神様大事なお使ひ道具だ。あまり足許暗くならない間に頂上まで、駆けつけませう』
と先に立つて谷辺を駆け登る。二人も後に従ひ辛うじて黄昏頃、二十五番峠頂上山道に辿り着いた。
弥『サア宣伝使様、漸く吾々三人は無事に元地点に凱旋しましたが、六公奴困つたもですなア。小山村お婆アサンが聞いたら、嘸歎く事でせう、老爺サンも中風なり、あれ程喜んで居たもを、アヽ世中と云ふもは残酷なもだ。本当に煩悶苦悩娑婆世界だ。何とかして万有一切どこ迄も不老不死で悪魔襲来や不時過ち無い完全なる世界を作りたいもですなア』
与『アヽ人間を老少不定とはよく云つたもだ。無常迅速感益々深しだワイ』
勝『泣いても悔んでもモウ仕方がない、暮れる時が来れば日は暮れる、人間も死ぬ時節が来たら死なねばならない、桜花は永久に梢に止まらず、頭髪は何時迄も黒い艶を保つ事が出来ないは世習はせだ。アーアもう過ぎ越し苦労はサラリと谷川へ流して刹那心を楽しまうかい』
与『実に切ない刹那心だナア。過越し苦労をせまいと思つても、今今迄ピンピンと噪いで居つた六公事がどうして忘れる事が出来やうぞ。一昨日も六公と、お前サン等二人行方を捜した時には六公美しい心が現はれて居た。見かけによらぬ親切な男だつた。それはそれは宣伝使様、貴方達お姿が見えなかつた時には、あ男はどれだけ心配をしよつたか知れませぬぜ。二人友達がもし国替をして居るなら、私も一緒に川へ身を投げてお伴をしたいと迄云つた位だ。アヽ可憐さうな事をした。僅一日道連になつても十年知己やうに親切を尽す六公麗しさ、これを思へば吾々も六公道連になつてやりたいやうだ。アヽもう此世では彼奴顔を見る事が出来ぬか、情ない可憐さうだ』
と涙含み、身置処なきさまに大地に身を投げた。
弥『コラコラ与太公、しつかりせぬか、失望落胆するは貴様ばかりぢやない、俺だつて同じ事だよ』
と、又もや涙をハラハラと澪し顔に袖をあて、道上にべたりと倒れ、身を揺つて遂には両人声をあげて泣き叫ぶ。勝公も涙目を瞬たたきながら、
勝『コレコレ弥次彦サン、与太彦サン、さう気投げをするもぢやない、チト確りせぬか。男と云ふもは仮りにも涙を澪すもぢやない、あまり女々しいぢやないか』
と自分も亦落つる涙を袖にて拭ふ。
 愁歎幕は漸く神直日大直日に見直し聞き直し幽かに巻上げられた。短き夜は既に明け離れ足許は仄と明かくなつて来た。一同は六公上が矢張り気に懸ると見え東天に向つて合掌し、天津祝詞を奏上し、次で六公無事生存せむ事を祈り、終つて又もや急坂を西北さして下り往く。
 足並早き下り坂にもいつしか暇を告げて、又もや茫々たる原野を走り行くこと数百丁、丸木橋かけられた辺に辿りついた。
弥『宣伝使様。大分足も草臥れました。此処に腰をおろして一休み致しませうか』
勝『オヽこ川だつた、六公はこ水上で見失ひ、残念な事をしたが、今頃はどうなつて居るだらう』
 与太彦は忽ちウンウンと唸り出し、両手を組んで身体を動揺し始めた。
弥『ヤア又しても神憑りになりよつた。モウ悪魔襲来は懲り懲りだ。オイ与太公体に憑依つて居る悪霊共、速に退散致さぬか』
与『ロヽヽヽヽクヽヽヽヽ六ぢや六ぢや』
弥『エヽ碌でもない六奴、貴様土左衛門になりよつて幽世人間となりながら未だ娑婆が恋しうて迷うて来たか。好い加減に執着心を去つて、一時も早く霊神になれ。貴様はお竹を残して死んだだから残り惜からう。残念なは尤もだが、モウ斯うなつては仕方がない、早く神界へとつとと往つてお竹場所を拵へて待つて居るがよからう。俺だとて三百年か千年後かは知らぬが、何れ一度は行くだから、景色よい場所を取つて置いて呉れ。閻魔さまと相談して俺場所だけには、契約済札を立てて置くだぞ。そ代り俺は娑婆に居て、朝晩貴様ため冥福を祈つてやる。三途鬼婆に出遇つたら、俺云ふ事は何でも聞くだから、何なら紹介状を書いてやらうか』
与『オヽヽヽレヽヽヽワヽヽシヽヽ、死んで居らぬ』
弥『定つた事よ、死んだもは娑婆に居らぬは当然だ。居らぬ筈貴様が何故コンナ処へ踏み迷ふて来るだ』
与『オヽレヽヽワヽヽマヽダヽイヽ生て居る、決して決して死んで居らぬぞ、今に肉体を引つ張つて来て見せてやらう』
弥『ハア死んで居らぬと云つたか、よく分つた、さうすると六生霊だな、今何処に魔胡ついとるか』
与『イヽ今に判る、此処で半時ばかり三人とも待つて居て呉れ。烏勘三郎に助けられて命は完全に助かつた。安心してくれ』
弥『ヤアそれや本当か、本当なら俺も嬉しい哩。これこれ宣伝使さま、余り甘い話だが、此奴は邪神が誑かして居るではあるまいか、貴方一つ審神をして見て下さいな』
勝『神に間違ひはありますまい、軈て六サン肉体に遇はれませう。暫く此処に坐つて神言を奏上し、神様にお礼を申しませう。モシモシ、六サンとやら、モウ判りました、お引き取りを願ひます。一二三四五六七八九十百千万、惟神霊幸倍坐世、惟神霊幸倍坐世』
 六公生霊は忽ち肉体を離れた。与太彦は元如くケロリとしながら、
与『アヽ、矢張り六公は生て居ますなア、とうとう憑依つて来よつて、アンナ事を云ひよつた。余り六公々々と思ひ詰めて居たもだから、此方一心が届いて六生霊に感応したと見える、私口を借つて云つた事が本当なら嬉しいがなア』
 三人が橋袂に端坐して稍沈黙に耽る折しも一人男を背負うて川から上り、ソリソリと上つて来る大男がある。後よりガヤガヤと囁きながら十数人荒くれ男がついて来る。三人は怪訝な顔をして此男を凝視て居る。
男『ヤア貴方は三五教宣伝使様』
三人『ヤアお前は烏勘三郎だないか』
『ハイ左様で御座います、六サンを連れて参りました』
弥『夫は夫は有難い、御苦労だつた。六サンは物言ひますかな、イヤ未だ生て居りますか』
烏『物も言はず動きもしませぬが、身体一部に温味がありますで、火でも焚いてあたらしたら、此方にならうも知れぬと考へて、ブカブカと流れて来るを吾々一同が命を的に川へ飛び込み拾つて来ました』
勝『それは有難い、唯今先、六公が此処にやつて来てタツタ今、お目に懸ると云つて居ました』
烏『妙ですなア、先程此処へ来たとは合点が往かぬ。さうすると此奴は六サンぢやないかなア、大方化物だらう。エヽ偉い苦労をさせよつて、呶狸奴が、打ちつけて蹂躙つてやらうか』
弥『マアマア待つた待つた、ソンナ手荒い事をしてどうなるもか、夫こそ本当に死んで仕舞はア。そつと其辺におろして呉れ、これから霊よび神業だ』
烏『アヽ何だかテント、訳が分らぬやうになつて来たワイ。マア仕方がない、下さうかい』
と芝生上にそつと下した。
弥『オヽ六公、貴様は仕合せもだ、待て待て今に魂返しをやつてやらう。サア宣伝使様、天数歌を始めませうか』
 勝彦は無言つて、首肯きながら拍手を打ち声も細く静に落着き払つて、一二三四五六七八九十百千万と二回繰かへした。六公体はムクムクと動き出し、直に起上り三人顔をキヨロキヨロと眺め、
六『アヽお前は弥次公、与太公か、ヤア宣伝使様妙な処で遇ひました。三途川を渡り損ねてスツテ事で二度目国替をするところだつたが、烏勘三郎と云ふ男、十数人弟子と共に身を躍らして川に飛び込み私を救ひ上げ、背に負ふて何処ともなしにトントン走り出したと思つたら丸木橋袂、お前サンはやはり幽界旅をして居なさるか、今度は自分一人だと思つて居たに何処までも交際よい御親切なお方だ。持つべきもは朋友なりけりだ。アヽ、惟神霊幸倍坐世、惟神霊幸倍坐世』
 弥次彦は六公背を平手で三つ四つ、力を籠めて擲りつけた。
六『アイタヽヽヽ貴様は何をするだい。驚いたな、娑婆に居る時から乱暴な奴だと思うて居たが、貴様未だ冥途に来ても改心出来ぬか』
弥『此処は冥途ぢやないぞ、二十五番峠を下つて数百丁来たところだ。お前は谷川に溺れて一旦縡れて居つただ。それを神様お引き合せで勘三郎サン親内者に助けられ、此処に来ただ。確りして呉れ』
 六公は目を擦りながら今更やうな顔をして四辺を念入りに見廻し、
『ヤア、矢張どうやら娑婆らしい、ヤ、皆サン、偉い御心配をかけました、有難う。これはこれは烏勘三郎サン、そ他親内御一同、よう助けて下さいました。命親だと思ふてこ御恩は生涯忘れませぬ』
烏『ヤア気がついて何より結構でした。神様にお礼を申しませう』
 茲に一同は神言を奏上し、宣伝歌を歌ひ、又もや四人一行は勘三郎そ他に厚く礼を述べ、丸木橋を渡つて二十六番峠を指して進み行く。
(大正一一・三・二五 旧二・二七 加藤明子録)
(昭和一〇・三・一六 於嘉義市嘉義ホテル 王仁校正)
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