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文献名1霊界物語 第15巻 如意宝珠 寅
文献名2第2篇 古事記言霊解よみ(新仮名遣い)こじきことたまかい
文献名3第11章 大蛇退治段〔578〕よみ(新仮名遣い)おろちたいぢだん
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ霊止 データ凡例 データ最終更新日2023-09-20 14:24:48
あらすじ追放された素盞嗚尊が降られた出雲国とは、いづくも国、という意味で、地上一切国土ことである。肥河上は、万世一系皇統を保ち、完全無欠神政を樹立する日本国、という意味である。また鳥髪地とは、十(たり)顕現地、ということである。厳御魂・瑞御魂が神業に従事する世界経綸地という意味である。素盞嗚尊は世界を大改良するためにあまねく天下を経歴した後、ついに地質学上中心である、日本国高天原である至聖地に降臨し給うた。自分が明治三十一年八月に、瑞御魂神代として高座山より退われて、綾部聖地に降ったは、即ち素盞嗚尊が一人選ばれた神主に憑依して、神世開基出現地に参り上って神経綸地であることを感知された、という古事記予言が実現したである。肥河上より箸が流れてきたを見つけた、という尊故事は、箸も橋も渡すという意味があり、悪を去って善に遷らしめる神教意味である。神諭にも、綾部大本は世界大橋である、とある。しかしこような立派な教えも、邪神ために流し捨てられて日に日に神威が落ちて行くことが、ここに暗示されている。設立当時に某教会が開祖教えを隠し、瑞霊を追い返して自分教会を開設したような状態が、『ハシ』が川から流れた、ということである。老夫・老女が童女を中に置いて泣いていた、という故事は、変性男子(国常立尊と開祖身魂)がすべて人民を心配している、ということを表す。またオトメ言霊解は、「日本固有大和魂本能、花も実もある神人」意である。明治三十一年秋に、瑞御魂に須佐之男神が懸かって、老夫と老女合体神である開祖に面会した。そして櫛名田姫は本守護神金勝要神である。これはこ古事記一節が実現したということである。遠い外国地は、数千年来悪神企みによって混乱を来たし、またそ悪思想によって日本魂が絶滅しつつある。ただひとつ、神国固有日本魂たるオトメが残ったみである。変性男子はこれをなんとかお守りしなくてはならない、と天下を嘆き、しかしそ方法がわからずに天に向かって号泣されていた。悪神本体はひとつであるが、そ意を汲んで世界覆滅陰謀に参加しているは、八人頭株である。そ下には無数手下があって活動している。これが「身一つに頭八つ尾八つあり」ということである。八つ頭とは、英、米、露、仏、独、伊など強国に潜伏している現代的大勢力巨魁ことである。地球上各国は、みなこ悪神蛇神ために苦悶している。ここに天より降った須佐之男命は、老夫なる国常立尊神霊に対して、万民救済を一任して欲しいと宣した。国常立尊は、あなたご職掌をお教えください、とお尋ねになったで、須佐之男大神は、自分は天照大御神実弟で大海原をしろしめす職掌である、とお答えになった。変性男子御魂はそれを聞いて大変喜び、自分人民を貴神にお預けする、とおおせられた。これが明治三十一年秋に、変性男子と変性女子身魂に神懸かりがあったとき御言である。瑞霊魂である速須佐之男命は、二霊一体である神政開祖神人より、人民守護化育を一任され、一大金剛力を発揮して本来日本魂に立替へ立直しをなし、更に進んでそ実行者とし賜うた。天下万民身魂を改良して、足名椎・手名椎なる変性男子御魂にお渡しするには、相当歳月を要した。あるいは神徳、物質力、自然力、教戒、慈愛をもって導かれたそご神恩を忘れてはならない。速須佐之男命は変性男子御魂に対して、立派に日本魂を作り上げられたことを神々に報謝するため、瑞垣を巡らして祭壇を設け、清らかな酒を捧げるべきである、と述べられた。しかし八岐大蛇に憑依された悪神眷属どもが、大神酒を飲んでしまった。瑞御魂大神は、世界人民不行跡を見るに忍びず、神軍を起こしてこ悪鬼蛇神憑依した身魂を切り散らし、亡ぼされた。「肥河」なる世界祖国日本上下人民は、心から改心して血赤い真心となり、世界人民と同じ血族ごとくなり、永遠無窮に天下が治まったである。また、大蛇尾から都牟刈之太刀を発見した、という故事は、葦原中津国下層社会人民中に、立派な金剛力神人を見つけた、ということである。都牟刈之太刀とは言霊学上から言うと、伊都能売身魂であり、三千世界大救世主ことである。徳をもって人民を悦服せしめる一大真人、日本国柱石にして世界治平基となるべき神器的神人をして、草薙剣というである。また草薙剣とは、日本国全体ことでもある。こ神国を背負う真人は、草薙神剣霊魂活用者である。
主な人物 舞台 口述日1920(大正9)年01月16日(旧11月26日) 口述場所 筆録者谷村真友[#講演筆録] 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年12月5日 愛善世界社版123頁 八幡書店版第3輯 325頁 修補版 校定版123頁 普及版56頁 初版 ページ備考
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本文
『故、退はれて、出雲肥河上なる鳥髪地に降りましき』(古事記大蛇退治段)
 出雲国は何処諸国と云ふ意義で、地球上一切国土である。肥河上は、万世一系皇統を保ちて、幽顕一致、神徳無窮にして皇朝光り晴れ渡り、弘り、極まり、気形透明にして天体地体を霊的に保有し、支障なく神人充満し、以て協心戮力し、完全無欠神政を樹立する至聖至厳至美至清日本国といふ事なり。
 鳥髪地とは、十顕現地と云ふ事にして、厳御魂、瑞御魂が経と緯と神業に従事し、天地を修斎し玉ふ神聖経綸地といふことなり。要するに世界を大改良せむ為めに素盞嗚尊は普く天下を経歴し、終に地質学上中心なる日本国高天原なる至聖地に降臨し玉ひたるなり。明治三十一年秋八月に、瑞御魂神代として高座山より神退ひに退はれて綾部聖地に降りたるは、即ち素盞嗚尊が、一人選まれたる神主に憑依し給ひて、神世開祖出現地に参上りて神経綸地たることを感知されたるも同様意味なり。古事記予言は古今一貫、毫末も変異なく、且つ謬りなき事を実証し得るなり。
『此時しも箸其河より流れ下りき』
ハシ霊返しはヒなり。ヒは大慈大悲極みなり。ハシ霊返しヒなるも、ヒカハカミより流れ来たると云ふ明文は実に深遠なる意義包含されあるもなり。又箸は凡てを一方に渡す活用あるもにして、川に架する橋も、食物を口内へ渡す箸もハシ意味に於ては同一なり。悪を去り善に遷らしむる神ハシなり。暗黒社会をして光明社会に改善せしむる神教もハシなり。故に御神諭にも、綾部大本は世界大橋であるから、此大橋を渡らねば、何も分りは致さむぞよ云々とあるも、改過遷善、立替立直し神教意味なり。そ箸は肥河より流れ下りきとは、斯る立派な蒼生救済神教も、邪神為に情無くも流し捨てられ、日に日に神威を降しゆく事意味なり。是を大本出来事に徴して見るに、去る明治三十一年に瑞御魂神代として十神聖地に降りたる神柱を、某教会や信者が中を遮り、以て厳御魂、瑞御魂合致的神業を妨害し、瑞霊神代を追返し、彼等徒党が教祖を看板として至厳至重なる神教を潜め隠し、某教会を開設したる如き状態を指して『ハシ其河より流れ下りき』といふなり。
『於是須佐之男命其河上に人有りけりとおもほして尋ね上りて往まししかば老夫と老女と二人在りて童女を中に置きて泣くなり』
 茲に顕幽両界救世主たる須佐之男命は、肥河上なる日本国中心、地高天原に神人現はれ、世界経綸本源地有りと御考へになり尋ねて御上りありしが、変性男子身魂現はれて、国家騒乱状態を治めむと血涙を吐き乍ら昼夜区別なく、世人を教戒しつつありしなり。二人といふ事は、艮金神様男子御魂と、教祖出口直子刀自女子身魂とが一つに合体して神業に従事し玉へると同じ意義なり。ヒトとは霊帰宿する意義で人肉体に宇宙神霊憑宿して天地経綸を遂行し玉ふ、神生宮意なり。老夫と老女と二人とあるは女姿男霊神人、出口教祖如き神人を意味するなり。
『童女を中に置きて泣なり』とはオトメは男と女意味にして、世界中老若男女を云ふ。又老と若ともなり、現在世界人民を称して老若男女と云ふ。霊界にては国常立大神、顕界にては神世開祖出口直子刀自老夫と老女とが、世界人民身魂、日に月に邪神為に汚され亡ぼされむとするを見るに忍びず、手を尽して足を運びて救助せむと艱難辛苦を嘗めさせられ、天地中に立ちて号泣し給ふことを、童女を中に置きて泣くなりと云ふなり。
 亦神御眼より御覧ある時は世界凡て人間は、神童子なり女子なり。故に世界人民は皆神童女なる故、人民親がそ生みし子を思ふ如くに、神は人民為に昼夜血を吐く思ひを致して心配を致して居るぞよ、と御神諭に示させ給へる所以なり。亦オトメ言霊を略解する時は、
 オは親位であり、親子一如にして、大地球を包む活用であり。
 トは十全治平にして、終始一貫活用であり。
 メは世を透見し、内に勢力を蓄へて外面に露はさざる意義なり。
 之を約むる時は、日本固有日本魂本能にして、花も実もある神人意なり。
『汝等は誰ぞと問ひ賜へば、其老夫僕は国津神大山津見神子なり、僕が名は足名椎、妻が名は手名椎、女が名は櫛名田比売と謂すと答す』
 明治三十一年秋瑞御魂神代に須佐之男神神懸したまひて綾部高天原に降りまし、老夫と老女合体神なる出口教祖に対面して汝等は誰ぞと問ひたまひし時に、厳御魂神代なる教祖口を藉りて僕は国津神中心神にして大山住神也。神神にして天津神足名椎となり手名椎となりて、天オトメを平かに安らかに守り助けむとして、七年昔より肥河上に御禊神事を仕へ奉れり。又こ肉体名は櫛名田姫と申し、本守護神は禁闕要大神なりと謂し玉ひしは、以上御本文実現なり。クシナダ
 クシは神智赫々として万事に抜目なく一切盤根錯節を料理し、快刀乱麻を断つ意義なり。
 ナは、万物を兼ね統べ、能く行届きたる思ひ兼活用なり。
 ダは、麻柱極府にして大造化器であり、対偶力であり、主従師弟夫妻等縁を結ぶ神なり。
 要するに、櫛名田姫守護厚き天壌無窮神国、大日本国土国魂神にして、神諭所謂大地金神なり。
『亦、汝哭由は何ぞと問ひたまへば、吾が女は八稚女在りき。是に高志八岐遠呂智なも、年毎に来て喫ふなる。今そ来ぬべき時なるが故に泣くと答白す』
 以上御本文を言霊学上より解約すると、吾が守護する大地球上に生息する、息女即ち男子や女子は、八男と女と云つて、種々沢山な神御子たる人種民族が有るが、年と共に人民霊性は、鬼蛇精神に悪化し来り至粋至醇分霊を喫ひ破られて了つた。高志八岐遠呂智と云ふ悪神口や舌剣に懸つて歳月と共に天を畏れず地恩恵を忘れ、不正無業行動を為すもばかり、人民八分迄は、皆悪神容器に為れて、身体も霊魂も、酔生夢死体主霊従に落下し、猶も変じて八岐遠呂智尾となり盲従を続けて、天下騒乱、国家滅亡を来しつつ、最後に残る神国人民身魂までも、喫ひ破り亡ぼさむとする時機が迫つて来たで如何にしてか此世界惨状を救ひ助け、天津大神に申上げむと、心を千々に砕き天下国家前途を思ひはかりて、泣き悲しむなりと答へ玉うたと曰ふことなり。
 高志といふ意義は、遠き海を越した遠方国であつて、日本からいへば支那や欧米各国ことなり。海外より種々雑多悪思想が渡来する。手を替へ品を替へて、宗教なり、政治なり、教育なりが盛んに各時代を通じて、侵入して来り敬神尊皇報国至誠を惟神的に具有する、日本魂を混乱し、滅絶せしめつつある状態を称して、高志八岐遠呂智喫ふなると云ふなり。亦外国天地は、数千年来此悪神計画に誑らかされて、上下無限混乱を来し、国家を亡ぼし来たりしが、彼今猶其計画を盛んに続行しつつ、遂に日本神国土地まで侵入し、天津神直裔なる日本オトメ身魂まで、全部喫ひ殺さむとする、それが最近に迫つて居る、只一つ神国固有日本魂なるオトメが後に遺つた許りである。之を悪神大邪霊に滅ぼされては、折角天祖国祖開き玉へる大地球を救ふ事は出来ない。どうかして之を助けたいと思つて艱難辛苦を嘗めて居るである。実に泣くにも泣かれぬ、天下状態であると云つて、之を根本的に救ふ事は出来ない。どうして良いかと途方に暮れ、天地に向つて号泣して居りますと、変性男子身魂御答へなりしなり。
『其形は如何さまにかと問ひたまへば、彼が目は赤加賀知なして、身一つに頭八つ尾八つあり。亦其身に苔、及び桧、すぎ生ひ、其長さ渓八谷、峡八尾を渡りて、其腹を見れば、悉に常血爛れたりと答白す。(此に赤加賀知といへるは、今ほほづきなり)』
 そこで其形は如何さまにかと、問ひたまへばと云ふ意義は、八岐遠呂智なす悪思想影響は如何なる状態に形はれ居るやと須佐之男命御尋ねなり。
 そこで変性男子身魂なる老夫と老女は、彼悪神経綸事実上に顕現したる大眼目は、赤加賀知なして身一つに、頭八つ尾八つありと云つて、悪神本体は一つであるが、そ真意を汲んで、世界覆滅陰謀に参加して居るもは、八人頭株であつて、此八つ頭株は、全地球何処にも大々的に計画を進めてをるである。政治に、経済に、教育に、宗教に、実業に、思想上に、其他社会的事業に対して陰密間に、一切破壊を企てて居るである。就ては、尾位地にある、悪神無数配下等が、各方面に盲動して知らず識らずに、一人頭目と、八つ世界的大陰謀に参加し、終には既往五年に亘つた世界大戦争などを惹起せしめ、清露其他主権者を亡ぼし、労働者を煽動して、所在世界各方面に、大惑乱を起しつつあるである。赤加賀知とは砲煙弾雨、血河死山惨状や、赤化運動実現である。実に現代は八岐大蛇が、いよいよ赤加賀知大眼玉をムキ出した所であり、既に世界中七オトメを喫ひ殺し、今や最後に肥河なる、日本までも現界幽界一時に喫はむとしつつある処である。要するに八つ頭とは、英とか、米とか、露とか、仏とか、独とか、伊とか強国に潜伏せる、現代的大勢力有る、巨魁意味であり、八つ尾とは、頭に盲従せる数多部下意である。頭も尾も寸断せなくては成らぬ時機となりつつあるなり。
『亦其身に苔及び桧すぎ生ひ、其長さ、渓八谷、峡八尾を渡りて其腹を見れば、悉に常も血爛れりと答白す』といふ意味は地球上各国は皆こ悪神蛇神為に、山奥も水末も暴され、不穏状態に陥り、終には尼港事件如く、暉春事件如く、染血虐殺憂目に人類が遇つて、苦悶して居ること形容である。また苔と云ふ事は、世界各国下層民事であり桧と云ふ事は上流社会人民であり、すぎと云ふ事は国家中堅たる中流社会である。要するに上中下三流人民が常に不安念に駆られて居る事であつて、実に六親眷属相争ひ、郷閭相鬩ぎ戦ふ、悲惨なる世界現状を明答されたといふ事である。御神諭に、『今人民は外国、悪神頭と眷属とに、神から貰うた結構な肉体と御魂を自由自在に汚されて了うて、畜生餓鬼性来になりて居るから、欲に掛けたら、親とでも兄弟とでも、公事を致すやうな悪魔世になりて居るが、是では世は続いては行かぬから、天からは御三体大神様がお降り遊ばすなり、地からは、国常立尊が変性男子と現はれて、新つ世に立替立直して、松五六七世に致して、世界人民を歓ばし、万劫末代勇んで暮す神国世に替へて了はねばならぬから、艮金神は、三千年間長い経綸を致して、時節を待ちて居りたぞよ。八つ尾八つ頭守護神を、今度はさつぱり往生いたさすぞよ』云々と明示されてあるも、要はこ御本文大精神に合致して居る一大事実である。
『爾、速須佐之男命、其老夫に是汝女ならば、吾に奉らむやと詔たまふに、恐けれど御名を覚らずと答白せば、吾は天照大御神同母男なり。故今天より降り坐つと答へたまひき。爾に足名椎、手名椎、然坐さば恐し立奉らむと白しき』
 右御本文老夫にとあるは艮金神国常立尊神霊に対して御言である。また足名椎手名椎神と並び称せるは、肉体は出口直子であつて手名椎神であり霊魂は国常立尊足名椎意である。
 茲に天より降り給へる須佐之男命は、老夫なる国常立尊神霊に対し玉ひて、是は汝守護し愛育する所、至粋至醇御子たる優しき人民であるなれば、吾に是如き可憐なる万民救済を一任せずやと、御尋ねになつた事である。そこで国常立尊は実に恐縮至りではありますが、貴方は如何なる地位と、御職掌在す神で居らせらるるや。御地位と御職名とを覚らない以上は御一任する事は出来ませぬと白し給ひければ、大神は至極尤もなる御尋ねである。然らば吾が名を申し上げむ、吾は天津高御座に鎮まり坐ます、掛巻も畏き天照大御神同母弟であつて、大海原を知食すべき職掌である。されば今世界目下惨状を黙視するに忍びず、万類救護為に、地上に降り来たである。故に国津神たる汝治むる万類万民を救はむが為に、吾に其職掌を一任されよ然らば汝と共に八岐大蛇害を除いて天下を安国と平けく進め開かむと仰せになつたである。茲に変性男子身魂は、大変に畏み歓び玉うて、左様に至尊神様に坐ますならば吾女なる可憐なる人民を貴神に御預け申すと、仰せられたである。是は去る明治三十一年秋に変性男子と変性女子と身魂が二柱揃うて神懸りがあつた時御言であつて、実に重大なる意義が含まれて在るである。然し乍ら是は神と神と問答でありまして、人間肉体上に関する問題ではないから、読者に誤解無いやうに御注意願つておく次第である。
『爾速須佐之男命、乃ち、其童女を湯津爪櫛に取成して、御角髪に刺して、其足名椎、手名椎神に告りたまはく、汝等、八塩折酒を醸み、且、垣を造り迴し、そ垣に八つ門を造り、門毎に八つ棧敷を結ひ、そ棧敷毎に酒船を置きて船毎にそ八塩折酒を盛りて、待ちてよと、りたまひき』
 湯津爪櫛言霊を略解すれば、
 ユは、天地、神人、顕幽、上下一切を真釣合せ、国家を安寧に、民心を正直に立直す大努力意であり、
 ツは、日大神御稜威を信じ、大金剛至誠心を振り起し、言心行一致貫徹を期し、以て神霊極力を発揮する意である。
 ツは、生成化育大本合致し、大決断力を発揮し、実相真如神民たりと意である。
 マは、人種中第一位たる資格を保ち、胸中常に明かにして無為円満なる意である。
 グは、暗愚を去つて賢明に帰し、万事神助を得て意如く物事成功する意である。
 シは、信仰堅く、敬神尊皇報国忠良なる臣民基台なりと意である。
 以上六言霊を総合する時は、霊主体従日本魂を発揮せる神御子と立直し玉ふ、神経綸を進むると謂ふことである。
 御角髪言霊を略解すれば、
 ミは、形体具足成就して、日本神国神民たる位を各自に顕はし定めて真実を極め、以て瑞御魂に合一する意である。
 ミは、⦿御威徳を明かに覚知し、惟神大道を遵奉し実行し、以て玲瓏たる玉如き身魂と成る意である。
 ツは、神分身分霊として天壌無窮に真生命を保全し、肉体としては君国を守り、霊体としては神と人民とを助け守る意である。
 ラは、言心行三事完全に実現し、本末一貫、霊主体従臣民と成りて、自由自在に本能を発揮する意である。
 以上四言霊を総合する時は、愈日本魂実言実行者となりて、其霊魂は神御列に加はるべき真御子と成りたる意である。
 要するに、瑞霊魂なる速須佐之男命は、二霊一体なる神政開祖神人より、男と女守護と化育とを一任され一大金剛力を発揮して、本来日本魂に立替へ立直し、更に進んで其実行者とし賜ふた事を『其オトメをユツツマグシに取成して御角髪に刺して』と言ふである。
 斯如く、天下万民身魂改良を遊ばして、足名椎、手名椎御魂に御渡しになるに就ては、相当歳月を要したである。或は神徳を以てし、或は物質力を以てし、或は自然力を以てし、或は教戒を以てし、慈愛を以てし、種々御苦辛を嘗めさせ玉ふ其神恩を忘れては成らぬである。そこで速須佐之男命は、足名椎手名椎なる変性男子霊魂に対つて告り給ふた御言葉は左通りである。幸ひ残れるオトメは斯如く、湯津爪櫛に取成し、御角髪に刺て立派に日本魂を造り上げたと云ふ事は、全く天津神御霊徳と、吾御魂活動と、汝命至誠賜であるから、第一に天地八百万神に、精選した立派な美味なる、所謂八塩折神酒を醸造し、且つ汚穢を防ぐ為に清らかな瑞垣を四方に作り廻して、其垣毎に祭壇を設け(八つ門)て、祭壇毎に祝詞座を拵へ、酒を甕戸高知り甕腹満て並べて神々に報恩謝徳本義を尽すべく、詔りたまふたである。凡て酒と云ふもは、大神に献る時は、第一に御神慮を和げ勇ませ歓ばせ奉る結構な供へ物であるが、体主霊従的人間が之を飲むと決して碌な事は出来ないである。同じ種類酒でも、人間は御魂相応に、種々反応を来すもであつて、悪霊憑つた人間が呑めば直ちに言語や、動作や精神が悪性来を現はし、且つ酔ひ且つ狂ひ乱れ暴れるもである。或は泣くも、笑ふも、怒るも、妙な処へ行きたくなるもなぞ、種々雑多に変化して、身魂本性は現はし、吐たり倒れたり苦しみ悶えたりするもである。常に至誠至実人にして、心魂下津岩根に安定したもは、仮令酒を常に得呑まぬ人でも、少々位時に臨んで戴いた所が、決して前後不覚になつたり、倒れたり苦しんだり、動作や言舌や精神変乱するもで無く、心中益々壮快を覚え、笑み栄え勇気を増し、神智を発揮するもである。故に酒は神様に献る所清浄なる美酒と雖も、心醜悪なるもが呑む時は、忽ち身魂を毒し弱らしむるもである。同じ酒を甲は一合呑んで酔ひ潰れて了ふかと思へば、乙は一升呑んでも酔はず、丙は三升位呑まなくては少しも酔うた如うな心持がしないと、云ふ区別附くは、乃ち身魂性質に依りて反応に差異ある事証である。甲は呑んで笑ひ、乙は怒り、丙は泣くと云ふ如うに、同じ味ある同じ種類酒でも、区別附くと云ふは、実に不思議なもで、是はどうしても身と魂と性来関係に依るもである。
『故、告りたまへる随にして、如此設け備へて待つ時に、其八岐大蛇、信に言ひしが如来つ。乃ち、船毎に、己々頭を垂入て、そ酒を飲みき、於是、飲み酔ひてみな伏寝たり。爾ち速須佐之男命、そ御佩せる十拳剣を抜きて、そ大蛇を切散りたまひしかば肥河、血に変りて流れき』
 そこで変性男子身魂は命随々芳醇なる神酒を造りて、天地神明を招待し、以て歓喜を表し賜ひ、神恩を感謝し給うたである。八岐大蛇霊に憑依された数多悪神頭目や眷族共が大神酒を飲んで了つた。丁度今日人間は、酒為に腸までも腐らせ、血液循環を悪くし、頭は重くなり、フラフラとして行歩も自由ならぬ、地上に転倒して前後も弁知せず、醜婦に戯れ家を破り、知識を曇らせ、不治病を起して悶え苦しんで居るは、所謂「飲み酔ひて皆伏寝たり」と云ふことである。爾に於て瑞御霊大神は、世界人民不行跡を見るに忍びず、神軍を起して、此悪鬼蛇神憑依せる、身魂を切り散らし、亡ぼし給うたである。十拳剣を抜きてと云ふ事は遠津神勅定を奉戴して破邪顕正本能を発揮し給うたと云ふことである。そこで肥河なる世界祖国日上下一般人民は、心から改心をして、血如き赤き真心となり、同じ血族如く世界と共に、永遠無窮に平和に安穏に天下が治まつたと云ふ事を「肥河血に変りて流れき」と云ふである。流れると云ふ意義は幾万世に伝はる事である。古事記序文に、後葉に流へんと欲すとあるも、同義である。
『故其尾を切りたまふ時、御刀刄毀けき。怪しと思ほして、御刀端もて刺割きて見そなはししかば、都牟刈之太刀あり。故此太刀を取らして、怪異しき物ぞと思ほして天照大御神に白し上げたまひき。是は草薙太刀なり』
 中尾と云ふ事は、葦原中津国下層社会臣民事である。其臣民を裁断して、身魂を精細に解剖点検し玉ふ時に、実に立派な金剛力神人を認められた状態を称して、御刀刄毀けきと云ふである。アヽ実に予想外立派な救世主身魂が、大蛇尾なる社会下層に隠れ居るわい。是は一つ掘り出しもだと謂つて、感激されたことを、怪しと思ほしてと云ふである。御刀端もてと云ふ事は、天祖御遺訓光に照し見てと云ふ事である。
『刺割きて見そなはししかば都牟刈之太刀あり』と云ふことは今迄点検調査方針を一変し、側面より仔細に御審査になると、四魂五情活用全き大真人が、中尾なる下層社会一隅に、潜みつつあつたを初めて発見されたと云ふことである。都牟刈之太刀とは言霊学上より解すれば三千世界大救世主にして、伊都能売身魂と云ふ事である。故、此太刀なる大救世主霊魂を取り立て、異数真人なりと驚歎され、直ちに天照大御神様、及びそ表現神に大切なる御神器として、奉献されたである。凡て青人草を神風吹きて靡かす如く、徳を以て万民を悦服せしむる一大真人、日本国柱石にして世界治平基たるべき、神器的真人を称して、草薙剣と云ふである。八岐大蛇暴狂ひて万民身魂を絶滅せしめつつある今日、一日も早く草薙神剣活用ある、真徳大真人出現せむことを、希望する次第である。
 また草薙剣とは、我日本全国別名である。こ神国を背負つて立つ処真人は、即ち草薙神剣霊魂活用者である。
(大正九・一・一六 講演筆録 谷村真友)
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