王仁DBβ版 出口王仁三郎と霊界物語の総合検索サイト 文献検索 画像検索 単語検索 メニュー開く
サイトの全面改修に伴いサブスク化します。詳しくはこちらをどうぞ。(2023/12/19)

文献名1霊界物語 第15巻 如意宝珠 寅
文献名2第3篇 神山霊水よみ(新仮名遣い)しんざんれいすい
文献名3第13章 神女出現〔580〕よみ(新仮名遣い)しんじょしゅつげん
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2021-01-16 01:43:43
あらすじ神素盞嗚大神は、天岩戸責任を一身に負って、世界漂泊旅に出た。神素盞嗚大神は、神代における武勇絶倫英雄である。山に囲まれた西蔵国にお出でになった。鬼掴はそ昔、ペテロ都に現れた道貴彦弟で、高国別後身である。何度か生まれ変わった後、神命により地教山で神素盞嗚大神登山を邪魔したが、実は大神を助けようと待ち望んでいたである。二人は雪深いラサフ都で一夜宿を取ろうと一軒藁屋を叩いた。こ者によると、神素盞嗚大神がお隠れになって以来、邪神がはびこり、そため国人うちで心あるもは、茶断ち・塩断ちをして大神再臨を待ち望んでいるだ、という。二人は夜中に人声で目を覚ました。神素盞嗚大神は、高国別に様子を探ってくるように命じた。高国別が忍び足で声する方に行くと、大勢男女が野原で祈願をしている。そして一人幣を持った男について、丘に向かって走っていく。高国別は一同後を追っていくと、不思議にも皆、姿を消してしまった。高国別が丘上に行くと、一人娘がもろ手を組んでうつむいている。高国別は娘に声をかけるが、返事がない。やにわに娘は高国別に紐をかけると、背負って走り出した。しかししばらくして倒れてしまった。高国別は凄んで、娘に訳を聞こうとするが、娘は高国別素性や神素盞嗚大神ことを知っている風である。高国別はてっきり邪神化身と思って娘を問いただすが、娘ははぐらかした答えしかしない。高国別は娘頭がおかしいと思って去ろうとするが、娘はまたしても紐で高国別を引っ掛け戻し、おかしな問答を続ける。高国別は消えた村人たち後を追ってそ場を去ろうとすると、たちまち地が凹み、地底に落ち込んでしまった。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年04月03日(旧03月07日) 口述場所 筆録者松村真澄 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年12月5日 愛善世界社版154頁 八幡書店版第3輯 337頁 修補版 校定版154頁 普及版69頁 初版 ページ備考
OBC rm1513
本文のヒット件数全 311 件/ノ=311
本文の文字数7258
これ以外の情報は霊界物語ネットの「インフォメーション」欄を見て下さい 霊界物語ネット
本文  神素盞嗚大神は  天岩戸変に依り
 百千万罪咎を  其身一つに引受けて
 千座置戸艱難辛苦  神御運も葦原
 瑞穂国を此処彼処  漂ひ旅に出立ち給ひしより
 今まで影を潜めたる  八岐大蛇や金毛九尾
 醜曲鬼遠近に  又もや頭を擡げつつ
 此世を紊すウラル教  バラモン教やウラナイ
 教人々  肉宮居を宿となし
 以前に勝る悪逆無道  世人心は悉く
 ねぢけ曲りて一柱  誠を守る者も無く
 世は日に月に曇り行く  遠近伊保理や川瀬に
 伊猛り狂ふ曲神  声は嵐か雷か
 譬ふる由も地震  一時に轟く騒がしさ
 山川どよみ草木枯れ  非時雨は降り頻り
 風荒らぎて家を倒し  木々梢は裂き折られ
 木葉は破れて鋸  歯を見る如くなりにけり。
 神素盞嗚大神は、神代に於ける武勇絶倫英勇にして、仁慈権化とも称ふべき、瑞霊雄々しき姿、漆如き黒髪を長く背後に垂れ給ひ、秩序整然たる鼻下八字鬚、下頤御鬚は、瑠璃光如く麗しく、長く胸先に垂れ給ひ、雨に浴し風に梳り、山と山とに囲まれし、西蔵国に出で給ふ。
 地教山に現はれて、一度は尊登山を塞ぎ奉りし鬼掴は、昔ペテロ都に在りて、道貴彦弟と生れたる高国別後身、幾度か顕幽二界に出没し、又も身魂は神界、高天原に現はれて、天岩戸大変に差加はりし剛者、神素盞嗚大神、清き御心推しはかり、義侠に富める逸男、いかで此儘過ごすべき、天教山に坐しませる、皇大神御言もて、地教山に立ち向ひ、一度は神命もだし難く、瑞大神に、刃向ひまつり、尊登山を悩まさむとしたりしが、心奥は裏表、神素盞嗚大神を、心限り身限り、助け奉らむもをとて、地教山に夫れとなく、尊登り来ませるを、今か今かと待ち居たる、其御心ぞ尊けれ。
 神素盞嗚大神は、高国別を伴なひて、地教山を後にして、青垣山を繞らせる、豊葦原秘密国、凩荒び雪深き、ラサフ都に差掛る、斯かる例は昔より、まだ荒風すさぶ野を、神を力に誠を杖に、心嘶きに、勇み進んで出でて行く。一天俄に掻き曇り、灰色空ドンヨリと、包む折しも降り来る、激しき雪に二柱、とある藁屋に駆け込みて、一夜宿を請ひ給ふ。
 素盞嗚尊は門口に立ち、声も静に、
『吾々は漂ひ旅を致す二人連、雪に閉され日は暮果て、行手に困り、困難を致す者何卒お慈悲に一夜宿を許せかし』
と訪ひ給へば、
『アイ』
と答へて一人浦若き娘、門口に立ち現はれ、
『これはこれは旅お方様、さぞ雪にお困りで御座いましたでせう。みすぼらしい茅屋なれど、奥には相当広き居室も御座いますれば、どうぞ御寛りと御休息を願ひます』
 尊は、
『アヽ世界に鬼はないも……夫れは千万忝ない、御言葉にあまえ、今晩はお世話になりませう』
『どうぞ、そうなさつて下さいませ、奥へ御案内致しませう』
と娘は淑やかに、足許優しく奥一室に二人を導き行く。二人は娘案内に連れ、奥一室囲炉裡前に安坐して、手をあぶりつつ、ヒソヒソと話に耽り給ふ。此時主人らしき男揉手をし乍ら此場に現はれ、二人に向つて叮嚀に会釈し、
『これはこれは旅御方様、能くも此茅屋に御逗留下さいました。何分焚物不自由な所にて、嘸お困りで御座いませう』
と云ひ乍ら、黎牛乾きたるを籠に盛りて、囲炉裡に焚べ、室を暖めるであつた。此地方は四面高山に包まれたる、世界秘密国にして、交通不便土地なれば、他国人入国を許さざる所である。されど高天原大事変より、人心大に軟化し、稍世界同胞主義に傾きたる折柄なれば、他国人入り来るを、今は反対に歓迎し、物珍らしがりて、部落老若男女先を争ひ訪ね来り、面白き話を聴聞せむとするである。平素燃料は麦藁又は黎牛糞を乾かせて用ゐ、麦を炒りて粉末とし、食料として居る。一時晴るれば、一時雪霰降り来り、天候常に定まらざる土地である。世界に於ける大高地なれば、穀物も余り豊熟ならず、豊作年と雖も、例へば五升麦種を蒔いて、一斗収穫を得れば、是を以て豊作となす位な所である。こ主人名はカナンと云ふ。カナンは炒麦粉を木椀に盛り、茶を沸かせ持ち来り両手をつき、
『お二人お方、御存じ通り不便土地、他国方に差上ぐる様な物は御座いませぬが、此れが吾々国にては、最良馳走で御座いますれば、ゆるゆる召しあがり下さいませ』
と言ひ棄てて一室に姿を隠したり。二人は麦炒粉に茶を注ぎ、匙もて捏ね乍ら食事せる最中に、五人美しき娘こ場に立現はれ、叮嚀に両手をついて辞儀をなし、一度に立つて歌を歌ひ且舞ひ、二人疲れを慰めむと努むる様子なり。
『ヤア各方、遅がけに参り、御邪魔を致した上、結構な馳走に預り、実に満足至りである。汝等は此家娘なりや』
と言葉も終らざるに、年長娘、
『ハイ妾は此家主人カナン妻で御座います。此処に居りまする女は、皆妾姉妹何れもカナン妻となつて楽しき月日を送る者、併し乍ら高天原より神素盞嗚大神様、千座置戸を負はせ給ひ、何処ともなく落ち行き給ひしより、今迄平穏無事なりし此秘密郷に、ウラナイ教魔神侵入し来り、古来風俗を攪乱し、人心恟々として安き心無き折柄、又もやバラモン教邪神、潮如く押寄せ来り、今や国内は恰も修羅惨状で御座います。神素盞嗚大神が此大地御主宰と現はれましたる世は、此秘密郷も実に天国楽土様なもで御座いましたが、大神様がお隠れ以来と云ふもは、俄に国外より諸々悪神入り来つて、種々変異をなし、此儘に放任せば、忽ち地獄道を現出するやも計り難しと、国人心ある者は、再び大神出現を希ひ、茶断ち塩断ち火物断ちを致し、天に祈願を籠めて居ります。夫故ここ一月許りは、吾々は総て飲食を断ち、日夜祈願を凝らし、善根を励み居りまする様次第、御相手も仕らず、御無礼段は、右様次第なれば、何とぞ悪からず御見直して下さいませ、一同姉妹に代りて御願ひ致します』
 素盞嗚尊は双手を組み、両眼より涙をホロホロと落し、黙然として吐息をつき給ふ。
高国別『アヽ実に感心だ、有難い有難い。汝等国人が憧憬する、神素盞嗚大神様は、即ち此処に……否……やがて此国に御降臨遊ばして、汝等が望みを叶へさして下さるであらう、必ず心配されなよ』
『妾はカナン妻カエンと申す者、どうぞ宜しくお願ひ致します。十日も二十日も、百日も、永く御逗留を願ひます。何分此国は食物穫れない国で御座いまするから、家を増加す事は出来ませぬで、此通り一戸内に家内が沢山居るで御座います。吾夫は妾が兄で御座います』
高国別『さうすると、此国は一夫多妻主義だな』
『ハイハイ、已むを得ず、妾家庭は一夫多妻、家に依りては多夫一妻所も御座います』
高国別『ハテナア、モルモン宗様だワイ』
『ホヽヽヽヽ……夜も早深更に及びました、どうぞ御寛りと御就寝み下さいませ』
と五人は一度に挨拶をし乍ら、次室に姿を隠したり。
尊『高国別殿、今晩はゆるりと寝まして貰はうかい』
高国別『有難う御座います』
と傍物入より獣皮を取り出し、之れを敷き、幾枚も幾枚も重ねて、二人は安々と寝に就き玉ひける。
 此国風俗は、戸数を増加す事を互に戒めて居る。例へば六人兄弟があつて、其中一人が男であれば、此男を夫とし、決して他家へ縁付はせないである。又一戸家に五人男があり、一人出来た時は、五人夫に一人妻といふ不文律が行はれて居る。夫れ故男子許り生れたる時、或は女子許り生れたる時は、此家血統は絶えて了ふといふ不便があるである。茲に素盞嗚尊は、此惨状を見るに忍びず、他家と縁組をすることを許された。是れより素盞嗚神を縁結び神と賞讃へ、此国にてはイドム神として、国人が尊敬する様になつた。
 素盞嗚尊は、男女囁き声にフト目を醒まし、耳を澄して聞き給へば、何事か祈り声である。尊は高国別肩をゆすり乍ら、
尊『ヤア高国別、目を醒されよ。何だか怪しき人祈り声』
と言葉終らぬに、高国別はパツと跳起き、
『如何にも大勢声で御座います。最前も此家女房カエンとやら話に、茶断ち、塩断ちを致し、素盞嗚尊再出現を祈つて居るとか聞きましたが、大方ソンナ事ではありますまいか』
尊『吾は此室に於て休息致し居れば、汝はこれより事実否を調べ来れよ』
高国別『承知致しました』
と此場を立つて、忍び足に声する方に進み行く。見れば数十男女、真裸儘、庭前野原に両手を合せ蹲踞み乍ら、力なき声を振絞り、何事か一心不乱に祈願をこめ、やがて一人男、大麻を打振り乍ら神懸状態となつて、驀地に西北指して駆け出したり。数多男女はわれ遅れじと一生懸命に追跡する。されど永らく断食に身体弱り、転けつ輾びつ其後を追ひ行く。高国別はそ状況を瞬きもせず打眺めて居たが、知らず識らず自分も歩み出し、引きずらるる如き心地して、大勢後に忍び忍び従ひ行く。遥前方に当りて枯芝盛りたる如き小さき饅頭形丘が見えて居る。麻振りつつ先に進んだ男は小丘上に突つ立ち、何事か叫び乍ら、麻を前後左右に打振り打振り狂気如く踊り廻り、飛びあがり跳まはり、キヤツ キヤツと怪しき声を立てて居る。数十人老若男女は同じく小丘上に駆けあがり、これ亦先男と同様踊りまはり跳廻る。高国別は原野草に身を隠し、其怪しき祈祷を息を殺して見つめて居た。暫くあつて麻持つた男は、小丘彼方に忽ち姿を隠した。続いて数多男女は一人減り二人減り、三人、五人と数を減じ、終には唯一人麗しき女を残して、残らず姿を没して了つた。
高国別『ハテ、不思議な事があればあるもだ。あれ丈け大勢老若男女が、何処へ往つたか、見渡す限り目を遮る物なき此広原に、煙如く消え失せるとは合点行かぬことだ。まさか大地に吸収されて粉末になつたでもあるまい』
と独ごち乍ら、前後左右に心を配り、一足々々進み行く。一人娘は小丘上に双手を組み、稍伏目勝に無言儘俯むいて居る。高国別はつかつかと進み、
『何れ女中か知りませぬが、先程物蔭にて窺へば、幣束を持てる男後より数十人男女、此小丘を目がけて駆け上り、前後左右に踊り狂ふよと見る間に、忽ち姿は消え失せて了つた。あなたは其中一人らしく思はるるが如何なる次第なるか、詳細に………お構ひなくば物語られたし。吾は天下を救ふ神使………』
と問ひかけたるに、女は其声に驚いて高国別顔を打見守り、首を左右に振つて何応答もせざりける。高国別は已むを得ず、自ら小丘に駆け上り、附近を一々点検すれ共、別に穴らしきももなければ、人倒れたる姿も見えぬ。虫声さへ聞えない。高国別は、
『ハテ訝かしや』
と丘上にどつかと坐し、双手を組んで思案に暮れ居たり。此時、以前女は、突然高国別首に細紐をひつかけ、背中合せに負ひ乍ら、トントントンと元来し路へ走り出す。高国別は喉を締められ、息も絶え絶えに、手足を藻掻きつつ負はれて行く。大男が命懸大藻掻きに屁古垂れたと見え、女は一二丁来たと思ふ時、石に躓き、脆くも其場に倒れた。途端に女は細紐を放す、高国別はヒラリと身返りし起上り、女素首をグツと握つて、
『コラ汝は大胆不敵曲者、容赦はならぬぞ』
と蠑螺如き拳骨を固めて、骨も砕けよと許り、打下ろさむとする形勢を示す。併し高国別中は、決して此孱弱き女を打擲する心は、毫末もなかつた。唯勢を示して事実を白状せしめむ策略であつた。
 女は、
『ホヽヽヽヽ、あマア恐ろしいお顔わいなア。ソンナ怖い顔をなされますと、此西蔵国は女房になる者が御座いませぬよ。あマアおむつかしい顔……ホヽヽヽ』
『アハヽヽヽ、ナント大胆至極な女もあればあるもだなア』
『オホヽヽヽヽ、何程怖い顔をなさつて、拳を固め、妾を打つ様な形勢をお示しになつても、あなた中はさうではありますまい。何を言うても、一方は孱弱き女一方は鬼をも挫ぐ荒男英雄豪傑、どうして繊弱き女が、………馬鹿らしくも打擲が出来ませう』
とニタリと、高国別顔を打まもる。
『ナント妙な女だ。………コラ女、此方はソンナ優しい女腐つた様な男でないぞ、鬼雲彦家来鬼掴とは俺事だ。頭からかぶつて喰てやらうか……』
『ホヽヽヽヽ、夫れ程偉い鬼掴なら、何故妾に油断をして、細紐に喉を締められたか。それや全く偽り、お前は高天原から下り来たれる高国別であらうがなア』
『イヤ拙者は決して左様な者では御座らぬ。悪逆無道バラモン教悪神だ。こ方が此国に現はれた以上は、何奴も此奴も、片つ端から雁首を引抜いて、御大将鬼雲彦や、八岐大蛇神に御馳走を献上するだ』
『ホヽヽヽヽ、置かんせいなア、これ高サン』
と肩をポンと叩く。
『オイ馬鹿にするな。金毛九尾お化奴が色で迷はす浅漬茄子、何程巧言令色限りを尽し、吾を誑惑せむとするも、女にかけては無関係、没交渉拙者だ。女色に迷うて、どうして此悪道が弘まらうかい。グズグズ吐すと股から引裂いてやらうか』
『サアサア股からなつと、首からなりと、あなたに任せた此体、一寸刻か五分試し、焚いて喰はうと、焼いて喰はうと、あなた御勝手、妾は夫れが満足で御座んす。ホヽヽヽヽ』
『益々分らぬ奴だ。エー、怪つ体悪い、此広野ケ原で幸ひ人が居ないから好いも、天知る地知る吾も知るだ。七尺八寸荒男が、六尺足らず繊弱き女に口説かれて、グズグズ致して居るは、実に何とも慚愧汗顔至りだ………オイ女其方は一体全体何者だ。早く化皮を現はさぬか』
『ホヽヽヽヽ、妾はあ天教………否々やつぱり化物女で御座います』
『アハア、さうか、貴様はやつぱり、癲狂院代物だな。コンナキ印に暇を潰して居つては尊様に対して申訳がない………オイ女、貴様ゆつくりと、夢でも見て、独言を言つて居るが宜からう』
と踵を返し、小丘を指して進み行かむとす。以前女又もや細紐をパツとふりかけた途端に、足をさらへられて、大男はドスンと大地に倒れた。
『アイタヽ、エーエーまた引つかけよつた。馬鹿にするない、モウ了見ならぬぞ』
『ホヽヽヽヽ、高国別弱い事わいう、アイタタとは、そら何とした又弱音を吹きやしやんす。ひつかけ戻し仕組ぢやぞい。神が綱を掛けたら、逃げやうと言つても逃しはせぬ、アイタタとは誰に会ひたいだエ、神素盞嗚大神にか………』
『エーやつぱり此奴ア金毛九尾化狐だ。何もかも皆知つてゐよる、サアもう勘忍袋緒が切れた、………ヤア女、此高サンが首途血祭だ、覚悟を致せ……』
『ホヽヽヽヽ、あ言霊でなア』
『エー言霊もあつたもかい、高サン腕力で荒料理だ、覚悟を致せ』
『ホヽヽヽヽ、妾は数万年昔より、磐石如き覚悟を定めて居りますよ。あソワソワしい高サン振舞、わしや可笑しい、ホヽヽヽヽ』
『エー邪魔臭い、コンナ奴に相手になつて居つたら、日が暮れるワイ。兎に角怪しき彼小丘、一伍一什を取調べて尊様へ報告を致さねばなるまい、尊におかせられても、さぞやお待兼であらう。エー此綱を此奴に持たして置けば、又もやひつかけ戻しに遭はしよるかも知れない』
と云ひ乍ら、細紐をクルクルと手繰つて、懐に捩ぢ込まうとする。
『ホヽヽヽヽ、広野ケ原で七尺八寸泥棒が現はれた、ナントまあ甲斐性ない泥棒だこと、女腰紐を奪つて帰る様な泥棒にロクな奴はない』
『エー面倒臭い、今度は真剣だ、股から引裂いてやらう………ヤイ女、俺が怒つたら、本真剣だ』
『オホヽヽヽヽ、其本真剣も怪しいもだ、細紐一本で貴重な女生命を取らうとする腰抜泥棒………美事取るなら取つて見よ。妾もサル者、此細腕続く限り、力限り、お相手になりませう』
『アハヽヽヽ、一寸やりよるな、…………アーア、女子と小人は養ひ難しだ。ヤア何処お女中か知らぬが、観客無い芝居は根つからはづまない。モウ此処らで幕切れと致して二人手に手を取つて、二世や三世はまだ愚、五六七世までも、生死を共に、死出も三途も、駱駝道伴れ、鴛鴦睦み合ひと云ふ段取だ。サアサア最早平和克復だ。あなにやしエー乙女、チヤツとおじや』
と目を細くし、舌をペロリと出して、腰付怪しく手を差し延ばせば、女は三十珊榴弾を撃つたる如く、
『マア好かんたらしいお方』
と云ひ乍ら、肱鉄砲を二三発乱射したり。
『アイタヽ、益々合点行かぬ剛女、古今無双ヒーロー豪傑、高国別も半分許り感服仕つた』
『ホヽヽ、自我心強い高国別、半分感服とはそりや何囈語』
『イヤもう全部感服仕つた。金毛九尾白面悪狐と云ふ奴は実に巧なもだ。それ位力量がなくては、到底此秘密郷を蹂躙する事は出来ないワイ。何は兎も有れ是から貴様気に入らぬ彼土饅頭探険だ』
と大股にソリソリと駆出したり。
 女は(義太夫調)
『マアマア、待つて下さいませ。折角顔見た甲斐も無う、モウ別るるとは曲がない。お前に会ひたさ、顔見たさ、死なば諸共死出三途、神々様に願をかけ、先へ廻つてお前行衛、お前来るを待つて居た妾が思ひ、物憐れを知らぬ男は、人間ではあるまい、妾が切なき思ひを推量して下さんせ』
『アーア馬鹿にしよる、斯うして何時までも暇取らせ、其間に数十人老若男女を計略を以て虐殺する計画であらう。………エー邪魔ひろぐな』
と女を蹴飛ばし、踏み散らし、韋駄天走りに進み行く。
『オーイオーイ、高サン待つた』
『エー待つも、待つたもあるもか、貴様、勝手に何なとほざけ』
と一足々々小丘周囲を四股踏み乍ら歩み出した。忽ちバサリと大地は凹んで四五間地底ヘズルズルズルと落ち込んだ。以前女は落込んだ穴口より、下を覗いて、
『ヤア高サンか感心々々 ホヽヽヽヽ』
と笑つて居る、高国別上は果して如何なるであらうか。
(大正一一・四・三 旧三・七 松村真澄録)
霊界物語ネットで読む 霊界物語ネット
オニド関係の更新情報は「オニド関係全サイトの更新情報」を見れば全て分かります!
王仁DB (王仁三郎データベース)は飯塚弘明が運営しています。 /出口王仁三郎の著作物を始め、当サイト内にあるデータは基本的にすべて、著作権保護期間が過ぎていますので、どうぞご自由にお使いください。また保護期間内にあるものは、著作権法に触れない範囲で使用しています。それに関しては自己責任でお使いください。/出口王仁三郎の著作物は明治~昭和初期に書かれたものです。現代においては差別用語と見なされる言葉もありますが、当時の時代背景を鑑みてそのままにしてあります。/ 本サイトのデータは「霊界物語ネット」掲載のデータと同じものです。著作権凡例 /データに誤り等を発見したら教えてくれると嬉しいです。
連絡先:【メールアドレス(飯塚弘明)
プライバシーポリシー
(C) 2016-2024 Iizuka Hiroaki