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文献名1霊界物語 第16巻 如意宝珠 卯
文献名2第1篇 神軍霊馬よみ(新仮名遣い)しんぐんれいば
文献名3第8章 衣懸松〔598〕よみ(新仮名遣い)きぬかけまつ
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2021-01-27 17:07:00
あらすじ怪しい男女二人は、地中から這い出てきた。それはウラナイ教高姫と、そお付青彦であった。こ岩窟は、二人が隠れ家としていたもであった。高姫は、鬼雲彦ように悪を標榜して悪をなすは馬鹿だ、神素盞嗚大神教えを嘘だと言って教え子を食い殺す、など自説を悦に入って展開する。そこへ鬼雲彦が手勢を率いてやってきて、ウラナイ教二人を捕らえようと、岩窟大岩を除こうとするが、岩はびくともしない。そこへ今度は亀彦、英子姫、悦子姫らがやってきて、言霊で鬼雲彦軍勢を追い散らしてしまった。一行は祝詞を唱えて休息していると、高姫、青彦がやってきた。高姫は、峠向こう衣懸松自宅に一行を誘って教えを説こうとする。高姫と亀彦はおかしな問答をした後、亀彦一行は高姫についていく。しかし、高姫宅は火事猛火で焼け落ちている最中であった。高姫と青彦は慌てて物を持ち出そうとするが、猛火に袖を焼かれて川に落ちてしまう。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年04月14日(旧03月18日) 口述場所 筆録者松村真澄 校正日 校正場所 初版発行日1922(大正11)年12月25日 愛善世界社版100頁 八幡書店版第3輯 437頁 修補版 校定版104頁 普及版43頁 初版 ページ備考
OBC rm1608
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本文  大江山本城に間近くなつた童子ケ淵傍に現はれ出でたる二人男女、又もや地中より這ひ出でて、岩戸入口を打眺め、
青彦『ヤア高姫さま、何時間にか、吾等が入口を、斯く如き千引岩を以て塞ぎよつたと見えます。幸ひ脱け穴より斯うして出て来たも、万一此穴がなかつたならば吾々は三五教に魂を抜かれた鬼彦一派奴と共に、徳利詰に遭つて滅びねばならない所であつたです。何とかして、此岩を取り除けたいもですな』
高姫『オホヽヽ、是れ全くウラナイ教神様御守護で御座いませう。何れ又時節到来せば、此岩は春日に氷解けるが如く消滅するであらう。瑞御魂変性女子が悪戯を致しよつたに相違なからふ。必ず心配に及びますまい』
青彦『さうだと言つて、此巨大なる岩石が、どうして解けませうか。押したつて、曳いたつて、百人や千人力では、ビクとも致しますまい』
高姫『あマア青彦さま青ざめた顔ワイなあ、これ位な事に心配致す様では、神政成就は出来ますまい。あなたも聖地ヱルサレムに現はれた行成彦命と化けた以上は、モウ少し肝玉を大きうして下さいや』
青彦『ぢやと申して、此岩を取り除けなくては、再び吾等は地底巌窟に出入する事は出来申さぬ。出る事はヤツト事で、胸薄皮を摺剥き乍ら出て来ましたが、這入るは到底困難です。早速間に合ぢやありませぬか。鬼雲彦大勢力を以て、今にも此場に現はれ来るとあらば、吾々は如何致すで御座らう、吁、心許ない今有様』
と悄気返る。高姫はカラカラと打笑ひ、
『ホヽヽヽ、マア阿呆正直な青彦さま、顔から首まで真青にして、慄うて居るか、夫れだから、世間からお前は青首だと言はれても仕方があるまい。チト確乎なさらぬか、鬼雲彦が何恐ろしい』
青彦『それでも鬼雲彦はバラモン教大棟梁、彼奴が恐さに、万一用意と、此処に巌窟を掘つておいたではなかつたですか』
高姫『一旦はさう考へたが、最早今日となつては、何事も此高姫が胸中策略を以て、鬼雲彦も大半此方者、あまり心配するもでない。お前もチツトは改心を致して、鬼心になつたが宜からう』
青彦『イヤ、其様な悪魔に与するならば、吾々は真つ平御免だ、今日限りお暇を頂きませう』
高姫『オホヽヽヽモウ斯うなつては、逃げようと云つたつて、金輪奈落、逃がすもか、チヤンと、湯巻紐でお前知らぬ間に、体も魂も縛つて置いた。逃げようと云つたつて、どうも出来まい、逃げるなら、勝手に逃げて御覧うじ、妾掛けた細紐は、鉄鎖よりもまだ強い、女毛一筋で大象でも繋ぐと云ふではないか。夫れさへあるに下紐を以て結び付けた以上は、ジタバタしてもあきませぬ。ホヽヽヽ』
青彦『わたしは今迄、あなた教は、三五教以上だ、変性女子御霊をトコトン懲しめ、部下奴等を一人も残らず、ウラナイ教擒に致し、善に導き助けてやらうと思つて居たに、これや又大変な当違ひ、善か悪か、あなた本心が聞きたい』
高姫『善に見せて悪を働く神もあれば、悪に見せて善を働く神もある。善悪邪正分らぬ様な事で、能う今迄妾に随いて来た、………愛想が尽きた身魂ぢやなア、ホヽヽホーホ』
青彦『さうすると、ウラナイ教は、善に見せて悪を働くか、悪に見せて善を働くか、どちらが本当で御座る』
高姫『エー、悟り悪い、悪と言へば何事に係はらずキチリキチリと埒明く人間事だ。善と云へば、他人苦労で得を取る、畢竟御膳を据ゑさして、苦労なしに箸を取ることだ』
青彦『益々合点が往かぬ、あなた仰せ……』
高姫『善に強ければ悪にも強い、此方は仮令善であらうと、ソンナ事に頓着はない、盗人群に捕手が来たら、其捕手は盗人からは大悪人ぢや、コツソリと博奕を打つて居る其場へポリスが踏み込んで来た時は、博奕打から見たら、其ポリスは大悪人だ。お前と妾と暗夜に橋袂でヒソヒソ話をして居る所へ、三五月が雲戸開けて覗いた時は、其月こそ吾等為には大悪魔だ。これ位事が分らいで、ウラナイ教がどうして開けるか。全然是れから数十万年未来十七八世紀人間様な事を思つて居らつしやる。せめて十九世紀末か、二十世紀初頭、善悪不可解人間に改善しなさい。エーエー悟り悪い。……一人神柱を拵へるにも骨をれた事だ。若い時から男性女と云はれたる此高姫が、心に潜む一厘仕組、言うてやりたいは山々なれど、まだまだお前にや明かされぬ、エーエー困つた事になつたワイ』
 青彦双手を組み、暫し思案にくれて居る。
高姫『アヽ仕方がない、コンナ分らぬ神柱を相手にして居ると、肩が凝る。エー仕方がない。サアサア衣懸松妾が隠れ家に引返して、酒でも飲みて機嫌を直し、ヒソヒソ話序に、誠事を知らして遣らう。さうしたら、チツとはお前も改悪して胸が落着くであらう。改心と云ふ事は、神素盞嗚尊教を、嘘だ嘘だと言つて、其教子を虱殺しに喰ひ殺し、そつと舌を出して、会心笑を漏らすと云ふ謎だよ。お前もまだ悪が足らぬ、飽くまで改心……ドツコイ……慢心するが宜い。慢心裏は改心だ、改心裏は慢心だ、表教裏はウラル教、表と裏と一つになつて、天地経綸が行はれるだよ』
青彦『エー益々訳が分らなくなつた。さうすると貴女は迷信教を開くだな』
高姫『さうだ、迷信とは米字に、辵をかけただ。米字は大八洲形だよ、大八洲彦砦に侵入して、信者をボツタクるから、所謂迷信教だ。オホヽヽヽ、迷うたと云ふ言葉は、悪魔魔を呼ぶと云ふ事だ。それに三五教奴は馬鹿だから、迷うたと云ふは、誠マに酔ふだなどと、訳分らぬ事を言つてゐよる、嗚呼迷信なる哉、迷信なるかなだ』
青彦『ますます迷宮に入つて来た』
高姫『定まつた事だ。米字に因縁ある所に建てたお宮に立てこもつた吾々は、迷宮に居るは当然だ。三五教素盞嗚尊は、よつぽど、馬鹿正直な奴だ、世界為に千座置戸を負ひよつて、善を尽し、美を尽し、世界から悪魔だ、外道だと言はれて、十字架を負ふは自分天職だと甘ンじて居る、コンナ馬鹿が世界に又と一人あるもか、世界中で馬鹿鑑と云へば、調子に乗つて木登りする奴と、自ら千座置戸を負ふ奴と、広い街道を人軒下を歩いて、看板で頭を打つて瘤を拵へて吠える奴位が大関だ。……鬼雲彦も余つ程馬鹿だ。初から悪を標榜して悪を働かうと思つたつて、ナニそれが成功するもか、智慧無い奴する事は、大抵皆頓珍漢ばつかりだよ。善悪不二、正邪同根と云ふ真理を知らぬ馬鹿者中だ。青彦、お前も大分素盞嗚尊に被れたな、世中は何事も裏表あるもだよ、ゴンベレル丈権兵衛り、ボロレル丈ボロつて、其後は、白蓮るが賢い行方だ。お前も余つ程能い青瓢箪だなア』
と、ビシヤリと額を叩く。
青彦『ヤアどうも意味深長なる御説明恐れ入つて御座います。モウ斯うなる上は、どうならうとも、あなたにお任せ致しますワ』
高姫『アヽさうぢや さうぢや、さうなくては信仰は出来ない。信仰は恋慕心と同じ事だ、男女間恋愛を極度に拡大し、宇宙大に拡めたが信仰だ。恋に上下美醜善悪隔ては無い、宜いか、分かりましたか』
青彦『ハイ、根つから……能く分りました』
高姫『エー怪体な、歯切れせぬ、古綿を噛む様な、歯脱けが蛸でもシヤブル様な返辞だなア、オホヽヽヽ、何は兎もあれ、衣懸松隠れ家へ行きませう』
と先に立つてスタスタとコンパス廻転を初める。青彦は不性不性に随いて行く。
 最前現はれた鬼雲彦使魔神、五人男は先に立ち、数多魔軍を引連れて、此方を指して進み来る。忽ち聞ゆる叫び声、右か左か後か前か、何方ならむと窺へど、姿は見えず声ばかり、足下より響き来る。鬼雲彦は栗毛馬にチリンチリンチヨコチヨコ走り、馬を止めて大音声、
『ヤアヤア者共、此岩石を取除け。…此地底には宏大なる岩窟がある、ウラナイ教宣伝使高姫、青彦二人、数多人々と共に隠れ忍ぶと見えたり。早く此岩石を取除けよ』
と呶鳴り立つれば、数多魔神は此巨岩に向つて、牡丹餅に蟻が集つた様に、四方八方より武者振り付く。然れども幾千万貫とも知れぬ、小山如き岩石に対して、如何ともする事が出来ざりけり。鬼雲彦は気を焦ち、自ら駒を飛び下りて、人頭髪を以て綯へる太き毛綱を持出し来り、巌に引つかけ、一度に声を揃へて、エーヤエーヤと曳きつける。曳けども、引けども、動かばこそ、蟻飛脚が通る程も、岩は腰を上げぬ。中より聞ゆる数多人声刻々に迫り来る。斯かる所へ天地も揺るぐ許り大声を張上げ乍ら、宣伝歌を歌ひ、十曜手旗を打振り打振り進み来る一男二女宣伝使ありき。
亀彦『ヤアヤア鬼雲彦一派奴輩、最早汝が運尽き、吾れこそは三五教宣伝使、万代祝ふ亀彦、暗夜を照らす英子姫、悦子姫三人なるぞ。一言天地を震動し、一声風雨雷霆を叱咤するてふ三五教独特清き言霊を食つて見よ』
と云ふより早く、天数歌を謡ひ上げつつ、三人一度に右手を差出し食指先より五色霊光を発射して、一同にサーチライト如く射照せば、流石鬼雲彦も馬を乗り棄て、転けつ、輾びつ一生懸命、大江山本城指して雲を霞と逃げて行く。
亀彦『アハヽヽヽ』
二女『ホヽヽヽヽ』
亀彦『ヤア面白い面白い、彼れが鬼雲彦大将、我言霊に畏縮して逃散つたる時可笑しさ、イヤもう話にも杭にも掛つたもで御座らぬ。是れと申すも全く、神素盞嗚大神尊き御守り、国武彦御守護致す所、先づ先づ此処で一服仕り、天津祝詞を奏上し、神界に対し御礼を奏上し、ボツボツと参りませう。今日は九月九日菊紋日、是が非でも、今日内に悪神を言向け和さねばなりますまい。六日菖蒲十日菊となつては、最早手遅れ、後祭り、ゆるゆると急ぎませう』
 茲に三人は巨岩傍に端坐し、天津祝詞を奏上したりしが、祝詞声は九天に響き、百千天人天女下り来つて、音楽を奏づるかと疑はるる許りなり。祝詞声は山又山、谷と谷と木霊に響き、悪魔影は刻々と煙となつて消ゆるが如き思に充たされける。
亀彦『サアサア御二方、ゆつくりと休息を致しませう』
英子姫『大変に足も疲労を感じました。休息も宜しからう』
悦子姫『ゆつくり英気を養つて、又もや華々しく言霊戦を開始しませう』
 茲に三人は手足を延ばし、芝生上に遠慮会釈もなく、ゴロリと横たはりぬ。後方より震ひを帯びた疳声を張上げ乍ら、
『オーイオーイ』
と呼ばはりつつ、此方を指してスタスタと息をはづませ遣つて来るは男女二人、
亀彦『ヤア何だか気分悪い、亡国的悲調を帯びた声がする。あ言霊より観察すれば、どうで碌な神ではあるまい。ウラル教的声調を帯びて居る。……モシ英子姫様、一寸起きて御覧なさいませ』
 英子姫はムツクと立上がり、後を振返り眺むれば、顔を真白に塗り立て、天上眉毛角隠し、焦茶色着物を着流した男女二人、忽ち此場に現はれて、
女『これはこれは旅御方様、斯様な所で御休息なされては、嘸やお背が痛う御座いませう、少し道寄りになりますが、妾宅へお越し下さいますれば、渋茶なりと差上げませう。あ衣懸松麓に出張致す者、どうぞ御遠慮なくお出で下さいませ。あなたお姿を眺むれば、どうやら三五教宣伝使とお見受け申す。妾等も三五教には切つても切れぬ、浅からぬ因縁を持つて居る、実地誠事は、常世姫憑つた此肉体、日出神生宮にお聞きなさらねば、後で後悔して、地団駄踏みても戻らぬ事が出来まする。あなたは三五教教をお開きなさるは、天下国家為、誠に結構で御座いまするが、併し乍ら三五教教は国武彦命が表であつて、素盞嗚尊は緯役、邪さ道ばつかり教へる。天岩戸を閉める、悪鑑で御座いまする。根本トコトン一厘仕組は、此高姫が扇要を握つて居りますれば、マアマア一寸立寄つて下さい。本当因縁聞かして上げませう。他人苦労で徳を取らうと致す素盞嗚尊教は駄目ですよ。三五教教は国武彦神がお開き遊ばしただ。本当事は系統に聞かねば分りませぬ。サアサア永い暇は取りませぬ。どうぞお出で下さりませ』
亀彦『私はお察し通り三五教宣伝使、併し乍ら、あなたとは反対で、国武彦教は嫌です、緯役素盞嗚尊教が飯より好、お生憎様乍ら、どうしても、あなたと私は意向が合はぬ。真つ平御免蒙りませう、ナア英子姫さま、悦子姫さま』
英子姫『ホヽヽヽ、亀彦さま、物は試しだ、一服がてらに聞いてやつたらどうでせう』
 高姫眉を逆立て、口をへ字に結び、グツと睨み、暫くあつて歯脱けた大口を開き、
『サア夫れだから、瑞御霊教は不可ぬと云ふだよ。女分際として、今言葉遣ひは何態、……ホンニホンニ立派な三五教ぢや、ホヽヽヽ。コレコレ青彦さま、お前もチツト言はぬかいな、唖か人形様に、知らぬ顔半兵衛では、三五教崩壊大望は…………ドツコイ………三五教改良大望は成就致しませぬぞや』
青彦『何れ方かは存じませぬが、吾々も元は素盞嗚尊教を信じ、三五教に迷うて居ました。併し乍らどうしても変性女子言行が腑に落ちぬで、五里霧中に彷徨ふ折から、変性男子お肉体より現はれ給うた日出神生宮、誠生粋日本魂高姫さまお話を聞いて、スツクリと改心致しました。あなたも今は変性女子に一生懸命と見えますが、マア一寸聞いて見なさい、如何な金太郎あなたでも、訳を聞いたら変性女子に愛想が尽きて、嘔吐でも吐き掛けたい様になりますぜ。物は試しだ、一つ行きなさつたら如何ですか』
亀彦『ソンナラ一つ聴いてやらうか』
高姫『聴いて要りませぬ、誠道を教へて、助けて上げようと、親切に言つて居るに、聴いてやらうとは、何たる暴言ぞや。どうぞお聴かせ下され………と何故手を合はしてお頼みなさらぬか』
亀彦『アハヽヽヽ、お前方から聴いて呉れいと頼みたぢやないか、夫れだから、研究為に聴いてやらうと言つたが、何が誤りだ。エーもう煩雑くなつた。ご免蒙らうかい』
高姫『妾が是れと見込みた以上は、どうしても、斯うしても、ウラナイ教を、腹を破つてでも、叩き込まねば承知がならぬ、厭でも、応でも、改心させる。早く我を折りなされ、素直にするが、各自お得だ。あいた口が塞まらぬ、キリキリ舞を致さなならぬ様な事が出て来ては可哀相だから、……サアサア早う、日出神生宮申す事を、耳を浚へて聴いたが能からう』
亀彦『アハヽヽヽ』
英子姫『オホヽヽヽ』
悦子姫『ホヽヽヽヽ』
高姫『何ぢや、お前さま等は、此日出神生宮を馬鹿にするかい』
亀彦『イエイエ、どうしてどうして、あまり勿体なくて、見当が取れなくなつて、面白笑ひに笑ひました。笑ふ門には福来る。副守護神か、伏魔か知らぬが、米々と能く囀つて人虚に侵入せむとする、天晴手腕、天星をガラツ様な御説教、旅憂さを散ずる為聴かして貰ひませう』
高姫『サアサア神政成就、日本魂根本一厘仕組を聴かして上げよう………エヘン……オホン……』
と女に似合はぬ、肩を怒らし、拳を握り、大手を振り、外輪に歩いて、ヅシンヅシンと、衣懸松麓を指して跨げて行く。三人は微笑を泛べ乍ら、青彦を後に従へ伴いて行く。
 衣懸松麓に近寄見れば、些やかなる草屋根破風口より黒烟、猛炎々々と立ち昇る。高姫は此態を見てビツクリ仰天、
高姫『ヤア火事だ火事だ、サアサア皆さま、火を消して下さい』
亀彦『煙は猛炎々々と立上れ共、家はヤツパリ燃えると見える。お前さま中も此通り紅蓮舌を吐いて燃えて居るであらう、霊肉一致、本当に眼から火出神生宮だ、アハヽヽヽ』
高姫『ソンナ事は後で聞いたら宜しい。危急存亡場合、早く助けて下さい、水を掛けなされ』
亀彦『ヤア大分最前から問答もして来た。水掛論は良い加減に止めて貰はうかい、舌端火を吐いた報いに、家まで火を吐いた。人を烟に巻いた天罰で、家まで烟に巻かれよつた。天罰と云ふもは恐ろしいもだ。マアゆつくり高姫さま活動振を見せて貰ひませう。雪隠小屋様な家が焼けた所で、別に騒ぐ必要もなからう。人飛出した空家が焼けるだ。高姫さまは雪隠火事で糞やけになつて居らうが、此方は高見見物で、対岸火災視するとは此事だ。一切執着心を取る為には、火洗礼が一番だ、是れで火出神神徳が完全に発揮されただ。ナア高姫さま、あなた……此れで御守護神が証明されると云ふもだ。お喜びなさい』
高姫『エー喧しいワイ、何どこ騒ぎぢやない、グヅグヅして居ると、皆焼けて仕舞わア、中へ這入つて、燗徳利なと引つ張り出して呉れい。コレコレ青彦、何して居る、火事と云ふは家が焼けるだ、水が流れるは川だ、目は鼻上に在る』
と狼狽へ騒いで半気違になり、摺鉢抱へて右往左往に狂ひ廻る可笑しさ。瞬く間に火は棟を貫き、バサリと焼け落ちた。高姫、青彦は着衣袖を猛火に嘗められ、頭髪をチリチリと燻べ乍ら、一生懸命に走りゆく。火は風に煽られて益々燃え拡がる。警鐘乱打声、速大鼓音頻りに聞え来る、二人は進退谷まり、丸木橋上より青淵目蒐けて、井戸に西瓜を投げた様に、ドブンと落込みしが、此音に驚いて目を覚せば、宮垣内伏屋に、王仁身は横たはり居たり。堅法華お睦婆アが、豆太鼓を叩き鐘を鳴らして、法華経お題目を唱へる音かしまし。
(大正一一・四・一四 旧三・一八 松村真澄録)
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