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文献名1霊界物語 第37巻 舎身活躍 子
文献名2第2篇 青垣山内よみ(新仮名遣い)あおがきやまうち
文献名3第10章 矢田滝〔1022〕よみ(新仮名遣い)やだたき
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2022-10-20 13:56:59
あらすじ葦野山峠西坂で牛糞をつかまされ、自暴自棄になって二三日は祝詞も修行も注視していた。三日目晩にまたもや臍下丹田から霊が喉元に上がってきて叫び始めた。大霜天狗と名乗る神霊は、葦野山峠失敗を触れて回ってやろうか、とからかい始めた。喜楽は、神霊は大霜天狗ではなく、やっぱり松岡様ではないかと詰め寄ると、神霊は実は松岡だと明かして大笑いした。喜楽文句はまったく聞く耳をもたず、松岡神は喜楽身体を使って夜十二時ごろに自宅を立ち出で、亀岡産土・矢田神社滝に水行を命じた。そして一週間滝行を行うことになった。七日目ににわかに恐ろしい思いに捉われ、怪しいもを見たが、一声腹中から『突進』という声を聴くと落ち着くことができた。滝へ途上、稲利下げ婆に会った。滝に来てみると、亀岡旅籠町外志ハルという神下し女が行を行っており、喜楽が審神を行った。外志ハルが正気に戻ると、お互いに神様話をしながら旅籠町に回り、夫筆吉にも面会して、道ために協力し合うことを約束して穴太に帰ってきた。
主な人物 舞台 口述日1922(大正11)年10月09日(旧08月19日) 口述場所 筆録者松村真澄 校正日 校正場所 初版発行日1924(大正13)年3月3日 愛善世界社版124頁 八幡書店版第7輯 77頁 修補版 校定版131頁 普及版60頁 初版 ページ備考
OBC rm3710
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本文  葦野山峠西坂でマンマと牛糞をつかまされ、阿呆らしくて堪らず、稍自暴自棄的になつて、二三日間朝寝をする、宵寝もする、天津祝詞奏上や、鎮魂帰神修業は中止してゐた。そうすると三日目晩、又もや臍下丹田から例グルグルが喉元へ舞ひ上り、
『アーアーアー』
と大きな声を連発し、暫くすると、
『阿呆阿呆阿呆!』
と呶鳴りつける。喜楽は思うた……本当に天狗云ふ通り、阿呆も阿呆、図なし阿呆だ。併し乍ら誰にも云はずに今まで隠してゐるだから、大霜天狗無頓着にあんな声で、葦野山峠失敗事件を喋りでもせうもなら、それこそ親兄弟、近所株内奴に馬鹿にしられ、神さま祭壇も取除かれて了うに違ひない、どうぞ大きな声を出してくれねばよいがなア……と心中に念じてゐた。
大霜『コレ肉体、スツパ抜かうか、チツと貴様も困るだろ。どうせうかな』
とからかひ始める。
喜楽『どうなつと勝手にしなさい。元土百姓や牧畜業者になつて了ひます。却て素破ぬいた方が諦めがついて宜しい』
大霜『そう落胆するもぢやない。まだお前は十分に身魂が研けて居ないから、モウ一度神が連れて行くから、水行をするだ。小幡川原水は体にしみ込んで垢がとれぬから駄目だ。今度此方がよい所へ連れて行つてやるから、其用意をせい。草鞋や脚絆をチヤンと拵へて、今晩十二時に此処を立つ事にするだ』
喜楽『又ウソを言ふぢやありませぬか?』
大霜『嘘も糞もあつたもかい。モウ斯うなつた以上は何事があらうと神に任し、糞度胸を据ゑてかからねば何事も成功しないぞ。あ事でフン慨しとるやうな事ぢや駄目だ』
喜楽『モシモシ天狗さま、お前さまは大霜だと云つて居られるが、違ひませう。どうも云ひぶりが松岡さまらしい』
大霜『松岡でも大霜でも構はぬぢやないか、お前魂さへ研けたらいいぢや。本当守護神が分らぬやうなこつては神柱も駄目だ。本当は俺を誰だと思うてるか』
喜楽『松岡さまにきまつてゐますワイ』
松岡『よう当てた、本当は松岡だ。奥山へ金掘りにやつたも、牛糞を掴ましてやつたも皆此松岡だよ、アハヽヽヽ、ウフヽヽヽ』
喜楽『馬鹿にしなさるな』
松岡『馬鹿卒業生を馬鹿にせうと思つても、する余地がないぢやないか、エヘヽヽヽ。これからサア身魂洗濯に連れて行かう。草鞋や脚絆がなければ下駄ばきでいいワ、サア行かう』
と腹中からどなると共に、喜楽体は器械的に立上がり、庭駒下駄をはいたまま、夜十二時頃に自宅を立出で、小幡川を渡り、スタスタと穴太を東に離れ、重利車清橋を越え、藪をぬけ、一町許り進むと、自分足は土中から生えた様にピタリと止まつて了つた。そこには田園に施す肥料をたくはへる糞壺があつて、異様臭気が鼻をついてゐる。腹中から塊がクルクルと又もや喉元へつきつけ、
松岡『オイ肉体、真裸になつて此糞壺へ這入り、身魂洗濯を致せ!』
と呶鳴り出した。体は自然に糞壺方へ進んで行く。鼻が曲るほど臭うてたまらぬ。
喜楽『コレ松岡さま、こんな所へ這入つたら尚汚れるぢやありませぬか。綺麗な水で洗濯してやらうと言ひ乍ら、糞壺へ這入れとはチツと間違ひぢや厶いませぬか』
松岡『錆た刀を砥ぐ時も、生灰をつけたり、泥をつけたりする様に、お前やうな製糞器は糞で研いてやるが一番だ。糞より汚い身魂を持つてゐ乍ら、糞が汚いとは何を吐すだ』
と大声に呶鳴り立てた。喜楽はビツクリして、
喜楽『ハイ、そんなら裸になつて這入ります。どうぞ大きな声を出さぬやうにして下さい』
と帯を解かうとする。
松岡『オイ待て待て、それさへ分ればモウよい。お前体は機関だ、生宮だ。そんな所へ這入つて貰ふと俺も一寸困るだ、アハヽヽヽ』
喜楽『私は元から土ン百姓で、糞位は何とも思つて居りませぬ。糞がなければ五穀野菜が育ちませぬから、一遍這入つて見ませうか』
松岡『這入るなら勝手に這入れ。其代り此松岡は只今限り守護致さぬからそう思へ。あとはもぬけから、狸容物にでもなるがよからう』
 斯う言はれると何となしに未練が湧いて来る。松岡神が人体へ這入つて、ウソ計り言ひ何遍も失敗をさせよる仕方ない奴、こんな邪神は一時も早く退散させたいと思ふ事は度々であつたが、サテ之れ限り立退くと云はれると、何だか惜い様な気がして来るが不思議である。
喜楽『そんなら、あなた仰に従ひます。サア是から美しい水所へ連れて行つて下さい』
松岡『コレから一里許り東へ行くと、矢田滝というて東向きに落ちてゐる、形計り滝がある。そこで水行をするだ、サア行ケ!』
と号令し乍ら、喜楽肉体を自由自在に操つて、足早に硫黄谷を越え、大池畔を伝うて、亀岡産土矢田神社谷に導き水行を命じた。そして一週間間毎夜此滝に通ふ事を肉体に厳命した。喜楽はそれより毎夜々々淋しい山道や池畔や墓場を越え矢田滝へ通ふ事となつた。
 矢田滝へ通ひ始めてから七日目、今晩が行上りと云ふ時になつて、なんとなく心底に恐怖心が湧いて来た。奥間にかけてあつた大身鎗をひつさげ、十二時頃自宅を立つて、穴太村外れまで進んで来ると、自分持つて居る鎗が心勢か勝手に動き出し、リンリンと唸り声がして来る。鎗穂先は夜でハツキリは見えぬが、自然に曲り鎌首を立ててゐる様な気がしてならぬ。黒い古ぼけた鎗を握つた積りでゐたがいつ間にか太い蛇を握つてる様な気がして来たで、麦畑中へ矢庭に放り込み、車清方へ向つて進みかけた。此鎗を棄ててから余程恐怖心が薄らいで来た。
 追々進んで硫黄谷大池側へ来て見ると、周囲一里もあると云はれてゐる山間大池中に二三丈計りあらうと思はる背高い、それに恰好した太さ、赤い丸顔男が深い池水に腰あたりまでつけて、バサリバサリと自分方を向いて歩んで来る様に見える。髪毛は縮み上る、胸は動悸が高くなる。一心不乱に『惟神霊幸倍坐世』を称へ乍ら池端を東へ東へと走りゆく。此怪物はどうなつたか、後は分らなかつた。前方に当つて青い火が、いつも灯つてゐない所に見える。進みもならず退きもならず暫く途中に立つて思案をしてゐると体がオゾオゾと慄ひ出す、益々怖くなつて来る、四方八方から厭らしい化物に襲撃されるやうな気がしてならない。あゝこんな時に松岡さんが憑つてくれるといいにと思ひ、
『松岡天狗さま、松岡さま』
と大きな声で叫んでみた。自分乍ら声は大きうても、其声に波が打ち、ふるひが籠つてゐた。かうなると自分声まで厭らしくなつて来る。怖いと思ひかけたら、如何にも斯うにも仕方ないもである。……マア此処で暫く静坐して公平な判断をつけねばなるまい……と道芝生上に腰を下し、姿勢を正しうして両手を組んで見た。されど自分体も腰も手も足も、骨なしやうになつて、グラグラして一寸も安定を保つ事が出来なかつた。たつた一声腹中から、
『突進!』
といふ声が聞えて来た。其声を聞くと共に、俄に糞落着きに落着く事が出来た。そして心中で……エー之れが霊学修業だ、何れ霊界事を研究するだから、現界と同じやうな事では研究価値がない、これが却て神さま御守護かも知れぬ、今日は一週間目修業上りだ、高熊山修業中にいろいろと霊界事を見せて貰ひ、教へても貰うて居る。随分其時も厭らしい事や恐ろしい事があつた、これ位な事は霊界探険当時事を思へば、ホン門口だ……と直日に省み漸く腰を上げて、青い火方へ進んで行つた。怖々火側へ寄つて見れば青く塗つた硝子行灯に火が点してある。途わきがすぐ墓になつてゐて今日埋けたばかり新墓に白い墓標が立つてゐる。気をおちつけて見れば、亀岡稲荷下げをして居つた婆アで、御嶽教教導職を勤めて居た六十婆アが死んだで、此処に葬つただと云ふ事が白い墓標文字で明かになつた。ヤツと安心して漸く矢田神社境内にさしかかり、社前水で体を清め、御社前で天津祝詞を奏上し、瞑目静坐などして夜明けるを待つてゐた。最早これから奥へ夜中に行く丈勇気が臆病風に誘はれて無くなつてゐたからである。
 夜はホと明けて来た。そこら様子が何となく昼らしくなつたで俄に元気を出し、細谷川を伝うて、一週間歩き馴れた谷路を登つて行く。併し実際は夜が明けてゐるではなかつたと見え、再びそこらが薄暗くなつて来た。空を包んでゐた雲がうすらぎ、東空から月が昇つたが薄雲を通して光つたからであつた。二三町許り行つた所に、五十五六骨と皮とになつた、痩た可なり背高い婆アが、一方手を前に出したり後へ引いたり、切りに樵夫が前挽をひくやうな事をやつてゐる。……ハテ怪体な奴が出やがつた。夜が明けたと思へば暗くなつて来る。そこへ川に臨んで婆アが妙な手つきをして体を揺つて居る。此奴ア、ヒヨツとしたら稲荷山峰つづきだから、奴狐がだましてゐるかも知れぬ。心よわくては駄目だ……と俄に空元気を出し、婆ア近くによつて、一生懸命声で、
『コラツ!』
と呶鳴つて見た。婆アは此声に驚いて、折角発動してゐた手をピタリと止め、腰を屈めて、
婆『ハーイ、どなたか知りませぬが、何か御無礼な事を致しましたかな。妾は樽幸稲荷さまに信心して居りまして、御台さまから神うつり伝授を受け、今日で三年許り毎晩此処へ修業に来て居ります。おかげで右手丈此通り御手うつりが出来出しました。モウ三年すれば又左手に御手うつりがあり、それから胴うつり、頭にうつり、御口が切れるが、マアマアザツと之から十年修業で御座います。お前さまは此頃評判高い、穴太天狗さまぢや御座いませぬか』
喜楽『お婆サン、そんな年寄りがこれから十年も修行して居つたら、口切れると死ぬと一時になるぢやないか。モツと早う口切れるやうにして上げようか。私が修業さしたら、一週間にはキツと口を切つて上げる』
婆『ハヽヽヽヽさうかが易く神様が憑つたり、口が切れるやうな事なら、此婆もこんな永い修行は致しませぬワイナ。早う口切れるやうな神は碌なもぢやありませぬ。どうで狐か狸でせう』
と自分が豆狸にうつられて居乍ら、狐狸をくさしてゐる其可笑しさ。肥持ちが糞臭を知らぬと同じやうなもだなアと思ひ乍ら、此場を立去らうとすると、婆アサンは又右手を樵夫が木をひくやうに動かせ乍ら、腰をキヨクン キヨクンと揺り動かし、動かぬ方手をニユツと前に出し、
婆『コレもし、穴太天狗さま、どうで御世話になりますが、一遍樽幸稲荷さまに伺うた上頼みますワ。此間西町御台さまが、樽幸稲荷さま弟子で居乍ら、余部稲荷さま方へ肩替しやはつたら、其罰で死なはりました。昨日葬式がありました。神さま御機嫌を損ずると恐ろしいから、とつくり樽幸稲荷さまに伺うた上御世話になりますワ』
喜楽『樽幸稲荷さまはキツと反対するにきまつてゐる。此方は天狗さま、そちらは黒サンだからなア』
婆『コレコレ、何といふ勿体ない事を仰有る。あ神さまは正一位天狐御剣大明神さまだ。一峰に御守護遊ばすお山一御守護神さま。勿体ない、黒サンぢやなどと、狸にして了うとは、罰が当りますぞえ。そんな御方に御世話にならうもなら、どんな事が起るか知れませぬ。モウ是ぎりお前さまも妾事を忘れて下さい、妾も忘れます。妙な因縁綱がからまると互に迷惑しますからなア。六根清浄六根清浄南無妙法蓮華経……』
と一生懸命に唱へ始めた。喜楽はここを見捨てて二町許り上手東向き滝へ行つて見ると、いつも余り太くない滝が一丈程落ちて居るに、今日は又如何したもか、五六間こつちから滝を見ると、真白け者が立つてゐる。朧月夜にすかし乍ら、滝壺前まで近よつて見ると、二十五六女が白衣をつけて髪をふり乱し、滝にかかつてゐる。喜楽は神憑りと見て取り、
喜楽『何神さまで御座いますか、お名を聞かして下さい』
とやつて見た。滝にかかつた白衣女は両手を組んだまま、頭上高く差し上げ、背伸びをし、少しく反り返つて、
『力松大明神……』
と甲声で呶鳴つた。
喜楽『力松大明神とは何処守護神ですか?』
女『稲荷山、奥村大明神御眷族、力松大明神だ。此方を信仰致せば病気災難一切をがらしてやるぞよ。其方は穴太天狗であらう。今日で一週間修行上りと聞いた故、此肉体外志ハルを、此方が誘ひ出し、其方に面会させる為に待つて居つただ。随分途中で怖かつただらうう』
喜楽『分りました、どうぞ御引取を願ひます』
女『引取れと申さいでも、此力松大明神はそち心をよく知つとるから引取るぞよ。ウンウン……』
と云つたぎり、亀岡旅籠町外志ハルと云ふ神憑りは正気に帰つて了うた。
 さうかうする間に夜はカラリと明け渡つた。二人はいろいろと神様話をし乍ら外志ハル頼みに依つて、旅籠町に廻り、夫筆吉といふに面会して、互に道為に助け合ふ事を約し、穴太へ帰つて来た。
(大正一一・一〇・九 旧八・一九 松村真澄録)
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