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文献名1霊界物語 第48巻 舎身活躍 亥
文献名2第3篇 愛善信真よみ(新仮名遣い)あいぜんしんしん
文献名3第14章 至愛〔1268〕よみ(新仮名遣い)しあい
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2023-05-29 13:02:50
あらすじ若宮にて神徳を摂受した二人は、第二、第三天国旅行にはもはや何苦痛もなかった。しかし降り来るにつれて、そ神力が減退し想念も劣ってくるように思われた。八衢関所に着くと、伊吹戸主神が数多守衛を率いて二人を歓迎し歓談した。伊吹戸主神は、天界は厳格に証覚に応じて区切られており、通常は層を超えて行き来はおろか、意志疎通もできないもであるが、二人は大神様特別許しをうけて霊国宣伝使に伴われて上ったから、首尾よく巡覧できただと説明した。八衢へ来てから天国で摂受した証覚が鈍ってしまったと心配する治国別に対して、伊吹戸主神は、現界では最奥天国証覚は必要ない、ただ愛と信みを基礎とすべきであると諭した。そして、最高天国消息を伝えたところで猫に小判を与えるようなもであるから、現界では、中有界消息を程度として万民を導くがよく、そ中で少し身魂が磨けた人間に対しては、第三天国門口程度で諭すがよいと答えた。あまり高遠な道理を明かすと、かえって疑惑種をまき、霊界存在を認めない者を作ってしまいかねない。また現界学者たちが霊界消息を探ろうと研究会などを設立しても、霊相応理によって中有界一部にしか踏み入ることができないだから、彼らに天界は理解できないだろうと続けた。伊吹戸主神は、竜公には「玉依別」という神名は霊界で賜ったもであるから、現界では使用してはならないと気を付けた。落胆する竜公に、伊吹戸主神は二人精霊がいただいた神徳は潜在的に保たれて決して廃れないと説明した。しかしまた、自身が油断したり慢心したりすると、そ神徳は脱出してしまい神御手に帰ってしまうと注意も与えた。伊吹戸主神は、自分たち祓戸四柱兄弟たちが日大神御子でありながら、あらゆる汚れを取り除き清める職掌を司っていることを喩に引いて、二人に教示を与えた。治国別と竜公は、神恩甚深なることを感じ、そ場に打ち伏して感謝した。伊吹戸主神は二人に別れを告げた。二人はそ後ろ姿を見送り恭しく拝礼して館を立ち出で、白と赤守衛に感謝を述べて八衢関所を後にした。
主な人物 舞台 口述日1923(大正12)年01月14日(旧11月28日) 口述場所 筆録者松村真澄 校正日 校正場所 初版発行日1924(大正13)年10月25日 愛善世界社版200頁 八幡書店版第8輯 663頁 修補版 校定版207頁 普及版105頁 初版 ページ備考
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本文  治国別、玉依別は最高霊国を後にして、帰途中間霊国を横断し、最下層天国に降つて来た。往がけは其証覚、両人共今如くならざりし故、非常にまばゆく感じたりしが、日若宮に於て神徳を摂受したる二人は、最早第三天国旅行は何苦痛もなかつた。併しながら第一、第二、第三と下降し来るにつれて、吾ながら其神力減退する如く思はれ、また明確なる想念も甚しく劣りし如く思はるるは、実に不思議であつた。漸くにして二人は、八衢関所に着いた。伊吹戸主神は数多守衛を率ゐて二人を歓迎した。二人は館間に導かれ、茶菓饗応を受け、霊界に関する種々談話を交換した。
伊吹『治国別様、首尾克く最奥天国、霊国がきはめられましてお目出度う厶います。さぞ面白きお話が厶いませうねえ』
『何分徳が足らないもですから、何れ天国に於ても荷が重すぎて、非常に屁古たれました。併しながら諸エンゼル導きによつて、辛うじて最奥天国まで導かれ、其団体一部を巡拝し、漸く此処まで帰つて参りました。併しながら不思議な事には、下層天国より順を追うて最奥天国へ上る時苦さは譬へられませぬ。丁度三才童子に重き黄金棒を負はせたやうなもで、余り結構過ぎて、それに相応する神力なき為、到る所で恥を掻いて参りました』
『お下り時はお楽で厶いましたらうなア』
『ハイ、帰りは帰りで又苦しう厶いました。何だかダンダンと神徳が脱ける様で厶いましたよ』
『すべて霊界は想念世界で厶います、それ故情動変移によつて、国土相応証覚に住するですから、先づそれで順序をお踏みになつたです。高天原規則は大変厳格なもで、互に其範囲を犯す事は出来ない様になつて居ります。最高天国、中間天国、下層天国及び三層霊国は、厳粛な区別を立てられ、各天界諸天人は互に往来する事さへも出来ないです。下層天国天人は中間天国へ上る事は出来ず、又上天国者は以下天国に下る事も出来ないが規則です。もしも下天国より上天国に上り行く天人があれば必ず痛く其心を悩ませ、苦み悶え、自分身辺に在る物さへ見えない様に、眼が眩むもです。ましてや上天国天人と言語を交ゆる事などは到底出来ませぬ。又上天国から下天国へ下り来る天人は忽ち其証覚を失ひますから、言語を交へむとすれば、弁舌渋りて重く、其意気は全く沮喪するもです。故に下層天国天人が中間天国に至るとも、亦中間天国天人が最奥天国に至るとも、決して其身に対して幸福を味はふ事は出来ませぬ。吾居住天国以上天人は、其光明輝き、其威勢に打たるるが故に、目もくらみ、只一人天人をも見る事が出来ませぬ。つまり内分なるも、上天国天人如く開けないが為であります。故に目視覚力も明かならず、心中に非常な苦痛を覚え、自分生命有無さへも覚えない様な苦しみに遇ふもです。併しながら貴方等は大神様特別お許しを受け、媒介天人即ち霊国宣伝使に伴はれて、お上りになりましたから、各段及び各団体に交通道が開かれ、其為巡覧が首尾よく出来たです。而して大神様は上天と下天連絡を通じ給ふに、二種内流によつて之を成就し給ふです。而して二種内流とは、一は直接内流、一は間接内流であります』
玉依『直接内流、間接内流とは如何なる方法を言ふで厶いますか』
『大神様は上中下三段天界をして、打つて一丸となし、一切事物をして、其元始より終局点に至るまで悉く連絡あらしめ、一物と雖も洩らさせ給ふ事はありませぬ。而して直接内流とは大神様から直に天界全般に御神格流入するもであり、間接内流とは各天界と天界と間に、神格流れ通ずるを言ふです』
治国『如何にも、それにて一切疑問が氷解致しました。私は之よりお暇を申し、現界へ帰らねばなりませぬ。併しながらどちらへ帰つてよいか、サツパリ分らなくなりました。最高天国から下るに就いて、折角戴いた吾証覚が鈍り、今では元杢阿弥、サツパリ現界方角さへも見えなくなつて了ひました。之でも現界へ帰りましたら、神様に賜はつた神力が依然として保たれるでせうか』
『現界に於て最奥天国に於けるが如き智慧証覚は必要がありませぬ。只必要なるは愛と信みです。其故は最高天国天人証覚は第二天国人知覚に入らず、第二天国人証覚は第三天国人能く受け入るる所とならない様に、中有界なる現界に於て、余り最高至上真理を説いた所で有害無益ですから、只貴方が大神様に授かりなさつた其神徳を、腹中に納めておけば可いです。大神様でさへも地上に降り、世界万民を導かむとなし給ふ時は、或精霊に其神格を充し、化相法によつて予言者に現はれ、予言者を通じて現界に伝へ給ふであります。それ故神様は和光同塵相を現じ、人見て法説け、郷に入つては郷に従へと、国土相応活動を遊ばすです。貴方が今最高天国より、段々お下りになるにつけ、証覚が衰へたやうに感じられたは、之は自然摂理です。之から現界へ出て、訳分らぬ人間へ最高天国消息をお伝へになつた所で、恰も猫に小判を与ふると同様です。先づ貴方が現界へ御帰りになれば、中有界消息を程度として万民を導きなさるが宜しい。其中に於て少しく身魂研けた人間に対しては、第三天国門口位程度でお諭しになるが宜しい。それ以上御説きになれば、却て人を慢心させ害毒を流すやうなもです。人三化七社会人民に対して、余り高遠なる道理を聞かすは、却て疑惑種を蒔き、遂には霊界存在を否認する様な不心得者が現はれるもです。故に現界に於て数多学者共が首を集め頭を悩ませ、霊界消息を探らむとして霊的研究会などを設立して居りますが、之も霊相応道理により、中有界一部分より外は一歩も踏み入るる事を霊界に於て許してありませぬ。それ故貴方は現界へ帰り学者にお会ひになつた時は、其説をよく聴き取り、対者証覚程度上をホン先程説けば可いです。それ以上お説きになれば彼等は忽ち吾癲狂痴呆たるを忘れ、却て高遠なる真理を反対的に癲狂者言となし、痴呆語となし、精神病者扱をするみで少しも受入れませぬ。故に現界博士、学士連には、霊相応理によつて肉体ある野天狗や狐狸、蛇など動物霊に関する現象を説示し、卓子傾斜運動、空中拍手音、自動書記、幽霊写真、空中浮上り、物品引寄せ、超物質化、天眼通、天言通、精神印象鑑識、読心術、霊的療法等地獄界及び精霊界劣等なる霊的現象を示し、霊界何もたるをお説きになれば、それが現代人に対する身魂相応です。それでも神界と連絡切れた人獣合一的人間は非常に頭を悩ませ、学界大問題として騒ぎ立てますよ。アツハヽヽヽ』
玉依『モウシ、伊吹戸主神様、私は日若宮に於て、王母様より玉依別といふ名を賜はりましたが、これは最高天国で名乗る名で厶いませうか、現界に於ても用ひて差支ありますまいか』
『現界へお帰りになれば、現界法則があります。貴方は治国別様徒弟たる以上は、現界へ帰ればヤハリ竜公さまでお働きなされ。治国別様がお許しになれば、如何なる名をおつけになつても宜しいが、貴方が現界業務を了へ、霊界へ来られた時始めて名乗る称号です。霊界で賜はつた事は霊界にみ用ふるもです。併しマア復活後は、結構な玉依別様と云ふ称号が既に既に頂けたですから、お目出度う厶います。決して霊界称号を用ひてはなりませぬぞや』
『ハイ、畏まりました、然らば只今より竜公と呼んで下さいませ』
『モウ暫く玉依別さまと申上げねばなりませぬ』
『アーア、玉依別さまもモウ少時間かなア、折角最高天国まで上つて、結構な神力を頂いたが、現界へ帰れば又元杢阿弥かなア。お蔭をサツパリ落して帰るかと思へば、何だか心細くなりました』
『決してさうではありませぬ。貴方精霊が頂いた神徳は、火にも焼けず、水にも溺れず、人も盗みませぬ。三五教神諭にも……御魂に貰うた神徳は、何者も盗む事は能う致さぬぞよ……と現はれてありませう。貴方天国に於て戴かれた神徳は、潜在意識となつて否潜在神格となつて、どこ迄も廃りませぬ。此神徳を内包しあれば、マサカ時にはそれ相当神徳が現はれます。併しながら油断をしたり慢心をなさると、其神徳は何時間にやら脱出し元御手に帰りますから、御注意なさるが宜しい。而して仮りにも現界人間に対し、最奥天国神秘を洩らしてはなりませぬぞ。却て神御神格を冒涜するやうになります。霊界秘密は妄りに語るもではありませぬ。愚昧なる人間に向つて分不相応なる教を説くは、所謂豚に真珠を与ふるやうなもです。忽ち貴重なる真珠をかみ砕かれ、一旦其汚穢なる腹中を潜り、糞尿中へおとされて了ふやうなもですよ』
『治国別さま、駄目ですよ、私は天国消息を実見さして戴き、之から現界へ帰つて、先生と共に現界に於ける霊感者双璧となり、大に敏腕を揮つてみようと、今今まで楽しんで居りましたが、最早伊吹戸主様お説を聞いてガツカリ致しました。さうするとヤツパリ身魂因縁だけ事より出来ぬですかなア。宝持腐れになるやうな気がして聊か惜しう厶いますワ』
『アツハヽヽヽヽ』
『私は伊邪那岐尊御禊によつて生れました四人兄弟です。されど其身魂因縁性来によつて祓戸神となり、最高天国より此八衢に下り、斯様なつまらぬ役を勤めて居りますが、之も神様御心儘によりならないですから、喜んで日々此役目を感謝し忠実に勤めて居るです。まだまだ私所か妹瀬織津姫、速佐須良姫、速秋津姫などは実にみじめな役を勤めて居ります。言はば霊界掃除番です。蛆わいた塵芥や痰唾や膿、糞小便など所在汚き物を取除き浄める職掌ですから、貴方神聖なる宣伝使職掌に比ぶれば、実に吾々兄弟は日大神子でありながら、つまらぬ役をさして頂いて居ります。併し之は決して吾々兄弟が此役目を不足だと思つて申したではありませぬ、貴方等御心得為一例を挙げたまでで厶います』
玉依『ハイ、大神様御仁慈、実に感じ入りました』
と感涙にむせぶ。治国別は憮然として、
『アヽ実に大神様御恵、感謝に堪へませぬ。厳御霊神諭にも……我子にはつまらぬ御用がさしてあるぞよ。人子には傷はつけられぬから……とお示しになつてゐますが、実に大神様御心は測り知られぬ有難きもで厶いますなア』
と云つたきり、吐息を洩らして差俯いてゐる。
『私ばかりぢやありませぬ、月照彦神様、弘子彦神様、少彦名神様、純世姫様、真澄姫様、竜世姫様、其他結構な神々様は皆、厳御霊や瑞御霊大神直々御子でありながら、何れも他神々忌み嫌ふ地底国へお廻りになつて、辛い御守護をしてゐられます。之を思へば貴方等は実に結構なもですよ。厳御霊御神諭にも……人民位結構な者はないぞよ……と示されてありませうがなア』
治国『成程、実に大神様御心程は、吾々人間測り知る所ではありませぬ。あゝ惟神霊幸はへませ、五六七大神様……』
と涙を滝如く流し、神恩甚深なるに感じ、竜公と共に合掌して其場に打伏した。伊吹戸主神は目をしばたたきながら、
『御両人様、其心で、どうぞ現界に於て神為、道為、世人為に御活動を願ひます。左様ならば之にてお別れ致しませう』
と云ふより早く忙しげに奥間に姿を隠した。二人は後姿を見送り、恭しく拝礼しながら館を立出で、赤門をくぐり、白赤守衛に厚く礼を述べ、八衢街道を想念向ふ所に任せて歩み出した。アヽ惟神霊幸倍坐世。
(大正一二・一・一四 旧一一・一一・二八 松村真澄録)
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