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文献名1霊界物語 第52巻 真善美愛 卯
文献名2第4篇 怪妖蟠離よみ(新仮名遣い)かいようばんり
文献名3第20章 険学〔1356〕よみ(新仮名遣い)けんがく
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2023-12-17 15:58:21
あらすじ四人は、妖幻坊高宮彦巨大な姿にうち驚き、心に深く神を念じて助けを祈っていた。妖幻坊高宮彦は四人素性を並べ立て、ひとつ風が吹けばまた悪道へ逆転するだろうと嘲笑した。ガリヤはやっきになって、自分信仰堅固なことをまくしたて、高宮彦を妖怪変化と疑い、どうやって短期間にここに立派な城郭を建てたか説明を迫った。高宮彦は、自分は元は三五教宣伝使・時置師杢助だったが、思うところあって斎苑館を脱退し、ここに君臨しているだと明かした。そして四人に、ここに休息して実地を見学するよう勧めた。一同は高宮彦案に賛成したが、ガリヤは心内ではうまくだまされたように装って帰順させるか退治しなくてはならない、と考えていた。妖幻坊は、自分娘・初稚姫が逗留しているから、会ってくれるように頼んだ。そして、四人中に初稚姫婿候補がいるかように発言し、四人気を引こうとした。ガリヤは相変わらず高宮彦を警戒していたが、他三人は、自分こそ初稚姫婿候補ではないかと騙されてしまった。美しい城内庭園をよこぎり、豪華な門をいくつもくぐって玄関口に着いた。七宝で飾られた椅子やテーブルが並べられ、八人美しい美女が四人手を一本ずつ取り、居間へ導いた。
主な人物 舞台 口述日1923(大正12)年02月09日(旧12月24日) 口述場所 筆録者松村真澄 校正日 校正場所 初版発行日1925(大正14)年1月28日 愛善世界社版243頁 八幡書店版第9輯 466頁 修補版 校定版252頁 普及版107頁 初版 ページ備考
OBC rm5220
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本文  四人は妖幻坊変化なる高宮彦巨大な姿に内心打驚きながら、心に深く神を念じ、吾身に危害加へらるる事あらば、速に助け給へと祈つてゐた。妖幻坊はカラカラと打笑ひ、
『其方はハルナ大黒主が部下、ランチ、片彦将軍側近く仕へて居つたガリヤ、ケースであらうがな。そして二人は初公、徳公両人、随分貴様も悪事にかけては抜目ない代物だ。今は殊勝らしく三五教に帰順してゐるが、一つ風が吹けば、又もや悪道へ逆転致す代物だらう。ても扨ても意気地ないヘゲタレ男だなあ、アハハハハ』
と嘲弄されてガリヤは躍起となり、両手拳を握り、歯ぎしりをしながら、
『拙者は如何にもバラモン軍に仕へて居つたガリヤである。併しながら決して変心致す様な意気地なしでは厶らぬぞ。誠道を悟つた上は、将軍よりも城主よりも尊いは宣伝使だ。堂々たる大黒主が三軍を叱咤し、生殺与奪権を握つて世界を睥睨し、ハルナ都に金殿玉楼を構へ、城寨を築いて、堅牢無比鉄壁と構へてゐるなれども、拙者は左様なもが何になるか。天に聳ゆる天主閣や隅櫓、まつた、大理石を以て畳み上げられた王宮、左様なもは今にメチヤ メチヤになつて了ふであらう。そして其跡は満目荒涼たる雑草野辺と変じ、八重葎軒に茂るに任すみ、果敢なき運命に陥るは目あたりだ。其如く此高宮城も、やがては凋落運命に陥るであらう。高宮彦が何だ。曲輪城城主が何偉い。愛善徳と信真光によつて、永久不滅生命力を有する信仰其もより外には、世中に決して尊きもはない筈だ。世利巧な愚物や俗漢が、畢生事業とか、政権とか、利益とか、株式だとか云つてゐるやうな、十年もたたずに亡びて了ふやうなもが何になるか。吾々は此真理を悟つたが故に、バラモン軍籍をすてて、永久不滅生命に入るべく信仰道を辿つただ。何だ高宮彦、吾々元バラモン軍営所を何時間にか修繕致し、黙つて占領致すとは不都合ぢやないか。サア、誰にこたへて、斯様な立派な城廓を造つただ。返答聞かして貰はうかい』
と何時間にやら恐怖心は何処へか行つて、腕を打ち振り、勇気百倍して無性矢鱈に喋り出した。妖幻坊は大口をあけて高笑ひ、
『アツハハハハ、叩くな叩くな、へらず口を叩いてそれが何になる。末百より今五十、人間は太く短く暮せば可いだ。コリヤ其方共、吾城内に来つて其荘厳に打たれ、且物質的方面如何に荘厳優美にして且華美なるかを、チツとは研究したがよからうぞ。何事も見学為だ。どうだ、城主が直接に許すといふだから大丈夫だらう』
ガリヤ『ヤア、高宮彦とやら、僅か三四ケ月間に、斯様な立派な普請をなさるとは、ガリヤに取つては不審千万、合点が参らぬで厶る。そして此浮木森は妖怪変化出没し、行人を苦しむるや実に名状す可らざる魔窟である。斯様な処に城廓を構へるやうな奴は、只狸ぢやあるまい、気利いた化物はすつ込む時分だ、サ、どいたりどいたり』
『アハハハハ、お疑は御尤も千万、拙者は決して怪しき者では厶らぬ。元は拙者も三五教宣伝使なりしが、思ふ仔細あつて、斎苑館を脱退し、吾名を高宮彦と改めて、ここに君臨致したもだ。其方も三五道に帰順した以上は、一度ここへ参拝致さねばなるまい。実所は、某は初稚姫父親なる時置師杢助だ。どうぢや、一度休息して行く気はないか』
『どうも合点行かぬ事になつて来た。ああ併しながら此浮木森は吾々が稍暫し住みなれて、地理もよく知り居れば、有為天変有様を目撃するも亦一興、然らば御免を蒙つて拝見さして頂かうかな。各方如何で厶るかな』
とガリヤは三人に問ひかけた。三人は無言まま首を下げて賛成意を表した。
『然らば高宮彦殿、ガリヤ以下一同、御世話になりませう』
と口ではキツパリ言ひ放つたも、心中で思ふやう、此奴アどうしても妖怪親玉に相違ない。此方方から甘く騙されたやうな風を装ひ、スツカリ様子を考へた上、三五教神力に帰順させるか、但は根底から打ち亡ぼしてやるか二つに一つ思案だ。これも何か神様お仕組だらう……と心にうなづきながら、さあらぬ体にて妖幻坊言葉に従ふ事となつた。妖幻坊は俄に顔色を和らげ、言葉も叮嚀に、
『イヤ各方、それでこそ三五ピユリタンで厶る。拙者娘初稚姫も奥に控へ居れば、一度は会つてやつて下さい。親口から褒めるぢやないが、実に天稟美貌だ。こんな武骨な男に、なぜあんな娘が出来たかと思へば実に不思議だ。之も要するに天配剤でせう、アハハハハ』
『何と仰有います、有名な初稚姫様がお出になつて居りますか。ソリヤ一度ガリヤも是非お目にかかりたいもで厶います』
 ケースは、
『まだ独身でゐられますかな』
『ハイ、独身者で厶いますよ。どうか適当な夫があれば、持たせたきもと、親心で朝な夕なに祈つて居りました。どうやらここに初稚姫夫として恥かしからぬ御方が、たつた一人交つて厶るやうだ。イヤ是も天時節が来たで厶らう、アハハハハ』
 ガリヤは何、此妖怪奴、其手は喰はぬぞ……と腹中できめてゐたが、ケース他二人はスツカリ降参つて了ひ、そして此中に初稚姫婿となるべき者があると云つたは誰であらうか、ヒヨツトしたら俺であるまいかなどと、互にニコニコしながら跟いて行く。
ケース『エーもし城主様、初稚姫様夫になるやうな男は、ケース眼からは、生憎此処には居らないぢやありませぬか。何れもへボクチヤ男ばかりですからな。此中に一人は、それでも可成り及第する奴があるかも知れませぬな』
『どうか其方を養子となし、ここ城主になつて貰ひたいもだ』
『成程、実に立派なお屋敷で厶いますな。私が将軍副官をして居つた時にや、半永久的建物で、見る影もなき粗末至極な陣営でしたが、貴方御神力は偉いもです。少時間に斯様な事にならうとは、此ケース、実に夢にも思ひませぬでした。実に立派なもで厶いますワ。私此様な親が持ちたいもで厶います、オホホホホ』
『サ、私やうな男にでも、子になつてくれる人がありませうかな。初稚姫が見たら、さぞ此四人一人に目をつけて喜ぶ事でせうよ』
『そして貴方お目に止まつた男といふは誰で厶いますか。ガ印ですか、但はハかトかケか、どちらで厶いませうな』
『ケつくお方でせう』
 ガリヤは、
『ハハハハ、ケつく、獣先生にはよい対象だ、ハハハハ、ヤツパリ霊相応かな』
と呟いた。されど妖幻坊も他連中も、一生懸命に話に実が入つて、ガリヤ囁きに気が付かなんだ。
 漸くにして菫、蒲公英、紫雲英など美しく咲きみちた城内広庭をよぎりながら、金色燦爛たる隔て門を幾つともなく潜つて玄関口についた。ここには七宝をもつて飾られたる卓子や椅子が並べられ、大きな瓶に芳香馥郁として咲きみちたる白梅花が活けられてあつた。妖幻坊高宮彦は先に立つて、玄関を上り行く。八人美しい美女は満面に笑を湛へて、四人手を一本づつ取り、各居間へ導いて行く。
(大正一二・二・九 旧一一・一二・二四 松村真澄録)
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