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文献名1霊界物語 第55巻 真善美愛 午
文献名2第2篇 縁三寵望よみ(新仮名遣い)えんさんちょうぼう
文献名3第10章 鬼涙〔1418〕よみ(新仮名遣い)おになみだ
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2024-05-21 15:14:25
あらすじ続いてアーシスとお民も、治国別媒酌を承諾し、自分たち素性を述懐歌で歌った。鬼春別は一杯機嫌になって、どら声を張り上げて歌い始めた。鬼春別歌は深い悔悟と改心意を表していたが、テームス夫婦は疑い深く、鬼春別心から謝罪歌も信じることができなかった。こ他列席していた一同もそれぞれ歌を歌った。
主な人物 舞台 口述日1923(大正12)年03月03日(旧01月16日) 口述場所竜宮館 筆録者松村真澄 校正日 校正場所 初版発行日1925(大正14)年3月30日 愛善世界社版124頁 八幡書店版第10輯 78頁 修補版 校定版126頁 普及版53頁 初版 ページ備考
OBC rm5510
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本文  アーシスは治国別歌に対し、自分とお民と結婚を承諾したりと意を歌を以て答へたりける。其歌、
『科戸風もフサ国  猪倉山山麓に
 群がり立てる玉置郷  テームス館に使はれて
 朝な夕なに家政をば  統轄したるアーシスは
 賤しき首陀胤ならず  由緒も深きビク
 左守キユービツトが  其落胤と聞えたる
 此世を忍ぶ独身者  治国別宣伝使
 神御言を蒙りて  ビク国をば知召す
 刹帝利様や左守司  父危難を救ひまし
 神宮居を建て玉ひ  又もや此処に現はれて
 スミエル嬢やスガール嬢  道晴別やシーナ迄
 救はせ玉ひし有難さ  旭は照る共曇る共
 月は盈つ共虧くる共  星は空より墜つるとも
 テームス一家を救はれし  此高恩は何時世か
 忘るる事あるべきぞ  賤しき下女と住み込みし
 お民系統も  矢張りビク国生れ
 左守司家系より  秀れて高き人子と
 生れ出でたる珍御子  チヌ里なる卓助が
 里子となりて世を送る  果敢なき身にも荒風
 吹き荒び来て両親は  最早あ人となり
 よるべ渚捨小舟  彼方此方と彷徨ひて
 艱み果ては今茲に  テームス館下女と迄
 なり下りたる痛ましさ  お民素性を知るも
 アーシス一人を除いては  今迄誰もあらざりし
 かくも尊き人子と  生れましたるお民さま
 如何なる神取持か  吾れと妹背契をば
 結ばせ玉ふ事となり  首陀館で合衾
 いよいよ式を挙げむとは  思ひもよらぬ二人仲
 ああ惟神々々  イドム神が現はれて
 治国別に懸りまし  吾等が素性を委曲に
 明かさせ玉ひし尊さよ  さはさり乍ら吾々は
 世に捨てられし日蔭者  二人父は坐しませど
 名乗らむ術もなくばかり  歎ち暮した苦しさも
 今は漸く薄らぎて  暁告ぐる鳥
 旭間近き心地せり  ああ惟神々々
 皇大神や治国  別御前に
 畏み畏み真心を  捧げて感謝し奉る』
 お民は歌ふ。
お民『神恵も足乳根  父と母とはあり乍ら
 浮き世雲に隔てられ  名乗もならぬ身因果
 雲井に高き刹帝利  ビクトリヤ王子と
 生れ出でたる吾身なれ共  后御憤り
 いと烈しくましましければ  母皐月と諸共に
 フサ御国山野里  チヌ村なる卓助が
 館に母子預けられ  悲しき浮世を送りしも
 月に村雲花には嵐  吹き荒ぶなる世
 ためしに漏れず養ひ  父は此世を早く去り
 母と妾は味気なき月日を  山畔に送る折しも
 バラモン教軍人  夜陰に乗じて入り来り
 雨戸を蹴立てて踊り入り  妾と母を取り違へ
 凱あげて連れ帰りしが  老いさらばひし母上と
 知るよりも  情を知らぬ悪神は
 悔しや恋しき母上を  野中井戸へ蹴落として
 玉命を奪ひし恨めしさ  妾は後に残されて
 彼方家に三日四日  永きは五日と彷徨ひつ
 どこ家でも追ひ出され  漸々ここにテームス
 主人君に助けられ  水仕奉公を励む折
 天八重雲かき分けて  降りましたる神司たち
 主人愛娘  スミエル姫やスガール姫を
 救ひやらむと雄健びし  魔神たけぶ猪倉山を駆け登り
 出で行きませし其後に  妾は両手を合しつつ
 凱あげて帰ります  生日吉き日を待つ折もあれ
 軍君を引率れて  四人人を助けつつ
 帰らせ玉ひし嬉しさよ  神其中で
 恋に心を焦したる  万公別神司
 神仕組か知らね共  忽ち主人となりすまし
 上から下まで気を付けて  竃下や鍋
 彼方此方拭掃除  火を焚くわざ迄懇に
 教へ玉ひし有難さ  うるさい事はなけれ共
 何だか知らぬがゴテゴテと  言はるる度に気が立ちて
 遂には思はぬ灰神楽  どこも彼処も泥
 足踏む場所もなき迄に  汚れたるこそ是非なけれ
 折角心を尽し身を尽し  漸く煮えた飯さへも
 喉を通らぬ灰まぶれ  ハツと顔をば赤らめて
 胸を痛むる折もあれ  アヅモス司現はれて
 又いろいろと御教訓  虫居所悪かりしか
 フエル奴と謀らひて  栄螺如き拳を固め
 所かまはず打ち据ゑ  嘖み居たる折もあれ
 アーシス司は忽ちに  此場に現はれ来りまし
 荒れ狂ひゐたる両人を  手もなくグツと押へつけ
 救ひ玉ひし有難さ  情は人為ならずと
 世諺も目あたり  夫れより妾はアーシス
 司を尊み敬ひて  世が世であらば吾夫と
 仕へむもと村肝  胸をば焦がす折もあれ
 今日は嬉しき三五  神治国別が
 尊き聖き勅り  妹背道を契れよと
 教へ玉ひし言葉を  慎み畏み諾ひて
 いとしき司アーシスと  茲に目出たく婚姻
 儀式を結ぶ事由  確に諾ひ奉る
 ああ惟神々々  上は大国治立大神を始めとし
 縁を結び神柱  金勝要大御神
 イドム神と現れませる  神素盞嗚大神
 貴恵を慎みて  感謝詞奉る
 ああ惟神々々  御霊恩頼を賜へかし』
 鬼春別は一杯機嫌になつて、今迄遠慮してゐた心が稍太くなつたと見え、銅羅声を張上げて歌ひ始めたり。
『吾れは大国彦神  大国別に仕へたる
 バラモン教大棟梁  大黒主部下となり
 三五教本陣と  世に聞えたる斎苑館
 只一戦に屠らむと  数多軍兵引率し
 山野を渡り谷川を  越えて漸く枯尾花
 茂り合ひたる浮木里に  広き陣屋を造りつつ
 久米彦片彦将軍を  先鋒に立てて戦況を
 窺ひゐたる折もあれ  治国別神司
 厳御水火に打出す  其言霊に肝打たれ
 脆くも破れ逃げ帰る  其浅ましき態を見て
 とても叶はぬ此戦  進みもならず退きも
 ならぬ苦しき破目となり  三千余騎を従へて
 浮木陣屋を立ち別れ  ライオン河を横切りて
 古き尊きビク国  ビクトル山麓にて
 又も陣屋を構へつつ  軍を進むる折もあれ
 魔性女に欺かれ  遠く逃げ行く大原野
 シメジ峠を乗越えて  猪倉山岩窟に
 城を構へて遠近  国を従へ靡かせつ
 バラモン国を建設し  一旗挙げむと思ふ折
 心曲に誘はれて  テームス館二人娘を
 家来者に言ひつけて  攫ひ帰らせいろいろと
 脅しつすかしつ掛合へど  気丈女どこ迄も
 操汚さぬけなげさに  舌を巻きつつ久米彦は
 執念深くも吾物と  なさむとあせり一室に
 しまひおきたる時もあれ  道晴別神司
 シーナを従へ出で来り  言霊車押出せば
 流石勇士も驚いて  右往左往に散乱し
 周章狼狽其果ては  一先づ四人を岩窟
 千尋底に投げ堕し  言ふにいはれぬ無礼をば
 加へし事恥かしさ  治国別一行に
 またも攻められ吾々は  執着心夢も醒め
 三千余騎兵士を  瞬く内に解散し
 四人真人を送りつつ  漸く此処に来て見れば
 豈計らむやフエル、ベツト両人が  御庫中に押込まれ
 苦みゐたるぞ不思議なれ  悪虐無道将軍も
 神光に照されて  今は誠人となり
 此家に仇せし身乍らも  治国別御影にて
 目出たき今日宴席に  恥を忍びて列るも
 縁どこ迄も  結ぼれゐたる為ならむ
 ああ惟神々々  直日に見直し聞直し
 宣り直されてテームスよ  ベリシナ姫よ二人姫御子
 汝に加へし嘖み  罪を赦させ玉へかし
 旭はてる共曇るとも  月は盈つとも虧くる共
 一旦神に目醒めたる  鬼春別はどこ迄も
 誠為に身を尽し  世人を救ふ真心に
 復りてテームス夫婦が身幸を  朝な夕なに祈るべし
 赦させ玉へ惟神  神に誓ひて詫びまつる』
と歌ひ了り、一同に向つて恭しく感謝した。されど疑深きテームス夫婦は、鬼春別が心底より悔悟も謝罪も信ずる事が出来なかつた。それ故夫婦は此歌に対しても、一言答さへせなかつた。此外久米彦、スパール、エミシなど歌も沢山あれ共、余り長ければ是れにて言霊車を停止する。ああ惟神霊幸倍坐世。
(大正一二・三・三 旧一・一六 於竜宮館 松村真澄録)
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