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文献名1霊界物語 第55巻 真善美愛 午
文献名2第3篇 玉置長蛇よみ(新仮名遣い)たまきちょうだ
文献名3第13章 蘇歌〔1421〕よみ(新仮名遣い)そか
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじテームスは気が付き、感謝涙を流しながら、鬼春別たちバラモン軍改心組や、娘と縁組をしようとする万公を、心中で憎み遠ざけようとしていたことを懺悔し陳謝した。そしてもう財産へ執着は無いから、村人ために使ってほしいと申し出た。鬼春別らバラモン組は涙してテームス謝罪を受け入れた。テームスはまた、万公は治国別弟子なれども、たって娘スガール婿として家を継がせたいと願い出た。治国別は了承し、一同はそれぞれ述懐歌を交わし合った。一同は和気あいあいとして神前に額づき、お祝詞を奏上してテームス再生神恩を感謝した。
主な人物 舞台 口述日1923(大正12)年03月04日(旧01月17日) 口述場所竜宮館 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1925(大正14)年3月30日 愛善世界社版168頁 八幡書店版第10輯 95頁 修補版 校定版172頁 普及版75頁 初版 ページ備考
OBC rm5513
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本文  青葉もそよぐ夏風  すき通りよき一室に
 館主テームスは  鬼春別や久米彦
 心を疑ひ且つ憎み  ただ一刻も速に
 吾家を出し呉れんずと  心は千々に逸れども
 大恩受けし三五  神使宣伝使
 治国別一行に  憚りながら胸押へ
 一間内に駆け入りて  棕櫚箒に頬被
 させて並べた四つ箒  未だ帰らねば神様に
 お願ひ申して追ひ出し  家禍除かむと
 瞋恚心に悩まされ  鬼春別ゼネラルが
 一心不乱に読経する  隣居間に身を忍び
 一生懸命陀羅尼をば  腹に唱へて待ち居たる
 忽ち身体震動し  頭は痛み胸つかへ
 人事不省に陥りて  其精霊は逸早く
 身体内を脱け出し  限りも知れぬ枯野原
 寒風荒む地獄道  杖を力によぼよぼと
 涙と共に進み行く  道傍へに立ち並ぶ
 一つ家屋を見つけ出し  一夜宿をからむとて
 立寄り見ればこは如何に  柱は腐り棟ゆがみ
 悪獣悪虫往来し  吾身辺を目標に
 群がり来るいやらしさ  こりや叶はぬとテームスは
 力限りに逃げ出せば  道左右に怖ろしき
 妖怪変化現はれて  妖姿怪体現じつつ
 獣肉や人肉  争ひいがみ喰ひ合ふ
 其光景に仰天し  逃げむとすれど足重く
 同じ所をぢたばたと  汗を流して藻掻き居る
 斯かる所へ中空より  雷鳴轟く怪声が
 耳を打つよと見る中に  悪鬼羅刹が現はれて
 限り知られぬ夜叉悪鬼  従へ攻め来る怖ろしさ
 極暑風や極寒  嵐に吹かれ何処となく
 身は中空に飛び散りて  遙彼方上に
 佇み居たる訝かしさ  忽ち聞ゆる阿鼻叫喚
 よくよく見れば山麓  谷間々々に濛々と
 燃え上りたる大火焔  黒煙四辺を包みつつ
 怪しき姿精霊や  黒蛇なぞが火中に
 苦しみ悶ゆる怖ろしさ  身毛もよだつ計りなり
 再び羅刹は現はれて  妻ベリシナ初めとし
 スミエル、スガール両人を  力限りに虐待し
 身を引き裂きて血を絞り  砕いて喰ふ有様に
 目も当られずテームスは  悔悟涙に暮れながら
 両手を合せて大神  救ひを祈り奉らむと
 思ひし事も水泡  言霊車止まりて
 唯一言も転び得ず  途方に暮れたる時もあれ
 天を焦して下り来る  一大火光は忽ちに
 容色端麗比類なき  大神人となりにける
 よくよく見れば三五  神に仕ふる万公が
 五色衣を纒ひつつ  テームス爺に打ち向ひ
 種々雑多と霊界  因縁話を説き諭し
 親子契を結びつつ  背に背負ひて濛々と
 燃え拡がりし火焔をば  難なく分けて下りつつ
 青草茂る大野原  一直線に東方に
 向つて駆け出す勇ましさ  万公別はテームスを
 背に負ぶつて進む中  際限もなき大沼
 前にピタリと行き当り  息を休めて手を合せ
 皇大神を祈る折  碧き湖沼は忽ちに
 いと香ばしき青畳  テームス館間と
 変りたるこそ不思議なれ  テームス、ハツと気がついて
 四辺を見れば三五  治国別を初めとし
 松彦竜彦万公や  鬼春別や久米彦
 軍司を初めとし  妻ベリシナ、スミエルや
 スガール、アーシス、アヅモス  家子迄が枕頭に
 双手を合せ三五  神助けを祈り居る
 真最中と見るよりも  遉テームス自我を折り
 執着心を放棄して  一切万事三五
 教に任す事としぬ  ああ惟神々々
 御霊幸倍ましませよ。
 テームスは四辺をキヨロキヨロ見廻し乍ら、一同吾枕頭に端坐し祈願を籠めて居るを見て、感謝涙を流し乍ら、
テームス『ああ、ベリシナお前は此処に居たか、スミエルもスガールも無事であつたか、アア結構々々、もうお前は悪鬼羅刹に引き裂かれ、殺されて仕舞うたと思うて居たに、まア結構であつた。夢ではあるまいかな』
ベリシナ『爺殿確りなさいませ。貴方は今目を眩かして殆ど死んで居られたですよ。治国別様や鬼春別様、万公さまを始め御一同丹精によつて罪を赦され、再び此世明りを見る事が出来たです。早く神様初め皆様にお礼を申しなさい』
テームス『ああこれはこれは御一同様、よくまア助けて下さいました。私は祖先代々より宿業によつて何とも形容出来ぬやうな地獄に堕ちて参りました。罪程怖ろしいもは厶いませぬ。貴方方がお出下さいませぬでしたら、テームス家祖先を初め、子孫に至る迄一人も残らず八万地獄に堕されて無限責苦に遇はねばならぬ所で厶いました。娘スミエルやスガールが猪倉山に囚はれ深い陥穽に堕し入れられ苦しめられたと聞いてから、鬼春別様、久米彦様外御一同お方が憎らしくなつて表面では素知らぬ顔をして居るも、心中は鬼様に殺気立ち、一時も早く吾家を放逐したいと我情を張つて居りました。娘囚はれたも全く吾々祖先や子孫をお助け下さるためお仕組だつたと云ふ事を深く悟りました。鬼春別様、久米彦様、其他方々様、私罪を何卒お赦し下さいませ。私は霊界に往つて貴方清き尊き御精霊に助けられて参りました。又万公さまも……瓢軽な落付ない困つた男だ、何程娘スガールが恋慕して居つても、こんな男をテームス家養子にする事は出来ない、ぢやと云つて娘醒めない中はどうする事も出来ない。一層こと毒害でもせうか……と心中に誰しらず悪い考へを抱いて居りました。此罪も万公さま何卒赦して下さい。霊界に於て進退谷り苦悶最中をお助け下さつたは貴方精霊で厶いました。サアこれから此家を万公さまと番頭シーナさまとに任せますから好きな様にして村人を助けてやつて下さい。テームスは財産に対してはもう些執着もありませぬ』
 鬼春別は涙を流し乍ら、
鬼春『テームス様、よくも其処迄悟つて下さいました。拙者も治国別様御教導によつて生乍ら地獄を逃れ天国に救はれ、因縁あればこそ、かうして仮令一夜なりとも逗留さして頂いたで厶います。又二人お娘子を困らしめたも、やつぱり吾々が責を負はねばなりませぬ。娘親として吾々をお恨みなさるも決して御無理は厶いませぬ。貴方が箒を立てて早く帰れがしとお祈りして居られたも幽かに私耳に響いて居りました。夫故態と貴方耳に聞ゆるやうに聖経を読誦し、貴方反省を促さむとして居た所、貴方は経力に打たれて人事不省におなりなさつたです。……ああ済まぬ事をした……と、直様霊界に祈つて居りました所、よくまア蘇生して下さいました。何卒これで恨をスツカリと晴らして下さいませ』
テームス『ハイ勿体ない、そんなお言葉を聞きましては冥罰が当ります。貴方お蔭で、吾々一族が無間地獄苦しみを受けるを脱れる端緒が開けたで厶います。実に人間怨恨程怖ろしいもは厶いませぬ。何卒これからは足らはぬ吾々一族を可愛がつて御指導下さいませ』
と熱涙を浮べて合掌する。鬼春別は嬉し涙に掻き暮れ物をもえ言はずしやくり泣きをして居る。エミシもスパールも神恩有難きに感謝し言葉塞がり涙に暮れて居た。
治国『テームス殿、今回幽界旅行によつて、因果転生道理がお分りになつたでせうなア』
テームス『ハイお蔭に依りまして後生怖ろしい事を悟りました。唯人間は惟神お道に従つて、世間愛や自然愛を超越し、神愛に生き、善徳を積まねばならないもと深く悔悟致しました。さうして貴方お弟子と思つて居た万公さまは、深き因縁によつてテームス家相続者となり、祖先以来罪悪を払拭し給ふ御方と深く悟りました。何卒、結構な宣伝使随行者なれ共、曲てテームス家養子に与へて下さいますまいか。折入つてお願ひ致したう厶います』
治国『万公さまに異存さへなくば、私は些も構ひませぬ。道晴別、松彦、竜彦、貴方意見は何うですかな』

道晴別『神道闇を晴らしてわけ上る
  日御旨なるらむ』

松彦『松小天国を築かむと
  神は万公を下せしならむ』

竜彦『罪汚れ百悩みをたつ彦
  教開く基なるらむ』

治国別『有難し吾三柱弟子
  諾ひますも神心ならむ。

 いざさらばテームス夫婦スガール姫
  万公を君が家柱とせよ』

テームス『有難し治国別御言葉を
  慎み神に仕へ奉らむ』

ベリシナ『罪多きテームス家も三五
  神伊吹に清められける』

スガール『村肝底より愛したる
  万公別に添ふぞ嬉しき』

シーナ『大神御言畏みテームス
  家に誠花は咲くらむ』

スミエル『惟神結び給ひし縁なれば
  吾も仕へむシーナ君に』

アーシス『治国別神口をもて
  結びたまひし縁ぞ尊し』

お民『三五月は御空に輝きて
  吾胸さへも晴れ渡りぬる』

鬼春別『大空に輝く月影見れば
  笑ませ給ひぬテームス家棟』

久米彦『厳御魂瑞御霊は玉置
  テームス館に輝きたまふ』

スパール『月清く大空青き今宵こそ
  闇晴れたる心地こそすれ』

エミシ『バラモン司カーネルと
  仕へし吾も心嬉しき』

治国別『テームス誉は今日よりぞ
  月日如く輝きまさむ』

テームス『罪多き吾館をば清らけく
  治めたまひし神ぞ尊き』

 斯く互に述懐を述べ、和気靄々として神前に額づき、各祝詞を奏上し、テームスが再生神恩を感謝したりける。
 窓外には涼しき夏風ヒチリキを吹いて穏かに通ふ、ああ惟神霊幸倍坐世。
(大正一二・三・四 旧一・一七 於竜宮館 加藤明子録)
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