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文献名1霊界物語 第56巻 真善美愛 未
文献名2第1篇 自愛之柵よみ(新仮名遣い)じあいしがらみ
文献名3第5章 鷹魅〔1435〕よみ(新仮名遣い)ようみ
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ宣伝歌を歌いながらやってきた婆は高姫であった。高姫はこ原野は自分管轄区域だと言うと、四人男女に声をかけて招いた。高姫はここは現界だと言い張ると、半ば強引に四人を自分館に招いた。谷川ほとりに、高姫中有界における住処である小さな萱吹き家が建っていた。一行は橋を渡って高姫館に着いた。
主な人物 舞台 口述日1923(大正12)年03月14日(旧01月27日) 口述場所竜宮館 筆録者北村隆光 校正日 校正場所 初版発行日1925(大正14)年5月3日 愛善世界社版56頁 八幡書店版第10輯 166頁 修補版 校定版59頁 普及版25頁 初版 ページ備考
OBC rm5605
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本文  此世を造りし元津祖  弥勒神は高姫が
 肉お宮に憑りたる  日出神とこじつけて
 金剛不壊如意宝珠  其外百神宝に
 執着強く四方国  海洋万里波渡り
 騒ぎまはりし其結果  仁慈無限瑞御霊
 神素盞嗚大神  水も洩らさぬ執成に
 心底から悔悟して  誠道に生き復り
 暫らく聖地に現はれて  教を伝へ居たりしが
 淡路東助が  昔馴染と聞きしより
 再び狂ふ心猿意馬  止め度もなしに躍動し
 生田森を後にして  長海山打渡り
 心いそいそ斎苑館  ウブスナ山聖場に
 詣で来りて東助に  過ぎし昔物語
 シツポリなして旧交を  回復せむと恋愛
 雲に包まれ村肝  心は暗となりにけり
 信心堅固東助は  恋に狂へる高姫に
 只一瞥もくれずして  いと素気なくも刎ねつける
 心曇りし高姫も  愈自暴自棄となり
 又もやもと悪身魂  再発なして河鹿山
 嵐に面を曝しつつ  恥も名誉も知らばこそ
 玉国別築きたる  祠森に立寄りて
 ここに教主となりすまし  館主人珍彦を
 眼下に見下し居たる折  大雲山に蟠まる
 八岐大蛇片腕と  兇党界にて名も高き
 妖幻坊に操られ  斎苑時置師
 杢助総務と誤解して  うまく抱き込み一旗を
 挙げて聖地に立籠もる  東野別向ふ張り
 恋意趣を晴らさむと  企み居たりし折もあれ
 初稚姫が現はれて  千変万化活動に
 居堪りかねて妖幻坊  高姫諸共森林を
 潜つてスタスタ逃げ出し  小北神殿に
 夫婦気取で進み入り  神光に照らされて
 曲輪玉を落しつつ  高姫諸共逃げ出す
 妖幻坊杢助は  高姫司と諸共に
 バラモン軍屯せし  浮木森に現はれて
 あらゆる魔法を行ひつ  世人を悩め居たる折
 三五教に名も高き  天女に等しき神司
 初稚姫やスマート  声に驚き妖幻坊
 黒雲起し高姫を  小脇に抱へ空中を
 逃げ行く折しもデカタン  大高原中央に
 高姫司を遺失して  雲を霞と逃げて行く
 高姫空より墜落し  人事不省に陥りて
 霊肉脱離関門を  漸く越えて遥々と
 八衢関所に来て見れば  さも勇ましき赤白
 守衛に行途を遮られ  三歳間中有
 世界に有りて精霊を  研き清むる身となりぬ
 さは去り乍ら高姫  身魂は地獄に籍を置き
 高天原霊光を  畏れ戦き忌み嫌ひ
 一歳経ちし今日日も  中有界をブラブラと
 彷徨ひ巡り迷ひ来る  百精霊に相対し
 現実界にありし如  脱線だらけ宣伝を
 つづけ居たるぞ愚なれ  エリシナ谷に隠れたる
 ケリナ姫やバラモン  軍人なるヘル、シャルや
 六造四人が道  草に隠るる姿をば
 目敏く眺め立止まり  皺枯声を張上げて
 日出神義理天上  弥勒御先達
 高姫司生宮が  汝等四人に気をつける
 早く草原飛び出して  吾生宮前に出よ
 如何に如何にと呼び立てる  其スタイルぞ可笑しけれ
 ああ惟神々々  迷ひ切つたる霊魂は
 神力も如何とも  救はむ手段もなかりけり。
 高姫は道長い草中に隠れてゐる四人男女に向ひ声を尖らし乍ら、言葉尻口をピンとあげて口角泡を飛ばし、アトラス様な顔を前にニユツと出し二つ三ツつ腮をしやくり肩を揺り、招き猫様な手つきをして二つ三ツつ空を掻き乍ら、
高姫『これこれ、何処方か知らぬが此原野は此高姫管轄区域だ。何故こんな処まで黙つて来ただい。まア、ちつと此方へ来なさい。結構な話をしてやらう。エーエー、辛気臭い。早う出なさらんかいな。蟋蟀か螽斯様に草中に何時迄すつこんで居つても埒は明きませぬぞや』
 四人は怖々草を分けガサガサと高姫二三間手前まで現はれて来た。さうして不思議相に稍俯向気味になつて高姫顔をチラチラと偸む様に見てゐた。
高姫『これ皆さま、お前がここへ来る途中に一つ家があつただらう。何故そこを黙つて通つて来ただい。此高姫はもとは三五教宣伝使、今はウラナイ教エンゼルだぞえ。天弥勒様根本根本大柱大弥勒様で、義理天上日出神生宮で厶るぞや。あんまり現界人間が身魂が曇つてゐるで、どうぞ助けて天国へやつてやり度いと思つて化身法を使ひ、高姫肉宮を使つて此大野ケ原を往来する人民を片端から取ツ捉まへて、誠教を聞かしてゐるだ。さア早く出て来なさい』
六造『お前さまは音に名高い高姫さまで厶いましたか。お名は承はつてゐましたが、お目にかかるは初めてです』
高姫『うん、さうかな。妾名は何と云つても宇宙根本大神様生宮だから津々浦々迄響いてゐる筈だ。三人お方、お前等も妾名を聞いて居つただらうな』
ヘル『ハイ、根つから聞いた事は厶いませぬ。私は初稚姫さまだとか、清照姫とか云ふ立派な方名は聞いて居ますが、高姫さまと云ふ名は今日が初めてです』
高姫『さうかいな。何とまア遅れ耳だこと。天地間に義理天上日出神生宮名を知らぬもは一人も無い筈だが、矢張身魂因縁がないと、雷様な声で呼ばつても耳に這入らぬと見えるわい。さア此処で会ふたを幸ひ、高姫姿を拝見しお声をよく聞いておきなさい。決して高姫が云ふぢやありませぬぞや。底津磐根根本大弥勒様が仰有るだから仇に聞いては罰が当りますぞえ』
ヘル『何だか知りませぬが、貴方お声を聞くと頭が痛くなりますわ。お顔を見ても気分がよく厶いませぬわい』
高姫『そら、さうだらう。霊国天国を兼ねた天人身魂だから、身魂曇つた悪守護神は高姫光明に照らされて、目が眩み善言美詞言霊にあてられて、耳が鳴り頭が痛むだよ。チツと確りしなさらんか。今ここで取違ひしたら、万劫末代浮ばれませぬぞや』
ヘル『ヘイヘイ、畏まりました。又御縁が厶いましたらお世話になりやせう』
高姫『ホホホホホ訳分らぬ癲狂痴呆だこと。あああ大慈大悲根本大弥勒さまも、こんな没分暁漢を済度なさらなならぬか、ホンにおいとしいわいう、オーンオーンオーン、然し乍ら此男はヘルとか聞いたが、余程馬鹿な奴と見える。おい、そこに居る、も一人男、お前は高姫名位は聞いてゐるだらうな』
シャル『ハイ、聞いて居りますが、私聞いてる高姫は貴女では厶いますまい。世界に同じ名は沢山厶いますからな』
高姫『お前聞いてる高姫と云ふは如何な性質人だ。一寸云つて御覧なさい』
シャル『ヘイ、吾々親方にして宜い様なお方ですわ。何でも三五教とやらに這入つて金剛不壊如意宝珠に現を抜かし大勢者に嫌はれ、屁神とか糞出神とか云つて自ら触れ歩き、終ひ果には婆癖に恋に落ち、妖幻坊と云ふ古狸につままれて何処かへ攫はれて行つたと云ふ事です。そ高姫なら聞いてゐますが随分私村では悪い婆だと云ふ評判が立つて居りますよ』
高姫『さうかな。矢張妾名に似た婆があると見えるワイ。余り妾名が高いもだから悪神が現はれて高姫名を騙り、三五教へ這入つて、又もや日出神名を騙り、色々事を致しただらう。どうも油断ならぬ時節だ。然し妾は同じ高姫でも、そんな者とは違ひますぞや。月と鼈、雪と墨、同じもと見られましては……ヘン……此高姫も根つから引合ひませんわい。オホホホホホ』
シャル『私は今は斯うして泥坊商売に変りましたが、今迄はバラモン教軍人で鬼春別部下に仕へたもです。そ時に三五教幹部連人相書や絵姿が廻つて来ましたが、妖幻坊に騙されたと云ふ高姫に、お前さまそつくりですよ。よもや其高姫では厶いますまいな。彼奴云ふ事なら口と心が裏表だから決して聞いてはならないと、バラモン教は云ふに及ばず三五教ピユリタンでさへも云つて居ますよ』
高姫『ホホホホホ、盗人分際として高姫真偽が判つて堪らうか。あ高姫と云ふ奴は実所はバラモン教に居つた蜈蚣姫と云ふだよ。それが妾名を騙つて、あんな事をやつただ。三五教奴は馬鹿だから、あまり御光が強いで見分けがつかず贋者を掴んで居つただ。何は兎もあれ、こ高姫隠れ家迄いらつしやい。決して利益にならぬ事は云はぬ。皆天国へ助けてやるだからな』
シャル『オイ、ヘルにケリナに、六公、如何しようかな。一つ此婆ア話を聞いてやらうか』
六造『うん』
高姫『エー、そりや何を云ふだ。此婆話を聞いてやらうも、糞もあつたもかい。底津磐根弥勒様生宮だ。何と云つても助けにや措かぬ、さア来なされ来なされ。これ、其処な若いお女中、お前は一寸見た所で仲々気が利いて居る。事と品とによつたら妾脇立に使つてやらうまいもでもない。何せよ、曇りきつた霊が直に天国に行くと云ふは余り気が良すぎる。中途で墜落る様な事をしてはならず、苦労花が咲く世中だから……天国紫微宮から人間姿となつて降つて来ただ。そして苦労手本を見せて皆に改心させる役だぞえ。お前も出て来て苦労をしなさい』
ケリナ『ハイ、有難う厶います。実所は八衢関所迄参りました所、まだ生命が現世に残つて居るから帰れ、と仰有つたから帰つて来たです。最早此処は現界で厶いますか』
高姫『きまつた事だよ。此処は現界も現界、大現界だ。現幽神三界救ひ主だから先づ現界人間から助けてやるだよ』
ヘル『あああ、何が何だか訳が分らなくなつて来た。然しさう聞くと現界様にもあるし、も一つ心底に疑念も残つて居る。こんな道端に立つて居た所が仕方が無い。先づお婆ア後に跟いて何でも可いから探らして貰ふ事にしようかい。う二男一女御連中』
高姫『探らして貰ふなんて、そりや何を云ふだい。神教は正真一方だ。水晶様につきぬけて居るだぞえ。スパイか何ぞ様に探るなんて、心穢い事を云ふぢやありませぬわい。さアさア来なさい』
と羽ばたきし乍ら欣々と東を指して小径を歩み出した。四人は兎も角、婆さま館に行つて休息せむと重い足を引摺り乍ら跟いて行く。
 谷川辺に萱で葺いた二間作り小かな家が建つて居た。これが高姫中有界に於ける住家である。ヒヨヒヨした板一枚橋を危く渡り乍ら漸くにして四人は高姫館にやつと着いた。
(大正一二・三・一四 旧一・二七 於竜宮館 北村隆光録)
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