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文献名1霊界物語 第56巻 真善美愛 未
文献名2第2篇 宿縁妄執よみ(新仮名遣い)しゅくえんもうしゅう
文献名3第6章 高圧〔1436〕よみ(新仮名遣い)こうあつ
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2024-06-13 19:36:20
あらすじ高姫は地獄に籍を置き、直ちに地獄に降るべき資格が備わっていたが、大神はそ精霊を救おうと三年間修業を命じ給うたであった。地獄界に籍を有する精霊はもっとも尊大にして自我心強く、他に対して軽侮念を持しこれを外部に知らず知らず間に現すもである。自分を尊敬せざるもにたちまち威喝を現し、また憎悪や復讐相好を現すもである。一言たりともそ意に合わざることを言う者は、慢心だとか悪だとか虚偽だとか称して、これを叩きつけようとするが、地獄界に籍を置く者情態である。現界、霊界を問わず地獄にある者はすべて世間愛と自己より来る悪と虚偽に浸っている。そ心と相似たる者でなければ、一緒に居ることは実に苦しく、呼吸も自由にできないくらいである。地獄における者は、悪心をもって悪を行い、悪をもってすべて真理を表明したり説明しようとする。こような者が地獄界に自ら進んで堕ち行くときは、地獄数多悪霊が集まり来たり、俊酷獰猛な責罰を加えようとする。これは現界における法律組織とほぼ類似している。悪を罰する者は悪人でなければならないからである。幽界においては善悪はそまま表れるで、現界と違って誤解がない。また地獄界は悪そが自ら進んで堕ち行くであるから、あたかも秤にかけたごとく、少し不平衡もないである。地獄界者は虚偽をもって真と信じ、悪をもって善と感じている。神稜威も信真光明も、地獄に籍を置いた人間から見たときは暗黒と見えるである。高姫は中有界に放たれて精霊修養を積むべき期間を与えられたにもかかわらず、地獄境涯を脱することができず、虚偽と悪を善と信じて拡充しようと活動を続けていた。そして四人男女を吾が居間に導き、支離滅裂な教えを説きはじめた。ヘルとケリナは、高姫説教に納得がいかず、いちいち反論している。高姫は手を合わせてケリナ改心を祈っていると、どら声を張り上げて門戸を叩く者があった。高姫は表へ出て行った。
主な人物 舞台 口述日1923(大正12)年03月14日(旧01月27日) 口述場所竜宮館 筆録者外山豊二 校正日 校正場所 初版発行日1925(大正14)年5月3日 愛善世界社版71頁 八幡書店版第10輯 171頁 修補版 校定版75頁 普及版31頁 初版 ページ備考
OBC rm5606
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本文  高姫に導かれて四人男女は、細谷川一本橋を渡り、二間造り小さき家に導かれた。高姫精霊は既に地獄に籍を置き、直ちに地獄に下るべき自然資格が備はつてゐる。併し乍ら仁慈無限大神は如何にもして其精霊を救ひやらむと三年間、ブルガリオ修行を命じ給ふたである。総て精霊内分は忽ち外分に現はれるもである。外分とは概して言へば身体、動作、面貌、言語等を指すである。内分とは善愛想念や情動である。
 地獄界に籍を有する精霊は最も尊大自我心強く、他に対して軽侮念を持し之を外部に不知不識間に現はすもである。自分を尊敬せざるもに対しては忽ち威喝を現はし、又は憎悪相好や復讐的相好を現はすもである。
 故に一言たりとも其意に合はざる事を言ふ者は、忽ち慢心だとか悪だとか虚偽だとか、いろいろ名称を附して、之を叩きつけむとするが地獄界に籍を置くも情態である。
 現界に於ける人間も亦、顕幽一致道理に依つて同様である。現界、霊界を問はず地獄にあるもは、全て世間愛と自己よりする、諸悪と諸虚偽に浸つてゐるが故に、其心と自己心と相似たるもとでなければ、心相応せないもと一緒に居る事は実に苦しく、呼吸も自由に出来ない位である。併し乍ら悪即ち地獄に於ける者は悪心を以て悪を行ひ、又悪を以て総て真理を表明したり、説明せむとするもである。故に其説明には矛盾撞着支離滅裂箇所ばかりで、正しき人間や精霊眼から見れば、実に不都合極まるもである。斯かる悪霊が地獄界に自ら進んで堕ちゆく時は、其処に居る数多悪霊は、彼等上に集まり来り、峻酷獰猛なる責罰を加へむとするもである。其有様は現界に於ける法律組織と略類似して居る。総て悪を罰するもは悪人でなければならぬ。虚偽、譎詐、獰猛、峻酷等悪徳無きもは到底悪人を罰することは出来得ないである。併し乍ら現界と幽界と異なる点は現界にては大悪が発見されなかつたり、又善人が悪と誤解されて責罰を受くる事が沢山にあるに反し、地獄界に於ては、悪其物が自ら進んで堕ち行くであるから、恰も衡にかけた如く、少し不平衡も無いもである。
 而して獰猛と峻酷内分も亦外分即ち相好上に現はるるもである。故に地獄に墜ちて居る邪鬼及邪霊は何れも其内分相応面貌を保ち生気無き死屍相を現じ、疣や痣、大なる腫物等一見して実に不快な感じを与ふる者である。然し之は天国に到るべき天人目より其内分を透して見たる形相であつて、地獄邪霊相互間にては決して余り醜しく見えない者である。何故なれば彼等は皆虚偽を以て真と信じ、悪を以て善と感じて居るからである。時あつて天上より大神光明、地獄界を照す時は、彼等は忽ち珍姿怪態を曝露し、恰も妖怪如き相好を現はし、自ら其姿恐ろしきに驚くもである。併し乍ら天界より光明下り来る時は、朦朧たる地獄は層一層暗黒度を増すもである。愛善徳と信真光明は悪と虚偽とに充されたる地獄では益々暗黒となるもである。故に如何なる神稜威も善徳も、信真光明も、地獄に籍を置きたる人間より見たる時は、自分住する世界よりは暗黒に見え、真理は虚偽と感じ、愛善徳は憎悪と感ずるに至るもである。故に大部分地獄界に堕落せる現代人が、大本光明を見て却て之を暗黒となし、至善至美教を以て至醜至悪教理となし、或は邪教と誹るに至るは、其人内分相応理に依つて寧ろ当然と謂ふ可きもである。
 高姫は中有界に放たれ精霊修養を積むべき期間を与へられたるにも拘らず、容易に地獄境涯を脱する事を得ず、虚偽を以て真理と為し、悪を以て善と信じ、一心不乱に善道を拡充せむと車輪活動を続けて居るである。類を以て集まるとか云つて、自分内分に相似たるもでなければ、到底相和する事は霊界に於ては出来ない。現界ならばいろいろと巧言令色、或は虚偽なぞに由つて内分幾分かを包み得るが故に高姫教を聞くもも多少はあつたけれども、最早霊界に来つては自分と相似たるもでなければ、共に共に生涯を送る事が出来なくなつてゐた。併し乍ら高姫は依然として現界に居るもみ考へ、八衢守衛が言葉も半信半疑体に取扱ふてゐた。霊界へ来てから殆ど一ケ年、月日を経るに従つて守衛言葉は少しも意に止めなくなり、益々悪化し乍らも自分教は至善である、自分動作は神に叶ひしもである、而して自分は義理天上日出神生宮で、天地を総轄したる底津岩根大弥勒神柱と固く信じてゐるだから堪らない。さて高姫は四人男女を吾居間に導き、自分は正座に傲然としてかまへ、諄々として支離滅裂なる教を説き初めた。
高姫『皆さま、よくまア日出神教に従つて此処へ跟いて厶つた。お前は余程因縁深いお方だぞえ。こんな結構な教は鉄草鞋が減る所迄世界中を探し廻つても外にはありませぬぞや。そして喜びなされ、此高姫は高天原第一霊国エンゼル身魂で、根本根本大神生宮だから、天も構へば地も構ひ、何処も彼処も一つに握つた太柱、扇で譬へたら要だぞえ。時計で喩たら竜頭様な者だ。扇に要が無ければバラバラと潰れて了ふ。時計に竜頭が無ければ捻をかける事も出来ますまい。夫だから此高姫は根本根本世界に又と無い如意宝珠玉ぢやから、よく聞きなされや。お前達は泥坊をしたり、バラモン軍人になつたり所在悪をやつて来ただから、直様地獄へ堕すべき代物だけれども、此高姫生宮申す事をよく聞いて行ひを致したなれば結構な結構な第一天国へでも助けて上げますぞや』
と止め度もなく大法螺を吹き立てる。併し乍ら高姫自身は決して自分言葉は大法螺だとは思つて居ない。正真正銘一分一厘間違ひない神慈言だと固く信じて居るだ。
ヘル『モシ高姫様、貴女が夫れ程偉い御方なら何故天へ上つて下界を御守護遊ばさぬですか。此様な山ほでらに御殿を建てて吾々様な人間を一人や二人捉まへて説教をなさるとは、神としては余り迂濶ぢやないですか。世界中には幾億万とも知れぬ精霊があるにも拘らず、根本大神様生宮さまが左様な事をなさるとは、些と合点が参りませぬワ。要するに高姫さま法螺では厶いますまいかなア』
 高姫は忽ち地獄的精神になり、軽侮と威喝と憎悪面相を表はし、且プンプンとふくれ出し言葉迄地獄相を現はして来た。
高姫『コレお前は何といふ途方もない事を言ふだ。ホンに虫けら同然つまらぬ代物だな。勿体なくも神生宮を軽蔑するとは以て外ぢや。そんな不量見な事では此生宮は許しませぬぞや。直ちに地獄へ堕してやるから其積りでゐなされよ』
と獰猛なる形相に憤怒色を現はし、歯をキリキリと噛みしめて、眼を怒らし睨めつけて居る。
 ヘルは高姫面貌を見てギヨツとしながら、屹度胸をすゑ、肱を張りわざとに体を前方へ突き出し、胸動悸をかくし、
ヘル『アハハハハハ吐したりな高姫、其鬼面は何事、仁慈無限神様は些と許り気に入らぬ事を云つたからとて、そんな六ケ敷い相好はなさりませぬぞや。神は愛と善と信とでは厶らぬか。仮にも人を威喝、軽侮、憎悪するやうな事で、何うして正しい神と云へますか。御控へ召され』
と呶鳴りつけた。
 高姫は烈火如く憤り、相好益々獰猛となり、さも憎々しげに睨めつけ乍ら、
高姫『コリヤ、バラモン小盗人奴、何を云ふだ。誠生神は貴様やうな盲聾に分つて堪らうか。お前は心中に悪と云ふ地獄を築き上げてゐるから、此日出神円満なる美貌が怖く見えたり、善言美詞が悪言暴語如く聞ゆるだ。身魂階級が違ふと悪が善に見え、善が悪に見えたりするもだ』
と自分悪と虚偽とにより地獄に堕ち居る事を知らず、無性矢鱈に他に対して悪呼はりをしてゐる。人間も精霊も此処迄暗愚になつては如何なる神力も之を救ふ事は出来ないもである。
 ヘルは高姫前に首をヌツと突き出し、背水陣を張つたつもりで、握り拳を固め、
ヘル『今一言、何なと言つて見よ。こ鉄拳が貴様脳天に障るや否や木端微塵にして呉れるぞよ』
勢を示してゐる。流石高姫も其権幕に辟易したか、ヘルに向つては夫れ切り相手にしなかつた。ヘルは振り上げた拳やり所がなくなつて、首尾悪げに元へ直した。
 高姫はニヤリと笑ひ乍らさも横柄な面付して後三人を見下し、
高姫『コレ六公にシャル、ケリナ、何と云つても身魂因縁性来事より出来ぬだから、妾云ふ事が耳に入らぬ人は、如何しても地獄行きぢやぞえ。皆々、どうだい、一つ此生宮云ふ事を聞いて天国へ上る気はないか』
ケリナ『ハイ有難う厶います。到底妾やうな罪深き人間は自分造つた罪業に依つて相応地獄へ行かねばなりますまい。何程貴女様が天国へ救ひ上げてやらうと仰有つて下さつても、身魂不相応所へ行くは苦しくて堪えられませぬ。妾は現在儘何時迄も此世に暮したいと存じます』
高姫『ハテ、さて解らぬ方だなア。神が御蔭をやらうと思ふてつき出して居るに受取らぬと云ふ事があるもか。諺にも……天与ふるもを取らざれば却つて災其身に及ぶ……といふ事があるぢやないか。何故此生宮がつき出した神徳を辞退するだい』
ケリナ『ハイ、御親切は有難う厶いますが、神様から頂いた神徳なれば自分がお返し申さぬ限り決して取上げらるる事は厶いませぬ。併し乍ら人間さまから頂いた神徳は、何時取返されるか知れませぬから、初めから頂かない方が、双方利益で厶いませう』
高姫『コレ、ケリナ、何と云ふ解らぬ事をお前は云ふだい。最前からも云つた通り、底津岩根大弥勒さま生宮ぢやないか。此生宮を人間ぢやと思ふて居るが、テンカラ間違ひぢやぞえ。それだからお前は改心が足らぬといふだ。お前が妾館へ来たも昔根本古き神代から、身魂因縁があつて引寄せられただ。お前大先祖は大将軍様を苦しめた十悪道身魂ぢやから、其罪が子孫に伝はり今度は世立替立直しにつれて、大掃除が始まるだから、悪系統身魂は焼き亡ぼし、天地間に置かぬやうにするだから、此生宮申す間に柔順に聞く方が、お主徳ぢやぞえ』
ケリナ『ハイ、御親切は有難う厶いますが、妾には大先祖がどんな事をして居つたか、中先祖が何うだつたか、そんな事はテンと解りませぬ。私は私で信ずる神様が厶いますから、折角乍ら御辞退を致します』
高姫『ドークズ身魂といふもは上げも下しもならぬもだなア。人間分際として根本因縁が解るもかいなア。それだから此高姫が身魂調べをして各自に因縁性来を表はし、因縁だけ御用を仰せつけるだ。先祖から因縁性来が解らぬやうな事で、何うして底津岩根大神様生宮御用が勤まりますか。神申す間に柔順に聞いて置きなさらぬと後で後悔を致しても、其処になりたらモウ神は知りませぬぞや。マア悠りと胸に手を当てて雪隠へでも入つて考へて来なさい。アーア一人氏子を誠道に導かうと思へば、並や大抵事ぢやない。乃木大将が旅順口を十万兵士を以て落したよりも難いもだ。針穴へ駱駝を通すよりも難い。これでは神も骨が折れるワイ。盲聾に何程結構な事を噛んで含めるやうに言ひ聞かしてやつても、豚に真珠、猫に小判やうなもだ。憐れみ玉へ助け玉へ、底津岩根大弥勒様』
と掌を合し一生懸命にケリナ姫改心を祈つてゐる。シャル、六造二人は此問答をポカンと口を開けた儘延び上つて立膝し乍ら聞いてゐる。暫くは土佐犬噛み合ひやうな光景で沈黙幕が下りた。其処へ銅羅声を張り上げて門戸をブチ割れる程叩くもがある。
 高姫はツと立上り四人を尻目にかけ乍ら、門戸を開く可く表を指して進み行く。
(大正一二・三・一四 旧一・二七 於竜宮館二階 外山豊二録)
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