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文献名1霊界物語 第56巻 真善美愛 未
文献名2第2篇 宿縁妄執よみ(新仮名遣い)しゅくえんもうしゅう
文献名3第7章 高鳴〔1437〕よみ(新仮名遣い)たかなり
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2024-06-15 16:52:44
あらすじ戸を叩いていた男はベルであった。高姫はベルを引き入れようと教えを説きはじめたが、ベルは変性男子系統教えを盗んでいるは高姫方だと反論する。高姫はまた屁理屈でベルに反論する。高姫とベル問答を聞いていた六造も高姫へ反対を唱え出した。一人シャルみが高姫説に同意し、弟子にしてもらうことを申し出た。高姫が喜んでいると、どこからともなく山彦をとどろかすほら貝声が近づいてきた。
主な人物 舞台 口述日1923(大正12)年03月14日(旧01月27日) 口述場所竜宮館 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1925(大正14)年5月3日 愛善世界社版82頁 八幡書店版第10輯 175頁 修補版 校定版87頁 普及版37頁 初版 ページ備考
OBC rm5607
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本文  七重八重言葉花は咲きぬれど  実一つさへなき山吹
 花にも擬ふ教へ草  インフエルどん底に
 霊魂籍をおきながら  底津岩根大神
 誠一つ太柱  此世を救ふ義理天上
 日出神生宮と  信じ切つたる高姫は
 如何なる尊き御教も  吾魂に添はざれば
 一々これを排斥し  変性男子生御霊
 書かせ給へる御教を  所まんだら撰り出し
 自が曇りし心より  勝手次第に解釈し
 其身に憑る曲霊に  身も魂も曇らされ
 唯一心に神為め  世人ためと村肝
 心を尽すぞ果敢けれ  妖幻坊杢助に
 魂を抜かれて中空より  印度カルマタ
 草茫々と生え茂る  原野に危く墜落し
 其精霊は身体を  首尾よく脱離しブルガリオ
 八衢関所に到着し  赤白二人門番が
 情によりて解放され  天八衢遠近と
 彷徨ひ廻りて岩山  麓に庵を結びつつ
 冥土へ来る精霊を  三途脱衣婆
 気取になつて点検し  一々館へ連れ帰り
 支離滅裂教理をば  口角泡を飛ばせつつ
 一心不乱に説き立てる  其熱心は天を焼き
 地を焦がさむず勢に  遉慈愛大神も
 救はむよしもなきままに  三年間高姫が
 心ままに放任し  眼を閉ぢて自ら
 眼醒むる時を待ち給ふ  かくも畏き大神
 大御心を覚り得ず  吾身に憑る精霊は
 至粋至純神霊  日出神義理天上
 底津岩根大神と  曲霊に騙られ
 信じ居るこそ憐れなり  八衢街道真中で
 ふと出会した四人連れ  言葉巧に誘ひて
 己が館へ連れ帰り  心をこめて天国へ
 救ひやらむと気を焦ち  力を尽す高姫が
 心を無にしてバラモン  ヘルやケリナが反抗し
 互に顔を睨み鯛  小さき部屋に燻つて
 白黒眼をつり居たる  時しもあれや表戸を
 叩くは水鶏か泥坊か  但は嵐行く音か
 何は兎もあれ門口に  現はれ実否を探らむと
 四人男女を睨みつつ  庭に下り立ち表戸を
 ガラリと開ればこは如何に  髯茫々と生え茂る
 バラモン教落武者が  泥坊仲間親分と
 聞くより高姫目を瞠り  神言霊に
 誠をさとし助けむと  心を定めて誘ひ入れ
 四人前に引き来る  ああ惟神々々
 神御霊幸倍ひて  一時も早く高姫や
 其外五人精霊を  一日も早く大神
 誠教に服はせ  救はせ給へと願ぎまつる
 朝日は照るとも曇るとも  月は盈つとも虧くるとも
 仮令大地は沈むとも  誠力は世を救ふ
 誠道を誤りし  虚偽に満ちたる高姫が
 教を如何に布くとても  正しき神在す限り
 如何でか目的達すべき  さはさりながら善人は
 愛と善と徳に居り  真と信と光明に
 浴し仕ふるもなれば  善悪正邪は忽ちに
 心日月に  映ろひ行けど曲津見に
 心を曇らす精霊は  却て悪を善となし
 虚偽をば真理と誤解して  益々狂ふ憐れさよ
 三五教ピユリタンと  救はれきつた精霊は
 如何でか曲醜言に  尊き耳を傾けむや
 眼は眩み耳ふさぎ  霊汚れし精霊は
 霊と霊と相似より  蟻甘きに集ふごと
 喜び勇み集まりて  虚偽と不善教をば
 こよなきもと確信し  随喜渇仰するも
 ああ惟神々々  神大悲御心を
 量りまつりて万斛  涙は河と流れゆく
 此河下は三途川  脱衣婆々と現はれて
 現幽二界精霊が  心を洗ふヨルダン
 流れを渡るぞ憐れなる  此惨状を逸早く
 救はせ給へと瑞月王仁が  謹み敬ひ三五
 神御前に赤心を  捧げて祈り奉る。
 高姫は今来た男に向ひ、穴あく程其顔を打ち見守りながら、
『ヤアお前面体には殺気が溢れて居る。大方泥坊でもやつて居るぢやないかな』
『是はしたり、此処へ這入るや否や泥坊とは恐れ入ります。成程貴女仰有る通り、吾々は元から泥坊では厶いませぬ。月国ハルナ都に現はれたまふ大黒主御家来、鬼春別ゼネラルお伴を致し、斎苑館へ進軍真最中、将軍部下片彦、久米彦が三五教宣伝使治国別言霊に脆くも打ち破られ、浮木森に引き返し来りたれば、此処に軍隊を二つに分ち、一方は鬼春別、一方はランチ、各三千騎を引き率れ、ビク国を蹂躙し、次で猪倉山に陣営を構へ、武威を八方に輝かす折しも、又もや治国別神軍に踏み破られ、鬼春別、久米彦両将軍は三五教に帰順致され、吾々は解散厄に遇ひ、心にも無き剥ぎ取り泥坊を彼方此方でやつて居るもで厶る。併し私が泥坊だと云つてお前さまに咎めらるる道理はありますまい。泥坊は泥坊として最善を尽し、其商売繁昌を計つて居るだから泥坊呼ばはりはやめて貰ひませうかい。此方が泥坊なら此処に居る四人も泥坊だ。其外世界奴は直接間接違ひこそあれ泥坊根性無いもはない。いや泥坊根性無いもは無いみならず、藁すべ一本なりと泥坊せないもは何奴も此奴もありますまい』
高姫『オホホホホ。泥坊にも三分理窟があるとか云つて、どうでも理窟付くもだなア、併し乍らお前やうに泥坊を自慢らしく云ふもは聞いたことがない。些と恥を知りなさい。それだから神様が「今人間は天賊だ、泥坊中だ」と仰有るだ。遠慮してコソコソやつて居るなら可愛らしい所もあるが、大きな声で泥坊だと威張り散らすやうになつてはもう世も末だぞへ。そこで底津岩根大神様が今度立替を遊ばし、鬼も大蛇も賊もないやうになさるだよ。お前も好い加減に改心なさらぬと未来程が怖ろしいぞへ』
ベル『アハハハハ。諺にも「猿尻笑ひ」と云ふ事がありますぞや、吾々は泥坊といつても、唯金銭物品を泥坊する許りだ。それよりも大泥坊、否天賊が此処に一人あるやうだ。鬼念仏はこベル、根つから聞きたうは厶いませぬわい』
高姫『天賊が此処に一人居るとはそれや誰事だい。お前は私顔を睨めつけながら天賊と云ふた以上は、誠生粋生宮を取り違ひして天賊と云つただらうがな』
ベル『勿論お前事だよ、よく考へて御覧なさい。変性男子厳御霊生宮が、大国常立尊伝達遊ばした神示を、そつと腹に締め込み、それを自分物として横領して居るぢやないか。そして自分は義理天上だとか、底津岩根大神生宮だとか云つて得意になつて居るは実に天地容れざる大罪悪、大虚偽もこれに越したるもはあるまい。それだからこベルが大泥坊天賊と云つたが、どこに間違ひが厶るかな、不服とあらばベル前で説明をして貰ひませう』
と胡床をかき言葉鋭く詰よつた。
高姫『ホホホホホ。ても扨ても分らぬ男だな、善一つ誠生粋日本魂、根本根本此世御先祖様憑らせたまふ生宮に対し泥坊呼ばはりをするとは無智にも程がある、お前やうな盲聾が娑婆を塞いで居る以上は何時になつても神政成就は出来ませぬわい。何と云ふても霊が地獄に堕ちて居るだから、人眼についている塵は目についても己眼にある梁は目に入らぬと見える、これシャル、六造、こ二人男を見て改心なされや。今が肝腎時で厶いますぞえ。人民分際として善ぢや悪ぢやとそれや何を云ふぢや。三五教教にも「神が表に現はれて、善と悪とを立て分ける」とお示しになつて居るぢやないか。神様外に善と悪とを立て分けるもは無い。それも根本弥勒様より外に立分ける者は無い、枝神では出来ない、それだから根本神様御用をする此高姫言ふことは大神様御心だから、お前心に合はなくてもこ高姫云ふ通り素直になして行ひを改めさへすれば、現界、神界、幽界、ともに結構な御用が出来ますぞや』
六造『高姫さま、何と仰有つても私にはテンと信用が出来ませぬがな、お前御面相を最前から考へて居るが、ちつとも神様らしい所が現はれて居りませぬ。表向にはニコニコとして厶るが、そ方に何とも云へぬ険悪な相や、憎悪相が現はれて居りますぞや。「人間面貌は心索引」とか云ひまして、何うしても内分は包む事は出来ませぬ、きつと外分に現はれて来るもですからなア』
高姫『アーアー、何れもこれも分る霊は一人も無いわい。神様も仰有つた筈だ「誠人が三人あつたら三千世界立替立直が出来る」と事、今更其お言葉を思ひ出せば実に感歎外はない。私も長らくこれ程一生懸命に神様為め、世人為め、粉骨砕身活動をして来たが未だ一人知己を得る事が出来ないか、情なや情なや ほんに浮世が嫌になつて来たわい』
シャル『もし高姫様、私はどこ迄も貴女お言葉を信じます。貴女は本当根本大神様生宮様に間違ひはありませぬ。何卒私を貴女お弟子にして下さいますまいか』
高姫『オホホホホ。成程お前は何処ともなしに気利いた男だと初から見込んで置いた。矢張り日目は違はぬわい。これ皆泥坊共、高姫申す事でも誠さへ心にありたら、こシャル通り一遍に腹へ入りますぞや。分らぬはお前心が曇つて居るからであるぞや。ちと御改心なされ、足許から鳥が立つぞや』
 斯る所へ何処ともなく、ブーウ ブーウと山彦を轟かす法螺貝声近づき来る、ああ惟神霊幸倍坐世。
(大正一二・三・一四 旧一・二七 於竜宮館二階 加藤明子録)
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