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文献名1霊界物語 第56巻 真善美愛 未
文献名2第4篇 三五開道よみ(新仮名遣い)あなないかいどう
文献名3第16章 不臣〔1446〕よみ(新仮名遣い)ふしん
著者出口王仁三郎
概要
備考テルモン山神館小国別は、初版では「鬼国別」で、御校正本で「小国別」に直された。なぜか第56巻第16章「不臣」だけは「小国彦」(初版では「鬼国彦」)になっている。こ章に4回出る。
タグ データ凡例 データ最終更新日2018-10-04 00:19:35
あらすじ朝食が済むと小国姫は三千彦ところにやってきて、テルモン山神館問題について相談を始めた。こバラモン教神宝である如意宝珠玉が紛失し、百日以内に取り戻せなければ小国別・小国姫夫婦は死をもってお詫びをしなくてはならないという。それを苦にして小国別は病に倒れてしまった。また次女ケリナが三年前に駆け落ちしたまま行方不明になり、こことも夫婦気にかかっているという。小国姫は、これら問題について神様に祈願し、託宣していただくように依頼した。三千彦は一週間時間を約束し、神殿に籠って祈願をこめはじめた。するとスマート精霊が三千彦にお告げを聞かせはじめた。スマートは、玉国別一行には近いうちにこ館で会えるようになると三千彦を安堵した。そして、如意宝珠玉は、こ神館家令せがれワックスという者が、ある目的ために隠していると託宣した。スマートは、ワックスが玉を隠していることは小国姫には決して言わず、ただ近いうちに現れると答えるように教えた。また、小国別はもう寿命であること、妹娘ケリナは三五教修験者に助けられて近いうちに帰ってくることを知らせた。三千彦は天耳通が開けた者と思って、喜んで大神に感謝し、小国姫居間に引き返して告げられたように、それぞれ問題見通しを小国姫に答えた。小国姫は、小国別は残念ながら寿命だが、如意宝珠も妹娘も現れたを見て国替えすることができる、と聞いて安心した。そこへ小国別容態が悪くなったということで、小国姫、三千彦、家令オールスチンは枕頭に集まった。小国別はしきりに、ワックス、ワックス、と家令息子名前を呼んでいる。小国姫は、何事が小国別とワックス間にあったか調べるようにオールスチンに命じた。オールスチンは思い当ることがあるように首を傾けながら我が家に戻った。オールスチンが帰ってくると、二三人人声が聞こえて来る。オールスチンは門戸にもたれて話様子を聞いている。
主な人物 舞台 口述日1923(大正12)年03月17日(旧02月1日) 口述場所竜宮館 筆録者北村隆光 校正日 校正場所 初版発行日1925(大正14)年5月3日 愛善世界社版231頁 八幡書店版第10輯 231頁 修補版 校定版244頁 普及版109頁 初版 ページ備考
OBC rm5616
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本文  神殿拝礼が終ると共に三千彦は小国姫居間に招ぜられ、茶菓饗応を受け朝飯を頂き等して寛いでゐる。朝飯が済むと二人侍女は此場を立ち去り小国姫は憂ひ顔をし乍ら現はれ来り、
姫『アン・ブラツク様、よくまアお越し下さいました。折入つてお願致し度い事が厶いますが、聞いては下さいますまいかな』
三千『ハイ、私力に及ぶ事ならば如何なる御用も承はりませう。御遠慮なく仰せ下さいませ』
姫『有難う厶ります。早速ながらお伺ひ致しますが、当館は貴方も御承知通りバラモン教大棟梁大黒主神様が、まだ鬼雲彦と仰せられた時分、ここを第一聖場とお定め遊ばしたバラモン発祥旧跡で厶います。吾々夫婦名は国彦、国姫と申しましたが、鬼雲彦様より御名を頂いて今は小国別、小国姫と申して居ります。就いては当館重宝如意宝珠玉が紛失致しまして今に行衛は知れず、百日間に此玉を発見せなければ吾々夫婦は死してお詫をせなくてはならない運命に陥つて居ります。吾夫はそれを苦にして大病に罹らせ玉ひ、命旦夕に迫ると云ふ今日場合で厶います。悪い事が重なれば重なるもで、今より三年以前に妹娘ケリナと云ふも、仇し男と共に家出を致し、今に行衛も分らず、夫婦心配は口で申すやう事では厶いませぬ。何卒御神徳を以て如意宝珠所在をお知らせ下さる訳には参りませぬか』
 三千彦は天眼通が些とも利かないで、こんな問題を提出されても一言も答へる事が出来ない。然し乍ら、何とかして此場ゴミを濁さねばならないと一生懸命に大神を念じ乍ら事もなげに答へて云ふ。
三千『お話を承はれば実に同情に堪えませぬ。必ず御心配なさいますな。私がここへ参りました以上は必ず神様お綱がかかつて引寄せられたに相違厶いませぬ。ここ一週間間御祈念致し、玉所在を伺つてみませう』
と其場逃れ覚束なげ挨拶をして居る。溺るる者は藁条一本にも頼らむとする喩如く、小国姫は三千彦言葉を唯一力とし大に喜んで笑を湛へ乍ら、
姫『御親切に有難う厶います。何分に宜しうお願ひ致します。そして厚かましいお願ひで厶いますが、夫病気は如何で厶いませうかな』
三千『先づ一週間心魂を籠めて祈る事に致しませう。神様は如何しても必要があると思召したら命を助けられるでせうし、又霊界にどうしても御用があると思召したら命をお引き取りになるでせう。生死問題みは如何ともする事は出来ませぬ。之は神様にお任せなさるより外に道はありますまい』
姫『仰せ如く何時も私も信者に生死問題に就いては、人間如何ともする所でないと説いて居ますが、さて自分上に関するとなるとツイ愚痴が出たり、迷ふたりしてお恥しき事で厶います。それから、も一つ申兼ねますが娘行衛で厶います。彼娘はまだ無事に此世に残つて居るでせうか。或は悪者為めに殺されたやうな事は厶いますまいか。それ許りが心配で堪りませぬ』
 三千彦は何れも此れも宜い加減な返事はして居れない。エー、ままよ、一か八かと決心して、
三千『娘さま事は御心配なさいますな。屹度神様お恵で近い内に無事にお帰りになります』
姫『ハイ、有難う厶ります。そして娘は今頃は何処国に居りますか。一寸それを聞かして頂き度いもで厶います』
 三千彦はハツと詰まり乍ら肝を放り出して、
三千『つい近い所に隠れて居られます。まア御心配なさいますな。軈て帰られますから、然し詳しい事は御神殿で伺つて来なくては申上兼ねますから』
姫『成程、さうで厶いませう。何卒御緩りなさいましたら、一度御神勅を伺つて下さいませ』
三千『ハイ、承知致しました。これから早速伺つて参ります。併し乍ら誰方もお出でにならぬやうに願ひます』
と云ひ残し神殿さして進み行く。
 三千彦は神殿に進み小声になつて天津祝詞を奏上し、終つて、
三千『私は大変な難問題にぶつつかりました。併し乍ら苟くも三五宣伝使、宜い加減な事は申されませぬ。もし宜い加減事を申し、化けが露はれたなら、それこそ神様お名を穢し、師君に対しても相済みませぬからハツキリした事を、ここ一週間間に私耳許にお聞かせ下さいますか、但は夢になりと知らして下さいませ。そしてなる事なら吾師所在ほどもお示し願ひます』
 斯く念じて暫らく瞑目して居ると忽ち背中がムクムクと膨れ出し、犬様なもが負ぶさつた様な重味が感じて姿は見えねど、少し掠つた声で耳許に囁いた者がある。之はスマート精霊が三千彦身を守るべく諭して呉れたである。さうして其示言は左通りであつた。
精霊『三千彦殿、其方は大変に心配を致して居るが、玉国別様一行は軈て近い内に此館でお目にかかれるであらう。そして当館重宝如意宝珠は家令悴ワツクスと云ふ者が或目的ために隠して居るだから、之も只今現はれるであらう。儂は初稚姫身辺を守るスマートと云ふもだが、小国姫に対しては決してワツクスが匿して居る等と云つてはなりませぬぞ。然し直様、現はれる様に致すから心配致すなと云つて置きなさい。又此家主人小国別はここ暫らく寿命だから、それは諦める様に云ふて置くが宜い。又娘ケリナ姫は三五教修験者に助けられ、近い中に帰つて来る。之も安心するやうに知らしてやりなさい。尋ねる事は、もう之でないかな』
と小さい声が聞えて来る。三千彦は初めて天耳通が開けたもと考へ、非常に喜んで大神に感謝し、莞爾として小国姫居間に引返した。小国姫は三千彦何処ともなく元気に充ちた顔色を見て、
姫『こりや、些と有望に違ひない』
と早くも合点し、さも嬉しげに、
姫『これはこれはアンブラツク様、御苦労様で厶いました。御神徳高き貴方、定めし神様お告げを直接お聞きなさいましたでせう。何卒お示し下さいませ』
三千『イヤ、さう褒められては恐れ入ります。何を云つてもバラモン教へ這入つてから、俄に抜擢されて宣伝使になつたも、経文も碌にあがりませぬ。只信念堅実と云ふ廉を以て宣伝使にして貰つたですから、バラモン教教理は少しも存じませぬが、信仰力によりまして天眼通、天耳通を授けて頂いて居ります。それで何んな事でも鏡にかけた如く知らして頂けます』
姫『イヤ、結構で厶います。今宣伝使は難い小理窟ばかり云つて、朝から晩まで経文研究に日を暮し、肝腎信仰が欠けて居ますから、神様お取次であり乍ら、些とも大神意思が分らないで厶いますよ。何を云つても不言実行が結構で厶います。さうして神様は何と仰せられましたかな』
三千『はい、明白した事は分りませぬが私インプレッションに拠りますれば、此お館重宝は近い中にお手に這入ります。屹度私が貴女にお手渡しをしますから御安心下さいませ。さうしてお嬢さまは日ならずお帰りになります。然し乍ら旦那様はお気毒ながら天国へ御用がおありなさるさうだから先づお諦めなさるが宜しからう』
姫『どうも有難う厶りました。神様御用で昇天するとあれば止むを得ませぬが、成る事ならば夫生存中に如意宝珠在所が分り、又娘顔を一目見せ度いもで厶いますが、如何で厶りませう、これは叶ひますまいかな』
三千『イヤ、御心配なさいますな。之は屹度現はれて参ります。そして御主人が如意宝珠を抱き、片手に姫さまを抱いて喜び勇んで国替をなさいますから、まア一時も早く神様お繰合せをして頂くやう御祈願を成さいませ。私も一生懸命に御祈願致します』
姫『ハイ、有難う厶います』
と嬉し涙にかき暮れる。斯かる処へ家令オールスチンは衣紋を繕ひ現はれ来り、
オールス『もし、奥様、旦那様が大変お苦みで厶います。そして奥を呼んで来て呉れと仰有いますから何卒早く側へ行つて下さいませ。私は宣伝使お側にお相手を仕りますから』
姫『アン・ブラツク様、今家令申した通り、主人が待つて居りますから一寸行つて参りますから何卒御緩りとお休み下さいませ』
と言ひ捨てて忙しげに此場を立つて行く。
 オールスチンは三千彦に向ひ、
オールス『宣伝使様、どうも御苦労様で厶います。お聞及び通り此お館には大事が突発致しまして上を下へと騒ぎ廻つて居ります。どうか貴方御神徳によりまして、此急場が逃れますやうにお願ひ致し度う厶います。そして神様御神勅は如何で厶いましたか』
三千『御心配なさいますな。如意宝珠玉は決して外へ紛失はして居りませぬ。此お館に出入する相当な役員息子が、或目的を抱いて玉を匿して居ると云ふ事が、神様お告げで分りました。軈て出て来るで厶いませう』
オールス『エ、何と仰有ります、あ如意宝珠宝玉を此身内者が匿して居ると仰有るですか。そして此館へ出入する重なる役員息子とは誰で厶いませう。参考ためにお名を聞かして頂き度う厶いますが……』
三千『まだ私も修行が足りませぬで、隠した人姓名まで明白り云ふ事は出来ませぬ。丸顔色白い男だと云ふ事だけは確に分つて居ります』
オールス『はてなア、妙な事を聞きまする。然し乍ら誰が匿してあるにせよ、之を探し出さねば小国別様言ひ訳が立たず、又此館役員迄が大黒主から厳しい罰を受けねばなりませぬ。そしてそ玉は近いうちに現はれるで厶いませうか』
三千『屹度現はれます。成るべく事を穏かに済ませ度いと思ひますから、何卒秘密にして置いて下さいませ。互に瑕がついてはなりませぬからな』
オールス『成程、仰有る通りで厶います。こんな事が外へ洩れては一大事、一時も早く現はれますやう、そして旦那様に一時も早く安心行くやう、願つて下さいませ』
三千『ハイ、承知致しました』
 斯かる所へ小国姫は再び現はれ来り、
姫『もし、宣伝使様、主人が大変に様子が悪うなりましたから、何卒一つ御祈祷をしてやつて下さいますまいかな』
三千『それはお困りです。然らば参りませう』
と云ひ乍ら家令と共に主人居間に通つた。
 小国別は熱に浮かされて囈言を云つて居る。そして時々、ワツクス ワツクスと呻いて居る。ワツクスとは家令オールスチンが息子である。オールスチンは之を聞くよりハツと胸を撫で、俯向いて思案に暮れて居る。小国姫は少しく声を尖らし乍ら、
姫『これ、オールスチン、今旦那様が夢中になつて「ワツクス ワツクス」と仰有るはお前名に違ひない。何か旦那様に対し、御無礼事をして居るではあるまいか。よく調べて下さい。此宣伝使様にお尋ねすれば直分るだらうけれど、斯んな事まで御苦労になるは畏れ多い事だから、お前、心に当る事があるなら包まず隠さず、ワツクス事に就いて述べて下さい』
オールス『ハイ、心当りと申しては何も厶いませぬが、兎も角宅へ帰りまして悴を調べて見ませう。暫くお待ち下さいませ。然らば奥様、旦那様をお大切にして下さいませ。アンブラツク様、左様ならば一寸宅まで帰つて参ります。何卒宜しうお願ひ申します』
と言葉を残し急ぎ吾家を指して帰り行く。
 オールスチンは館を出でて吾家に帰る道すがら幾度となく吐息をつき、何事か心に当るも如く首を傾け乍ら、杖を突きトボトボとして吾家に帰り行く。田圃稲葉は風に煽られてサラサラと勇ましく鳴つて居る。燕は前後左右に梭をうつ様に黒い羽根間から白い羽毛を現はし、或は高く或は低く大車輪活動を稲田上にやつて居る。寝むたさうに梟声はホウホウと家森林から聞えて居る。オールスチンは秘かに吾家門口に帰つて見ると二三人人声が盛に聞えて居る。心にかかるオールスチンは耳をすませて門戸に凭れ話様子を立聞きし居たりけり。
(大正一二・三・一七 旧二・一 於竜宮館 北村隆光録)
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