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文献名1霊界物語 第58巻 真善美愛 酉
文献名2第1篇 玉石混淆よみ(新仮名遣い)ぎょくせきこんこう
文献名3第3章 怪散〔1478〕よみ(新仮名遣い)かいさん
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ小国姫は、三千彦師匠である玉国別を迎え入れた。小国姫は神館ごたごたに対して弟子三千彦から多大な助力をいただいたことを感謝した。求道居士は玉国別に挨拶し、治国別導きで改心した経緯を語った。ニコラスらバラモン軍一行も玉国別に挨拶をなした。すると門前がにわかに騒がしくなってきた。三千彦が立って表門に出ると、悪酔怪会長タンクは揉み手をしながら腰低く現れ、宮町騒ぎを収めてくれたことを三千彦に感謝した。三千彦は和睦辞を述べ、スマートと共に悪酔怪員たちを連れて馬場に引き返した。タンクは縛られているワックスら四人前で、四人罪状を暴く歌を歌い、彼らを追放して聖地に平和をもたらすことを三千彦に訴えた。悪酔怪員たちもタンク申し出に賛同した。三千彦を歌をもってタンクに答え、悪酔怪解散を提案した。タンクも悪酔怪綱領が正しい目的でないことを認め、三千彦に賛同した。こうして町民一同和気あいあいとして悪酔怪解散をなし、一同そろって神館に詣でて感謝祈願言葉を奏上した。
主な人物 舞台 口述日1923(大正12)年03月28日(旧02月12日) 口述場所皆生温泉 浜屋 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1925(大正14)年6月15日 愛善世界社版30頁 八幡書店版第10輯 383頁 修補版 校定版32頁 普及版13頁 初版 ページ備考
OBC rm5803
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本文  清き心玉国別は  夏御空真純彦
 足を傷づく伊太彦  二人弟子を伴ひて
 天津日影もテルモン  珍表門
 神使スマートに  守られながら進み入る
 老若男女叫び声  矢叫び音に驚いて
 立ち現はれし三千彦は  表入口に
 焦れ慕ふた師君や  二人友に廻り会ひ
 嬉しさ余り胸迫り  何応答も泣く許り
 漸く心取り直し  奥一間に静々と
 三人を伴ひ進み入る  小国姫を初めとし
 デビス姫やケリナ姫  バラモン教神司
 ニコラスキャプテン初めとし  求道居士やヘル司
 マリス、リーベナ、ルイキン、ポリト  バットを初め四五人
 僕と共に控へ居る  小国姫は三人
 姿を見るより喜びて  其坐を下り手を支へ
 よくこそお出下さつた  貴方は三千彦宣伝使
 救ひ師匠様  まあまあこれへと請ずれば
 玉国別は目礼し  其言葉に従ひて
 設け席につきにける。
小国姫『此処はバラモン教神館、大黒主様発祥地、其お館を守る吾々夫婦、いろいろと禍神に見舞はれ、煩悶苦悩最中へ貴方お弟子三千彦様がお出下さいまして、吾々一同難儀をお救け下さいました。其胆力と義侠心に対し、感謝涙を零して居ります。何卒今後はお見捨てなく宜敷くお願ひ致します。又、こ求道居士は元は、バラモン教カーネルさま、治国別様お言葉に感じ比丘となり三五教お道をお開きなさる道すがら、私娘二人危難をお救ひ下さつた御恩人で厶います、何ともお礼申やうが厶いませぬ』
玉国『それはそれは、結構なお神徳を頂かれました。お目出度う存じます。そして貴方は求道居士様ですか、よくまア入信なさいました』
求道『ハイ、私はバラモン軍カーネル、エミシと申すも、鬼春別、久米彦将軍に従ひ浮木森迄進軍致し、河鹿峠味方敗戦によりビク国迄退陣致し、此処を又立ち出て、猪倉山岩窟に要塞を構へ、難攻不落と誇つて居る所へ治国別様がお越になり、神様道をお諭し下さいましてから、翻然として悟り、今は三五教信者となり、御神業に奉仕さして頂いて居ます。足はぬ某、何卒厚き御指導をお願ひ申ます』
玉国『お互に手を引き合うて、御用に立てさせて頂きませう』
求道『此処に見えて居る七人方は、バラモン軍、ニコラスと云ふ、キャプテンで厶います、其他六人は何れも下士官で厶いますが、鬼春別将軍変心及び其後模様を調査すべく、先刻こ館に御出張になり、吾々話を聞いて、漸く賛成下さつた所です。何卒宜敷く御指導を願ひ上げます』
玉国『何分お互に宜敷く願ひませう。ああ、貴方がニコラス様で厶いますか。や、御一同様初めてお目にかかります。世中には敵もなければ味方も厶いませぬ、同じ神様に育まれて居る吾々人間は互に仲よくせねばなりませぬからなア』
 ニコラス以下六人はハツと頭を下げ、
『何分宜敷くお願ひ申ます』
と心底より挨拶をする。斯る所に門前俄に騒がしく擦鉦音、大声に歌ふ声聞え来る。三千彦はツと立つて何事ならむと表門に出た。スマートは厳然として門を守つて居る。悪酔怪長タンクは先に立ちて進み来り、三千彦に向ひ揉手をしながら、米搗バツタやうにピヨコ ピヨコと腰を折り頭を下げ、媚を呈し乍ら、
タンク『エエ、これはこれは、三五教大宣伝使、神力無双三千彦様で厶いますか。まアよく遥々と神館にお出下さいまして、館危難をお救ひ下さり、これ黒雲を除き、天下泰平にお治め下さいました段、宮町一同は申すに及ばず、国民一同感謝措かざる所です。私は天下無頼漢、イヤ、オツトドツコイ無頼漢を懲す、悪酔怪怪長タンクと云ふケチナ野郎で厶います。怪員一同に代り、貴方御高徳を感謝する為に罷りつん出ました。スマート様にもそれはそれは何とも云へぬ御尽力に預りまして有難う存じます。ワックス、ヘルマン、エキス、エル悪人輩が集まりまして、如意宝珠玉を盗むやら、家々宝を盗むやら騒動をおつ始め、どうとも斯うともならない難儀で厶いましたが、貴方様お出以来、風塵治まり、天下泰平端緒を得ましたは、私等抃舞措く能はざる所です。何卒吾々至誠をお認め下さいまして、今後御贔屓下さるやうお願ひ致します。此通り数多町民が参りましたも皆、貴方御高徳を感謝せむ為に参上致しましたで厶いますから、何卒宜敷く可愛がつて頂き度う厶います』
三千『ヤア夫は結構だ。吾々に対する誤解が解けましたかな。今後は互に手を引きやうて、お館ため、お国ため協力一致、誠を捧げられむ事を祈ります。然し乍ら、かう大勢館へ入り込まれましては小国別様も御病中なり、御迷惑をせられませうから、門前馬場にてお目にかかりませう』
とスマートを引き連れ門を出で、階段を下り草青き馬場に出立ち見れば、五十兵士は列を正し、ワックス外四人を縛したまま警護して居る。軍人側と、悪酔怪側とはいつしか和睦が出来たと見えて互にニコニコ笑つて居る。タンクは再び驢馬に跨り、ワックス外三人前に馬を留め大音声にて演説を初めかけた。三千彦は麗しき赤、白、黄、紫デリケート咲き満ちた青芝上に腰を下ろし、スマート頭を撫で乍ら、ニコニコとして控へて居る。
タンク『そもそも此処に繋がれし  テルモン山神館
 荒し廻りしワックスや  其外三人悪漢は
 大黒主御宝  如意宝珠を横奪し
 館主を苦しめて  ギウギウ云はせ吾恋
 野望を甘く達せむと  所在手段を廻らして
 悪限りを尽したる  極悪無道痴漢ぞ
 三五教神使  三千彦さま威に打たれ
 如何ともする術もなく  首も廻らぬ苦しさに
 魔法使と布令廻し  吾々一同町民を
 甘く偽り暴動を  起させたるぞ憎らしき
 此宮町町民は  テルモン山霊地をば
 堅磐常磐によく守り  天地御恵に
 報ひむ為に赤誠を  力限りに尽す
 知らぬが仏町民は  家令悴ワックスが
 企み罠におとされて  神力無双神人に
 刄向かひ奉りし愚さよ  悪に長けたるワックスは
 吾身罪を蔽はむと  茲に一計案出し
 悪酔怪を組織して  弱きを挫き強きをば
 助けむもと主張しつ  数百余人団体を
 造りて誠神人を  悩まし奉り神館
 占領せむと企みたる  其悪計ぞ怖ろしき
 天罰忽ち報ひ来て  己が率ゆる怪員に
 手もなく体を縛られて  これ馬場に万世
 恥を晒すぞ可笑しけれ  ああ惟神々々
 誠神はいつ迄も  悪企みを許さむや
 吾等はタンクと云ふ男  六百人町民に
 やつと選まれ長となり  今又茲に悪酔怪
 頭とおされ町民を  代表なして三五
 神御前に  誠心を顕彰し
 御国為に尽さむと  衆を率きつれ来りたり
 赦させたまへ惟神  神かけ念じ奉る
 此世を造りし神直日  心も広き大直日
 唯何事も人世は  直日に見直せ聞き直せ
 身過は宣り直せ  三五教宣伝使
 三千彦司前なれど  これに繋ぎし四人連れ
 これ聖地を朝夕に  掻き乱し行く曲者ぞ
 必ず許し給ふ無く  厳しき笞を加へつつ
 これ聖地を追ひ出し  懲しめたまへ惟神
 六百人になり代り  更め願ひ奉る
 ああ惟神々々  御霊幸倍ましませよ
 かかる悪魔聖場に  姿を見する其内は
 如何なる神御恵も  如何なる誠御教も
 如何で開けむ常闇  世は追ひ追ひと曇る
 ああ願はくば三千彦  誠宣伝使
 吾等願ひを逸早く  聞き取りたまひ片時も
 早く聖地を追ひ出し  これ霊地禍を
 除かせ給へと願ぎまつる  ああ惟神々々
 御霊幸倍ましませよ』
と歌をもつて演説に代へ、且つ三千彦に向ひ、是等四人悪党を一時も早く此聖場より追放されむ事を祈つた。悪酔怪員一同は、一斉に手を打つてタンク説に賛成意を表した。三千彦は歌をもつて之に答ふ。
三千彦『世は常闇となり果てて  悪魔は天下を横行し
 吹き来る風は腥く  絶ゆる間なき人馬
 払はむよしもなきままに  難み苦しむ宮町
 老若男女心根は  今更思ひ知られけり
 テルモン山峰清く  蓮華四方八方に
 芳香薫じ夏風に  揺られて御代泰平を
 謳へど神御館  日毎夜毎に憂愁に
 包まれたまひ神柱  小国別や姫命
 其外二人乙女達  其身不覚を歎きつつ
 家令悴ワックスが  醜猛びに敵し得ず
 持ち倦みます時もあれ  神御言を蒙りて
 救ひ神と現はれし  三千彦司は身を砕き
 心を痛め種々  難みに会いて漸うに
 神館を包みたる  醜雲霧吹き払ひ
 旭豊阪登るごと  漸く生れ代りけり
 ああ惟神々々  神御稜威著く
 恵深きをば  喜び祝ひ奉り
 玉所在も漸くに  現はれまして神館
 上を下へと歓ぎつつ  元姿となりにけり
 さはさりながら団体  長とあれますタンクさま
 悪酔怪綱領は  弱きを挫き強きをば
 助くるよしに聞き及ぶ  悪魔に等しき団体は
 天地御心に  背反したる暴挙ぞや
 いと速に改めて  此団体を解散し
 誠一つ三五  教道に帰順せば
 吾等も共に手を引いて  これ聖地を守るべし
 顧りみたまへ惟神  神御前に赤心を
 捧げて茲に願ぎまつる  旭は照るとも曇るとも
 月は盈つとも虧くるとも  仮令大地は沈むとも
 誠力は世を救ふ  誠道に皆来れ
 悪酔怪目的は  決して世為め人為め
 利益となるべきもでなし  否々却て世を汚し
 大混乱種ぞかし  顧み給へタンクさま
 其外会員御一同  三五教三千彦が
 心を籠めて宣りまつる  ああ惟神々々
 御霊幸倍ましませよ』

タンク『いざさらば君教に従ひて
  これ集団を解き放ちなむ。

 こ集団吾等一同心より
  出でしに非ずワックス胸。

 ワックス企み現はれし
  上は尚更何要なき。

 弱きをば挫き強きを助くるは
  曲津仕業なるらむ』

三千彦『健気なるタンク葉は
  誠御声とぞ思ふ。

 いざ早く曲集団を解きほどき
  神御前に赤心ささげよ』

 かく歌を取り交し、和気靄々として茲に悪酔怪解散をなし、町民一同打ち揃ひ、神館に恭しく詣でて感謝祈願言葉を奏上した。中空には微妙音楽聞え、天津乙女姿二つ三つ嬉しげに舞ひ狂ひ、優曇華花弁風に翻り、各人頭にパラリパラリと落ち来る。ああ惟神霊幸倍坐世。
(大正一二・三・二八 旧二・一二 於皆生温泉浜屋 加藤明子録)
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