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文献名1霊界物語 第58巻 真善美愛 酉
文献名2第2篇 湖上神通よみ(新仮名遣い)こじょうじんつう
文献名3第9章 湖月〔1484〕よみ(新仮名遣い)こげつ
著者出口王仁三郎
概要
備考
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あらすじダルとメートはようやく元気回復し、しわがれ声を張り上げて自分たち経歴を歌いだした。二人は掟を破って三五教宣伝使を船に乗せて湖を渡らせた罪で、島流しにあったという。そしてヤッコス、ハール、サボールらがやってきて自分たちを殺して食おうと襲ってきた罪を歌い、三人に改心を訴えた。ヤッコスは船端に立って歌い、自分はテルモン湖を見張るバラモン軍目付頭であり、にわかにしけに出会ってツミ島に部下とともに打ち上げられただと述懐を歌った。そして飢えに堪えかねてダルとメートを殺そうと悪心を起こしたことを悔い、三五教慈悲に対して改心を誓った。続いて目付ハールも自分飢えと、三五教宣伝使に助けられた感謝と改心を歌った。そこへにわかに七八艘海賊船が現れて船行く手を遮った。
主な人物 舞台 口述日1923(大正12)年03月28日(旧02月12日) 口述場所皆生温泉 浜屋 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1925(大正14)年6月15日 愛善世界社版112頁 八幡書店版第10輯 411頁 修補版 校定版121頁 普及版44頁 初版 ページ備考
OBC rm5809
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本文  浪より出でて浪に入る  玉兎玉国別司
 初稚姫賜りし  目無堅間船に乗り
 果しも知らぬ湖原を  五人男を救ひつつ
 欵乃高く潔く  歌ひて進む浪
 星光はキラキラと  深く沈める湖
 天津御空も船底も  金砂銀砂を鏤めし
 其中間を渡り行く  天河原は南北に
 清く流れて果もなく  洗ふたやうな月影は
 湖底深くきらきらと  銀竜如く揺らぎ居る
 ああ惟神々々  神依さし宣伝使
 浪音清き音彦  玉国別を初めとし
 星は御空に三千彦  姿を写す真純空
 伊太彦一枚隔てたる  千尋深き水地獄
 デビス姫と諸共に  声爽かに宣伝歌
 歌ひ歌ひて進み行く  天川原に棹さして
 エデン河に船を漕ぎ  顕恩郷に上るごと
 心涼しく勇ましく  思はず知らず進み行く
 汗拭き払ふ夏風  いやな潮香なく
 矢を射る如く帆を孕み  マストは弓に曲りつつ
 折から起る荒浪を  乗り切り乗り切る勇ましさ
 長らく陸路旅を経し  玉国別一行は
 何とはなしに気も勇み  身も冴え冴えと元気よく
 沖鴎やアンボイナ  飛び交ふ景色を賞ながら
 天国浄土に昇るごと  風に任して馳て行く
 危き命を救はれし  ダルとメート両人は
 漸く元気恢復し  皺枯れ声を張り上げて
 面白さうに歌ひ出す
メート『私生れは月国  テルモン山南麓に
 首陀と生れしメーテル  私は一人息子です
 三五教宣伝使  これ湖水を渡らむと
 いと懇にことわけて  宣らせたまひし時もあれ
 掟をやぶると知り乍ら  ダルと二人が船を出し
 キヨ港にはるばると  安着したる時もあれ
 バラモン教目付役  カンナ、ヘール両人が
 有無を云はせず引捉へ  キヨ関所につれ行きて
 三千五百笞をあて  揚句果は船に乗せ
 湖中に浮ぶツミ島  送り届けて逸早く
 逃げ行く後を打ち眺め  悲歎涙に暮れにける
 家に残せし父母は  如何に過させ給ふらむ
 夢になりともこ様を  知らさむもと思へども
 翼なき身は如何にせむ  音づるよしも泣逆吃
 ダルと二人が抱き合ひ  世を果敢なみて怖ろしき
 磯に打ち来る浪音  頼りに月日を送りつつ
 磯辺蟹や貝を獲り  僅に露命をつなぎつつ
 救ひ一日も  早く来れと天地
 神に祈りをかくる折  漂ひ来る三人連れ
 吾等姿を見るよりも  叩き殺して三人が
 餌食になさむと怖ろしき  其言葉を聞くよりも
 狭き岩窟を立ち出でて  敵毒手を逃れつつ
 さしも嶮しき岩山を  猿如く駆け登り
 手ごろ石を手に取つて  人喰ひ人種を打ち殺し
 吾身危難を逃れむと  心を千々に砕きつつ
 最早三人食人鬼  吾なげ下す岩片に
 打たれて脆くも身失せしと  思ひて窺ひ立よれば
 豈計らむや三人は  岩窟中に端坐して
 白い眼を剥きながら  吾等二人姿をば
 見つけて又もや殺さむと  力限りに追ひ来る
 吾等二人は大切  命を取られちやならないと
 息絶え絶えに逃げ出し  ピツタリと止まつた簫
 進退茲に谷まりて  窮鼠却て猫を食む
 命を的に逆襲と  騎立て直す苦しさよ
 茲に五人は全身  力を籠めて揉み合ひつ
 疲れて互に打ち倒れ  前後不覚になりにけり
 時しもあれや三五  救ひ道を述べ伝ふ
 仁慈無限宣伝使  現はれまして吾々が
 危難を救ひ給ひつつ  味よきパンを与へまし
 安全無事此船に  助けていとど親切に
 吾等が住所に送らむと  宣らせ給ひし有難さ
 それに引き換バラモンは  ヤッコス、ハール、サボール
 情を知らぬ人畜生  取り喰はむと角を立て
 迫り来るぞ怖ろしき  さはさりながら吾々は
 尊き神御使に  守られ茲にある上は
 最早怖るる事はなし  バラモン軍三人よ
 汝も心を改めて  誠心に立ち帰り
 悪逆無道精神を  仁慈無限神様に
 ならひて払ひ清むべし  人は神子神
 吾は元よりバラモン  教御子なれど
 三五教宣伝使  吾家に一夜泊らせて
 誠道を伝へてゆ  茲に心を改めて
 御船を出し湖原を  遠く送りてキヨ港
 思はぬ人に見つけられ  身災となり果てて
 人喰鬼住むと云ふ  浪風荒き浮島に
 流され居たるぞ悲しけれ  仁慈無限大神は
 珍使を遣はして  愈吾等を救ひまし
 湖路を守り給ひつつ  送らせ給ふ有難さ
 仮令天地は変るとも  バラモン教御教は
 孫子に伝へて守らない  玉国別宣伝使
 其外百司達  吾等を憐れみ給へかし
 皇大神御前に  赤心捧げ両人が
 謹み敬ひ願ぎまつる』
 バラモン軍捕手、ヤッコスは舷に立つてそろそろ歌ひ出した。
ヤッコス『バラモン軍に仕へたる  吾はヤッコス目付役
 四人部下を引き連れて  テルモン湖上を打ち渡り
 ニコラス大尉後を追ひ  三五教宣伝使
 若も湖水を渡りなば  引捉まへて懲せよと
 大黒主命を受け  船に真帆をば孕ませて
 北へ北へと進む折  俄颶風に出会し
 船は暗礁に乗り上げて  船体忽ち粉微塵
 衣類を脱ぎすて辛うじて  荒浪猛る罪
 命辛々泳つき  食を求めて遠近と
 彷徨ひ廻れど浪荒く  一つ餌食も無かりしゆ
 三人は磯辺をぶらぶらと  足もとぼとぼ歩みつつ
 岩蔭さして立よれば  骨と皮と二人連れ
 人喰人種にあらねども  飢たる時には是非もなし
 心を鬼に持ち直し  二人男を打ち殺し
 一時飢を凌がむと  心にもなき悪逆を
 企みたるこそうたてけれ  生れついて鬼でない
 仁義道徳一通り  習ひ覚へた人子よ
 さはさりながらやむを得ず  小人下司常として
 窮すれや乱すといふ譬  心ならずも悪業を
 企みたるこそ是非もなき  優勝劣敗弱肉強食
 世界に傚ふて果敢なくも  皇大神御教を
 忘れたるこそ苦しけれ  三五教宣伝使
 心も清き玉国  別命が現はれて
 敵と狙ふ吾々を  救はせ給ひし有難さ
 天が下には敵なしと  教へられたる言葉は
 今目当り悟りけり  吾等も是より慎みて
 残虐無道行動を  改め神御為に
 誠を尽し世人を  救ひて人と生れたる
 其天分を尽すべし  三五教神司
 吾等が心を憐みて  尊き君御伴に
 使はせ給へ惟神  神に誓ひて願ぎまつる
 朝日は照るとも曇るとも  月落ち星は失するとも
 仮令命は捨つるとも  深き恵を蒙りし
 司高恩は  子孫に伝へて忘るまじ
 此世を造りし神直日  心も広き大直日
 総て罪を悉く  宣り直します三五
 尊き神御心  深くも感謝し奉る
 ああ惟神々々  御霊幸倍ましませよ』
 ハールは又歌ふ、
ハール『一切万事経緯は  目付頭ヤッコスが
 概略茲に述べました  私も元はウラル教
 信者端に加はりて  神教を崇めつつ
 其日を送り居たりしが  何分酒に身を崩し
 二世と契つた女房に  夜脱けせられて是非もなく
 彼方此方に彷徨ひつ  心は日に夜に僻み行く
 もう此上は盗人  群に加はり長からぬ
 浮世を太く暮さむと  心を鬼に持ち直し
 思案に暮るる折もあれ  バラモン教ヤッコスが
 情言葉に絆されて  茲に目付役となり
 一年前から忠実に  目付役を勤めつつ
 此湖原を越え来る  三五教司をば
 一人残らず引捉へ  吾身出世を誇らむと
 思ひ居たるぞ果敢なけれ  まだ幸に一人
 三五教信者をも  神司も捉まへず
 罪を重ねし事なきは  せめては私胸やすめ
 三五教神司  私は唯今述べました
 やうな身分で厶います  如何なる罪がありとても
 広き心に宣り直し  赦させ給へどこ迄も
 御伴に使ひ給へかし  神かけ念じ奉る
 ああ惟神々々  御霊幸倍ましませよ』
と述懐歌を歌ふ。かかる所へ七八艘海賊船、船行手に横梯陣を張り、前途を壅塞し、手具脛引いて待ち居るも如くであつた。ああ玉国別一行は如何なる運命に遭遇するであらうか。
(大正一二・三・二八 旧二・一二 於皆生温泉浜屋 加藤明子録)
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