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文献名1霊界物語 第59巻 真善美愛 戌
文献名2第4篇 六根猩々よみ(新仮名遣い)ろっこんしょうじょう
文献名3第25章 歓呼〔1525〕よみ(新仮名遣い)かんこ
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ太陽が沈むと、猩々たちは夜湖面を見てやや不安になり、騒ぎ出した。伊太彦は彼らを鎮めるために手を左右にふりながら面白おかしく踊り出した。猩々たちはこ姿を見てやや安心し、陽気だって踊りだした。伊太彦はまた、これまで経緯を滑稽な述懐を織り交ぜながら歌った。歌い終わると東空は茜さし、波中から太陽が昇ってきた。前方を見れば、スマ浜辺に幾百千老若男女が金や太鼓を鳴らし、舟影を見てどよめいている。ヤッコス、サボールはにわかに怖気づいて身を躍らし、海中に飛び込んでしまった。磯辺群衆は二人が飛び込んだを見てざわめいている。二人を助け出すべく、真純彦と三千彦操る小舟が進んできた。
主な人物 舞台 口述日1923(大正12)年04月03日(旧02月18日) 口述場所皆生温泉 浜屋 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1925(大正14)年7月8日 愛善世界社版305頁 八幡書店版第10輯 590頁 修補版 校定版322頁 普及版 初版 ページ備考
OBC rm5925
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本文  太陽は漸く西浪間に沈むと共に、大空には金銀星光瞬き初めた。数多小猿は、夜海上を眺めて稍不安念を起したと見え、三百有余匹口からキヤツキヤツキヤツと一斉に叫び出した。此声に圧せられて、欵乃声も話声も船底を打つ浪音も、闇と共に包まれて仕舞つた。伊太彦は勢を見せ、小猿等心を安むぜむと舷頭に立ち、手を左右にふり乍ら面白可笑しく、歌ひ踊つて見せた。夜目光る猩々は此姿を見て稍安心しながら、俄に陽気立ち、いづれも手を振り、嬉しげにキヤツキヤツキヤツキヤツと踊り出した。船頭は船動揺を制すべく、頻りに櫓を握つて其平衡を保ちつつ北風に帆を揚げて海面を辷り行く。
伊太彦『夜帳は下されて  漸く四辺は静まりぬ
 天津御空を眺むれば  大小無数星影は
 金銀瑪瑙瑠璃硨磲  ダイヤモンドも啻ならず
 おもおもに丹精を  こらして光り輝きぬ
 浪底をば眺むれば  大小無数鱗族が
 前後左右にゆき通ふ  そ度毎に燦々と
 光り輝く星影を  遮り隠す床しさよ
 船中には猩々さま  赤子やうな声あげて
 キヤツキヤツキヤツと歌ひつつ  恋しき母御許へ
 知らず知らずに進み行く  吾は伊太彦宣伝使
 デビス姫を救はむと  三千彦さまを伴ひて
 キヨ関守が  館をさして夜に紛れ
 足音忍ばせ進み入り  デビス姫を救ひ出し
 逃げ行く途端に曲神  企み罠に引つかかり
 奈落底に転落し  因果を定め度胸据ゑ
 心煩悶を  湮滅せむと惟神
 神に吾身を任せつつ  ホテル番頭と洒落込みて
 悲運を歎つ折もあれ  落ち込み来るバラモン
 ヘール司ユゥンケル  チルテル司キャプテンが
 褌一つ真裸体  落ち込み来るぞ怪しけれ
 滑稽諧謔並べ立て  奥一間に案内し
 又もや帳場に居坐つて  客を待ちける折もあれ
 ドカドカドカと大勢が  雪崩如く落ちて来る
 千客万来大繁昌  なぞと洒落つつ煩悶を
 紛らし居たる時もあれ  思ひがけなき三五
 玉国別宣伝使  真純彦やアンチーや
 テク司と諸共に  ドスドスドスと辷り込む
 思ひもよらぬ此奇遇  敵も味方も一場に
 首を鳩めて神界  尊き教物語り
 互に心打解けて  皇大神神恩を
 涙と共に崇め居る  鼓膜に響く犬
 はて訝かしと疑へば  思ひも寄らぬ助け舟
 初稚姫神司  猛犬スマート引き連れて
 醜岩窟入口  鉄戸を開けて来りまし
 吾等一同を恙なく  尊き地上に救ひまし
 忽ち尊き御姿を  隠し給ひし不思議さよ
 玉国別一行と  バーチル館に立ち帰り
 海川山野種々  清き待遇し受け乍ら
 嬉しく楽しく神恩を  崇め居る折サーベル
 姫神懸  猩々姫が現はれて
 島に残せし眷族を  唯一刻も速に
 これ館に迎へとり  救ひ給へと悲しげに
 頼み入るこそ可憐らしき  玉国別許可得て
 二十船を呼び集め  準備全く整うて
 命まにまに猩々島  浪路も安く到着し
 使命を全く相果し  漸く此処に帰りけり
 最早湖路も十四五里  朝日豊栄昇る頃
 日出にスマに着くだらう  思へば思へば勇ましや
 天地百大御神  吾師御前に
 謹み感謝し奉る  朝日は照るとも曇る共
 仮令大地は沈むとも  バラモン教ヤッコスや
 ハール、サボール三人は  恨みず憎まずどこ迄も
 神まにまに救ふべし  心安かれ三人共
 真善美愛道  如何でか人を損はむ
 勇めよ勇め皆勇め  猩々でさへもあ通り
 喜び勇むで舞ひ踊る  ましてや人身をもつて
 こ瑞祥を祝はずば  神に対して済まないぞ
 勇めや勇め諸共に  伊太彦司が赤心を
 籠めて汝を救ふべく  神に誓ひて宣り伝ふ
 あゝ惟神々々  御霊幸はひましませよ』
 かく歌ひ終るや否や、東空は茜さし、浪中より金覆輪太陽は、鮮麗なる光輝を放つて覗き玉ふた。前方を見ればスマ浜に数百千老若男女が鉦や太鼓を鳴らし、鬨声を造りて、船影を認め、どよめき渡つて居る。此光景を見るよりヤッコス、サボール両人は俄に怖気づき、身を躍らして海中に飛び込み姿を隠した。磯辺に立つた群衆は二人入水を見て、アレヨ アレヨと手を振り、声を限りにぞよめき出した。かかる所へ矢を射る如く、一艘小舟現はれ来り、二人飛び込むだ波上を目蒐け進み行く。これは真純彦、三千彦操る船であつた。
    ○
 日月恵をうけて委曲に
  説き明したる此物語。

 いそかみ古き神代出来事を
  今新しく説き明すなり。

(大正一二・四・三 旧二・一八 於皆生温泉浜屋 加藤明子録)
(昭和一〇・二・一八 於彦根楽々園 王仁校正)
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