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文献名1霊界物語 第60巻 真善美愛 亥
文献名2第1篇 天仁和楽よみ(新仮名遣い)てんじんわらく
文献名3第1章 清浄車〔1526〕よみ(新仮名遣い)しょうじょうぐるま
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2016-09-04 11:29:55
あらすじスマ浜辺には山ごとく老若男女が集まって、伊太彦が率いる猩々舟船団を歓呼で迎えていた。風は芳香を送り無声音楽聞こえて天地は清く、また静かに賑わしく、理想原語句を現出したごとき真善美愛極致にたっした。人々心には一点塵もとどめず互いに和気あいあいとして一切障壁を忘れ、そ睦まじきこと鴛鴦ごとくであった。それにもかかわらず、猜疑心にからまれた心暗鬼は、畏怖驚愕あまり、バラモン教ヤッコス、サボールを駆って無残にも湖中に身を投じさせたである。玉国別命で小舟を浮かばせ待っていた真純彦、三千彦は、二人が落ちた渦巻上に舟を寄せ、二人を救い出すことができた。衆人は歓喜し、真純彦、三千彦仁侠を手を打って感賞した。チルテルは猩々乗る車を造り、先頭に立って磯畑に待っている。伊太彦はまっさきに玉国別に前に進みより、歓喜涙をたたえながら手を握りニ三回ゆすった。玉国別は感涙にむせびながら伊太彦労をねぎらった。宣伝使たちは里人が用意した山車に乗り、猩々たちは十数台車に乗って、歌を歌いながらバーチル館に帰り行く。チルテルは猩々車先頭に立って述懐と祝い音頭をとった。バーチル屋敷に着くと、一同は庭園に筵を敷いて祝い酒に舌鼓をうち歓喜を尽くした。バーチルとサーベル姫は一同に恭しく礼を述べた。玉国別、チルテル一行を導いて奥広い客間に案内した。猩々たちも続いて奥間に進んだ。一同はそれぞれ述懐歌を歌った。玉国別はアヅモス山谷あいを跋渉し、木を数多杣人に伐採せしめ、神殿普請に着手することとなった。里人たち、チルテル部下たち、猩々たちは勇んで宮普請に奉仕した。
主な人物 舞台 口述日1923(大正12)年04月05日(旧02月20日) 口述場所皆生温泉 浜屋 筆録者松村真澄 校正日 校正場所 初版発行日1925(大正14)年8月12日 愛善世界社版9頁 八幡書店版第10輯 601頁 修補版 校定版9頁 普及版 初版 ページ備考
OBC rm6001
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本文  東西百里南北二百里、広袤二万方里キヨメ湖は、大小十二島を泛べて鏡如く照り輝いてゐる。北方雲間にボカされたやうなテルモン山が水鏡を覗いてゐる。
 饅頭笠様な大太陽が東波間より生れ始め、五色階段をチクチクと登るにつけて其形を小さくして行く。颯々たる夏風は涼しく人面を撫で、帆をペタペタと前後に揺つてゐる長閑さ。数万鳥族は湖上を前後左右に翺翔し、日出を喜び祝ふ声は九天に達するかと疑はるる許りであつた。白砂青松スマ浜辺には山如く老若男女羅漢姿が蝟集並列して其影を湖中に逆しまに映してゐる。
 伊太彦が率ゆる二十艘猩々舟は万歳歓呼中にチクリチクリと磯辺に向つて近附き来る。磯辺に立つた群集は鬱金鉢巻赤襷、太鼓や、摺鉦や、笛、笙、篳篥、羯鼓、月琴等を手にし思ひ思ひ妙技を発揮して、伊太彦一行無事帰港を祝してゐる。
 淡水湖原は気分悪い潮香もなく、風は芳香を送り、無声音楽聞えて人耳を浄め、天清く海青く、地亦清く、天火水地はいと静かにいと賑しく、実に理想天国を現出せし如く、真善美愛極致に達した。天地間にも人心にも一点塵も止めず、和気靄々として、親子如く、兄弟如く、夫婦如く、敵も味方も一切障壁を忘れ、其睦まじき事、鴛鴦如し。斯かる平和天地にも拘らず、猜疑心に搦まれたる心暗鬼は忽ち畏怖驚愕余り、バラモン教ヤッコス、サボールを駆つて、無残や湖中に身を投ぜしめた。
 船中人々も陸上群集も、猩々隊も此光景を見て、手に唾し、如何にもして彼等両人を救はむと思ふ至情は一度に勃発し、同情念に胸を焦した。斯かる所へ、予て斯くあらむと、玉国別命に依り葦草間に小舟を泛ばせ待つてゐた真純彦、三千彦はスハこそ一大事と、艪櫂を操り、水面を飛鳥如く辷つて、ドブンと落ちた渦巻上に舟を送り、漸くにして二人を救ふ事を得た。万一此二人中一人たり共、生命を失ふ如き不吉事あらば、至善至真至美天地に瑕瑾を印し光玉に曇りかかりし如くなるべかりしを、事なくして済みたるは、実に平和祥徴なりと衆人一度に歓喜し、且つ真純彦、三千彦が仁侠を手を拍つて感賞した。
 スマ関守チルテルは、十数台猩々車を造り、種々花を飾りて、数多兵士に引かせ乍ら、猩々隊を迎へむ為、チルテルが先頭に立ち、磯端に待つてゐる。伊太彦は先づ第一に舟を離れて玉国別前に進みより、歓喜涙を湛へ乍ら、固く其手を握り二三回揺つた。玉国別は感涙に咽び乍ら、稍かすんだ声にて、
玉国別『伊太彦殿、天晴れお手柄、御苦労であつた。予定時刻に先立つて、無事帰る事を得たは全く神御恵と、汝が至誠賜物である。サア是からバーチル館に帰つて種々珍らしい話を聞かして貰はう』
伊太彦『ハイ有難う厶います。然らばお伴致しませう』
 バーチル、サーベル姫は美はしき山車を飾り立て、玉国別、真純彦、伊太彦、三千彦、デビス姫を搭乗せしめ、自分も山車前方に立ち、歌を歌ひ乍ら、里人に太綱を以て輓かせつつ帰りゆく。十数台チルテルが設備した車には三百三十三体眷族が搭乗し、キヤツ キヤツと歓声を挙げ乍ら、ヂリリヂリリと輓かれ行く。鐘、太鼓、拍子木、縦笛、横笛、羯鼓、月琴其外種々雑多音楽に送られ、各唄を唄つて賑々しく大道を練り行く。
 チルテルは猩々車先に立ち、声も涼しく音頭をとつた。群衆は一節々々其あとをつけ乍ら、手をふり腰を振り、狂喜如く踊り狂ふ。
チルテル『酒イヅミアヅモス山  ヨーイセ、ソーラセ
 パインや樟繁茂せる  梢に鷹が巣をつくる
 鳥禿鷲さまが  千羽万羽と子を生んで
 スマ中空に舞ひ遊ぶ  ヨーイセ、ソーラセー
 みみづく、梟や山鳩が  又も梢に巣をくんで
 バーチルさま万歳を  祝ふも目出度き夏
 ヨーイセ、ソーラセ  千歳鶴は舞ひ遊び
 八千代亀は舞ひ遊ぶ  前代未聞盛典に
 敵と味方隔てなく  天火水地も結び合ひ
 世界を一つに相丸め  三五教やバラモン
 神恵を慎みて  老と若き隔てなく
 仰ぎ敬ふ今日空  ヤートコセー、ヨーイヤナ
 アレワイセー、コレワイセ  ソーリヤ、ヨーイトセー
 カンカンチキチン カンチキチン  チキチン チキチン カンチキチン
 ドンドコ ドンドコ ドコドコドン  ヒユーヒユーヒユーヒユーヒユーヒユーヒユー
 猩々ケ島に流されし  三百有余眷族は
 天岩戸開かれて  全く日出御代となり
 五六七代を  目出たく祝ふスマ
 鷹棲まひしアヅモス  元屋敷に立帰り
 天王守護神と  再び仕ふる世となりぬ
 ヨーイセ、ソーラセ  かかる目出たき神代をば
 招来したる神人は  玉国別宣伝使
 誠一つ賜物ぞ  バラモン軍に能く仕へ
 朝な夕なに三五  教司や信徒を
 鵜目鷹目光らせつ  片ツぱしから捕縛して
 苦め悩めし吾々も  転迷開悟花開き
 今は全くバラモン  軍司を辞職して
 心も清き三五  誠道に進みけり
 あゝ惟神々々  此世を造りし神直日
 心も広き大直日  只何事も人世は
 直日に見直し聞直す  神恵に抱かれて
 今日祝に列なりし  其喜びは天地も
 一度に揺るぐ許り也  ヨーイセー、ソーラセ
 引けよ引け引け猩々車  ドツコイシヨウ ドツコイシヨウ
 砂敷つめし此街道  車きしる音
 引手一度に唄ふ声  天国浄土か地上か
 例も知らぬ楽しさは  高天原天国
 其儘姿をうつしたる  歓喜波は漂ひぬ
 ドツコイセー ドツコイセー  ヤートコセーヨーイヤナ
 チヤンチヤンチキチン チヤンチキチン  チキチン チキチン チヤンチキチン
 ドンドコ ドンドコ ドコドコドン  ヒユーヒユードンドン ヒユードンドン』
『清め湖に三歳ぶり  漂ひ暮したアンチーは
 猩々お客さま  漸く無事に迎へ来て
 スマ磯辺につくや否  数多男女に迎へられ
 抃舞雀躍魂  置どこさへも知らぬ身
 歓迎車梶を把り  館へ帰る嬉しさよ
 ヨーイセー、ソーラセ  皆さま揃うて曳いてくれ
 先方に見ゆる森蔭は  バーチルさま御館
 静まり返つた邸内も  今日生日足日から
 三百有余眷族が  老木茂る森上に
 梢を伝ひ飛まはり  キヤツキヤツキヤツと賑しく
 宙空に音楽相奏で  イヅミ隆昌を
 祝ぎまつる事だらう  三五教やバラモン
 教司が村肝  心を一つになし玉ひ
 真善美愛道  完全に委曲に立て玉ふ
 聖御世とはなりにけり  ヨーイセー、ソーラセ
 旭は照るとも曇るとも  月は盈つ共虧くる共
 テルモン山は海となり  キヨメ湖は山となり
 天変地妖災が  一度に起る事あるも
 神恵に救はれし  神選みしスマ
 千代も八千代も動かまじ  勇めよ勇め里人よ
 風は自然音楽を  宙空に奏で百木は
 手を振り腰を曲げ乍ら  ダンスを演じて吾々が
 無事帰郷を祝ふ也  喜び勇め惟神
 神に任せて何事も  日々業務を勤めつつ
 バーチルさまを親となし  神司を師となして
 卑屈猜疑精神を  科戸風に吹き払ひ
 速川瀬に流しすて  清浄無垢魂となり
 永く天与御恵を  仰ぎまつらむ世となりぬ
 引けよ引け引け御車  此太綱切れるまで
 ヨイトコセー ヨイトコセー』
 新に開鑿された広い街道に白砂を布きつめた上を漸くにしてアヅモス山南麓、バーチルが宏大なる屋敷を指して、歓喜裡に着いた。これより一同は邸園に蓆を布き、祝酒に舌鼓を打ち、歓喜を尽す事となつた。
 バーチル、サーベル姫は一同に恭しく礼を述べ、玉国別一行及チルテル一行を導いて、奥広き客間に招待した。三百有余猩々は何会釈もなく、車より先を争うて飛下り、バーチル後に従ひ、所狭き迄うごなはつて、奥間を塞いで了つた。

玉国別『バーチル君は嬉しくおぼすらむ
  数多御子を目あたりみて』

バーチル『三歳ぶり吾が子如く愛でゐたる
  猿顔を見るぞ嬉しき』

サーベル姫『生みいや日に月に栄えしも
  皆天地恵なりけり

 物云はぬ吾が子なれども魂は
  吾れに通ひぬ子事々は』

チルテル『鳥獣虫族迄も救うてふ
  神有難くぞ思ふ』

真純彦『大空も大海原もすみ渡る
  島に育ちし身魂ぞきよき』

伊太彦『かく許り楽しき事があらむとは
  吾れさへ夢に悟らざりけり』

三千彦『天地恵は四方に三千彦
  水も洩らさぬ今日喜び』

デビス姫『吾れも亦神御業を了へし上は
  御子数々生まむとぞ思ふ』

伊太彦『三千物言はぬ子を生み並べ
  喜び胸に三千彦となれ』

三千彦『三千や五千御子は何
  百千万教御子生む』

アンチー『アヅモス山に棲まへる百鳥も
  教御子数に入らなむ』

アキス『吾れとても玉国別御子となりぬ
  恵乳を含みし身なれば』

カール『さる昔猿が三匹飛んで来て
  アヅモス山使とぞなる』

テク『其子孫茂り栄えて三百
  珍御子となりける』

カンナ『惟神人種をば地に蒔いて
  青人草と育て玉ひぬ。

 草も木も花咲みる世中に
  吾み一人花なかるらむ』

ヘール『初花唇吸はむとて
  驚かされぬ珍白狐に』

チルナ姫『咲くとても容易にチルナ初花
  香りを千代枝にとどめて。

 チルテル吾背君も惟神
  目覚め玉ひし今日嬉しさ』

ワックス『テルモン館を追出され
  今日は嬉しき春に会ふ哉』

ヘルマン『うたかた夢と消え行く吾罪は
  皆皇神光なりけり』

エキス『五百笞を大勢前で加へられ
  尻おちつきし今日喜び』

エル『ミカエル現はれて
  百罪科払ひ玉ひぬ』

ハール『情ある神司を疑ひて
  海に堕ちたる人もありけり』

ヤッコス『吾罪深きを思ひ泛べては
  世にやすやすと永らへぬべき。

 さり乍ら恵深き神司
  浮ばせ玉ひぬ命助けて』

サボール『情ある神葉に
  今は怖れ夢も醒めけり』

サーベル姫『子よ孫よ汝は之より門に出て
  神酒に浸れよ心ゆく迄』

伊太彦『猩々御子に代りて物申さむ
  吾たらちね深き御恵み。

 今日よりはアヅモス山に立帰り
  昔ままに神仕へせむ。

 此館木々茂み深ければ
  千代棲処になさむとぞ思ふ。

 人子は畳上に騒げ共
  吾は梢によりて騒がむ。

 夜着一つ箸一本も要りませぬ
  木々実を取りて食へば。

 折々に酒倉開きなみなみと
  神酒を与へよ百御子等に』

バーチル『吾は今俄に御子を得たりけり
  妻御腹をからざる御子を』

サーベル姫『身体はよし借らずとも汝が身魂
  吾に睦びて生せ玉ひぬ』

バーチル『バーチルと猩々彦和合して
  生みし子なれば他人子でなし』

玉国別『いざさらばこれ宴会を切りあげて
  神宮居に進み詣でむ』

テク『バーチル家をば守るテク司
  従ひ行かむ君背後に』

 之より玉国別は一同と共に、アヅモス山彼方此方谷間を跋渉し、大峡小峡木を数多杣人に伐採せしめ、手斧音勇ましく宮普請木作りに着手する事となつた。数多里人を始め、チルテル部下並に猩々隊は昼夜別なく喜び勇んで、木を伐り、或は運び、或は削り、身疲れも打忘れて宮普請に奉仕する事となつた。
(大正一二・四・五 旧二・二〇 於皆生温泉浜屋 松村真澄録)
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