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文献名1霊界物語 第63巻 山河草木 寅
文献名2第2篇 日天子山よみ(新仮名遣い)すーらやさん
文献名3第9章 超死線〔1616〕よみ(新仮名遣い)ちょうしせん
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2022-04-23 16:13:54
あらすじ一行五人はスーラヤ山中腹まで登ってきた。夜前妖怪が言っていた死線地帯にたどり着いた。死線を突破するために伊太彦を導師として天津祝詞を奏上し、天数歌を歌いながら勢いにおまかせて駆け上った。一行は死線を乗り越えられたことにそれぞれ感謝歌を歌った。伊太彦は一行を励ましながら岩窟側近くにやってきた。深い井戸ように縦穴があいており、底には夜光玉がいくつともなく光っているが見えた。伊太彦は藤蔓を切って太い縄にない、岩窟一端にくくりつけて底深く降りて行った。一行も勇気を鼓して伊太彦に続いた。岩窟底からまた横穴がい開いていて無数玉が光っている。奥を見ると、ウバナンダ竜王がたくさん眷属をつれて蜿蜒とわだかまっていた。伊太彦はもろ手を合わせて柏手を打ち、天津祝詞を奏上しようとした。しかしどうしたもかにわかに舌はこわばり、一言も発することができなくなってそ場に昏倒してしまった。一行五人も同様にそ場に枕を並べて昏倒してしまった。
主な人物 舞台 口述日1923(大正12)年05月24日(旧04月9日) 口述場所教主殿 筆録者北村隆光 校正日 校正場所 初版発行日1926(大正15)年2月3日 愛善世界社版122頁 八幡書店版第11輯 305頁 修補版 校定版124頁 普及版64頁 初版 ページ備考
OBC rm6309
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本文  水面を抜く事、七千三百尺スーラヤ山中腹迄一行五人は漸く登りつめた。これより上は夜前妖怪云つた死線地帯である。山中腹に邪気帯があつて四方を取囲み、何れもこ死線を突破せむとして、邪気にうたれ、身体水症病を起し、ここにパタリパタリと倒れて一人もこれより上に登つたもはない。何程夜光玉が燦爛と輝き渡り高価な宝が目前にブラ下つて居つても此死線を越へる事は到底人間業では出来ぬ事であつた。此地帯は殆んど七八十間ばかり幅であつた。死線近辺迄来て見ると白骨累々として横たはつて居る。伊太彦は此光景を見て、これは到底一通りでは突破する事は出来ない。神力を得て登るに如かずと、ここに伊太彦を導師として天津祝詞を奏上し、天数歌を歌ひ終へ乍ら勢に任せて駆け上つた。漸くにして一行五人は死線を突破する事を得た。
伊太『あゝ惟神霊幸倍坐世。開闢以来竜王と雖も此死線を突破して下る事を得ない危険帯を無事に越へられたも全く神様御神徳だ。

 皇神恵み衣に包まれて
  危き死線を渡りけるかな。

 惟神神に任せば世中に
  恐るべきもはあらじとぞ思ふ』

ブラヷーダ『千早振る神世も聞かぬ死関を
  無事に越へたる人ぞ尊き。

 霊幸はふ神守りなかりせば
  如何で渡れむ醜死線を』

アスマガルダ『伊太彦功績は
  神代にも聞かぬためしなりけり。

 ウバナンダ・ナーガラシャーも伊太彦
  武者振り見れば驚くなるらむ。

 スーラヤ海に浮びし此山に
  初めて登る今日嬉しさ』

カークス『恐ろしき醜死線を突破して
  登り来りぬ山上に。

 ウラル彦神に仕ふる信徒が
  屍さらせしスーラヤ山』

ベース『三五力に守られて
  安く登りぬ宝山に。

 さり乍ら胸苦しくもなりにけり
  醜死線に触れたる為か』

カークス『吾も亦胸騒がしくなりにけり
  守らせ玉へ三五神』

ブラヷーダ『肉体は俄に重くなり行きて
  行きなやみけり此山道を』

伊太彦『村肝心ひきたて神に拠り
  登れば登る道もありけり』

アスマガルダ『何となく胸は騒ぎぬ手も足も
  心儘に動かずなりぬ』

伊太彦『名にし負ふ死線を突破したる身は
  少し悩みは免かれざらまし。

 いざさらば心駒に鞭ちて
  進み行かなむ竜王岩窟に』

 伊太彦は先に立つて一行心を励ませ乍ら自分も重たい足を引摺りつつ峰風に吹かれ、歌を謡つて元気よく進み行く。四人は後に牛歩み捗々しからず、汗をタラタラ流し乍ら喘ぎ喘ぎ従ひ行く。
伊太彦『神が表に現はれて  善と悪とを立別ける
 三五教宣伝使  伊太彦司が今ここに
 神御言を蒙りて  ナーガラシャー永久に
 守らせ玉ふ瑞玉  神政成就為に
 吾手に受けてエルサレム  貴大前に
 献らむと登り来ぬ  此山守るウバナンダ
 ナーガラシャーに物申す  汝が命は千早振る
 神代遠き昔より  神怒りを蒙りて
 スーラヤ山岩窟に  閉ぢ込められて千万
 悩みを受けしいたはしさ  三千世界
 一度に開く時は充ち  八大竜王悉く
 神御許しに  天津御国に救はれて
 尊き神御柱と  仕へまつらむ世となりぬ
 喜び給へウバナンダ  竜王前に告げまつる
 朝日は照るとも曇るとも  月は盈つとも虧くるとも
 仮令大地は沈むとも  誠一つ三五
 神言葉に二言ない  心を平に安らかに
 此伊太彦が使命をば  諾ひまして逸早く
 夜光玉を渡せかし  汝身霊を之よりは
 広き世界に現はして  五六七神政柱とし
 天地日月相並び  神と人と隔てなく
 いと安らかに世を照らし  醜曲霊を悉く
 言向和し神国  常世花匂ふ
 目出度き御代と開き行く  此神業を諾ひて
 一日も早く帰順せよ  あゝ惟神々々
 神に従ふ武士よ  少し悩みに撓まずに
 心を引立て進めかし  神は汝と倶にあり
 人は神子神宮  如何に死線を越ゆるとも
 障害あるべき道理なし  心一つ持ちやうぞ
 来れよ来れ早や来れ  竜王岩窟近づきて
 御空を照す光明は  昼とは云へど明かに
 吾目に映り来りけり  勝利都は近づきぬ
 勇めよ勇め言霊  神使御軍よ』
 カークスは一丁ばかり遅れ乍ら足を引摺りもつて謡ひ初めた。
『あゝ惟神々々  神守りに吾々は
 さも恐ろしきスーラヤ  死線を越へて登りけり
 さはさり乍ら何となく  足許重く胸騒ぎ
 歩み倦みし苦しさよ  伊太彦司待ち玉へ
 如何に心を焦つとも  自由にならぬ吾体
 憐れみ玉へ今一度  伊吹狭霧に曲津身を
 祓はせ玉へ惟神  神かけ念じ奉る』
ブラヷーダ『吾背君よ待ち玉へ  踏みも習はぬ高山を
 一瀉千里に登りつめ  吾肉体も疲れ果て
 手足も重くなりにけり  汝が命は宣伝使
 如何なる枉棲処をも  恐れ玉はずさり乍ら
 兄アスマガルダ  そ外二人伴人が
 死線邪気に襲はれて  手足も心もままならぬ
 悲しき身とはなりましぬ  ナーガラシャー岩窟は
 吾目前に横はり  夜光御光は
 四辺に輝き玉へども  吾等心は何となく
 曇りて黄泉道芝を  辿るが如く覚ゆなり
 休ませ玉へ背君よ  偏に願ひ奉る』
 伊太彦はブラヷーダ此歌を聞いて四人行歩に悩んで居る事を憐れみ、山頂に碁布せる岩石に腰かけて、暫らく落伍者追付くを待つ事とした。
 カークスは気息奄々として息も絶え絶えに這ふやうにして追付き来り、
カークス『もし先生、神様御用とは申し乍らどうにも斯うにも苦しくて堪りませぬわ、一つ神様に願つて下さいな』
伊太『神様に願ふは、お前心で念じた方が宜い。俺だとて全責任を負ふてゐるだから足痛いも、体苦しいも辛抱してここ迄やつて来ただよ。何れ神界御用をするだから、さう楽々に勤まるもではない。神徳さへあれば何でもないだがナーガラシャーでさへも死線を越へて逃げ出す訳にもゆかず、神代から此処に蟄伏して居る様な険難千万処を越へて来ただから、少し位苦しいは当然だよ。暫らくここ山風に当つて休んで居つたら又元気恢復するだらうよ』
カークス『はい、有難う厶います。何事も神業だと思へば、仮令死んでも怨みとは思ひませぬ』
伊太『そんな気弱い事を云ふもぢやない。永遠源泉たる瑞御魂さまがお守り下さる以上は大丈夫だよ。兎に角神を信じ神に祈るより外にないだ。あゝ惟神霊幸倍坐世』
ベース『先生、私も何だか弱音を吹くやうですが、息がきれさうになつて来ました』
伊太『エー、気弱い事を云ふ男だな。もう一息だ。神様御神力に頼つて目的を達せねばなるまい。九分九厘行つた処で成就せない事があるとどうするか。そんな弱虫では現幽一致を守らせ玉ふ神様御前に、復命する事が出来ぬぢやないか』
ベース『ハイ、お言葉通りで厶いますが、どうも苦しくて欲にも徳にも換られなくなりました』
伊太『困つたな。兎も角祈祷が肝腎だ』

アスマガルダ『スーラヤ湖水彼方を眺むれば
  父と母と恋しくなりぬ』

伊太彦『千早振る神大道に進む身は
  此世を忘るるに如かず。

 父母恵は如何に高くとも
  神恵に比ぶべきやは』

ブラヷーダ『天地親に抱かれて
  神国に登る心地しにけり』

ベース『何事も皇大神御心
  ままと思へば何をか怨みむ。

 苦しさ後に楽しみ来るてふ
  厳教を思ひて微笑む』

伊太彦『いざさらば夜光所在へと
  進み行かなむ諸人立てよ』

 斯く互に述懐をべ終り伊太彦は又先頭に立ち竜王潜むてふ岩窟側近く立寄つた。
 此岩窟は深き井戸如く縦穴が開いてゐる、そして幾丈とも知れぬ岩窟底には夜光玉が目も眩きばかり幾つともなく光つて居る。伊太彦は山上を捜つて藤蔓を切り之にて太き縄を綯ひ、入口岩窟に一端を括りつけ綱を伝ふてスルスルスルと底深く下り着いた。一同も勇気を鼓して伊太彦後に従ひ藤縄梯子を足にて刻み乍ら、漸くに岩窟底に安着した。見れば其処から又横穴が開いてゐて無数玉が光つて居る。奥方にはウバナンダ竜王が沢山な眷族をつれて蜒々と蟠まつて居るそ恐ろしさ、伊太彦は双手を合せ拍手をうち、天津祝詞を奏上せむとしたが、どうしたもか俄に舌硬ばり一言も発し得なくなつて其場に昏倒して了つた。アスマガルダを初め外一同も枕を並べて其場に昏倒した。あゝ五人運命は如何になり行くであらうか。
(大正一二・五・二四 旧四・九 於教主殿 北村隆光録)
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