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文献名1霊界物語 第64巻上 山河草木 卯巻上
文献名2第1篇 日下開山よみ(新仮名遣い)したかいさん
文献名3第5章 至聖団〔1634〕よみ(新仮名遣い)しせいだん
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2017-11-25 18:15:30
あらすじ
主な人物スバッフォード、ブラバーサ、マグダラマリヤ 舞台アメリカン・コロニー 口述日1923(大正12)年07月10日(旧05月27日) 口述場所 筆録者北村隆光 校正日 校正場所 初版発行日1925(大正14)年10月16日 愛善世界社版59頁 八幡書店版第11輯 398頁 修補版 校定版58頁 普及版62頁 初版 ページ備考
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本文の文字数4456
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本文  ブラバーサはスバツフオードに伴はれて、アメリカンコロニーへと歩を運んだ。百人ばかり信者が、祭壇前で一生懸命になつて祈願を凝らす最中であつたで、老紳士と共に末席方から礼拝をなし、天下万民為に一日も早く聖主降臨されて神業を開きたまふ日来れかしと祈りつつありけり。
 一同礼拝を終つて、珍らしき客スバツフオード傍に端座せるを見て不思議眉を潜めて眺めて居る。スバツフオードは一同に向ひ、言葉静に、
『皆さま、此御方は高砂島から神命を奉じて遥々お越しになつたブラバーサと云ふ聖師ですよ。僧院ホテルに御宿泊方だが、メシヤ再臨先駆として御出張になつたですから、お互に親しく交際をさして戴かうぢやありませぬか』
 一同はこ言葉に生き復つた様な面色を浮べて、異口同音に『サンキウサンキウ』と連呼するであつた。
 ブラバーサは一同に向かひ厚く礼を復し、且つ一場挨拶的演説を始めかけた。
『御一同様、私は最前聖師御紹介下さつた如く、高砂島から神命を帯びてメシヤ再臨先駆として派遣されましたルート・バハー団宣伝使ブラバーサと申す者で御座います。八千哩海洋を渡り漸く昨日夕方、尊きエルサレム停車場へと安着いたしました処が、初めて当地到着にて土地勝手も分らず、如何にして橄欖山へ行かうかと心配しながら、夕暮れ大道を歩んで居りますと、貴団信者マリヤ様に図らずも途中に御目に掛り、カトリック僧院ホテルへ案内して頂きました上、夜分にも拘はらず市中案内までして頂き、慕はしき橄欖山まで参拝さして貰ひましたは、全く貴団公平無私にして克く神様大御心を体得し遊ばしたそ賜と、深く深く感謝いたした次第で御座います。加ふるに御親切なるスバツフオード聖師までが、態々ホテルまで御訪問下さいまして、種々と結構な御教訓を承はり、貴団純なる信仰模様と愛結晶とも云ふべき美はしき生活有様を拝聴しまして、感涙に咽びました。悪魔横行暗黒なる世界にも、貴団如き真善美愛聖なる団体が造られてあるかと思へば、神様仁慈大御心と周到なる御経綸とには感謝せざるを得なく成つて参りました。私も今日は神様仁愛光に照らされまして、大神深く尊き事を悟りましたが、世界人類はイザ知らず、私出生した高砂島などは今より五十年前までは、御話するさへも恥かしい様な状態で御座いました。基督愛、孔子仁、仏陀慈悲なぞ申す事は、私共に取つては非常に神秘的な了解し難い、到底凡人届かぬ高遠なも様に教へられて来たもで御座います。各宗各教宣教者が余りに神仏教に勿体を付け過ぎて、仁だ愛だ慈悲なぞ神理を此世様に仕て了つたです。然るに天運循環神律に由つて、神御国と称へられた極東高砂島に厳瑞二柱救世主あらはれ玉ひて、高大博遠なる愛は私共に極めて手近いも親しきもにして、日々生活から放さうとしても放され得ないもと成つたです。何と有難い尊いことで御座いませう。御一同様も、又愛真諦を能く体得遊ばされ、キリスト再臨を誠心誠意待望されつつ国籍と宗教障壁を脱却して聖団を創立されました事は、天下万民ために実に洪大無限大神業だと考へまして、貴団御精神ある事に感謝措かない次第で御座います。自国恥を申し上げるではありませぬが、今日は国籍や宗教如何に関係なく、世界人類愛上より御参考為一言申上げ度いと思ひます。貴団方々や現今若い人達には、殆ど想像も出来ない程に我生国高砂島は、三百諸侯小さい敵国に分割されて居りましたが、今より僅かに五十年以前状態でありました。甲州と乙州とはおろか、同じ乙州でもアールとセンダーに於ても、シエルとアンターと間に於ても、全く敵国状態で、所謂郷関を一歩出づるが最後、生命保証が出来ないやうな実状で御座いました。そればかりか、各自腰に秋水を帯び家を出づれば男子は七人敵ありと覚悟して居るが武士道尊い所と謂はれ、神国魂精華としられて居りました。又武士は切捨御免と言つて、平民を切り殺す位なことは武士普通特権とさへ見られて居つたです。現に今より三十年前に有つても、甲州人とか乙州人とか言ふ言語には、如何にもヨソヨソしい意味を以て居つたです。又今日と雖も官吏とか、平民とか云ふ言葉には、一種強固な障壁が築かれてある様な感じを与へて居ります。私共父即ち維新戦ひに参加した人達は、常に私共子供時代を見て、今日青年や子供は大変に柔順になつたと言つて驚いた位です。私共子供時分はそれでも他町村内子供に対しては一種敵意を持つて町村と町村と子供喧嘩は余り珍らしいもではありませぬでした。他町村子供を見て石瓦を投げ付け、怪我をさせて快哉を叫ぶ事なぞは普通事としられて居りました。それ位だから、維新前即ち三百諸侯各地に割拠して絶えず争つて居た時代は、中々殺伐なもで有つた事は、古老談話を聞いて見れば驚かされる位であります。それが今日では子供喧嘩でさへ頗る珍らしくなつて来ました。町村子供と町村子供とが互に敵視する様なことは、今日子供には想像が付かない様になりました。是は何為かと考へて見れば、高砂島三百諸侯我利我利連が一天万乗大君思召によつて何れも前非を悔い、帰順誠を輸して大君下に畏服し、一切を投げ出して了つたからでありませう。それが為に人心大に和らぎ、四方平等的精神が国民間に貫流する様になつたで御座います。何が野蛮だと言つても、互に敵意を持つて争ふ程野蛮なことは有りますまい。故に野蛮人とは其親愛範囲極めて狭小なるもを意味し、文明人とは親愛範囲極めて広大なるを意味するもとすれば、貴団如きは実に世界に先んじて文明大文明花を開かせ玉ふたもと、衷心より感謝に堪へない次第で御座います。大慈大悲大神様は全地上世界をして、天国浄土と為し、万民に安息と栄光を与へむが為に三千年御経綸を遊ばして、今や高砂島に聖跡を垂れ玉ひました。そして大神御屋敷たる此エルサレムに御降臨遊ばす、そ準備として瑞御魂聖主を下し、万民罪を贖ひたまふこととなつたで御座います。又神選民たるイスラエル民族方々が主唱者となつて各国人々をこ聖地に集め、メシヤ再臨を信じてアメリカンコロニー如き立派な殿堂を作られて居られる事は、私に採りまして実に何とも言へぬ有難い嬉しい頼もしい事だか判りませぬ。願はくは私もこ聖団員一人に加へて頂きますれば、身光栄是に過ぎませぬ。アヽ惟神霊幸倍坐世』
と拍手内に勇まし気に降壇した。老紳士は直に登壇して、
『只今聖師お話によつて、今回聖地御出向も了解いたしました。こ団員も定めて私と同じ御意見だと思ひます。個々分立して日に夜に争闘絶間が無かつたと云ふ高砂島が、今より五十年以前に於て統一せられ、又厳瑞二柱救世主が現はれたまふたも、メシヤ再臨世界一体大神様深遠なる御経綸で御座いませう。国内凡て障壁が取り除かるる事によつて、今日向上と繁栄を来たす事になつた以上は、猶も進んで世界中が争闘を止めて相親愛し、各国各人種などと云ふ根本的敵愾心を取り去る事によつて、人類文化は神聖なもとなり之と同時にそ福利程度も大変に高めらるること疑なき真理であります。要するに吾々お互親愛範囲大小によつて、野蛮ともなり文明ともなるです。世界平和を来さむがため、即ち五六七神政出現ためには、各国国民間有形と無形大障壁を第一着に取り除かねば駄目です。こ挙に出ずして世界平和、五六七神政成就を夢みるは恰も器具を別々にして、水融合を来さうとするもと同様愚挙では有りますまいか。それ故、吾々団体員は世界に率先して平和真諦を示し、メシヤ再臨準備に従事して居るもで御座います。今日は高砂島聖師御来着によつて、私は神界御経綸洪大無辺なるに感喜余り、茲に一言蕪辞を述べ御挨拶に代へました。何うか団員諸氏もこ聖師と共に空前絶後大神業完成に尽されむ事を希望いたします』
と悠然として演壇を下つた。団員一同は拍手してスバツフオード聖師説に賛同し和気藹々として堂に溢るるばかりであつた。今迄うつむき勝で感涙に咽んで居たマグダラマリヤは、やをら身を起してツカツカと演壇上に立ち上り、謹厳な態度を以て一場演説を始めかけた。一同は拍手してマリヤ講演を迎へた。
『妾は只今両聖師御演説を承はりまして、大に心強く感じました。海洋万里遠方から遥々御越しになり、エルサレム停車場前街路に於て妾と会合されました事は実に奇蹟中奇蹟だと考へます。ブラバーサ様は全く神様御使命を帯び、メシヤ再臨先駆として御光来になつた事は寸毫も疑ふ余地は御座いませぬ。妾は皆さまと共に世界万民為に、聖師光臨を祝し且つ満腔喜悦に堪へないで御座います。メシヤ降臨キリスト再臨、五六七神政成就とは名称こそ変つて居りますが、要するに同じ意味だと考へます。斯る目出度き世界になるも全く神様御経綸で御座いますが、そ神業に奉仕する生宮が現はれなくては成りませぬ。先づ第一に神子神生宮たる吾々は、世界にあらゆる有形無形こ二つ大なる障壁を取り除かねばなりませぬ。有形的障害最大なるもは対外的戦備≪警察的武備は別≫と国家的領土閉鎖とであります。又無形障壁最大なるもとは、即ち国民及び人種間敵愾心だと思ひます。又宗教団と宗教団と敵愾心だと思ひます。此世界的有形大障壁を除く為には先づ無形障壁から取り除いて掛らねば成らないと思ひます。聖キリストは天国は爾曹内に在りと言はれて居ます。聖アブデユル・バハーは世界平和人々内に建てられねば成らぬと教へられて居ます。仏陀は慈悲心を十方世界に拡めて限界を設けるなと教へられて居ます。ツルク聖主御示教も先づ第一に世界人類和合を以て五六七神政成就絶対条件として居られます。神聖とか精神とか霊的とか申すことは、別に不可思議な神秘なもでは無く、人類愛心即ち他国民や人種に対して少し障壁も築かず、胸襟を披いて自分友人に対すると同様に友愛心を持つ事で御座います。こ障壁をなす唯一根元は自己心と自我心です。幸に我聖団は自己自愛心を脱却し、唯何事も大神様御心に任す人々集まりで御座いますから、大神様も御嘉賞遊ばして遥々と高砂島から聖師を招き、我々聖団に与へて下さつたもと厚く深く感謝する次第であります。アーメン』
 マリヤは茲まで演じ了り、一同に向つて軽く一礼しながら壇を降る。拍手声は急霰如く場外まで響き渡つて居る。
 アヽ惟神霊幸倍坐世。
(大正一二・七・一〇 旧五・二七 北村隆光録)
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