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文献名1霊界物語 第64巻上 山河草木 卯巻上
文献名2第3篇 花笑蝶舞よみ(新仮名遣い)かしょうちょうぶ
文献名3第15章 大相撲〔1644〕よみ(新仮名遣い)おおずもう
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2020-05-24 12:04:00
あらすじ
主な人物ブラバーサ、バハーウラー 舞台僧院ホテルブラバーサ部屋 口述日1923(大正12)年07月12日(旧05月29日) 口述場所 筆録者北村隆光 校正日 校正場所 初版発行日1925(大正14)年10月16日 愛善世界社版173頁 八幡書店版第11輯 442頁 修補版 校定版173頁 普及版62頁 初版 ページ備考
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本文の文字数4885
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本文  カトリック僧院ホテルに滞在してゐるブラバーサ居間を訪ねて来た一人老紳士があつた。之はバハイ教宣伝使バハーウラーである。ボーイ案内につれてブラバーサ居間に通り、
『御免なさいませ』
と言ひ乍ら、軽く一礼を施した。ブラバーサは手づから椅子をとりよせて、
『やあ、貴方は汽車中でお目にかかつたバハーウラー様で御座いましたか。一度お訪ねしたいと存じて居りましたが、何分処慣れないもですから彼方此方と見学して居りました。よう御訪ね下さいました』
と挨拶すればバハーウラーはテーブルを中におき、両方から向ひ合ひとなり、
『ハイ、私も一度お訪ねしたいと思つてゐましたが、何だか彼是ととり紛れ漸く今日となりました。どうです聖地においでになつてから貴方御感想は?』
『ハイ、見るも、聞くもが日出島と違つて居りますで面喰ひましたよ。漸く地理も分り空気にも慣ましたと見え、少し計り落付いて参りました』
『成程、私も同感ですよ。常世国から此処までやつて来ましたが、いやもう見るも聞くも変つた事ばかり、かやうな処へ救世主がお降りになるかと思へば何だか奇異感にうたれます。国に居ります時は聖地エルサレムエルサレムと云つて日夜憧憬して居ましたが、古く荒びた神都跡、何れも涙種ならぬはありませぬ。黄金花が咲き匂ふてゐると思つた私期待はスツカリ裏切られて了ひましたよ。アハヽヽヽヽ』
『都会は人が作り、田舎は神が作るとか申しまして、かやうな田舎びた処でないと到底神様はお降りになりますまい。紅塵万丈巷に、霊肉ともに穢してゐる人集まつてる処へは救世主はお降りになる筈はありませぬ』
『成程、さう承はればさうかも知れませぬな。数年以前、バルカン半島に現はれた一朶黒煙は燎原を焼く勢ひで全欧羅巴に蔓延し全世界地をして戦雲に包んで了ひましたが、為に其後人心は益々悪化し、二進も三進も行かなくなつて来たぢやありませぬか。かやうな処へ救世主が御降臨になつた処で足一つ踏み込まれる処はありますまいな。一人でも多く心を研き魂を研いて神心となつて救世主降臨を待たねばなりませぬ。実に常暗中となつたもで御座いますわい』
『ルートバハー教祖ヨハネ教にも三千世界大戦ひが初まるぞよと三十年以前から仰せられましたが、到頭世界大戦争が起りました。さうしてヨハネ教祖は先達世界戦争開戦期間日数一千五百六十七日を終り平和条約が締結された其朝、即ち自転倒島で云へば大正七年十月三日朝昇天されました。そ後と云ふもは実に世中は目もあけて居られないやうな惨怛たる現状で御座ります』
『先達戦争について交戦国総面積を調ぶれば、四千三百四十万二千七百六十二平方哩即ち世界面積七割五分八厘にあまり、又其戦争に参加した人員数は無慮十六億一千百九十二万人に達し世界人口九割二分五厘に相当する空前大戦争で御座りました。恰も秋霜烈日大威力を示して満天下草木を一夜中に凋落せしめて了ひました。只常磐木み巍然として聳え、又、別に数種紅黄紫青等僅かに艶を競ふて世終末美を暫時誇つてゐる位であります。あゝ恐るべき世界大戦争はもはや之で根絶したで御座いませうか。大戦後世界は何処果てを見ましても平和象徴を見る事は出来ぬぢやありませぬか。到る処小戦争は行はれ、餓鬼畜生修羅惨状を遺憾なく曝露してるぢやありませぬか。ハルマゲドン戦争とは、先達て戦争を云つてるぢやありますまいか。ハルマゲドン戦争が済めば世終りが近づくと聖書教、どうも物騒になつて来ました。暑い時に寒い風が吹き作物は思ふやうに発達せず、到る処火山は爆発し、地震洪水悩み、強盗殺人に諸種面白からぬ運動、到底人間として此世を如何する事も出来ますまい。もうこ上は救世主降臨を仰ぐより外に道は御座いますまいなア』
『救世主は屹度御降臨になつて世界を無事太平に治めて下さる事を私は確信してゐます。然しそれ迄に一つ大峠が出て来るでせう。ハルマゲドン戦争は私は今後に勃発するもと思ひます。今日は世界に二大勢力があつて虎視眈々として互に狙ひつつある現状ですから、到底此儘では治まりますまい。世立替立直しは今日人間力つき鼻柱が折れ、手施す余地がなくなつてからでなくては開始致しますまい。九分九厘、千騎一騎になつて救世主が降臨なされるが神様経綸と存じます』
『成程御同感です。そして貴方二大勢力とは何を指して仰せらるるですか』
『今日此地球上に於て二つ大勢力が互に暗々裡に争つてゐますは貴方も大抵御承知事だと思ひます。一方には強大なる一新勢力を発揮し、全世界に活動飛躍を試み傍若無人的振舞をなし、不自然極まる人為的暴圧力によつて膨脹拡大し、弱肉強食を以て唯一国是となせる強大なる国家があり、一方には鎖国攘夷夢を破り一躍して全世界舞台に現はれ、列強と相伍し、再躍して世界一大強国となつた国家が御座います。世界万民は此二大勢力に対して驚異眼を以てぞみ、茫然自失体で御座います。そ発展振りたるや前古未聞大事実で御座いますけれども、而もそ発展は頗る公明正大と唱へられて居るで御座います。一方はピラミツド如く極めて壮観なれども真生命なき建築物であり、一方は喬木如く生々としそ壮観度に於ては到底彼ピラミツド建築には及びませぬけれども、真に生命ある成長を遂げつつあるであります。そして此二大勢力は一つは極東一小孤島、一つは極西一大大陸です。一つは現今に於ける最古国、一つは列強中最も新しき国、一は建国以来王国、一は建国以来民国、一は万世一系皇統を誇り、一は四年交代主権を誇り、一は天孫稜威を本位とし、一は億兆烏合民権を本位としてゐます。そして其国民性たるや、一は義につき一は利につき一は強国と云ひ乍ら神国と自称し、一は基督教国と云ひ乍ら民国と自称し、一は親子経的関係を以て家庭本位となし、一は夫婦緯的関係を以て家庭本位とし、一は男尊女卑関係を以て人倫本位とし、一は女尊男卑関係を以て人倫本位とし、一は太陽を以て国章となし、一は星を以て国章となしてゐる。故に自らそ国情と使命に於て相容れないは当然ではありませぬか』
『成程今貴方仰有つたは実に時代を達観した宣言だと思ひます。一方は日出国一方は常世国と世界に相対立してゐる現状をお示しになつたでせうな。諺にも両雄相戦はば勢ひ共に全からずとか申しまして、どちらか一方に統一されねばなりますまい。実に困つた世中になつたもで御座いますな。政治と云ひ経済と云ひ思想と云ひ、宗教と云ひ何も彼も一切今日程行つまり中は御座りますまい。どうしても此悩みは何処かで破裂せなくてはおかない道理で御座いますな』
『さうです。斯く如く今や東西大関が世界大土俵上に、褌を〆めて腕を鳴らせ肉を躍らせて相対する奇観を呈してる以上は、一方が屈服するか、但しは引込まない以上は、早晩虎搏撃壤幕が切つて落されるは火を睹るより明かでせう。ハルマゲドン、即ち世界最後戦争は到底免れなくなつてゐます。それで大神様は地上をして天国讃美郷に安住せしめむが為めに、ヨハネ、キリスト身魂を世に降して、天国福音を普く万民に伝へしめられつつあるです。さり乍ら常暗世になれきつた地上人類は一人として此大神様御真意を悟り得る者なく、只僅かに忠実なる神僕が誠を尽し、神を念じて待つてゐるばかり、実に世界は惨めな有様で御座います。かやうな邪悪に満ちた三千世界を立替立直し遊ばす神様御神業も実に大謨では御座いますまいか』
『此世界人類は、皆神様同じ御水火より生れたる尊い御子で御座いますから、吾々人類は皆兄弟で御座ります。然し乍ら今日状態では到底吾々宗教家が何程あせつた所で駄目で御座いませう。偉大なる救世主が現はれて整理して下さらねば乱麻如き世界は到底収拾する事は出来ますまい。然し此二大勢力は一旦、どちらが天下を統一するとお考へになりますか。常世国でせうか、日出島で御座いませうか。貴方お考へを承はり度いもで御座いますが』
『到底人間分際として神様御経綸は分りませぬが、私がルートバハー教示により、おかげを頂いて居りますは、将来国家を永遠に統御すべき人種は決して常世国人ではなからうと思ひます。二千六百年、亡国民となつて居つた讃美郷人々は先達大戦争によつて神から賜はつたパレスチナを回復し、今や旭日昇天勢で御座います。そしてそ人種信仰力、忍耐力並に霊覚力と云ふもは、到底世界に比ぶべきもが御座いませぬ。私は先申しました二大勢力よりも、も一つ奥に大勢力が潜み最後世界を統一するもと神示によつて確信して居ります。ユダヤ人は七つ不思議があります、それは、
第一、万世一系皇統を戴きつつ自ら其国を亡ぼした事、
第二は亡国以来二千六百年なるにも拘らず、今日も尚依然として吾等は神選民也と自認してゐる事、
第三は二千六百年来亡国を復興して、仮令小なりと雖もパレスチナに国家を建設した事、
第四は自国言語を忘却し、国語を語るもを大学者と呼びなす迄になつて居つてもそ国を忘れず、信仰をまげない事、
第五は如何なる場合にも決して他国民と同化せない事、
第六には亡国人身を持ち乍ら不断的に世界統一を計画してゐる事、
第七は今日世界全体は政治上、経済上、学術上、ユダヤ人ままに自由自在に展開しつつある事です』
『成程それは実に驚くべきもで御座いますわ。如何にも神選民と称へられる丈ありて偉いもで御座いますわい。それから、一方勢力とは何で御座いますか』
『それは日出島七不思議で御座います。
先づ第一に万世一系皇統を戴き終始一貫義を以て立ち、一度も他侵略を受けず、国家益々隆昌に赴きつつある事、
第二は自ら神洲と唱へ乍ら自ら神選民又は神民と称ふるも尠い事、
第三は王政復古経歴を有するも未だ一度も国を再興したる事なき事、
第四は国語を進化せしめたるも之を死語とせし事もなく、従つて国語を復活せしめた事なき事、
第五は同化し難い国民やうに見ゆれどもそ実、何れ風俗にも同化し易く、且何れ思想も宗教も抱擁帰一し、ややもすれば我生国を忘れむとする国民出づる事、
第六は一方常世国は世界統一為には手段を選ばざるも、日出島は常に正義公道即ち惟神によつて雄飛せむとする事、
第七は世界は寄つてかかつて日出島を孤立せしめむと計画しつつあれども日出島は未だ世界的計画を持たず、ユダヤとは趣を異にしてゐる事であります。
之を考へて見ればどうしても、此日出島とパレスチナとは何か一つ脈絡が神界から結ばれてあるやうに思はれます。一方は言向和すを以て国精神となし、征伐侵略等は夢想だもせざる神国であり、二千六百年前に建国基礎が確立し、ユダヤは又前に述べた通り二千六百年前に国を亡ぼし、そして今やそ亡国は漸く建国曙光を認めたぢやありませぬか。私は屹度此エルサレムが救世主現はれ給ふ聖地と固く信じ万里海を渡り雲に乗つて神業ために参つたで御座います』
『今貴方は雲に乗つて来たと仰せられましたが飛行機事ぢやありませぬか』
『いえ雲と申しますは自転倒島古言で舟事で御座いますよ。雲も凹に通ひますから舟に乗つて来るを雲に乗つて来ると聖書に現はれてるですよ』
『成程、それで救世主雲に乗つてお降りになると云ふ事も諒解致しました。いや有難う御座いました。お邪魔を致しまして……又お目にかかりませう。ちつと御寸暇にお訪ね下さいませ。ヨルダン川辺に形ばかり館を作つて吾々信者が集まつて居りますから……』
『ハイ、有難う御座います。何れ近い中にお邪魔を致します。左様ならば之にてお別れ致しませう』
(大正一二・七・一二 旧五・二九 北村隆光録)
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