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文献名1霊界物語 第64巻下 山河草木 卯巻下
文献名2第2篇 鬼薊よみ(新仮名遣い)おにあざみはな
文献名3第9章 狂怪戦〔1815〕よみ(新仮名遣い)きょうかいせん
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日2017-11-26 18:23:46
あらすじ
主な人物守宮別、お花 舞台橄欖山坂道 口述日1925(大正14)年08月20日(旧07月1日) 口述場所丹後由良 秋田別荘 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1925(大正14)年11月7日 愛善世界社版113頁 八幡書店版第11輯 537頁 修補版 校定版114頁 普及版63頁 初版 ページ備考
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本文の文字数4193
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本文 お花『有為転変は世習ひ  天が地となり地は天と
 変る浮世有様は  お花と貴方事だらう
 寝ても醒めても夢現  日生宮に
 頭先から爪端  身も魂も打ちこみて
 惚れて厶つたお前さま  どうした風吹廻しか
 私とコンナ仲となり  二世を契つた夫婦連れ
 此聖場神様も  嘸や御嘉納なさるだらう
 何程神ぢや仏ぢやと  高尚な事を云つたとて
 人は肉体ある限り  湧いて出て来る性
 満たす事をば知らずして  可惜月日を送る
 天与へた快楽を  蹂躪すると云ふも
 ラブ・イズ・ベストをふり廻し  自由自在に性
 遂げた処で神様  干渉すべき理由はない
 あゝ面白やたもしや  コンナ尊き歓楽を
 お寅婆アさまにだまされて  竜宮海乙姫
 身魂ぢや改心せにやならぬ  もしも男に触つたら
 八万劫罪咎が  一度に現はれ日に三度
 極寒極暑苦しみを  受けると甘く騙かして
 私を十年釣つて呉れた  ほんに思へば思ふ程
 妾は何と云ふ馬鹿だらう  恋に目醒めた此お花
 もはや弓でも鉄砲でも  びくとも動かぬ磐石心
 固めた上はお前さま  浮気心を払拭し
 どこどこ迄も偕老  契を結んで下されや
 命も宝もなげ捨てて  お前に任した此身体
 焼いて喰はふと煮て喰はふと  決して不足は云ひませぬ
 さはさりながら旦那さま  貴方は本当に水くさい
 二世を契つた女房  ある身で居ながらうかうかと
 義侠心をば放り出して  トロッキーさま身替りに
 警察署門戸をば  潜つてやらうと仰有つた
 義侠も仁侠もよいけれど  ソンナ無益な犠牲をば
 払つて居つては世中に  生て行く事ア出来ませぬ
 これ許りは旦那さま  私が可愛と思ふなら
 思ひとまつて下されや  人気悪い世中は
 何時騒動が起るやら  分つたもではありませぬ
 其度毎に犠牲者と  なつて行かれちや此お花
 どうして立つ瀬がありませう  軍人さまを夫にもち
 喜び勇む間も非ず  コンナ苦しい思ひをば
 させられやうとは知らナンだ  大和魂か知らねども
 今後は止めて下されや  可愛女房が手を合せ
 涙流して頼みます  あゝ惟神々々
 ウラナイ教大御神  千変万化に移動する
 夫心を喰ひ止めて  私身魂にピツタリと
 釘鎹を打つたやうに  離れないやう願ひます
 これが一生お願ひだ  縁と云ふも妙なも
 海外万里此国で  何とも思ふて居なかつた
 守宮別さまが恋しうなり  足許さへも見えぬ迄
 恋暗路に迷ひました  私は心が狂ふた
 吾と吾身が怪しうなり  合点行かぬよになりました
 ホンに女と云ふもは  男にかけたら脆いも
 男一嚬一笑が  胸に五寸釘打つやうに
 苦しい思ひがして来ます  頭に霜をちらちらと
 戴く身ながら村肝  心は元二八空
 胸はどきどき息つまり  恥も外聞も何
 コンナ心になつたも  罪なお前がある故だ
 広い天地其間に  たつた一人お前さま
 私命ぞ力ぞや  もしもお前が死んだなら
 さつぱり此世は地獄ぞや  地獄底迄も
 好きな貴方と諸共に  落ちて行くなら厭やせぬ
 これ程思ふて居る私を  すげなう見捨てて下さるな
 見捨てられたる其時は  地震雷火雨も
 まだまだおろか鬼となり  大蛇となりて素首を
 引きぬきますよ旦那さま  先に気をつけおきまする
 あゝ頼もしや頼もしや  処は世界中心地
 貴き神あれませる  橄欖山聖城で
 三四十年も若返り  嶮しき御山を手を曳いて
 詣る心は天国  花咲き匂ふ楽園を
 百エンゼルに導かれ  登つて行くやうな心地ぞや
 あゝあゝ長生きすればこそ  年を取つてから恋愛
 本当本当味ひが  分つて来ただ有難い
 日神や大ミロク  生宮さま前だとて
 コンナ楽しい潔い  思を今迄せなかつた
 ホンに貴方は救世主  天津御国エンゼルよ
 あゝ惟神々々  御霊幸倍ましませよ。
ホヽヽヽヽヽ、これ守宮別旦那さま、私思ひを汲み取つて下さつたら、余り憎ふは厶いますまい。どうかイターナルに愛を注いで下さいな。道草を喰つたり横を向ひたりしちや嫌ひですよ。私と云ふ立派な奥さまがあるに元が軍人気質だから要らざる義侠心を出し、暴悪無頼トロッキーなど身替りにアタ阿呆らしい警察へ縛られ行くナンテ、そんな事は止めて下されや。何程世中を救と云つたとてキリストさまやうに磔刑になつちやたまりませぬよ』
『お前と一緒に磔刑になつたらよいぢやないか、万劫末代名が残るぞよ。お前とお寅さまと口癖やうに、世界万民を助けたら万劫末代結構な名が残るといつて居たぢやないか。昔キリストが十字架にかかつて万民罪を贖つたと云ふこエルサレムで世界犠牲者となり末代名を残すも人間としては痛快事だよ。なアお花さま』
『嫌ですよ、お花さまなんて他人らしいソンナ言葉おいて下さい、何程名が残ると云つたつて命が無くなつて了へば肉体的歓楽を味はふ事が出来ぬぢやありませぬか』
『死んで未来で仲よく添ふたら好いぢやないか、さうすれやお前もお寅さまに取りかへされる心配も要らず、宇宙第一安全地帯だよ。俺だつてトロッキーなど身替りになるやうな馬鹿ぢやないが、一寸お前に実処は……義侠心強い男だなア……とこやうに思はし度いで芝居をやつて見ただ。其上沢山農民団体や労働団体が傍にごろついて居たもだから、日出島守宮別と云ふ男は義侠心に富んだ男だ、彼れこそ真当救世主だと世界中に名を広めやうと思つた私策略だよ。兎角人間は広く名を知られないと仕事が出来ないからなア。あウズンバラ・チヤンダーだつて実際に交際あつて見ればコンマ以下人間だ。俺から見れば小指端にも足らないやうな小人物だ。そいつがふとした事から事件を捲き起し世界中に名が響いたもだから、世界阿呆共がキリスト再来だ、ミロク出現だ、メシヤだ、などと担ぐやうになつただ。売名策には労働者中に入つて一寸味をやるが一番奥手だよ、ハヽヽヽ』
『ホヽヽヽヽ、何とまア抜け目無いお方だ事。それ丈知恵がある癖に今迄どうしてお寅さまやうな、没分暁漢に食ひついて入らつしやつたですか』
『お寅さまは変性男子系統ぢやないか、脱線だらけ分らない事を喋べり立てて居ても、何と云ふても系統だから、三五教没分暁漢連がコソコソとひつつきに来よる。そいつを利用して、つまり要するに三五教転覆を企て、変性女子地位に取つて代らうと云ふ大野心を持つて居たからだ』
『何とまア人は見かけによらぬもだ事、夢か現守宮別さまと播陽さまでさへ云つて居られた位だから、酒さへ呑ましておけばいい男だと思つて居たに、聞けば聞く程頼もしい何と云ふ立派な男だらう。併しそれも無理もない、世界事にかけたら酸も甘いも辛いも悟りきつた蹴爪生えた、コケコツコウか、尾が二つに分れた山猫やうなアヤメお花を蕩かすと云ふ腕があるだも、ホヽヽヽヽ。油断も隙もならない主人だわ。一つ守宮別さま、否旦那さま貴方得意な鈴虫やうな声で詩吟でもやつて下さいな。私ばつかりに歌はしてあまり平衡が取れませぬわ』
『よしよしお望みとあれば詩吟でも何でもやらう』
と銅羅声を張り上げ大口をあけ、
『月落ち烏啼いて霜天に満つ
暁に見る千兵大河を擁するを……  ゼスト……』
『これ旦那さま、ソンナ旧めかしい詩吟ならもう止めて下さい。どうか私事を謡つて貰ひたいですがなア』
『よしよし、それぢや新派で一つやつて見やう。歯浮くやうな艶つぽい歌だよ、オホン。

 天を背景となし
 地を舞台となし
 雲袖をふるつて
 大宇宙に活躍す
 あゝ吾人と生れて人に非ず
 さりとて獣にも非ず
 又神でもなければ仏にも非ず
 広い宇宙に只一点肉塊として
 忽然として住める
 あゝ天時今や到りて
 世界中心地点
 日又中心
 浪花遊里に初声をあげたまひし
 あやめ君と懇親を結ぶ
 吾現世に生誕して初めて歓喜を知る
 医者と南瓜はヒネたがよい
 色は年増が艮め刺す
 あゝ何たる幸福ぞや
 お寅如きは物数ならず
 其面貌はアトラス如く
 其臀肉は搗臼如し
 アヤメ君とお寅婆を比較すれば
 天空に輝く月光菩薩と
 地中に潜む泥亀如し
 加ふるにお寅懐中には
 僅かに千金を剰す
 黄金万能現世に於て
 万金を懐中する
 アヤメ君こそは
 富においても最大優者なり
 こ夫人にしてこ金あり
 こ夫人にしてこ夫あり
 俗に所謂鬼に金棒とは
 這般消息を物語るも
 あゝ愉快なりカンラン
 夫となり妻となつて此艶姿を天地万物に観覧せしむ
 宇宙幸福を吾と汝と独占して
 生乍ら幸福神となり
 万劫末代生通し仙術を学び
 天地と共に悠久に生むとす
 あゝたもしきかな たもしきかな
 カンラン神山
 月は皎々として五色階段を昇り
 星は燦爛として金銀光を放つ
 天清く地又清し
 吾清く汝又清し
 半日清遊実に心胆を洗ふ思ひあり
 喝。』

『あゝ吃驚しましたよ、狸やうな口あけて、喝なんて何ですか。喰ひつかれるかと思ひましたよ』
『あまりお前が可愛で頭から噛ぶつてやらうと思つただ、アハヽヽ』
『オホヽヽヽ、あまア旦那様ほどよい事哩う。そ声で蜥蜴喰ふか杜鵑式だから一寸も油断は出来ないわ』
『おいお花、もう黙つて行かう、どうやら、あ木蔭に人が居るやうだ、些と許り見つともないからなア。お前は二三間離れてついて来て呉れ。さうして人居る所で旦那さまなぞと云つて貰つちや困るよ』
『ハイ、旦那さまつて今日限り申ませぬ。よう気変るお方ですな』
と早や悋気角を生して居る。
 守宮別は小声で、
『あゝ女子と小人は養ひ難しとは能くいつたもだな。柔しく云つたら自惚る、強く云へば吠える、殺せば化けて出ると云ふ魔物だからなア、アーア』
 お花は小声でハツキリわからねどアーア声を聞き、こいつは又例心境変化境界線ではないかと心配あまりサツト顔色変り蟇蛙鳴き損ねたやうな面をさらし居る。
 路傍五六間先下から瓦をぶちやけたやうな笑ひ声が聞え来りける。
(大正一四・八・二〇 旧七・一 於由良 加藤明子録)
(昭和一〇・三・一〇 於台湾別院蓬莱殿 王仁校正)
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