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文献名1霊界物語 第73巻 天祥地瑞 子
文献名2第2篇 高照神風よみ(新仮名遣い)たかてるしんぷう
文献名3第23章 中高滝〔1854〕よみ(新仮名遣い)なかたかたき
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ言霊水火(いき)より成り出でた神霊を神といい、神と神と婚ぎによって生まれた神霊を命という。これより後、「神」と「命」名によって、それぞれを判別することとする。善悪相混じ、美醜互いに交わる惟神経綸によって、高照山谷々にも、妖邪気が鬱積して、邪神が現われ始めた。天界、天国といえども、至善・至美では宇宙気が固まらず、万有は生まれてこない。糞尿によって土が肥沃になり五穀が豊かに実るように、醜悪結果は美・善となる。ただ善悪活用度合いによって、そ所と名を変ずるみである。こ宇宙には絶対的善もなく、絶対的悪もない。これが惟神自然大道である。あるとき、如衣比女神は、高照谷中津滝に禊をしようと出かけた。鬱蒼として険しい岸壁を伝って行く道なで、眼知男神は安否を気遣い、ひそかに遠く女神後から従った。如衣比女神は滝荘厳さをたたえる歌を歌って滝壺に飛び込んだが、猛烈な渦に巻き込まれて水底深く沈んでしまった。眼知男神は急いでやってきて、天数歌を歌い、厳言霊を宣りあげた。すると、滝壺から頭に鹿ような大きな角を生やした大蛇が、如衣比女神をくわえて現れた。眼知男神は驚き、厳言霊を繰り返しつつ大蛇帰順を主神に祈った。如衣比女神は、大蛇にくわえられながら、眼知男神に、自分は大蛇に呑まれて先に主大神御許に行くが、こことを夫に伝えてくれ、と頼んだ。眼知男言霊もむなしく、大蛇は比女神をくわえたまま水中に姿を隠してしまった。眼知男神は愁嘆やるかたなく、悄然として高日宮に帰り着いた。
主な人物 舞台 口述日1933(昭和8)年10月16日(旧08月27日) 口述場所水明閣 筆録者加藤明子 校正日 校正場所 初版発行日1933(昭和8)年11月22日 愛善世界社版 八幡書店版第13輯 91頁 修補版 校定版225頁 普及版 初版 ページ備考
OBC rm7323
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本文  太元顕津男神は、主神言もちて高日宮に禊し給ひ、如衣比女神に御逢ひて美玉姫命を生ませ給ひ、初めて命名を称へ給へり。言霊水火より成り出でましし神霊をすべて神と称へ、神と神と婚ぎによりて生れませる神霊を命と言ふ。此より後神と命御名を判別して、言霊神より出でし神なりや、婚ぎによりて出でし神なりやを明かにすべし。
 善悪相混じ、美醜互に交はる惟神経綸によりて、紫雲棚曳く高照山八百八谷隈には妖邪気鬱積して茲に邪神は顕現し、大神神業に障らむとするぞ忌々しけれ。世人謂らく、天界又は天国と言へば、至善至美至厳至重にして、寸毫濁りなく、塵埃なく、清浄無垢なるべしと。吾も亦神界奥底を探知する迄は世人如く考へ居たりしが、実地探検によりて、意外感に打たれたる程なり。さりながら、至善至美みにしては宇宙気固まらず、万有は生れざるなり。悪臭紛々たる糞尿を土に与ふれば、土地忽ち肥沃して五穀は豊にみり、百花は美しく咲き、果物蔓物、野菜に至るまでよく生育し、且つ味よろしきが如し。故に醜悪結果は美となり、善となり、良味良智となるもなるを知るべし。唯善悪活用度合によりて其所名を変ずるみ。此大宇宙には絶対的善もなく、又絶対的悪もなし。これ惟神にして自然大道と言ふなり。
 如衣比女神は御子日に月に生ひ立ちませるを楽しみて、朝な夕な森林をかきわけ、高照谷中津滝に禊せむと出でたまふ。さしもに鬱蒼として猿もなほ攀づべからざる岩壁を伝ひ出でます事危さを思ひて、眼知男神は女神後より密かに遠く従ひ給ひぬ。如衣比女神は中津滝水勢猛烈さと其荘厳とに打たれて、暫し恍惚として、吾身あるを忘れて如衣比女神は御歌を詠ひたまはく、

『仰ぎ見れば雲より落る中津滝
  水勢すさまじきかな

 天地もわるるばかり音に
  われは寒さを身に感じつつ

 天流と思ふまで
  こ中滝秀強きも

 たぎち落る水瀬音に穿たれし
  こ滝壺は底なかるらむ

 常磐木は天を封じてそそり立ち
  中を一条おつる滝はも

 国魂神を生まむと吾はここに
  岩根をよぢて登り来しはや

 滝津瀬勢いかにつよくとも
  神国為めに禊せむかな』

 かく歌ひてざんぶと計り滝壺に飛び込み給へば、猛烈なる渦に巻き込まれて水底深く沈み給ふ。折もあれ眼知男神は息せきと此処に現れ来り、如衣比女失せたまひたるに驚き、如何はせむと右往左往しながら厳言霊宣り上げ給ふ。
 『一二三四五六七八九十百千万!

 あはれ今如衣比女は滝壺
  底ひも深く隠れましけり

 主深き経綸か知らねども
  こ有様をわれ如何にせむ

 主経綸とあれば吾も亦
  心やすけくここにあるべし

 滝壺水底深くかくれにし
  比女神思へば心おちゐず

 美玉姫御子居ます世に
  隠れますとは心もとなき』

 斯く謡ふ折しも、滝壺より頭に鹿如き大なる角を生したる大蛇、如衣比女神をくはへながら頭を水面に擡げたれば、眼知男神は大に驚き、厳言霊を繰返し繰返し、大蛇帰順を主大神に祈り給ふ。如衣比女神は大蛇巨口にくはへられながら、

『吾は今荒振神に呑まれつつ
  主大神御許にゆかむ

 背岐美に吾が事具に語れかし
  なんぢ眼知男神よ』

 眼知男神は慄ひ乍ら、

『神代を曇らし奉る大蛇神
  命にかけて言向け和はさむ

 一二三四五六七八言霊に
  まつろひまつれ大蛇神よ』

 斯く詠ひ給ふ眼知男神を尻目にかけながら、大蛇は比女神をくはへたるまま姿を水中に匿しける。眼知男神は水面渦を眺め入りながら、如何にして顕津男神に復命申さむやと、とつおひつ思案にくれ給ふ。

『天地眼知男神ながら
  比女を助くるよしなき苦しさ

 わが魂は曇らひにけむ言霊
  霊験は見えず比女失へり

 如何にしてこ有様を比古神に
  つたへまつらむ苦し悲しも

 主みはかり事とは知り乍ら
  今日艱みは目もあてられず

 主御いきになりし天界も
  曲荒びあるは悲しき

 喜びと栄えにみつる天界に
  歎きありとは思はざりしを

 美玉姫命神代に立たすまでと
  思ひしことも水泡となりける

 中津滝水泡と消えし如衣比女
  ゆくへは何処主右か

 顕津男神言御稜威も比女神
  なやみ救はす術なきも

 如衣比女神去りますと聞かすならば
  歎かせたまはむ比古遅神は

 如何にせむ泣けど叫べど如衣比女
  行方は水泡となりたまひぬる

 とうとうと無心滝はこ歎き
  つゆ知らぬがに落ちたぎちつつ

 常磐木梢も声ひそめ
  科戸音づれもなし

 吹く風便りもがもと思へども
  せむ術もなき谷間なりけり

 いざさらば巌を下り岩根樹根
  ふみしめふみしめ宮居に帰らむ』

 眼知男神は愁歎やる方なく、如衣比女沈ませ給ふ滝壺を恨めしげに眺めやりつつ、悄然として岩壁を下り、谷難路を岩根樹根踏みわけ踏みしめ、辛うじて高日宮に帰り着かせ給ひぬ。
(昭和八・一〇・一六 旧八・二七 於水明閣 加藤明子謹録)
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