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文献名1霊界物語 第74巻 天祥地瑞 丑
文献名2第1篇 渺茫千里よみ(新仮名遣い)びょうぼうせんり
文献名3第3章 篠笹原〔1871〕よみ(新仮名遣い)ささはら
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ国中比古神は、一行先頭に立って道案内をする。国中比古は目的地真鶴山に、一足先に行って一行を迎えることとなった。しばらく行くと、激しい濁流河が一行をさえぎった。顕津男神は厳然として水を清める歌を歌うと、濁りはうすらぎ、河砂利も見えるほどに澄み切った。一行は河をわたったところで休息を取り、眠った。
主な人物 舞台 口述日1933(昭和8)年10月20日(旧09月2日) 口述場所水明閣 筆録者谷前清子 校正日 校正場所 初版発行日1934(昭和9)年1月5日 愛善世界社版 八幡書店版第13輯 172頁 修補版 校定版41頁 普及版 初版 ページ備考
OBC rm7403
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本文  国中比古神は一行先頭に立ち、道案内をなさばやと、馬上より声も清しく御歌うたひつつ進み給ふ。
『紫微天界国中に
 百神等ましませど
 殊に目出度き瑞御霊
 すべて種となり
 山川草木果迄も
 生命水をあたへつつ
 神国を開き神を生み
 貴神業依さしまし
 果しも知らぬ国原を
 遠き近きへだてなく
 貴言霊生り出でて
 真言道に生かせつつ
 進ませ給ふぞ畏けれ
 吾は国中比古
 今日御供に仕へつつ
 道隈手も白雲
 あなた遠き大空を
 目あてに進む野路
 ああ惟神々々
 生言霊幸ひて
 主大神御依さし
 神業もれなく落もなく
 𪫧怜に委曲に永久に
 仕はせ給へ吾は今
 遠大野に霞みたる
 真鶴山を目ざしつつ
 草野を分けて進むなり
 天津御空に照り渡る
 日は明らけく天つとふ
 月は清しく真昼間を
 真白に冴えて守りまし
 科戸風はほどほどに
 我等一行神々
 面をなでて香るなり
 百草千草生ひ茂る
 中より見ゆる紅
 花姿やさしさは
 常世春を歌ふなり
 虫声々冴えにつつ
 わが行く旅草枕
 げにも楽しき次第なり
 ああ惟神々々
 恩頼ぞたふとけれ。

 見限り遠き大野果にして
  ぼんやり霞むは真鶴山かも

 真鶴山に百神集ひますと
  吾は聞き居り御供に仕へむ

 いざさらば駒に鞭うち脚早め
  夕暮までに吾着かむかな

 瑞御霊よ吾は一足御先に
  真鶴山をさして進まな』

 顕津男神はこれに答えて、御歌詠ませ給ふ。

『国中比古神神言言挙げを
  うべなひ我は公を立たさむ

 真鶴山ははろけし駒に鞭
  うちて急がせ夕告ぐる迄に』

国中比古神『いざさらば瑞御霊よ百神よ
  吾は進まむ真鶴山に

 百神よ瑞御霊を守りつつ
  安く来まさね真鶴山に』

と歌ひこし、一鞭あてて驀地に草野を駆け出し給ふ。そ勇ましき後姿を見やり乍ら、近見男神は歌ひ給ふ。

『勇ましも国中比古神言に
  吾嬉みて言葉も出でず

 先頭に立ちて進みし国中比古
  神は早くも見えずなりける

 駿馬脚早みかも御姿は
  もえ立つ霧中にかくれつ』

 圓屋比古神は御歌詠ませ給ふ。

『今日も亦暮れむとするか道遠み
  真鶴影ほかなり

 今宵又野辺にいぬると定めつつ
  静に行かむ篠笹原を

 今までは芒野辺を渡り来て
  また辿るかも篠笹原

 さらさらと篠笹原風立ちて
  もさわがしも心おちゐず

 曲神ひそむがに思ふ笹原に
  心しませよ百神等

 天津日は雲にかくれて科戸辺
  風は俄に吹きすさびつつ

 多々久美神よ言霊宣り上げて
  野辺あらしをやすませ給へ』

 多々久美神は御歌詠ませ給ふ。

『科戸比古科戸比女にも白す
  岐美出でまし静まりてゐよ

 国土造り御子生まさむと出で立たす
  瑞御霊みゆきなるぞや

 吾こそは多々久美神科戸辺
  風司どる御魂なりける』

と歌ひ給へば、忽然として荒野を吹きすさびし風は鳴りを鎮め、御空雲は四方に散りて、天津日光煌々と輝き給ひぬ。
 宇礼志穂神は御歌詠ませ給ふ。

『荒野吹く風すさびも止まりぬ
  多々久美言霊水火に

 瑞御霊みゆき道にさやりたる
  風静まりぬ篠笹原

 雨雲行き交ふ影も消えうせて
  空は青海原となりぬる

 青海原渡らふ月御光は
  地底まで輝くがに思ふ』

 斯く歌ひつつ笹原を分けて進み給へば、濁流滔々と漲れるかなりに広き河東西に流れ、一行行手を横ぎりゐたり。
 近見男神は濁流河辺に立ちて、馬上より歌ひ給ふ。

『八千尋水底までも濁りたる
  こ泥河よいかに渡らむ

 国中比古神はこれ泥河を
  駒に鞭うち渡らしませるか

 神守る紫微天界にかくごと
  濁流あるとは思はざりしよ

 言霊水火を清めてこ河を
  澄まし渡らむか惟神吾は

 黄昏に早や近づきて濁流を
  前にひかふる旅さびしも』

 顕津男神は儼然として御歌詠ませ給ふ。

『主依さしままに国土造る
  瑞御霊よとく澄みきらへ

 我は今瑞御霊と現れて
  国土造るなり濁りよ去れかし

 濁るべきも一つなき天界を
  流るる水あやしまれける

 サソスセシ水澄みきらひわが渡る
  河を清めよ河守神』

 斯く歌ひ給へば、さしも濁流も次第々々にうすらぎつつ漸く澄みきりて、底砂利数さへ見ゆる迄に至れり。圓屋比古神は、こ神徳に驚き給ひて御歌うたひ給ふ。

『さすがにも瑞御霊よ泥河は
  生言霊に清まりにけり

 神々心にごりてこ
  水はかくまで穢れたるらむ

 国中比古神神言もこ流れ
  澄ませて渡り給ひたりけむ

 いざさらば向つ岸辺にうち渡り
  また一夜さ草枕せむ』

 茲に圓屋比古神を先頭に、十一柱神は駒轡を並べて、にごり河水瀬をやすやす向ふ岸に着き、各々馬に水飼ひ、草を喰せ終り、各も各もサソスセシ言霊水火を呼吸し、腹をふくらせ寝に就き給ひぬ。
(昭和八・一〇・二〇 旧九・二 於水明閣 谷前清子謹録)
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