文献名1霊界物語 第76巻 天祥地瑞 卯の巻
文献名2前付よみ(新仮名遣い)
文献名3英領北亜米利加創造説よみ(新仮名遣い)えいりょうきたあふりかそうぞうせ
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ
データ凡例
データ最終更新日----
あらすじ
主な人物
舞台
口述日1933(昭和8)年12月07日(旧10月20日)
口述場所水明閣
筆録者谷前清子
校正日
校正場所
初版発行日1934(昭和9)年3月23日
愛善世界社版
八幡書店版第13輯 461頁
修補版
校定版88頁
普及版
初版
ページ備考
OBC rm760012
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本文
世界創造
昔、ウィアンドット族が、高い高い空の上の世界に住んでゐました。
或る日、一人の黄教僧が人々に向つて、
『お頭の家の側に生えてゐる林檎の木を掘るがよい』
と言ひました。そこで、人々は一緒になつて、林檎の木の根を掘り始めました。酋長の娘がその時、林檎の木の側に寝転んでゐましたが、起き上りもしないで、皆のする事をぼんやり眺めてゐました。だんだん掘つてゐると、出し抜けに大きな音がしました。天上世界の床を掘り抜いたのでした。人々は、びつくりして飛びすざりましたが、酋長の娘だけは、やはり寝転んでゐましたので、林檎の木と一緒に下へ下へと落ちて行きました。
下界には、まだ陸といふものがなくて、一面に水が広がつてゐました。水の上には、白鳥の群が泳ぎ廻つてゐましたが、出し抜けに大きな音がしましたので、びつくりして上を見ると、一本の木と、一人の若い女が空から降つて来てゐました。
『見ろ、女が降つて来てゐる。水の中に落ちると可哀さうだ。みんな一緒に集まつておくれ。あの女が、わたし達の背の上に落ちるやうに』
と一羽の白鳥が言ひました。そこで、みんなが一緒に集まりましたので、酋長の娘は、無事にその背の上に落ちました。暫くすると一羽の白鳥が、
『この女をどうしたらいいんだらう。こんな重荷を背負つては、お互にとても長く泳いでゐるわけに行かないよ』
と言ひました。すると、他の白鳥が、
『それぢや、あの大きな亀公のとこに行つて、相談して見よう。亀公なら、きつとよい智慧を貸してくれるに違ひないから』
と言ひました。そこで、白鳥共は亀のところに行つて、
『女の子を一人背負ひ込んだが、どうも重くてたまらない。どうしたらいいんだらう』
と尋ねました。すると、亀は、すぐに使を走らせて、あらゆる動物を呼び集めて、相談会を開きました。
いろいろ話し合つてゐるうちに、一匹の動物が立ち上つて、
『白鳥さんたちの話によると、一本の木が、女の子と一緒に落ちて来て、水の底に沈んださうな。で、誰か水の底に潜りこんで、木の根から少し土をとつて来たらいいだらう』
といひました。それを聞くと、亀が、
『さうだ、少しでも土が手に入つたら、それで島をこしらへて、この女の住家にすることが出来るだらう。一体その木が沈んだところは何処なんだ』
と言ひました。そこで白鳥どもは、みんなを連れて、林檎の木の沈んだところに行きました。
『さあ、誰かうまく潜れるものはないか』
と亀が言ひました。
真先に川獺が沈んで行きました。そして、暫くたつて、水の面に浮び出ましたが、ほつと大きな息をついたかと思ふと、その儘死んでしまひました。こんな風にして、みんなが死んでしまひますので、あとでは、誰も水の中に潜らうといふものがゐなくなつてしまひました。
すると、一番おしまひに、年をとつた蟾蜍が、
『わたしが、やつて見ませう』
と言ひました。蟾蜍は、大変小さくて、大変醜かつたので、それを聞くと、みんな笑ひ出しました。しかし、亀だけは、まじめな顔をして、
『ぢや、どうかやつて見ておくれ』
と言ひました。
蟾蜍は、のろのろと水の中に沈んで行きましたが、なかなか浮んで来ませんでした。みんなは、待つて待つて、たうとう待ちきれなくなつて、
『あいつは、もう帰つて来ないだらう』
と、話し合つてゐました。すると、やがて、水の上にぶくぶくと小さな泡が立ち始めました。と思ふと、蟾蜍の姿が、ぬつと水の上に現れました。そして、ぱくりと口を開いて、亀の甲の上に少しばかりの土を吐き出しました。それを見ると、小さい亀が、土を掴んで、大きな亀の甲にすりつけ始めました。と土は、見る見る大きくなつて、一つの島になりました。そこで、白鳥どもは、背から女の子を下して、島の上に載せました。島はだんだんと大きくなつて、今日のやうな大地になりました。
亀と蟾蜍との働きで、大地が出来上りましたが、まだ日の光がありませんので、世界中が、真暗でした。そこで、亀は、あらゆる動物を集めて、相談を開くことにしました。いろいろ話し合つてゐるうちに、小さい亀が立ち上つて、
『若し、わたしが空に昇ることが出来たら、いくらか日の光を集めて、それを球にして持つて帰るんだがな』
と言ひました。それを聞くと、大きな亀が、
『さうだ、さうだ、一つ空に昇つて見るがよい。お前には、大した力が備はつてゐるんだから』
と言ひました。
小さい亀は、すぐに呪文を唱へました。すると、急に烈しい嵐が吹き起つて、雷光を含んだ雲が大きな音を立てて、みんなの集まつてゐるところの方に転がつて来ました。それを見ると小さい亀は、素早く雲の中に飛び込んで、雲と一緒に上へ上へと昇つてゆきました。
暫くすると天上世界に着きましたので、雷光を集めて、二つの球をこしらへて、空からぶら下げました。世界中が急に明るくなりました。二つの球といふのは、太陽と月でした。
又、光りの起原について、左の様な説もあります。
昔、世界には、光といふものがなくて、何処もかしこも真暗でした。人々は、毎日々々闇の中にゐるのが嫌で嫌でたまらなくなりました。
その頃、一本の大きな枯木が野原に突つ立つてゐました。虎斑鼠は、その木を見ると、
『これに火をつけたら、世界中が明るくなるに違ひない』
と思ひました。そこで、枯木の根に火をつけて、灰がたまると、棒の先でそれを掻きのけかきのけしてゐました。そのうちに、枯木は、たうとう大地に倒れて、世界中が明るくなりました。人々は、それを見て、大変に喜びました。
ところが、熊やその友達は、年中暗闇の中にゐるのが好きでしたので、木が倒れるのを見ると一生懸命に、その上に土を振りかけて、
『暗だ暗だ暗だ』
と唱へました。すると、虎斑鼠は大変に怒つて、土を払ひのけて、火を掻き起して、
『光だ光だ光だ』
と叫びました。かうして、熊と虎斑鼠とは、お互に土をかけたり、火を掻き起したり、
『暗だ暗だ暗だ』
と叫んだり、
『光だ光だ光だ』
と叫んだりしてゐましたが、おしまひには、二人ともすつかり疲れてしまひましたので、両方から譲り合つて、一日の半分は明るくて、残りの半分は暗いやうにすることにきめました。しかし、熊は、やはり明るいのが厭でたまりませんので、
『こんなことになつたのも、お前のせゐだ』
といつて、虎斑鼠を追つ駈けました。虎斑鼠は、びつくりして、穴の中に逃げ込みましたが、逃げ込む時に、熊のために背中を掻きむしられました。だから、今日でも虎斑鼠の背には、斑がはいつてゐます。