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文献名1霊界物語 第76巻 天祥地瑞 卯
文献名2前付よみ(新仮名遣い)
文献名3阿弗利加神話よみ(新仮名遣い)あふりかしんわ
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ
主な人物 舞台 口述日1933(昭和8)年12月07日(旧10月20日) 口述場所水明閣 筆録者林弥生 校正日 校正場所 初版発行日1934(昭和9)年3月23日 愛善世界社版 八幡書店版第13輯 466頁 修補版 校定版90頁 普及版 初版 ページ備考校定版・八幡版ともに目次「亜」、本文「阿」。
OBC rm760013
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本文    怠惰カメレオン

 世界初めに、ウンクルンクルといふ神様が、一匹カメレオンを呼び出して、
『御苦労だが、大地に降つて行つて、人間どもに、「お前たちはいつまでも死ななくてよい」と、さういつておくれ』
と言ひました。
 カメレオンはすぐに天界から大地をさして出かけてゆきました。しかしちつとも道を急がないで、木実を摘んで食べたり、樹枝に登つて虫を探したりしてゐました。そ中にお腹が一ぱいになつて、睡気がさして来たで、日なたぼつこをしながら、こくりこくりと眠り出しました。
 そうちにウンクルンクル気が変つて来ました。ウンクルンクルは一匹蜥蜴を呼び出して、
『御苦労だが、大地に降りて行つて、人間どもに「お前たちは何時かは死ななくてはならぬ」と、さういつておくれ』
と言ひました。
 蜥蜴はすぐに天界から出かけました。そして、ひたすら路を急ぎましたで、途中でカメレオンを追ひ越して、真先に大地に着きました。そして人間たちに対つて、
『お前たちは、何時かは死ななくてはならぬ、とウンクルンクルさまがさうおつしやつたよ』
といつて、すぐさま天界をさして引き返しました。
 それから暫くたつて、カメレオンがやつと大地に着きました。そして人間たちに対つて、
『お前たちは、何時までも死ななくてよいと、ウンクルンクルさまが、さうおつしやつたよ』
と伝へました。人間たちはそれを聞くと、気色ばんで、
『わたし達は、たつた今蜥蜴言葉を聞いたところだよ。わたし達はいつか死ななくてはならぬと、蜥蜴がさういつたよ。お前いふことなんか当にならぬ』
と叫びました。
 かうして人間は死ななくてはならぬやうになりました。(ズル族)

註同一神話が、ベチユアナ族、バロンガ族、バスト族等間に語られてゐます。今日でもバロンガ族は、カメレオン怠惰が死を齎したとして、之を憎んでゐます。子供などは、カメレオンを見つけると、そ口に煙草をつめ込んで、苦しさに青くなり黒くなりするを眺めて喜んでゐます。

   兎粗忽

 あるとき天界にゐる月が、一匹兎を呼び出して、
『お前、これから大地に降つて行つて、人間たちに「お月様が死んでまた生き返るやうに人間も死んでまた生き返るやうにしてやる」と伝へておくれ』
といひつけました。
 兎はすぐに天界から大地へ降つて行きました。そして人間たちに対つて、
『お月さまが死んで再び生き返ることがないやうに、お前たちも一旦死んだら、生きかへることは出来ないよ』
といひました。兎は月がいつた言葉を忘れて、まるで反対ことを人間に伝へたでした。
 しかし兎は、大切な役目を無事に済ましたと思つて、得々として天界に帰つて来ました。月は兎姿を見ると、すぐに、
『どうだね、わしいつた通りに人間に伝へて来たかね』
と尋ねました。
『ええ、全くお言葉通りに伝へてまゐりました』
と兎が答へました。
『では、お前いつた通りを、ここで繰り返して見るがいい』
と月がいひました。
『はい、お月さまが死んで再び生き返ることがないやうに、お前たちも一旦死んだら生き返ることは出来ないと、かう申し伝へました』
と兎が答へました。これを聞くと月は大変怒つて、いきなり棒を取り上げて、兎を目がけて投げつけました。棒は兎唇に当つて、そこを傷つけました。兎はあまり痛さに、夢中になつて月に飛びかかるなり、そ顔をさんざんひつ掻きました。
 かうして兎言伝間違から、人間は死ななくてはならぬやうになり、かうして兎唇は今日まで裂けて居り、又かうして月顔は今でも傷だらけであります。(ホッテントット族)

註これに類似した神話が、東部亜弗利加マサイ族間にも存してゐます。ナイテル・コプといふ神がレ・エヨといふ男に「子供が死んだら空に投げ上げて、月やうに死んでまた生き返れ」といへと教へましたが、死んだが自分子でなかつたで、神に教へられた言葉に反対を唱へました。かうして人間は死ぬやうになつたといふであります。

   月は何故虧けるか

 ある時太陽が月に対して大変腹を立てました。太陽は、
『憎い奴、ひどい目に遭せてやるぞ』
といつて、小刀をもつて月ところに行きました。そして月を捕へて、体から少しばかり肉を切り落しました。
 太陽は毎日、月ところにやつて来ては、小刀で少しづつ肉をそぎとります。月体はだんだんと小さくなつて行きました。月は、
『これはどうもこまつたことになつた。毎日肉を切りとられては、今に死んでしまふだらう。自分が死んだら、子供を養つてやるもがなくなる。どうにかして生きてゐたいもだ』
と考へ悩みました。で、ある日太陽に対つて、
『どうか、今しばらく肉を切り落すことを止しておくれ』
と頼みました。
『なぜかね』
と太陽が尋ねました。
『だつて、わし体はもうこんなに小さくなつたらう。こ上肉を切りとられると、死んでしまふよ』
と月が悲しさうに言ひました。
『死んだつて、おれはかまはないよ』
と太陽がいひました。
『わしが死ぬと、子供を養うてくれるもがゐなくなる。それでは余り可哀さうだから、肉がついて体が肥るまで待つておくれ』
と月が熱心に頼みました。
『なるほど、それは可哀さうだ。それなら、お前が肥るまで待つてやらう。だが、肉が沢山ついたら、また切り落すんだよ』
 太陽はかういつて帰つてゆきました。
 かうして太陽は月体が大きくなるを待つてはそ肉を削ぎとるでした。だから月はあんなに大きくなつたり細くなつたりするです。

   太陽出現

 昔あるところに一人男が住んでゐました。そ男が腕を挙げると、脇下から光がさしてあたりが眩しい程明るくなるでした。人々はそれを大変不思議に思つてゐました。
 と、ある日一人年をとつた女が、他人たちに対つて、
『本当にあ男は不思議な男だね。体から光が出るなんて、今まで聞いたこともないよ。あ男を空に投げようではないか。さうしたらどこもかしこも明るくなつて、米出来ばえもきつとよくなるに違ひないから』
といひました。
 人々は、すぐに年をとつた女話に同意しました。で、男が眠つてゐるときを見すまして、足音をしばせてそ側に歩みよりました。そしていきなり男を抱き上げて、みんな力を合せて、大空目がけて投げ出しました。
 男は、「あつ」と叫んで目を覚ましましたが、もう遅い。自分体は空をきつて、どんどん上へ飛んでゆくでした。そしてたうとう天上界に着いてしまひました。仕方がないで、男はそまま天上界に住むやうになりました。
 と、だんだん時がたつにつれ、男形が変つて来て、おしまひには真円くなりました。それが太陽であります。
 かうして人間住む世界は、太陽お蔭でいつも明るいやうになりました。

   死起原

 あるとき、月が人間たちに対つて、
『わしを見るがいい。わしはときどき体が段々と痩せ衰へて行つて死にさうになるが、やがてまた肥つて来るだらう。そ通りにお前たち人間も、何時までも生きてゐるぢや。死んだやうに見えるは眠つてゐるぢや。決して本当に命がなくなつたではない。人間には死ぬといふことは無いもぢや』
といつた。人間たちは之を聞くと、月言葉を信じて、心から喜んだ。が、そこに居合せた一匹兎がはたから口を出して、
『お月さま、あなた仰有ることは間違つてゐます』
といつた。月は驚いて、
『どうしてわし言ふことが間違つてゐるかね』
と尋ねた。
『だつて、わたしお母さんは本当に死んでしまつたんですも
と兎が答へた。月は頭をふつて、
『そんなことはない。死んでゐるではない。ただ眠つてゐるぢや。今に目が覚めるよ』
といひました。
『いいえ、本当に死んでしまつたんですよ。眠つてゐるではありませんよ』
と、兎はどこまでもいひ張つた。月はたうとう怒り出して、
『わしがこれほど本当ことをいつて聞かせてゐるに、お前はそれを信じないんだな。よし、そんなに死にたけりや、今後はみんな死ぬやうにしてやらう』
といつて、兎口をひどく擲りつけました。それで兎は今日まで唇が欠けてゐます。また人間やそ生物もみんな死なねばならぬやうになりました。
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