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文献名1霊界物語 第76巻 天祥地瑞 卯
文献名2前付よみ(新仮名遣い)
文献名3パレスチン創造説よみ(新仮名遣い)ぱれすちんそうぞうせつ
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ
主な人物 舞台 口述日1933(昭和8)年12月08日(旧10月21日) 口述場所水明閣 筆録者谷前清子 校正日 校正場所 初版発行日1934(昭和9)年3月23日 愛善世界社版 八幡書店版第13輯 475頁 修補版 校定版106頁 普及版 初版 ページ備考
OBC rm760015
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本文  昔神が世界さまざま地方から、さまざま土を採つて、最初人であるアダムを造つた。神はアダムを造り上げると、大地上に横へた。アダムは人形やうに動かないで四十日が間地面に倒れたままにしてゐた。神は天使たちを呼びよせて、
『わしがこ男を活きて動くやうにするから、動き出したら、みんな大事に崇め尊ばなくてはならぬ』
と言つた。そしてアダム孔から息を吹き込むと、忽ち生命が体中に入つて活きて動くやうになつた。それを見ると、天使たちはみんなこれを崇め尊んだが、ただイブリスといふもだけは、傲然と構へてゐた。神はそれを見て、
『イブリス、そなたはなぜアダムを崇め尊ばないぢや』
と責めた。
『たかが土から出来たもに、頭を下げるは嫌ひです』
とイブリスが答へた。これを聞くと、神は非常に怒つて、
『わし言ひつけに背くもは、ここに住ませて置くわけには行かぬ』
と言つて、イブリスを楽園から追ひ出してしまつた。
 イブリスは、ひどくアダムを恨んで、
『おれが楽園から追ひ出されたは、全くアダムせゐだ。こままにしては置かぬぞ』
と言つて、魔王サタンとなつて、アダム子孫である人間に執念深く仇をするやうになつた。
 神はアダムを男女両性にこしらへたであつた。で、体半分は男で、他半分は女であつた。暫く間さうしてゐるうちに、やがて二つに分れて、立派な男と立派な女とになつた。男はやはりアダムと呼ばれ、女はリリスまたエル・カリネーと呼ばれた。リリスは猶太人が呼ぶ名であり、エル・カリネーは亜拉比亜人呼ぶ名であつた。
 二人は神言ひつけに従つて夫婦となつた。しかし仲がよくなかつた。アダムが、
『お前は女だから、わし言ふことに従はなくてはならぬ』
と言ふと、エル・カリネーはつんとして、
『いやですよ。そんなことは出来ませんよ』
と言つた。
『なぜだね』
『だつて、あなたもわたしも同じ土から出来たでせう。だから、あなたはわたしに命令する権利なんかありませんわ』
 エル・カリネーはかう言つて、どうしてもアダム言ひつけに従はないで、神が怒つて、楽園から追ひ出した。
 エル・カリネーは、自分より先に楽園から追ひ出されたイブリス許に訪ねて行つて、そ妻となつた。そして二人間に沢山悪魔が生れて、永久に人間敵となつた。
 エル・カリネーを追ひけた神は、アダムために新たに一人女をこしらへることにした。しかしアダムと同じやうに土で造つては、また夫婦仲が睦まじく行かぬと考へたで、今度はアダムを眠らせて、そひまにアダム肋骨を引きぬいて、それで女をこしらへた。こ女が即ちエバである。
 二人は夫婦となつた。エバはよくアダム言ふことを聞いたで、二人は楽園中で楽しい月日を送ることが出来た。それを見たイブリスは、
『よし、おれが邪魔をしてやるぞ』
と言つて、そつと楽園に忍び込んだ。
『うかうかしてゐて神に見つかると大事だ。どこかに身を隠すところはないか知ら』
 イブリスはかう思つて、あたりを見廻すと、一匹蛇が目についた。
『うん、いい隠家が見つかつた』
 イブリスはかう言つて、忽ち姿を小さくして、蛇牙にあいてゐる空洞に入り込んだ。そして蛇口を借りて、うまくエバに取り入つて、
『エバさん、楽園にある小麦を食べてごらん』
と勧めた。エバは驚いて、
『とんでもない。小麦は禁制食物です。神様から食べてはならぬと堅く申しつけられてゐるです』
と言つた。
『そんなことを言はないで、まあ食べてごらん。素敵においしいんですよ』
と、蛇がしつこく勧めた。エバもつひにそ気になつて食べて見ると、非常にいい味がするでたうとう夫アダムを説き伏せて之を食はせた。
 神はすぐにそれを知つた。そしてアダムとエバとイブリスと蛇とを楽園から追ひ出した。しかしアダムは楽園を出るときに、神目を盗んで、一つ鉄床と二本火箸と二つ槌と一本針とを持ち出した。
 アダムは「後悔門」から追ひ出され、エバは「哀憐門」から追ひ出され、イブリスは「呪ひ門」から追ひ出され、蛇は「災ひ門」から追ひ出された。そしてアダムはセレンディブ(今日錫蘭)に降り、エバはジダーに降り、イブリスはアカバーに降り、蛇は波斯イスファハンに降つた。
 かうして、アダムとエバとは、永い間はなればなれになつて暮してゐたが、二百年たつてからメツカ近くに聳えてゐる「認め山」アラファット山で、はしなくも再会することになつた。アダムは楽園で犯した罪を心から悔いてゐたで、天使ガブリエルが可哀さうだと思つて、彼をアラファット山に導いて、エバを見出さしめたであつた。
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