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文献名1霊界物語 第76巻 天祥地瑞 卯
文献名2前付よみ(新仮名遣い)
文献名3ミクロネシヤ創造説よみ(新仮名遣い)みくろねしやそうぞうせつ
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ
主な人物 舞台 口述日 口述場所 筆録者 校正日 校正場所 初版発行日1934(昭和9)年3月23日 愛善世界社版 八幡書店版第13輯 479頁 修補版 校定版112頁 普及版 初版 ページ備考
OBC rm760016
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本文の文字数2994
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本文  太初には、天も地もありませんでした。有るもは、果しなく広がつた海と、アレオブ・エナブといふ年老いた蜘蛛とだけでした。蜘蛛は漫々たる大海原にふわふわと漂うてゐました。
 ある日蜘蛛は、非常に大きな貝を見つけました。蜘蛛はそれを取り上げて、
『どこにか口がありさうなもだな。あつたら中に這ひ込んでやるが』
と、四方八方から眺めて見ましたが、どこにも口が開いてゐませんでした。彼は貝を叩いて見ました。すると空洞やうな響を立てましたで、
『とにかく、中には何もはいつてゐないな』
と独言をいひました。
 蜘蛛は、どうにかして口を開けさせたいと思つて、頻りに呪文を唱へてゐますと、やつと少し蓋が開きました。蜘蛛はすかさず貝中に潜り込みましたが、蓋が少ししか開いてゐないで、立ち上ることも出来ませんでした。
 蜘蛛は貝中を根気よく這ひまはつてゐるうちに、一匹蝸牛を見つけ出しました。彼は蝸牛に元気をつけてやるために、それを腋下に入れて三日が間眠りつづけました。それからまた、あちらこちらと探し廻つてゐると、更に大きな蝸牛を見つけました。蜘蛛は又それを腋下に入れて、三日が間眠つてゐました。目が覚めると、小さい方蝸牛に対つて、
『どうも貝天井が低くて困る。せめて坐れるくらゐ天井をおし上げてもらひたいが、お前にそれが出来るかね』
と尋ねました。小さい蝸牛は、
『出来ますとも』
と答へて、少し天井を押し上げました。蜘蛛はお礼を言つて、そ蝸牛を貝西方に据ゑつけて、それを月に変へました。
 月が現れたで、貝中が少し明るくなりました。蜘蛛は月光で一匹大きな蠐螬を見つけました。彼は蠐螬に対つて、
『お前は、今よりも一層高く天井を押し上げることが出来るかね』
と尋ねますと、虫は、
『出来ますとも』
と答へて、天井を押し上げ始めました。天井は次第に高くなりましたが、あまり骨がをれるで、蠐螬体から汗がどんどん流れ出しました。蜘蛛はそ汗を集めて海をこしらへました。それと同時に押し上げられた貝上蓋が天空となり、下蓋が大地となりました。蜘蛛は大きな方蝸牛を貝方に据ゑつけて、太陽に変へました。
 天地、日月、海などはかうして出来たでした。(ナウリ島)
 また一説に、世界始めには、海だけでした。海南に暗礁があり、海北に沼がありました。ロアといふ神が、海に対つて、
『汝暗礁を見よ』
と言ひました。すると忽ち暗礁が海面に浮び出て陸となりました。ロアが更に、
『汝砂を見よ』
と言ひますと、陸はすぐに砂に覆はれました。
『汝樹を見よ』
 ロアがかう言ひますと、忽ち陸地にいろんな樹が生えました。ロアは更に、
『汝鳥を見よ』
と叫びますと、忽ち多く鳥が現れました。そしてそ海鴎が舞ひ上つて、大地上に大空を拡げました。(マーシヤル群島)
 また一説に、太初一本大きな樹が、逆しまに生えてゐました。そ根は大空中に広がつてゐるし、そ枝は海原に広がつてゐました。
 こ世界樹うちに、一人女が生れ出ました。と、エラファズといふ天空神が一握砂を女に与へて、
『これを撒きちらすがいい』
と言ひました。女が海面に砂を撒きちらしますと、それが忽ち変じて大地となりました。

註他神話によると、天がまだ大地に接し、大地がまだ海と分れなかつた頃、タブリエリックといふ神が鳥に変じて、こ混沌たる世界上を翔り、それからリギといふ蝶が大地と海と上を飛んで、こ二つを分ち、更に他神々が天を大地と分つて、上に押しあげたといふであります。

   日月神話

 大昔ナ・レアウが、一人男と一人女とを造つたあとで、彼等に対つて、
『わしは、お前たちをこ大地に留めておくから、よく大地番をするがいい。が、お前たちは、決して子供を生んではいけないよ。わしは人間が殖えるを好まないぢや。もしわし命令に背いたら、ひどい罰を与へるから、さう思ふがいい』
と言つて、天界に去りました。
 二人人間──それはデ・バボウといふ男と、デ・アイといふ女でした──は、しかし神さま命令に背いて、三人子を産みました。するとナ・レアウ召使である一匹鰻が、早くもそれを見つけて、ナ・レアウに、
『神さま、人間どもは、あなたさま御命令に背いて、三人までも子を産んだでございます』
と告げ知らせました。これを聞くと、ナ・レアウは大変怒つて、大きな棒を手にして、二人男女を留めて置いた島に降つて来ました。二人は神さま厳かな姿を見ると、そ言葉に背いた恐ろしさ余り、ペタリと大地に坐り込んで、
『どうかお赦し下さい。お言葉を破つた罪は幾重にもお詫びします、でも生れた子供は、わたくしたち生活に大層役に立つでございます。太陽は光を与へてくれます。そお蔭でわたくしたちはもを見ることが出来ます。太陽が沈むと、月がそ代りに現れて、光を与へます。それから海は、わたくしたちに沢山魚を与へて、食物に不自由なくしてくれるでございます』
と言ひました。ナ・レアウは、二人言葉を聞くと、心中で、
『なるほど、二人言ふことは本当だ。赦してやることにしよう』
と言つて、そまま天界に帰つて行きました。
 かうして太陽や月や海が、世界にあるやうになつたでした。(ギルバート群島)

註一ペリュー群島にも、簡単な日月神話があります。それによりますと、大昔二人神が手斧で大きな石を削つて、太陽と月とをこしらへて、天空に投げ上げたといふであります。
註二デ・バボウ及びデ・アイといふ二人男女が、太陽と月と海とを産んだといふ一事は、わが国古史神話に伊弉諾、伊弉冊二神が、天照大神と月読命と素盞嗚命とをお産みになつたとあることを思ひ出させます。

   人類起原

 ミクロネシアには、余り念入つた人類創生神話が見出されません。みな簡単な素朴なもばかりです。カロライン群島神話によると、リゴブンドといふ神が、空から大地に降つて来て、三人子を生み、そしてそ三人が人類祖先になつたと言ふであります。また同群島に存する他神話に従へば、ルクといふ神が大地を造つて、これに樹を栽ゑつけたあとで、自分リゴアププをそこに降しました。リゴアププは大地に降ると、大変喉が渇きましたで、樹洞にたまつてゐる水を飲みました。水中に小さい動物が入つてゐましたが、か女はそれに気がつかないで、水と一しよに嚥み下しました。すると間もなく身重になつて、一人子を産みました。女子が大きくなつて、一人娘が出来、そ娘がまた一人子を産みました。男子が大きくなると、そ脇腹一本から男が出来、そ男がリゴアププと夫婦となつて、こ二人が人間祖先になつたと言ふであります。
 更にモルトロク島神話によりますと、リゴアププが、樹洞にたまつてゐる水を飲んで、一人女を産み、そ腕から一人男が生れ、双眼から男と女とが生れて、それ等が人類先祖となつたと言はれてゐます。
 またギルバート群島神話によると、ナレウアといふ神が、一本樹に火をつけますと、そ火花と灰とから、人間どもが生れ出ました。ナレウアはそれ等人間に言ひつけて、世界諸地方に分れ住むやうにさせました。それが人類祖先であると言つてゐます。
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