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文献名1霊界物語 第76巻 天祥地瑞 卯
文献名2第1篇 春風駘蕩よみ(新仮名遣い)しゅんぷうたいとう
文献名3第2章 魔渓流〔1919〕よみ(新仮名遣い)けいりゅう
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ高地秀宮へ帰り道、鋭敏鳴出神は行進歌を歌いながら進んで行った。すると、行く手に断崖渓流が現れた。天津高宮へ詣でときにはこような渓流はなかったで、一同は曲津神にたくらみであると悟った。そして、心身を清めて言霊で渓流を退けようと、まず高野比女が言霊歌を詠み始めた。鋭敏鳴出神は、言霊限りを尽くして『ウーウーウー』と唸り出れば、渓流水はたちまち雲となって天に上り出し、風になびいて東空に立ち去ってしまった。一同は鋭敏鳴出言霊をたたえる歌を歌い、引き続き高地秀宮へ進んで行った。
主な人物 舞台 口述日1933(昭和8)年12月05日(旧10月18日) 口述場所水明閣 筆録者谷前清子 校正日 校正場所 初版発行日1934(昭和9)年3月23日 愛善世界社版 八幡書店版第13輯 498頁 修補版 校定版161頁 普及版 初版 ページ備考
OBC rm7602
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本文  ここに八柱御樋代神は遥々と天津高宮に打ち集ひ、祈願をこらすべく上らせ給ひ、主大神神言もちて、高地秀神司として鋭敏鳴出神、天津女雄二柱を授けられ、いそいそとして白馬に跨り、蹄音も勇ましく、高地秀宮をさして帰らせ給ひつつ、鋭敏鳴出神は行進歌をうたはせ給ふ。
『主大神神言もて
 八柱神を守りつつ
 紫微天界真秀良場に
 そそり立ちたる高地秀
 神御山麓なる
 高地秀宮に仕へむと
 神心に任せつつ
 進み行くこそ楽しけれ
 御空にかかる月光も
 天津陽光も清らかに
 雲霧晴れて天地は
 常世春を歌ふなり
 百木草は芳ばしき
 香りを放ち種々
 艶を競へる花は咲き
 げに楽もしき国原や
 小鳥はうたひ蝶は舞ふ
 紫微天界真秀良場に
 神神言を蒙ぶりて
 百神等と諸共に
 進まむ道にさやるべき
 醜曲津見もあらざらむ
 ああ惟神々々
 万里山坂り越えて
 吾は堂々進むなり
 わが乗る駒は貴
 吹き来る風を鬣に
 右と左に分けながら
 嘶き強く駆け出だす
 ああ惟神々々
 今日旅路いさましさ』
 斯く歌ひつつ進み給ふや、行手に横はる川底深き溪流、如何なる神馬も越ゆるあたはず。西岸断崖絶壁を打ち眺めながら、各自駒背を下り岸辺に立ちて休らひ乍ら、こ溪川を如何にして越えむかと語り合ひ給ひぬ。八柱比女神天津高宮に詣で給ひし行手道には、かかる深き溪川あらざりしに、帰り路に当りて同じ道筋に、かかる危険溪流横はるは、大曲津見神業をさまたげむとして奸計ならむ。心を清め身を清め、静に生言霊を宣り上げて、こ溪川を遠き彼方海に退けやらむと、先づ高野比女神は生言霊御歌を詠ませ給ふ。

『主神言畏み吾伊行く
  道にさやらむ神はあるべき

 明らけき紫微天界国中に
  さやる曲津はかならず亡びむ

 隠れ忍びいたづらを為す醜神
  御魂あらはさむわが言霊に

 さやります神は大蛇か醜神か
  姿あらはせわが目まへに

 滝津瀬吠ゆるが如く響くなる
  こ溪川は大蛇化身よ

 長々と果てしも知らぬ溪川
  流れはいたく濁らへるかな

 果てしなきこ天界中にして
  小さき曲すさびおそれむや

 曲津見猛び強くとも
  いかで恐れむ神なるわれは

 八十曲津見如何にすさぶとも猛るとも
  生言霊水火にはかなはじ

 吾進む道にさやらむもあらば
  真言剣もちてはふらむ

 いすくはし神依さし御樋代と
  まけられし吾道を開けよ

 木も草も神教になびく世を
  など曲神道にさやれる

 敷島大和心太刀もちて
  斬りてはふらむ八十曲津見を

 千早振る神依さし吾なれば
  安く渡らむ溪川うづめて

 西宮居に詣でで帰る道しばに
  さやりけるかな曲津神は

 久方高地秀宮に仕ふ
  司出でましよ恐れ畏め

 御樋代と神依さし八柱を
  未だ知らずや曲津見汝は

 いみじくも流るる深き溪川
  水瀬を止めて吾渡らばや

 吾駒はたてがみふるひ嘶きぬ
  これ溪川やすく渡らむと

 鋭敏鳴出出でまし知らざるか
  八十曲津見おろかさ

 黒雲中にかくるる曲津見
  今にほろびむ時は来にける

 主造り給ひし天界よ
  曲津棲まむ道なし

 月も日も御空に輝き給ひつつ
  吾等が行手を守らせ給へ

 奴婆玉闇を晴らして厳御霊
  瑞御霊はかがやきたまへり

 伏して見つ仰ぎては見つ天地
  くしき姿にわれはかしこむ

 むらむらと溪川深く湧き立てる
  雲にひそめる八十曲津見よ

 湯気如烟如く立ち昇る
  雲姿あやしきろかも

 鋭敏鳴出功に曲津見
  さまたげ払ひて吾は進まむ

 選まれて御樋代神となりし吾は
  醜雲霧いかでおそれむ

 穢れたる水火集りて曲津見と
  なる魂をあはれとおもふ

 せせらぎ音高々と聞ゆなり
  溪ながれは巌を噛みて

 手を打ちて天津真言神言を
  曲津見為に宣り上げて見む

 ねもごろに説き諭せども曲津見
  心はますますくもるみなる

 平けくいと安らけき天国
  道にさやれる曲津見あはれ

 眼に見ゆるもことごとは主
  水火より出でしみたまもなる

 笑み栄え喜び勇みて暮すべき
  紫微天界にさやる曲津見よ

 遠き近き差別も知らに守ります
  神光りを知らずや曲津見

 鬼大蛇醜曲津見もことごとく
  神水火より生れたるはや

 村肝心洗ひて道を行く
  御樋代神を通せ曲津見

 そば立てるこ溪川高岸に
  行きなづみつつ神言宣るも

 伴ひし御樋代神はことごとく
  言霊きよき神柱神よ

 野も山も紫雲ただよへる
  紫微天界よ退け曲津見

 ほと紫雲立ち昇る
  こ天界は神ます神苑よ

 もろもろ曲津見ここに集りて
  深溪川と横たはるかも

 よしやよし此川岸は高くとも
  生言霊にうづめて行かむ

 治まりて日々に栄ゆる天界を
  乱さむとする曲津見あはれ』

 こ御歌に鋭敏鳴出神は、こ溪川こそ八十曲津見化身なりてふことを早くも悟らせ給ひ、生言霊限りをつくし、『ウーウーウー』と唸り出で給へば、如何はしけむ、深溪川溪水は真綿をちぎりたる如き雲、次ぎ次ぎに湧き出でて天に冲し、風になびきて東空さして幾百千ともなき雲片は、風まにまに立ち去りにける。
 八十曲津見深き溪流は、次第々々にふくれ上りて、またたく間に平地となり変りたれば、百神等は鋭敏鳴出功績に舌を巻き、感歎余り御歌詠ませ給ふ。
 梅咲比女御歌。

『鋭敏鳴出神言功績に
  曲溪川消え失せにける

 曲津見は雲霧となり川底ゆ
  立ち昇りつつ逃げ去りしはや

 鋭敏鳴出御水火に曲津見は
  雲を霞と逃げ去りにける

 雲となり霞となりて曲津見は
  ほろび行きけむ東空に

 鋭敏鳴出生れます高地秀
  宮居は今日よりやすけかるらむ

 曲津見雄猛び如何に強くとも
  何かおそれむ言霊水火に

 紫微宮居に神言宣りて帰るさ
  道にさやりし曲津見あはれ

 曲津見は生言霊に照らされて
  雲となりつつ逃げうせにける』

 香具比女神は御歌詠ませ給ふ。

『曲津見奸計深き溪川も
  神御稜威に消え失せにけり

 神々は栄えをよろこび曲津見は
  亡びを唯一楽しみとなすも

 深溪川包みし雲も滝津瀬も
  ウ言霊にほろび失せける

 鋭敏鳴出神言功績に
  烟となれる曲津見あはれ

 天地一度に開きし心地せり
  曲津奸計幕はやぶれて』

 寿々子比女神は御歌詠ませ給ふ。

『御樋代神と仕へし始めより
  かかるためしは見ざりけるかも

 曲津見は深溪川と身を変じ
  わが行く道をさへぎりしはや

 穢れなきこ天界にも斯
  曲業ありとは知らざりにけり

 束間も心許せぬ天界と
  つくづく思へり魔溪川を見て

 今日よりは瑞御霊を恨むまじ
  いづれも神御心なりせば

 我岐美つれなき心を恨みてし
  妾は今更はづかしくなりぬ

 よしやよしこまま天界に老ふるとも
  瑞御霊は永久に恨まじ

 日に夜に心くるしめ給ひつつ
  岐美は万里旅に立たせり

 行く先きに八十曲津見災を
  切り抜け進ます岐美は畏き』

 朝香比女神は御歌詠ませ給ふ。

『永久に仕へ奉ると思ひてし
  岐美は万里旅にいませり

 幾万里山野を渉り西宮に
  詣でて心あらたまりしはや

 曲津見深き奸計にかからむと
  せし今日日にたすけられにき

 鋭敏鳴出いまさずば
  こ溪川は消えざらましを

 曲津見大蛇姿なれや
  道にさやりし深溪川は

 何事も神御心と悟りつつ
  をりをりくもる心はづかし

 駒止めて息を休めつ曲津見
  化身溪川を望みけるはや

 山となり溪川となり巌となり
  八十曲津見は真道にさやるも

 こ上は言霊みがき禊して
  神大道をひたに進まむ

 我岐美を恋ひつ恨みつあこがれつ
  経にし月日は雲となりけり

 吾思ひ雲と湧き立ち霧と燃えて
  天津月日をつつまひてゐし

 主清き光にあてられて
  われは心雲をはらひぬ

 ねたみたる心雲も晴れ行きて
  胸にかがやく月日御光

 大空月日をうつして吾胸は
  鏡ごとくかがよひにけり

 草も木も天津神国をゑらぐ世に
  如何でなげかむ小さき事に

 御樋代神にまけられ村肝
  心にくもりありしを悔ゆるも

 我岐美吾等を見捨てて出でましし
  まこと心を今さとりけり

 吾心曇らひあれば水火と水火
  交はさむ術もなかりけらしな

 我岐美を恨むるよりも吾心
  くもりしを先づ恨むべかりし』

 宇都子比女神は御歌詠ませ給ふ。

『非時香具実に生れながら
  わが魂線はくもりてありき

 くもりたる心抱きて御樋代と
  おごりし事を今更悔ゆるも

 山に野に花は匂へど百鳥は
  うたへど春心地せざりき

 掛巻も綾に尊き高地秀
  宮居を穢せしわれなりにけり

 宇都比女御名さへ恥しも
  くもり穢れし神魂いだきて

 くもりたる心魂を洗はむと
  こ溪川は生り出でにけむ

 村肝心に曲津見住まひつつ
  吾行く道をさへぎりにけむ

 曲神仇とし思はず吾魂
  くもりゆ生れし深溪川よ

 鋭敏鳴出生言霊に驚きて
  ふるひをき曲は出でけり

 鋭敏鳴出宣らせる言霊に
  身も魂線もをきにけり

 今日よりは元つ心に立ち帰り
  禊神事につかへまつらむ』

 狭別比女神は御歌詠ませ給ふ。

『幾年か高地秀宮居に仕へつつ
  なほわが魂線くもり去らずも

 わが岐美を恋ふる心重なりて
  神魂も水火もくもらひしはや

 村肝心を清め今日よりは
  まごころもちて神に仕へむ

 何事も神依さし神業と
  思へば岐美を恨まむすべなし

 道立姿尊さを
  仰ぎて一入岐美をおもふも

 久方天之道立神柱
  いとおごそかに笑ませ給ひぬ

 道立神にも増して我岐美
  気高さ思へば堪へやらぬかも

 堪へがたき心おさへて年月を
  仕ふる身こそ苦しかりける

 悔みてもかへらぬ事とは知りながら
  をりをり悲しくなりにけらしな

 山川は清くさやけく百鳥
  声は澄めどもさみしかりける

 さみしてふ心曇り晴れにけり
  今日生日は胸さえにつつ』

 花子比女神は御歌詠ませ給ふ。

『野に山に百花千花匂へども
  われ美しと思はざりけり

 吾心ねぢり曲りてひたすらに
  岐美み恨みてしはや

 わが岐美は万里旅枕
  天界造るとなやみたまはむ

 安らかに高地秀宮居に仕へつつ
  なやみ岐美をうらみけるはや

 岐美こそは顕津男神国土を生み
  国魂生ます神柱なりし

 朝夕に岐美つれなき心根を
  恨みまつりし吾はづかしき

 日並べて旅に立ちつつ思ふかな
  果てしも知らぬ岐美みゆきを

 澄みきりし紫微天界中に生れ
  何を歎かむ御樋代神われは

 善と悪楽しみと苦しみ行き交ふ
  紫微天界はありがたかりけり

 災に遇ひて真言喜びを
  つぶさに悟る天界なりけり

 喜びになるればまこと喜びも
  余り楽しと思はざりける

 安らけき月日過せし吾にして
  神世を歎きしことを悔ゆるも

 喜びと苦しみ互に行き交ひて
  世は永久に栄ゆべかりけり』

 小夜子比女神は御歌詠ませ給ふ。

『小夜衣重ぬる暇もあらなくに
  岐美は立たせり長き旅路を

 御子生み旅に立たせる我岐美
  悩み思ひてわれは泣くなり

 わが涙天に昇りて雲となり
  雨と降りつつ岐美に注がむ

 岐美が行く旅なる国春雨は
  日夜になげきしわが涙かも

 恋すてふ心雲に包まれて
  魂ゆくへも知らず乱れし

 いざさらば百神等よ駒並めて
  東宮に進ませたまへ

 鋭敏鳴出功に曲津見
  影は失せつつやすく通はむ』

 天津女雄神は御歌詠ませ給ふ。

『八柱御樋代神を守りつつ
  魔溪川に突きあたりける

 鋭敏鳴出功を今更に
  さとりて心かしこみしはや

 高野比女神神言さとき目に
  曲津はすがたを現はせしはや

 駿馬は嘶き初めたりいざさらば
  百神たちよ鞍に召しませ

 曲神は行手道にさやるとも
  いかで恐れむ言霊武器に』

 ここに一行神々は、天駿馬にひらりと跨り、吹き来る風を駒たてがみに切り分けつつ、鈴音も勇ましく、鋭敏鳴出神を先頭に、天津女雄神を殿りとして、高地秀聖場さして進ませ給ふぞ畏けれ。
(昭和八・一二・五 旧一〇・一八 於水明閣 谷前清子謹録)
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