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文献名1霊界物語 第76巻 天祥地瑞 卯
文献名2第1篇 春風駘蕩よみ(新仮名遣い)しゅんぷうたいとう
文献名3第5章 露宿〔1922〕よみ(新仮名遣い)つゆやど
著者出口王仁三郎
概要
備考
タグ データ凡例 データ最終更新日----
あらすじ大野ケ原を、一行十一人は、駒くつわを並べつつ勇み進んでいく。曲津神妨害を退け、高地秀宮も近づいてきた。一同は順番に旅様子を述懐歌に歌いつつ、駒を進めていく。野辺に一夜を明かして、翌日昼には、無事に高地秀宮に帰りついた。
主な人物 舞台 口述日1933(昭和8)年12月05日(旧10月18日) 口述場所水明閣 筆録者内崎照代 校正日 校正場所 初版発行日1934(昭和9)年3月23日 愛善世界社版 八幡書店版第13輯 521頁 修補版 校定版249頁 普及版 初版 ページ備考
OBC rm7605
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本文  果てしも知らぬ大野ケ原真中を十一頭轡を並べつつ、
 花香運ぶ春風に  鬢ほつれをいぢらせつ
 手綱かい繰りしとしとと  大河小川を乗り越えて
 勇み進むで出で給ふ  そ風景はさながらに
 名高き画工描きたる  絵巻物如見えにける。
 高野比女神は、大野ケ原真中に駿馬蹄を留めて、空行く雲を眺めながら心静かに御歌詠ませ給ふ。

『久方空に往き交ふ白雲
  かげは高地秀山より流るる

 高地秀聖所も近づきて
  わが魂わが駒勇み出でけり

 帰り行く道隈手も恙なく
  神恵みに渡り来しはや

 昼月かげは白けて山端に
  近づきにつつ黄昏れむとすも

 三日月まゆみに照らされて
  矢竹心駒は勇みぬ

 久方高地秀山もほ見えて
  こ広原に黄昏れむとすも

 一夜やどりをたみつつ
  明日はかへらむ高地秀山へ

 高地秀上に白雲湧き立ちて
  西へ流るる夕なりけり

 吹く風もあとなく止みて静かなる
  春大野に露あびつ寝むか』

 梅咲比女神は御歌詠ませ給ふ。

『春駒いななき高く響かひて
  日は暮れむとす大野ケ原に

 山端に傾く月かげ見れば
  利鎌如く鋭かりけり

 曲神猛びも消え失せて
  御空星はきらめき初めたり

 大空星は目と目を合はせつつ
  永久ささやき続けゐるかも

 幾万と数かぎりなき星かげを
  仰ぎつわれは心はろけし

 大空を二つに割りて永遠に
  銀砂流るる天河はも

 久方空に横たふ天河も
  そ行先は海に続けるか

 虫音もいやさやさやに響きつつ
  わが目俄に眠くなりたり

 春風に吹かれて長き駒旅を
  しばし休めむ草褥に

 大空模様夜具を着て
  大地褥に一夜を眠らむ』

 香具比女神は御歌詠ませ給ふ。

『高野比女神神言に従ひて
  天津高宮に詣でけるかも

 七日七夜駒旅路を重ねつつ
  今宵も草褥に眠らむ

 万里行く駒も脚をば地にべて
  旅つかれをやすらひ居るも

 こ駒はやさしき駒よ千万里
  旅をたすけて報酬を求めず

 天界に生きてほりする事なくば
  日々生活は安けかるらむ

 幾千里われを助けて勇み立つ
  駒うるはしきかも』

 寿々子比女神は御歌詠ませ給ふ。

『千万里旅を重ねて今ははや
  高地秀宮居に近づきにけり

 明日ざれば高地秀宮居にかへらむと
  おもへば楽しく夜も眠られず

 一夜枕を重ねつつ
  帰らむよき日待つは楽しき

 曲津見猛びも言霊
  水火に祓ひて帰り来にけり

 鋭敏鳴出言霊力もて
  道隈手もつつがなく来し

 河となり又山となり雲となりて
  曲津見は道にさやりけるはも

 曲津見は如何に猛るも議ゆとも
  生言霊に及ばざりけり

 久方筑紫宮居旅に立ちて
  世さまざま憂をさとりぬ

 風清く眺め妙なる高地秀
  宮居にし住めば世さま知れずも

 うつり行く世さまざま事毎を
  悟らひにけり旅を重ねて

 わが魂は黒雲如濁らへりと
  筑紫宮居に詣でてさとりぬ』

 朝香比女神は御歌詠ませ給ふ。

『千万里遠旅路を重ねつつ
  はや一夜旅となりける

 高地秀山は恋しもなつかしも
  岐美御霊とどまりませば

 住みなれし高地秀宮居聖所こそ
  わが永遠命なりける

 永遠聖所を後にして
  再び吾は旅立たむと思ふ

 さりながら御樋代神等御許しを
  受けて後に定めむと思ふ

 大空に星はまたたき地
  草葉露は玉とにほひつ

 春草根にひそみ鳴く虫音も
  いや冴えにつつ夜は更けにけり

 星光は千万あれど弓張
  月光に及ばざりけり

 山端に新月影消え失せて
  闇かたまり地に拡ごれり

 闇幕とほして仰ぐ星かげ
  数限りなくまたたく夜半なり』

 宇都子比女神は御歌詠ませ給ふ。

『長旅を今日が宵まで続けつつ
  世さまざまを悟らひしはや

 大空にただ一片雲もなく
  千万星かがやき初めつつ

 満天に数限りをかがやける
  星かげを力に一夜を眠らむ

 国土稚き大野ケ原も春されば
  花筵となりて匂へる

 花筵いやさや敷きて春夜を
  眠りつ虫音きくは楽しも』

 狭別比女神は御歌詠ませ給ふ。

『高地秀峰は白雲たなびきて
  遠野夜は更けにけり

 明日日は高地秀宮居に帰らむと
  心いさみて眼冴えつつ

 曲津見に道行手を遮られし
  時を思へば今宵は安けし

 鋭敏鳴出言霊天地に
  響き渡りて曲津は失せける

 言霊力を今更に
  われは悟りぬ旅を重ねて

 言霊伊照りたすくる天界に
  生れしわが身幸を思ふも

 見渡せば深く包みし闇幕に
  遥か野辺はかくろひにけり

 日並べて旅に立ちつつやうやくに
  一夜をあます草枕はも

 草枕旅疲れもしらずがに
  駒は安けく眠らひにけり』

 花子比女神は御歌詠ませ給ふ。

『長旅に疲れし吾も一夜
  旅とし思へば嬉しくなりぬ

 明日日は高地秀宮居大前に
  復命せむとおもへばうれし

 高地秀宮居は常に紫
  雲立ちぼり清しき山はも

 久方天津御空に聳えたる
  高地秀山春はうるはし

 百千花咲き足らひたる高地秀
  山は天界姿なるかも』

 小夜子比女神は御歌詠ませ給ふ。

『小夜更けて眠らへぬままに草
  素足にふめば清しかりけり

 明日日は高地秀宮居に帰らむと
  おもへば心をどりて眠れず

 日並べて旅楽しさ苦しさを
  悟らひにつつ一夜となりぬ

 一夜野辺宿りももどかしく
  おもひぬるかな聖所近みて

 御樋代神打揃ひ紫微宮居に
  詣でしことを珍らしとおもふ

 主恵みに夜も安らけく
  幾日旅をつづけけるかも

 わが心頓に勇みて眠られず
  駒あがき音ききて居り

 薄曇る春陽気ただよひて
  風静かなる神苑にかへらむ

 大宮居庭を流るる清川に
  明日はかへりて禊せむかな』

 天津女雄神は御歌詠ませ給ふ。

『御樋代御供に仕へつつ
  高地秀宮居に近づきしはも

 いざさらば夜明くるまで眠るべし
  春ただよふ野辺草生に』

 斯く神々は述懐歌をうたひつつ夜明くるを待ち給ひ、再び駒音勇ましく、次ぎ真昼頃、やうやくにして高地秀宮居聖所に無事帰らせ給ひける。
(昭和八・一二・五 旧一〇・一八 於水明閣 内崎照代謹録)
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