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文献名1霊界物語 第76巻 天祥地瑞 卯
文献名2第2篇 晩春神庭よみ(新仮名遣い)ばんしゅんしんてい
文献名3第8章 善言美霊〔1925〕よみ(新仮名遣い)ぜんげんびれい
著者出口王仁三郎
概要
備考
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あらすじ朝香比女神は、顕津男神を慕う狂おしい心に、御樋代神たちや宮司神たちいさめを聞かず、白馬に鞭打ち、黄昏空を東南指して駆け出でてしまった。後に残された宮居神々たちは、朝香比女短慮を怒り嘆いたが、高地秀宮居聖殿に心静かに帰って朝香比女無事を祈るしかなかった。一同は祭典準備が整うと、鋭敏鳴出神が宮居務めとして、自ら高御座大前にひれ伏し、声さわやかに、朝香比女無事を願う祝詞を奏上した。高野比女神は御祭り庭に立って朝香比女行動を述懐し、皆いさめを聞かずに飛び出した比女を「面勝神」と宣すが、無事を祈る歌を歌った。そして最後には、朝香比女内に秘められた、激しく顕津男神を思う心に思い至り、そ心を汲むことができなかった自分を悔い、宣りなおした。神々はそれぞれ、西方国へ向かった朝香比女無事を祈る歌を歌い継いだ。そして御樋代神中には、「面勝神」である朝香比女が、実は曲津神をも糺す力を持った雄雄しい神であることを悟るももあった。最後に天津女雄神は、朝香比女雄雄しさに打たれ、西方国魂神を生むべく旅立っていったそ心をたたえた。
主な人物 舞台 口述日1933(昭和8)年12月06日(旧10月19日) 口述場所水明閣 筆録者林弥生 校正日 校正場所 初版発行日1934(昭和9)年3月23日 愛善世界社版 八幡書店版第13輯 539頁 修補版 校定版314頁 普及版 初版 ページ備考
OBC rm7608
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本文  ここに朝香比女神は、顕津男神を慕はせ給ふ心狂ひたちて足掻き止まねば、御樋代神等、宮司神等心を籠め力を尽して諫めも、空吹く風と聞き流し、白馬に鞭うち、黄昏空を東南指して駆け出で給ふぞ雄々しけれ。後に残れる御樋代神等は慨然として歎かせ給ひつつ、高地秀宮居聖殿に心静かに帰らせ給ひて、朝香比女無事を祈らむと、種々美味物を奉り、大御前に祈り祝詞を奏上し給ひぬ。
 先づ例如く祭典用意整ひたれば、鋭敏鳴出神は宮居務として、御自ら高御座大前にひれ伏し、御声爽かに太祝詞白し給ふ。

『掛巻くも綾に畏き高地秀山下津岩根に大宮柱太しき建て、高天原に千木高知りて、堅磐常磐に此聖所を領有ぎ鎮まりいます主大神大御前に、斎主鋭敏鳴出神、謹み敬ひ畏み畏みも白さく。如何なる神経綸なるかも、如何なる神計らひなるかも、御樋代比女神と神依さしに朝な夕なを仕へましし、其が中一柱とます朝香比女神は、百神等諫め止むる言霊をも聞かせ給はず、駿馬に鞭うち給ひて常闇空を、太元顕津男御許に詣で仕へむと、心雄々しく出でましぬ。かれかくなりし上は、吾等が真心もちて止めまつらむ由もなければ、惟神神に任せて、比女神旅路を安らけく平けく渡らせ給へと祈るより外に詮術無かりければ、ここに神々相議りて、今日御祭仕へまつると、海河山野種々美味物を、八足机代に横山なす置き足らはして、奉る状を、平けく安らけく穏に聞し召しまして、朝香比女神が伊行き給ふ道隈手も恙なく聖所に進ませ給へかし。過ち犯さむ事しあらば、神直日大直日に見直し聞直し宣り直しまして、比女神言出立に恙あらせじと、夜守り日守りに守り幸へ給へと、鹿児自物膝折り伏せ宇自物頸根突貫きて畏み畏みも祈願奉らくと白す。一二三四五六七八九十百千万、惟神霊幸倍坐世、惟神御霊幸はへましませよ』
 高野比女神は御祭庭に立たせ給ひて、御歌詠ませ給ふ。

『高地秀宮居に永久に
  ます大神に願ぎごと白さむ

 朝香比女神は夕べを立ち出でぬ
  つつがあらすな道隈手も

 朝香比女は面勝神よ射向ふ神
  わが言霊も聞かず出でましぬ

 思ひ立ちし事を貫く朝香比女
  こころ駒は止め得ざりき

 かくならば詮術もなし主
  あつき恵みにすがらむと思ふ

 曲津神伊猛り狂ふ荒野原を
  進ます比女身をあやぶみぬ

 危ふかる旅枕を重ねむと
  朝香比女は雄々しく出でませり

 かくまでも其心ばせを立て通す
  朝香比女は面勝神なり

 御樋代神われは司と任けられて
  詫びごと宣らむ言葉も出ず

 わが心おろそかにして朝香比女
  こころを今まで悟らざりしよ

 悟らざりしわが過ちを神直日
  大直日神宣り直しませ』

 鋭敏鳴出神は御歌詠ませ給ふ。

『朝香比女神雄々しき心ばせを
  われは気付かず眠らひにけり

 予てよりかくと定めし朝香比女
  こころ駒は止め得ざりき

 朝香比女神神言はまさしくや
  射向ふ神なり面勝神なる

 果てしなき荒野を一人出で立たす
  雄々しき比女をまもらせたまへ

 曲津神は姿をいろいろ変へにつつ
  比女行方にさやらむとすも

 曲津見猛びは如何に強くとも
  喪なく事なくすすませたまへ

 八百万神ましませど朝香比女
  雄々しき心は誰も持たなくに』

 梅咲比女神は御歌詠ませ給ふ。

『東南荒野は山も高くして
  初夏ながら春気漂はむ

 白梅花はあちこちに匂ひつつ
  比女神旅を慰むなるらむ

 白梅匂へる山路を踏みわけて
  白毛駒に鞭うたすらむ

 主厚き恵みに朝香比女
  神はやすやす進ませ給はむ

 言霊幸はひたすくる天界に
  さやらむ曲津は必ず亡びむ

 さりながら朝香比女草枕
  旅苦しさわれにせまるも

 朝夕を神御前に祈らばや
  朝香比女に恙なかれと

 四方八方に白梅薫る春野を
  心豊に立ち出でますらむ』

 香具比女神は御歌詠ませ給ふ。

『非時に香具香りたる
  紫微天界はにぎはしきかも

 桜花散り敷く庭夕ぐれを
  朝香比女は一人立たせる

 神々誠をこめて言霊も
  聞かさず立ちし比女神天晴れ

 比女神後姿見送りてわれはただ
  故知らぬ涙ほとばしりぬる

 今日を限り長別れにならむかと
  おもへば悲しくなみだぐまるも

 大野原駒に鞭うち一人ゆかす
  雄々しき比女心いたまし

 背岐美をおもふあまり旅立ちと
  おもへばわれも悲しくなりぬ

 神思ひ岐美を慕ひて胸
  炎消さむと出でませしはや

 燃ゆる火も溢るる水もいとひなく
  恋路ためには命惜しまさず

 玉命捧げし岐美ゆゑに
  かくもありけむ朝香比女神は

 よしやよし曲津見さやり繁くとも
  つらぬき通せ公真心を』

 寿々子比女神は御歌詠ませ給ふ。

『朝香比女道隈手も恙なかれと
  こころ清めて祈りけらしな

 駿馬に鞭をうたせて出で立ちし
  比女姿は雄々しかりける

 岐美おもふ心征矢を通さむと
  駒にまたがり駆け出で給ひぬ

 春さりて夏来りける大野原を
  進ます公すがた偲ばゆ

 昆虫災もなく高津神
  さまたげもなく進み給はれ

 一度は止めまつれど如何にせむ
  かくなるうへはただに祈らむ

 比女神進ます道は安くあれ
  高津鳥等わざはひもなく

 山を越え野を越え溪川渡りつつ
  出で行く公雄々しきろかも

 かくならば後に残りしわれわれも
  比女神旅を祈るみなる』

 宇都子比女神は御歌詠ませ給ふ。

『高地秀宮居聖所を後にして
  山河わたり比女神出でましぬ

 数千里枕をかさねつつ
  一人出でます比女神天晴れ

 百神神言止めも聞かずして
  雄々しも比女は出でましにける』

 狭別比女神は御歌詠ませ給ふ。

『幾十日筑紫宮居旅をへて
  間もなく比女神又旅に立てり

 気魂も神魂も強き比女神
  こころ駒を止むる術なし

 幾千里荒野をわたり旅立たす
  朝香比女は雄々しき神なり

 徒に月日送らむ苦しさに
  朝香比女は立ち出でにけむ

 主御許しもなくただ一人
  立たせる朝香比女神はも

 朝香比女神神言とりしわざは
  かへりて神に叶ふなるらむ

 主御旨に叶はぬわざなれば
  朝香比女駒は走らじ

 黄昏闇を駆け出しし雄々しかる
  すがたに神旨をわれはうたがふ

 村肝心照らして言霊
  水火清まらばすべてはならむも

 朝香比女神はかならず顕津男
  神と御水火を合はせますらむ

 西方国土稚ければ御樋代
  神まさぬ世を悟らしにけむ

 西方国土御樋代神となり
  国魂神を生ます旅かも

 西方国土は黒雲立ちこめて
  大曲津見棲めるとぞ聞く

 曲津見ほしいままなる振舞を
  たださむとして出でましにけむ

 朝香比女神は面勝神なれば
  大曲津見もただになびかむ

 かく如雄々しき神はあらざりき
  御樋代神は数多ませども』

 花子比女神は御歌詠ませ給ふ。

『高地秀桜は早や散りて
  青葉園となりにけらしな

 野に山に若葉若草萌え立ちて
  夏御空は来むかひにけり

 青葉萌ゆる山河渡り駒背に
  乗りて出でます朝香比女はも

 朝香比女神はかならず曲津見
  猛びにくるしみ給ふなるらむ

 朝香比女旅悩みをおもひつつ
  腮辺につたふわがなみだかな

 西方国土は黒雲立ちこめて
  スウヤトゴル曲津は火を吐く

 非時に黒雲むらむら立ち上り
  御空をつつむ西方小暗き

 月も日も星もかげなき西方
  国土造るべく出でましにけむ

 朝香比女神雄々しき心ばせを
  われは朝夕悟り居しはや

 かく如思ひきりたる草枕
  旅にたたすをうべよと思へり

 今とならば止めむよしもなきままに
  恙なかれと祈るみなる

 朝香比女功を太しく建てまさば
  御樋代神ほまれなるかも

 八柱御樋代比女神中にして
  雄々しき神出でますは嬉し』

 小夜子比女神は御歌詠ませ給ふ。

『丹牡丹花はくづれて庭池
  菖蒲紫匂ひ初めたり

 大庭瀬見小川にかげうつす
  菖蒲つやつやしかも

 菖蒲咲くころ聖所を後にして
  朝香比女は旅立たしける

 朝香比女は燃ゆる心苦しさに
  菖蒲も目にはうつらざりけむ

 庭面に咲ける菖蒲や燕子花
  何れをそれと別ち兼ねつつ

 朝香比女今日旅立ちよしあし
  あやめもわかずわれは黙さむ

 何事も主大神御心に
  任すは真つとめなるらむ

 如何ならむ太しき功たつるとも
  御神御許しなきは仇なり

 主生言霊に依らずして
  われは進まむ雄心起らず

 徒に長き月日を送りしと
  思ふは心ひがみなりしよ

 朝夕に神に仕へて祝詞宣るは
  御樋代神つとめなりける

 地稚きこ天界を固めむと
  御樋代神を生ましし神はや

 御子生み神業はさておき言霊
  御樋代として生れ出でしならむ

 かくならば朝な夕なに世為に
  御樋代神は言霊宣らばや

 一日だも生言霊をおこたらば
  乱るる世なりと悟らひにけり』

 天津女雄神は御歌詠ませ給ふ。

『御樋代比女神等に従ひて
  珍しき事を見聞きするかも

 真心を筑紫宮居あとにして
  高地秀宮居に仕へつるかも

 朝香比女神旅立ち送りつつ
  雄々しき姿に見とれけるかな

 かく如雄々しき神にいますとは
  愚かしきわれは悟らざりしよ

 こ上は朝な夕なを大宮居に
  祈りて比女幸を守らむ

 西方国魂神を生ますべく
  雄々しく一人出でましにけむ

 今となりて悔むも詮なし真心を
  持ちて祈らむ神御前に』

 かく如く、神々は大宮居前に比女神無事を祈りつつ各自述懐歌をうたひて、静かに定め居間に就かせ給ひける。
(昭和八・一二・六 旧一〇・一九 於水明閣 林弥生謹録)
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