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文献名1霊界物語 第77巻 天祥地瑞 辰
文献名2第1篇 万里海原よみ(新仮名遣い)までうなばら
文献名3第6章 田族島着陸〔1938〕よみ(新仮名遣い)たからじまちゃくりく
著者出口王仁三郎
概要
備考
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あらすじ海はたそがれ日は落ちてきた。神々は述懐歌を歌っていたが、なんとはなしに寂しき道中に、起立比古はつい弱音を吐くが、立世比女に諭されて宣り直し、夜美しさをたたえる歌を歌った。朝香比女は、起立比古言霊に万里海原もよみがえり、輝きを取り戻したと喜び、夜航海を楽しんだ。そうするうちに、白馬ケ岳麓に舟は着いた。こ島は、万里(まで)島と言い、万里島々中で、もっとも広く土肥えた素晴らしい島であった。万里島には、幾千万ともなく野生馬と羊が住んでおり、またこれまで誰も国津神が住んだことない、田族(たから)島であった。朝香比女神一行は、舟を磯につないで島に登って来ると、たくさん馬・羊は先を争って、白馬ケ岳麓をさして逃げていった。一行は、天を封じて立っている大きな楠陰に憩いながら、お述懐歌を歌った。住むももなきこ島に白駒がいななき、野も開かれているを見て朝香比女は、御樋代神一人、田族(たから)比女神がこ島を統べていることを悟った。神々が述懐歌を歌ううち、いずこよりか白駒にまたがった神が現れ、輪守比古神、若春比古と名乗った。そして二柱神は、田族比女神言により、朝香比女一行を迎えにきたことを告げた。一同はひらりと駒に乗り、月照る夜半野路を、くつわを揃えて田族比女館へ進んで行った。
主な人物 舞台 口述日1933(昭和8)年12月12日(旧10月25日) 口述場所大阪分院蒼雲閣 筆録者内崎照代 校正日 校正場所 初版発行日1934(昭和9)年3月30日 愛善世界社版 八幡書店版第13輯 612頁 修補版 校定版97頁 普及版 初版 ページ備考
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本文  伊猛り狂ふ荒浪を  もともなさず比女神は
 生言霊御光に  忽ち巌島となし
 泡立つ浪は忽ちに  島真砂と変へさせて
 いみじき功を立て給ひ  諸神等を驚かせ
 水火光を照らしまし  果しも知らぬ万里
 浪押し分けて悠々と  白馬ケ岳を目当とし
 声も清しく言霊  御歌を詠ませ給ひつつ
 進ませ給ふぞ雄々しけれ  御空を渡る天津日は
 高地秀山頂に  うすづき給ひて山影は
 万里海原襲ひ来ぬ  冷たき夕べ海風は
 女神御舟に襲ひ来ぬ。
 朝香比女神は御歌詠ませ給ふ。

『浪高き万里海原渡り居れば
  高地秀山に陽は落ちにけり

 高地秀山影遠く万里
  面に黒く倒れけるかも

 百鳥は塒求めて島々
  茂樹梢をさして飛ぶなり

 奴婆玉黒き夕烏は
  西島根をさして急ぐも

 浪音いや高らかに響きつつ
  わが乗る舟はさゆらぎにけり

 数限りなき島山を縫ひて来し
  舟も恵みに恙なかりき

 天津日は山に沈みて月読
  光はますます冴え渡るなり

 月読清き姿を眺むれば
  わが背岐美を偲ばるるかな

 御空ゆく月をし見れば背岐美
  清き姿偲ばるるかな

 天津日はかくろひぬれど月読
  御舟は磐楠舟を照らせり

 月冴ゆる大海原を渡りゆく
  われ国魂神を生まむと

 百鳥声は聞こえずなりにけり
  ただ潮騒みにして

 島々岸打つ浪は白々と
  しぶき立つなり風まにまに

 滔々と巌ケ根を打つ浪しぶき
  音は一入高くなりけり

 海面に匂はぬ花咲き満ちて
  わが行く夜半舟はさやけし』

 初頭比古神は御歌詠ませ給ふ。

『万里海早や黄昏れて潮騒
  音たかだかと鳴り響くかも

 百鳥は島茂樹に宿をとるか
  只一羽だも影を見せなく

 吾もまた何れ島にか舟寄せて
  雨宿りつつ夢を結ばむ

 白馬ケ岳深雪は月に輝きて
  霧海原に影をうつせり

 音にきく白馬ケ岳生島は
  白馬数多群れ棲むときく

 吾駒は終日舟に乗せられて
  苦しかるらむ水も飼はねば

 水飼はむ術もなきかな万里
  水はことごと塩なりにける』

 起立比古神は御歌詠ませ給ふ。

『比女神御供に仕へて万里海に
  黄昏れにつつくたびれしはや

 曲神伊猛り狂ふ海中に
  黄昏れてやる舟は淋しも』

 立世比女神は御歌詠ませ給ふ。

『起立言葉ぞあやしけれ
  生言霊旅にあらずや

 さびしみを語れば淋し楽しみを
  語らば楽しき神世なるぞや

 言霊たすけ幸ふ国中に
  弱音ふかすな起立比古神』

 起立比古神は御歌詠ませ給ふ。

『立世比女神言霊うべなうべな
  吾言霊をあやまりにけり

 久方月照る夜半海原は
  いと賑はしくかがやきにけり

 浪秀は花と冴えつつ岸を打つ
  潮しぶきは玉と照るなり

 生き生きて吾は栄えむ永久に
  心も魂も疲るることなく

 朝香比女神雄々しさに比ぶれば
  吾は小さき弱き神かも』

 朝香比女神は御歌詠ませ給ふ。

『起立宣らする言霊に
  万里海原よみがへりぬる

 大空星も降りて水底に
  光りかがやき給ふ海原

 上と下に月と星とを眺めつつ
  わが行く舟は天鳥船よ

 斯如美しき海上を
  月に照らされ行くは楽しも』

 天晴比女神は御歌詠ませ給ふ。

『白馬ケ岳影はやうやく近みたり
  千重浪路を遠く渡りて

 海原頭は百千々に
  またたきにけり月光に

 右左島根はここだく並べども
  神住むべき所だになし

 巌骨をあらはし島は赤々と
  空行く月かげをうつせり

 仰ぎみる白馬ケ岳は青々と
  樹木茂れり行きてひらかばや』

 斯く歌ひつつ漸くにして白馬ケ岳麓に御舟は着きにけり。こ島は万里島と称へ、こ海原に浮べる島々中に、最も広くして地肥えたる貴島ケ根なりける。万里島には幾千万ともなき野馬と羊棲息し、未だ一柱国津神も住みたることなき田族島にぞありける。
 朝香比女一行は船を磯辺に繋ぎ、静々とぼり給へば、数多馬、羊は先をきそひて白馬ケ岳麓をさして逃げ出でにけり。一行は、こんもりと天を封じて立てる楠大樹蔭に憩はせながら、各自御歌詠ませ給ふ。

『万里海やうやく渡り月夜半
  田族島に着きにけるかも

 こんもりと空を封じて聳り立つ
  楠樹蔭は月影見えずも

 こ島にわがぼり来て生島
  草根に鳴く虫聞きにけり

 虫音はいや冴えにつつ天津日
  栄えを永久にうたひつつ居り

 白馬ケ岳尾雪は白々と
  夜目にもしるく輝き渡れり

 こ島に群がり棲める幾万
  馬と羊は逃げ失せにけむ

 土地肥えしこ島ケ根は百草
  いや茂らひて栄え果なき

 幾万馬と羊を養ふに
  足らふ小草萌ゆる島はも

 此島に国津神等たねうゑて
  千代に八千代に拓かせ度きも

 初頭比古神は御歌詠ませ給ふ。

『仰ぎみれば白馬ケ岳は雲上に
  雪をかぶりてかがやきにけり

 浪音高く聞えて遠つ野に
  白馬嘶き響き渡れり

 白駒嘶き高く千万
  声も一つに響かひにけり

 こ島に吾は御樋代神ますと
  おもはれにける駒嘶きに

 白駒嘶き聞けば天津神
  生言霊光おぼゆも』

 朝香比女神は御歌詠ませ給ふ。

『国津神はただ一柱も住まねども
  八十御樋代神はいまさむ

 遠近野はひらかれて穀物
  生ひ立ちみれば神おはしまさむ

 八十柱御樋代神一つなる
  田族比女神住処なるらむ

 明日日はこ島ふかく進み行きて
  御樋代神に言問ひせむかな』

 立世比女神は御歌詠ませ給ふ。

『こ島に御樋代神おはしますと
  聞けばかしこし言問ひまつらむ

 御樋代神これ田族島におはしまして
  国魂神を生ます日待たるる』

 起立比古神は御歌詠ませ給ふ。

『万里島山野は清く見えながら
  谿狭間に黒雲立つも

 黒雲は八十曲津見水火ならむ
  明日は近みて言向け和さむ』

 朝香比女神は御歌詠ませ給ふ。

『主神言畏み田族比女
  神はこ地に住み給ふべし

 顕津男出でまし待ちにつつ
  こ島ケ根にひそみ給はむ』

 天晴比女神は御歌詠ませ給ふ。

『八十柱御樋代神は只一人
  こ広き島におはしますにや

 こ広き島根に一人おはします
  田族比女神は淋しかるらむ』

 朝香比女神は御歌詠ませ給ふ。

『十柱神たち従へて
  鎮まりいまさむ御樋代神は

 ともかくも夜明くるまでこ森に
  安く眠らむ潮騒聞きつつ』

 斯く歌はせ給ふ折しも、何処よりか輪守比古神、若春比古二柱は、白馬に跨り進み来りこ蔭に駒を止め、

『かしこけれど言とひ奉らむこ森に
  いますは朝香比女神にまさずや

 田族比女神神言をかしこみて
  吾二柱伊迎へまつるも』

 朝香比女神は御歌もて答へ給ふ。

『二柱神に申さむ吾こそは
  朝香比女よ御樋代神よ

 霧こむる万里海原晴らしつつ
  これ島根に今来つるはや』

 若春比古神は御歌詠ませ給ふ。

『待ち待ちし朝香比女御姿を
  拝む今宵ぞ尊かりける

 いざさらば御樋代神よ諸神よ
  案内をなさむ比女館へ

 吾こそは田族比女神に仕へ奉る
  若春比古神司なり

 今ここに現はれ来りし一柱は
  輪守比古神司なるよ

 いざさらば館に案内仕らむ
  早や立たせませ比女神諸神』

 朝香比女神は、

『いざさらば若春比古宣り言に
  従ひ吾は御館に進まむ』

と言ふより早く白馬に跨り給へば、初頭比古神、起立比古神、立世比女神、天晴比女四柱神は、ひらりと駒に跨り、月照る夜半野路を轡を揃へて進ませ給ふぞ畏けれ。
(昭和八・一二・一二 旧一〇・二五 於大阪分院蒼雲閣 内崎照代謹録)
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