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文献名1霊界物語 第78巻 天祥地瑞 巳
文献名2第2篇 焼野ケ原よみ(新仮名遣い)やけがはら
文献名3第12章 月下宿り〔1968〕よみ(新仮名遣い)げっかやどり
著者出口王仁三郎
概要
備考
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あらすじ一行十二柱神々は、黄昏中、常盤樹茂る広い森かげに安着した。国土がまだ稚い島にもかかわらず、松幹は太く所狭しと生い茂り、土一面白砂は、白銀を敷き詰めたようで、所々に湧き出る清水は、底真砂も見えるほどに、夕月影を映して鏡ように輝いていた。こところどころに空き地があって、居ながらに空を仰ぐことができるであった。二柱御樋代神は、笠松根株に萱草を敷いて、安らかに息をつき、歌を歌いあった。朝香比女神はこ深さとすがすがしさを称える歌を歌った。葦原比女は、朝香比女邪神を追い払った活躍を感謝し、真火燧石神徳をたたえた。従者神たちも、星月を眺めながら、あるいは述懐し、あるいはすがすがしい森様子を歌に歌いこんだ。そうしているうちに次第に夜はふけていった。やがて東雲空を寿ぎながら、十二柱神々は、生言霊神嘉言を宣り終わると、駒にまたがり、鷹巣麓にある館をさして急ぎ進んでいった。
主な人物 舞台 口述日1933(昭和8)年12月21日(旧11月5日) 口述場所大阪分院蒼雲閣 筆録者林弥生 校正日 校正場所 初版発行日1934(昭和9)年5月5日 愛善世界社版 八幡書店版第14輯 82頁 修補版 校定版202頁 普及版 初版 ページ備考
OBC rm7812
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本文  一行十二柱神々は、黄昏野路を駒に鞭うたせつつ、常磐樹茂る野中に珍しき広き森蔭に安着し給ひける。国土稚き島ケ根にも似ず、松太幹は所狭きまで生ひ茂り、地一面白砂は白銀を敷きつめし如く、処々に湧き出づる清水は、底真砂も見ゆるまで、夕月影をうつして鏡如く輝けりけり。
 こ処々に空地ありて、居ながらに御空を仰ぎ見るを得たり。先づ二柱御樋代神は、蜒蜿と竜蛇如く梢を四方に張れる笠松根株に、萱草を敷き足らはし、安らかに御息をつがせながら御歌詠ませ給ふ。
 朝香比女御歌。

『地稚きこ浮島にかく
  老松森ありとは知らざりき

 海原島かげ数多くぐりつつ
  初めて見たり太幹松を

 常磐樹生ひ茂りたる森かげに
  月を浴びつつ休らはむかも

 此処に来て心清しくなりにけり
  十柱神面輝けば

 大空を渡らふ月光清み
  松を描けり真砂上に

 彼方此方に真清水湧けるこ
  清しきかもよ月照れれば

 大空も水底も月輝きて
  そ夕暮吾を生かせり

 草枕旅疲れも忘れけり
  常磐森に澄む月見つつ』

 葦原比女神は御歌詠ませ給ふ。

『グロス島浮島も今日よりは
  公神徳に蘇へりけり

 久方御空雲も晴れゆきて
  さやけく照れる月舟かげ

 西へ行く月もあしなみとどめつつ
  吾等が上に輝き給へり

 天心に月はいつきて神々
  今宵宿りを守らせ給へり

 荒れ果てしこ島ケ根をまつぶさに
  拓かせ給ひし光神はや

 何時までも公恵みは忘れまじ
  国土艱みを逐ひそけ給へば

 葦原国土宝と賜ひてし
  貴燧石は生ける神かも

 こ燧石一つありせば曲神
  潜める山野も焼き払ふべし

 常磐樹梢に澄みきらふ
  月面は千々に砕けつ

 常磐樹梢ゆ透し見る
  御空月は一入ひろしも』

 初頭比古神は御歌詠ませ給ふ。

『曲津見朝夕べを荒びたる
  こ国原も月にかがよふ

 真清水にうつらふ月かげ見れば
  千々に砕けて風そよぐなり

 大空限りも知らぬ星光は
  真砂如く輝けるかも

 大空星を写して真清水
  底ひも深く空輝けり

 仰ぎ見れば御空は蒼く俯して見れば
  水底深し御空を浮べて』

 真以比古神は御歌詠ませ給ふ。

『遥々と高地秀山より天降りましし
  比女に伊添ひて月を見るかな

 高地秀神山を照らす月光を
  ここにうつして澄める公はも

 今日までは醜黒雲ふさがりて
  澄みきらひたる月を見ざりき

 夕されど梢千鳥百鳥は
  今日御行を祝ひて寝ねずも

 梢より梢に渡る百千鳥
  かげもさやかに見ゆる月

 迦陵頻伽時じく鳴きて田鶴舞ふ
  うましき国土となりにけるかも』

 起立比古神は御歌詠ませ給ふ。

『グロスやゴロス潜む魔沼に
  ぞみし思へばわが魂をどるも

 真昼間光冴えにつつ魔
  戦を守らせ給ひし月はも

 天津日は海原遠く沈みませど
  白玉月輝き給へり

 いや深き森かげながら冴え渡る
  月光に明らかなるも

 蟻這ふ庭さへ見ゆる明るさに
  夜旅寝と思はざりけり

 はろばろと焼野を渉り河を越え
  これ清しき森に休むも

 天地しるければ
  わが行く道は曲津かげなし』

 成山比古神は御歌詠ませ給ふ。

『春月にはあれど空澄みて
  星光もまばらなりけり

 仰ぎ見れば天河原は東より
  西にめぐりて夜はくだちたり

 幾万真砂きらめける
  天河原を月舟渡らふ

 東より西に流るる天
  中を漕ぎゆく月舟明るき

 嬉しさに心勇みてこ夜半を
  眠れぬままに歌詠みふけるも

 梟声も濁りて常磐樹
  梢に小夜は更け渡りつつ

 新しく生れし国土喜びを
  御空月も寿ぎ給ふか

 葦原比女神言しろしめす
  葦原国土は未だ稚しも

 稚き国土に稚き月日かげ添ひて
  千代種を蒔かばや』

 栄春比女神は御歌詠ませ給ふ。

『初夏ながらこ浮島は春めきて
  白梅花はほぐれ初めたり

 常磐樹下びに白々と
  梅蕾は綻び初めたり

 小夜を吹く風に送られ白梅
  花薫り親しき夜半なり

 神々は各も各もに御歌詠みて
  こ短夜を生き栄えつつ

 眠らむと思へど心わき立ちて
  御空月にいつきけるかも』

 立世比女神は御歌詠ませ給ふ。

『海山をもろもろ越えて今宵はも
  松にかかれる月舟を見し

 駿馬嘶き清く響くなり
  月下びに心をどるか

 神も駒も梢鳥も勇みたちて
  春一夜をうたひ明かすも』

 八栄比女神は御歌詠ませ給ふ。

『神々御歌にかこまれて
  わが言葉は出でずなりける

 荒野吹く風響きもさやさやに
  常磐森に隔てられつつ

 明日されば貴宮居に進まむと
  思へば心勇みたつかも』

 霊生比古神は御歌詠ませ給ふ。

『目出度さ限りなりけり醜神は
  雲と散りつつ月はかがよふ

 御樋代出でましに
  御空月はいよよさやけし

 二十年をこ稚国土に住みながら
  かく澄みきりし月は見ざりし

 顕津男御霊と輝ける
  常磐月は新し』

 天晴比女神は御歌詠ませ給ふ。

『天も地も晴れ渡りたる国原に
  澄みきらひたる月はわかしも

 曲津見棲処を焼きしわが公
  真火光りは天を焦せし

 久方天に昇りし焔にも
  染まらで月は澄みきらひませり』

 かく歌ひ給ふ折りしも、次第々々に夜は更け渡り、鵲声、森彼方より響かひ来る。
 ここに十二柱神等は、東雲空を寿ぎつつ生言霊神嘉言を宣り終り、白馬に跨り、鷹巣麓なる貴御館を指して急がせ給ひける。
(昭和八・一二・二一 旧一一・五 於大阪分院蒼雲閣 林弥生謹録)
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